('、`*川新聞部が嘘吐きを探すようです

4: 以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします。 :2007/10/31(水) 23:14:24.77 ID:uQKxwqpTO

 VIP高校新聞 45号 11月16日(金)

  【文化祭はもう明日! 今日は準備日!】

 11月17日に、VIP高等学校文化祭が行われる。
今日は一日を使いその準備が行われるが、祭りは明日。
ハシャぐのは明日にしましょう。

 当日は朝7:00から学校に入れるので、準備が間に合わなかったら早起きが必要。
18日は日曜日だが片付けをするので、登校日となっている。
間違えないよう気を付けよう。


  【地獄の寒中水泳、今年も開催!?】

 すっかり毎年の恒例行事となった寒中水泳。
その名の通り、この寒さの中プールで泳ぎを行う行事だ。

 前年は失神者を二名も出し、担当した体育科の阿部先生は首が飛びかけた。
今年もまた、その首の皮一枚の阿部先生が優しくレッスンしてくれる。

 根性を付けたい人、度胸なら負けないという人、思い出を作りたい人、いい男。
是非自己責任で参加なされたら如何か。

 予定日は11月28日の放課後。水着は自分で用意。心臓の弱い方お断わり。
参加したいという人は、体育科の阿部先生の所まで。

【部員の一言】勘弁じゃ。



6: 以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします。 :2007/10/31(水) 23:16:22.29 ID:uQKxwqpTO








 第7話「文化祭乱闘事件(前編)」









9: 以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします。 :2007/10/31(水) 23:18:29.02 ID:uQKxwqpTO


(*゚ー゚)「ここ、使っていいわよ」

しぃがガランとした教室の真ん中に立ち言った。

普通の教室とは違う、白い壁が簡素さを引き立てる部屋。
B棟の一般的な教室、といった方が早いかもしれない。

(#゚;;-゚) 「教室一つ使っていいの?」

(*゚ー゚)「えぇ。まぁ狭い部屋だけどね」

ζ(゚ー゚*ζ「でも十分ですよ。
      広いと手が回らなくなっちゃうし」

昼間15時にしては騒がしい、文化祭準備日の学校。
壁の向こうのみならず、そこら中から作業の音が聞こえる。

(*゚ー゚)「そう? なら良かったわ。
     ま、普通だったら部室でやって貰うんだけど」

(#゚;;-゚) 「……今度、掃除しないとですね」

ζ(゚ー゚*ζ「そうだね……もうボヤ騒ぎは嫌だよ」



11: 以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします。 :2007/10/31(水) 23:21:04.04 ID:uQKxwqpTO

(*゚ー゚)「ペニが自分から言いだす事はないと思うけど。
     あ、あと隣が確か……美術部だったかしら。
     2つ上で学生ライブやるから、追い出されちゃったのよね」

(#゚;;-゚) 「静か同士丁度いいよ。わざわざありがとう」

ζ(゚ー゚*ζ「ありがとうございます先輩。
      突然だったのに……」

(*゚ー゚)「どうせ空き教室だったし、気にしないで。
     ……まぁ、普通突然言いだした場合は部室d」

(#゚;;-゚) 「ありがとうお姉ちゃん。
      さ、早く自分の仕事に戻って戻って」

意外に嫌味っぽかった姉の背中を押し、無理矢理教室から出す。
廊下からもしぃは何か言っていたが、でぃは気にせずにピシャリと扉を閉めた。

(#゚;;-゚) 「……さて、やりましょうか」

ζ(゚ー゚*ζ「うん、早くやらないと時間なくなっちゃうし!」

そこでまた、2人しかいない教室を見る。

クラスの教室の半分程で、机も普通とは違う。
キャスターの付いた横に長い木机で、どこか簡易な感じ。椅子は普通のだが。



12: 以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします。 :2007/10/31(水) 23:24:57.73 ID:uQKxwqpTO

(#゚;;-゚) 「……」

ζ(゚ー゚*ζ「……」

(#゚;;-゚) 「……とりあえず、机を出さないと駄目ですかね」

ζ(゚ー゚*ζ「……そうだね。
      新聞は額に入れたから壁に吊すだけだけど……机は邪魔だね」

(#゚;;-゚) 「では、頑張りましょう」

ζ(゚ー゚*ζ「おーう!」

いきなりの力仕事だったが、2人は文句一つ言わずに取り掛かる。
午前はクラスの出し物の準備もして、疲れているはずなのに、だ。

ζ(゚ー゚*ζ「あれ? 机って体育館?」

(#゚;;-゚) 「いえ、B27が集める教室と言ってました」

ζ(゚ー゚*ζ「B27……隣の隣の隣?」



14: 以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします。 :2007/10/31(水) 23:28:27.05 ID:uQKxwqpTO

(#゚;;-゚) 「ここがB24ですから……そうですね」

足にあるキャスターのロックを外し、机を変形させる。
薄っぺらくなったそれをガラガラと運び、B棟2階の7番目である教室を目指す。

それぞれ1つを押し、その教室に入る。
すでに机や椅子が大量に溢れていたが、それらは綺麗に順列されていた。

ζ(゚ー゚*ζ「この辺でいいかな?」

(#゚;;-゚) 「はい、大丈夫だと思います」

列を乱さぬよう置き、またさっきの教室へ。
軽く言葉を交わしながらも坦々と、2人の作業は続いた。








15: 以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします。 :2007/10/31(水) 23:30:24.61 ID:uQKxwqpTO



('、`*川「はいこれ。コピーして配布よろしこー」

「わかりました。お疲れさまです」

変わって部室。
ペニサスは学ランを着た、背筋をピンと伸ばす異常なほど礼儀正しい生徒に1枚の紙を渡す。

それは最初に企画した、出し物の紹介とオススメが書かれたもの。
といっても各自に書いてもらったものを修正し、纏めただけではある。

('、`*川「ホントお疲れよ……馬鹿みたいに寄越しやがって」

だが予想以上にプリントが返され、纏めるのも苦労したようだ。
ペニサスは自分の肩を揉みながら、大きくため息をついた。

「ご苦労さまでした。それでは、失礼します」

('、`*川「ほーい、会長によろしく言っといてねー」

「あ、その会長から伝言です。
 “後輩を手伝え”、と」

('、`*川「気が向いたらね、って言っといて」

苦笑し、了解しましたと言うと、彼は部室を静かに出ていった。



16: 以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします。 :2007/10/31(水) 23:32:03.53 ID:uQKxwqpTO
生徒会はあんな連中しかいないのか、模範するべきで賞を3年連続受賞できそうな生徒であった。

そんな彼の堅苦しい雰囲気に疲れたのか、ペニサスは二つ目のため息をする。

('、`*川「ふぅ……。
     ま、手伝わなくてもあの2人なら平気でしょ……。
     それに私も頑張ったしね〜……」

また人任せにしたが、今回は働いた事を言い訳にするように呟く。

けだるそうに背を倒しボケーッとしていると、元気な声と共に扉が開いた。

l从・∀・ノ!リ人「たっだいま戻ったのじゃー!」

右手に取っ手の付いた白い紙箱、左手にはビニール袋。
はじめてのおつかいにでも行ってきたような妹者が現われた。

('、`*川「また大量ね。左はクラスの?」

l从・∀・ノ!リ人「ついでに買ってきたのじゃー」

ビニール袋には、学校の近くにある¥100均一のマークが書かれている。
対し反対は、近くの洋菓子店のものだ。

妹者は右手に持っていたその箱を、ペニサスの前にそーっと置く。



17: 以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします。 :2007/10/31(水) 23:37:08.64 ID:uQKxwqpTO

l从・∀・ノ!リ人「でもなんで5個なのじゃ?」

('、`*川「知り合いに甘い物好きが居てね、差し入れよ。
     それで、妹者ちゃんはまだクラスを手伝うの?」

l从・∀・ノ!リ人「これ置いてきたら、クラスの方は任せる予定なのじゃ」

手に持っていたビニール袋をガサリと掲げ、妹者はそう言った。

('、`*川「んじゃ、終わったらでぃちゃんの所行って手伝ってあげて」

l从・∀・ノ!リ人「部長は?」

('、`*川「ちょっとヤボ用」

言うと立ち、白い箱を取る。
底に左手を添え、随分と大切そうに持ち部室を出た。

('、`*川「そういえば、妹者ちゃんトコはお化け屋敷だっけ?」

l从・∀・ノ!リ人「そうじゃ。楽しみなのじゃー」

袋ごと腕を大げさに振り、部長の隣を歩く妹者。
前に後ろにと揺れるたび、ガサガサと音がする。

('、`*川「やりたがってたもんね、お化け屋敷」



18: 以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします。 :2007/10/31(水) 23:39:57.83 ID:uQKxwqpTO

l从・∀・ノ!リ人「でもでも、縁日の方がやりたかったのじゃ……。
       部長のクラスは何やるのじゃ?」

('、`*川「私んトコは……フリマだっけな?
     私から何か出す気も無いし、手伝いもし無いけど」

l从・∀・ノ!リ人「むぅ……部長は楽しむ気0なのじゃー」

常に無い無いが言動に付きまとうペニサス。
全国の、クラスで妙にやる気ない奴女性部門代表に出しても、恥にはならないだろう。

('、`*川「私は妹者ちゃんと違って、楽しむには他人が必要だからさ。
     好きな人とならなんでも楽しいんだけどねー」

l从・∀・ノ!リ人「? 妹者も好きな人となら楽しいのじゃ?」

('、`*川「でも、一人で居ても楽しいでしょ?」

l从・∀・ノ!リ人「うぬー……楽しいのじゃ」

('、`*川「それが違いよ。祭りとか好きじゃないしね」

2階への階段を昇りながら、2人はそんな話をしていた。
階段を昇り切ると妹者は空いてる左手を振り、自分のクラスへと駈けていった。



20: 以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします。 :2007/10/31(水) 23:42:49.84 ID:uQKxwqpTO

('、`*川「さーてさて……何処だっけ?」

2階の各教室を覗き、部員を探す。
暫らくしてB24と書かれた教室にて、その2人を見つけた。

作業中だったようで、背伸びし壁に新聞入りの額を掛けているデレと、
それを補助するでぃの姿がガランとした教室にあった。

(#゚;;-゚) 「もうちょっと……右ですね」

ζ(゚ー゚*ζ「右? この辺かな?」

(#-;;-゚) 「んー……はい、OKです」

右目を閉じ首を引き、なるべく客観的に見るでぃ。
ペニサスは作業が一段落ついた様子を見届け、声を掛けた。

('、`*川「おぉ、仕事早いねー。流石チームエース」

ζ(゚ー゚*ζ「あ、部長。お疲れさまです」

(#゚;;-゚) 「こんな感じでいいですかね?」

壁に並ぶ数個の新聞。
今年度の新聞部の、創刊号から続く足跡だ。



22: 以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします。 :2007/10/31(水) 23:44:58.70 ID:uQKxwqpTO

('、`*川「いいんじゃない?
     ていうか、お金取れないの? 入場料とかさ」

(#゚;;-゚) 「無償でやらないと暴動起きますよ……」

ζ(゚ー゚*ζ「ハッキリ言って……この出し物はショボいです。
      でもやる事に意味があると思います、私は」

('、`*川「ふむ……デレちゃん、ちょっとおいで。
     すぐ妹者ちゃん来るから、でぃちゃんはココよろしく」

(#゚;;-゚) 「はい」

ζ(゚ー゚*ζ「……? はい」

デレを廊下から呼び出し、ペニサスは少し歩き教室から離れる。
突然のそれにも微笑を保ったまま、小走りで彼女は部長に追い付いた。

ζ(゚ー゚*ζ「なんですか?」

('、`*川「デレちゃんさ……まだ部活、続ける?」

ζ(゚ー゚*ζ「え? ……あ、はい。そのつもりです」



25: 以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします。 :2007/10/31(水) 23:47:28.16 ID:uQKxwqpTO

('、`*川「放課後遅くに帰る事になるし、
     人から恨みを買う可能性もあるわよ?」

ζ(゚ー゚*ζ「……私も2年目ですし、覚悟は出来てます」

('、`*川「誰の為に続けるの?」

ζ(゚ー゚*ζ「……部活の為、かな……?」

('、`*川「……」

ζ(゚ー゚*ζ「……」

('、`*川「……わかった。付いといで〜」

ζ(゚ー゚*ζ「……はい」

白い箱を持ち、黒髪を揺らし歩くペニサスの後を追い掛ける。

今度は3階への階段を昇るが、ペニサスの歩みは遅い。
それが箱を慎重に運ぶためか、素で遅いのかは分からないが、
とにかくデレはスピードを落とし、部長を抜かぬよう付いていった。

ζ(゚ー゚*ζ「あの……何処に行くんです?」

3階に上がり、まだ暫らく歩いた所でデレは聞く。



26: 以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします。 :2007/10/31(水) 23:49:12.22 ID:uQKxwqpTO

この階も変わらず賑やかだったが、ペニサスが廊下を曲がる度に音は静かになっていく。
段々と中心から離れていく感じだ。

('、`*川「もうすぐよ。ていうか着いた」

ζ(゚ー゚*ζ「え……? ここ、理科室ですよ?」

B棟に数ある特別教室の1つ、理科室の前で足を止めたペニサス。
添えていた左手を離し、手の甲を扉に向け人差し指で2回それを叩く。

コンコンとした音の暫らく後に、小さくガラと鳴き扉は開いた。


| |


ζ(゚ー゚*ζ「……?」


|゚|


Σζ(゚ー゚;ζ「!?」



27: 以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします。 :2007/10/31(水) 23:51:39.28 ID:uQKxwqpTO

開いたと言っても、それは僅かな隙間。
しかし突然、その奥から2人を確認するように目が現われる。

あからさまにビビったデレに対し、ペニサスは涼しい顔でその目に向かい話し掛けた。

('、`*川「やっほ」

|゚|「なんか用か。忙しいんだが」

('、`*川「……なに警戒してんのさ。
     とりあえず入れてよ」

|゚|「やだ。今明日の準備してんだよ」

('、`*川「あれ、なんかやるんだ?
     でも科学部の出し物はプリントに無かったよ?」

|゚|「紹介なんかいらねぇ。俺は少数精鋭がいいんだよ」

('、`*川「まぁそれはいいや、とりあえず入れて。
     色々と話あるからさ」

|゚|「……」

ζ(゚ー゚;ζ(……怖い)



28: 以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします。 :2007/10/31(水) 23:54:18.93 ID:uQKxwqpTO

ペニサスの後ろに居るデレを、目が見付ける。
訝しみながら、暫らくジーッと彼女を見つめていた。

('、`*川「……入れる気ない?」

|゚|「ない」

ペニサスはジッと目を見ながら、右手に持っていた箱をその目前へと動かした。
するとカラと音がして扉の隙間は少し広がり、今度は口が見えた。

|゚∀|「……」

('、`*川「ほーれほれ」

右に箱を動かすと目は右に行き、左に動かすと左に。
しっかりとその動きを、眼球は捉えていた。

('、`*川「折角買ってきたのになぁ〜……」

ζ(゚ー゚*ζ「なんですか? その箱」

('、`*川「ケーキ」

|从 ゚∀|

('、`*川「甘いの」

|从*゚∀|



29: 以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします。 :2007/10/31(水) 23:56:57.51 ID:uQKxwqpTO

('、`*川「……単純な奴」

|从;゚∀|「うッ、うるせぇ!」

叫んでから少し彼女は考え、仕方なさそうに扉を開いた。

从 ゚∀从「器具には触んなよ。
     少しでも触れたらぶっ殺すからな」

そんな注意を言い残し、白衣の女生徒―――ハインは部屋へと消えていく。

それに多少怯え困惑するデレとは違い、ペニサスは直ぐに理科室へと入った。
デレも置いてかれぬようそれを追い部屋へ。

理科室内は昼間だというのに暗く、机のあちこちに試験官やらフラスコやら電球やら、
理科室で見かけるもの全てを並べたような状態になっている。

('、`*川「暗ッ、なんでカーテン閉めてんのよ」

从 ゚∀从「暗い方が落ち着くんだよ」

('、`*川「陰険だねぇ……だからオバケ部なんて言われるのさ」

ζ(゚ー゚;ζ「お、オバケ部……?」



32: 以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします。 :2007/11/01(木) 00:02:31.75 ID:kaOBXYNeO

('、`*川「あ、こいつ科学部の部長のハイン。
     んでその科学部、部員が全員幽霊部員なのさ」

ζ(゚ー゚;ζ「あ、それでオバケ部……」

所属するだけ所属し、活動はしないという幽霊部員。
部に入るのが決まりのVIP高校では、幽霊部員は珍しくはない。
だがオバケ部と言われるからには、やはりそれは多いのだろう。

从 ゚∀从「入りたきゃ入りゃいい方針だからな、俺は」

('、`*川「オバケは駄目だね絶対。士気が落ちるもん」

ζ(゚ー゚*ζ「うちには居ませんもんね、そういえば」

今年度の最初から、新聞部はあの4人で固定されていた。
やはり文化部、舐められ幽霊候補も来たようだが、全員辞めさせた。

それが部の、ペニサスの方針。

('、`*川「そ、分かった?」

ζ(゚ー゚*ζ「え? あ、はい……」

从 ゚∀从「んでぇ? 何の用だ」



34: 以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします。 :2007/11/01(木) 00:06:02.02 ID:kaOBXYNeO

一つ空いていた机に直接腰を掛け、白衣を手で払いながら言う。
ペニサスはハインの背後の窓に行き、分厚い黒のカーテンを開ける。
サッという音と共に眩しいくらいの光が射し込み、その中に埃が浮かんで見えた。

そんな幻想さもある室内に、ペニサスの声が響く。

('、`*川「嘘吐きの事。なにか分かった?」

ζ(゚ー゚*ζ「え? 嘘吐き……?」

从 ゚∀从「……お前さ、マジにそんなの居ると思ってんの?」

ふぅとため息をして、ペニサスは窓際に立ちながら話を続ける。
デレはハインが座る机の側に立ち、ハインは背中を向けたままだ。

('、`*川「……嘘吐きは居る。居ないと困るのよ。
     私は知りたいの、全部知らなきゃ卒業なんか出来ない」

ζ(゚ー゚*ζ「部長、嘘吐きって……」

从 ゚∀从「コレ、見てみろよ」

ハインは白衣の腰にあるポケットから、折り畳まれた1枚の紙を取り出しデレに渡す。
不思議そうに紙を開くと、真剣な顔でそれを読み出した。



39: 以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします。 :2007/11/01(木) 00:09:37.86 ID:kaOBXYNeO

从 ゚∀从「まぁ、それなりに納得はいく推理だけどよぉ……」

('、`*川「ハインなら分かるでしょ?
     今回の事件じゃ、最強の切り札よハインは」

从;゚∀从「だから俺は録音機じゃ……」

ζ(゚ー゚*ζ「なんですかコレ? 考察、って……」

紙を読み終えたデレが、遮るように口を開く。

ζ(゚ー゚*ζ「しかもなんでコレを……彼女に?」

('、`*川「……ハインは嘘吐き並の力を持ってるの。
     私達じゃ分からない事も、ハインなら分かる」

ζ(゚ー゚*ζ「……力?」

从 ゚∀从「……んな大層な言い方すんな。
     ただ記憶力がいいだけだよ」

顔を伏せながらハインは言う。
続きペニサスが、それの補足をした。



40: 以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします。 :2007/11/01(木) 00:11:50.73 ID:kaOBXYNeO

('、`*川「音を完全に記憶できるのよ。
     言葉も音楽も雑音も、全部」

从 ゚∀从「勝手に頭に残るから、厳密には記憶とは違うんだろうけど。
     ちなみに、原因は不明。
     医者はサヴァン症候群の一種だとかホザいてたが、俺に精神障害なんかねぇし」

デレにはこの話があまりに突飛しよく分からなかった。
そんな彼女を見てハインがやった事は、あまりに単純だった。

从 ゚∀从「……最近すっかり冷えきってきました。
     季節の変わり目というのは風邪を引きやすいです。
     家に帰ったらまず手洗いとうがいをしましょう……小学校かよ」

ζ(゚ー゚*ζ「それ……昨日の朝会の?」

从 ゚∀从「遅くに帰る時は友達と一緒に。何かあったら近くの家に逃げ込んでください。
     ……そっちのが不審者じゃねぇか。
     あと、暖房の上には乗らないように……うるせっつの」

俯いたままスラスラと、何かを読むようにハインは言う。
それは昨日の朝、一度は耳を通ったが抜けていった言葉だった。

从 ゚∀从「……教頭様のご挨拶でした。
     全部はだるいからやらんが」



44: 以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします。 :2007/11/01(木) 00:14:16.31 ID:kaOBXYNeO

ζ(゚ー゚;ζ「す、凄い……」

从 ゚∀从「……凄くなんかねぇよ。
     ……聞きたくない言葉もずっと残るんだから」

('、`*川「おかげでヒネくれちゃってね……」

直ぐ様うるせぇと呟くハイン。
そんな彼女に協力してもらうため、ペニサスは未だ持っていた箱を机に置いた。

('、`*川「ハインのそれなら、嘘吐きにも消しきれないと思うのよ。
     嘘吐きの声を聞いて、状況の記憶だけ消えていれば……」

从 ゚∀从「……まぁ大変だが特定はできるかもな」

ζ(゚ー゚*ζ「でもそんな状況ありますか……?」

('、`*川「さぁ、それはわかんない。
     居るかもわかんない相手だし」

でも……とペニサスは続ける。

('、`*川「もし偶然にも網にかかれば……私の勝ち」

从 ゚∀从「嘘吐きなんか居なかったら?」

('、`*川「私の負け。惨敗よ。
     嘘吐き以外でのパン失踪事件の解決は……私には出来ないわ」



46: 以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします。 :2007/11/01(木) 00:16:07.87 ID:kaOBXYNeO

3人は黙り、少しの間が流れた。

ペニサスの作戦は、仮定の上に成り立っている。
しかも常識外の仮定の上にだ。

だが、彼女は信じていた。
仮定が現実である事を。嘘吐きがいる事を。

('、`*川「ま、ハインは嘘吐きの事を念頭に置きながら、
     普段通りフラフラしてくれればいいからさ」

从 ゚∀从「違和感あったら教えろ、ってか」

('、`*川「そういう事」

ハインが渋りそうな雰囲気を察知したのか、ペニサスは白い箱を開く。
カラフルな箱の中を覗き、追込みをかける。

('、`*川「えーと……チーズケーキにチョコケーキ。
     ショートケーキにモンブr」

从*゚∀从「モンブラン」

('、`*川「……食いたきゃ手伝え」

从;゚∀从「チッ、こんにゃろう……」



47: 以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします。 :2007/11/01(木) 00:18:31.30 ID:kaOBXYNeO

ハインは悔しそうに舌打ちをすると、脳内の天秤に2つのモノを乗せた。

それはモンブランと、プライド。

完全にペニサスは自分の性格を見抜いている。それには悔しく、腹が立つ。
それに、ここであっさりYESと言おうものなら、非科学的なものを信じる事になる。

が、しかし……

从 ゚∀从「……わかった。モンブランの為だ」

甘いモノには勝てなかった。








ζ(゚ー゚*ζ「でも部長……なんで私に?」

理科室を出て2階を目指す途中、デレはペニサスに聞いた。



49: 以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします。 :2007/11/01(木) 00:20:21.02 ID:kaOBXYNeO

('、`*川「落ち着いたら、嘘吐きの事はでぃちゃん達にも言うつもり。
     でもハインの事は、ね……。あいつ自身、あんまり気に入ってないし。
     それでもデレちゃんになら、教えても大丈夫だと思ったの」

ζ(゚ー゚*ζ「そんな……買いかぶりですよ」

('、`*川「……ハインはケーキさえ渡せば言うこと聞くわ。
     これからも力になってくれると思うから、紹介はまずデレちゃんにと思ってね」

残り4個となったケーキの箱を持ちながら、ペニサスは歩く。
デレも今度は横に並ぶようにして、彼女と話す。

ζ(゚ー゚*ζ「これからって……?」

('、`*川「デレちゃんが部長になってからよ」

ζ(゚ー゚;ζ「えっ……私が、部長?
       てっきり次の部長はでぃちゃんかと……」

普通部長は一番の先輩が勤めるものだが、ペニサスは実力主義で決めたいと前々から言っていた。
だから次の部長は、実力もあり性格的にもペニサスに近い、でぃがなるものだと。

('、`*川「私もそう考えてたけどね……。
     でもデレちゃんが部長の新聞部は、凄く面白いものになると思うの」

ζ(゚ー゚;ζ「そんな……でも……」



51: 以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします。 :2007/11/01(木) 00:22:08.39 ID:kaOBXYNeO

('、`*川「大変だと思うわ。だから、ハインを紹介した」

ζ(゚ー゚*ζ「え? ハインさんって3年生じゃないんですか?」

('、`*川「まだ2年よ。
     あいつとは幼馴染みでね、昔は家も近かったの」

ζ(゚ー゚*ζ「そうなんですか……」

あの雰囲気と貫禄は、デレの目には年上に見えたらしい。
ペニサスに平気でため口を聞くのはつーも同じだが、遥かにハインの方が重苦しい空気はある。

('、`*川「ま、今はそんなに気にする時期じゃないわ。
     今デレちゃんがやる事は、文化祭を楽しむ事よ」

トントンと階段を降りながら、ペニサスはそう呟いた。







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