('、`*川新聞部が嘘吐きを探すようです
- 3: 以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします。 :2007/11/14(水) 19:08:25.46 ID:1iCabTZbO
ζ(゚ー゚*ζ「……それじゃ、お先失礼します」
('、`*川「はいはい、気を付けて帰ってね〜」
いつもの部室、今は2人しか居ないのだが、その1人も帰るようだ。
デレは上着と鞄を両の手に持ち、帰り支度を済ませる。
だがすぐには帰らず、ペニサスの方を見ると
どこか困った顔をしながら、その場に立ち尽くした。
('、`*川「……? どうしたの?」
ζ(゚ー゚*ζ「……あの、部長」
('、`*川「ん?」
ζ(゚ー゚*ζ「……いえ、なんでもないです。ごめんなさい……。
……それじゃ、お疲れさまでした」
('、`*川「?」
ペニサスは問おうかとも思ったが、その間の内にデレは部室を出ていった。
結局変な感覚を残されたので、ペニサスは首を傾げそれを少し緩和させる。
ふと、傾がった視界に写った紙を、何気無しに手に取った。
それをジーと読みながら、一人彼女は口を開く。
- 4: 以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします。 :2007/11/14(水) 19:11:39.75 ID:1iCabTZbO
('、`*川「前々から思ってたんだけど……。
でぃちゃんが担当のは文が固いのよねぇ……」
それは、VIP高校新聞46号。文化祭乱闘事件の記事を載せた新聞だ。
片手にそれを持ち見ながら、続いてペニサスは呟く。
その身体はいつもの椅子の上。いつものように、軽く背を椅子に任せながら。
('、`*川「なんか校長の挨拶っぽいし……。
ギコの話も丸々カット……あげく説教付きときた」
そんなに気に入らなかったのか、彼女はぶつぶつと独り言を続ける。
そこまで言うなら手伝ってやれ、とも思う。
だからこそ、この愚痴は独り言で済ますのかもしれない。
と、部室の扉が急ぎ開かれた。
普通にやればカラカラ程度なのだが、勢いに乗せガラガラッとだ。
(;#゚;;-゚) 「ぶ、部長ッ!」
('、`;川「おおぅ……な、何?」
自分でも疾しい気持ちがあったらしい。
新聞をあわてて隠すと、ペニサスはでぃの言葉を待った。
(;#゚;;-゚) 「ジョルジュ長岡……やっぱり変ですよッ!
もう2週間以上も家に帰ってないんですよ……!?
しかも家の方が、警察に捜索願いを出したって……!!」
- 5: 以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします。 :2007/11/14(水) 19:14:13.62 ID:1iCabTZbO
11話「神隠し事件」
- 6: 以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします。 :2007/11/14(水) 19:17:39.18 ID:1iCabTZbO
12月に入り、いよいよ寒さも本格的になり始めた頃。
基本的に月、火曜日というのは部員は少ない。
来ても大した用が無ければすぐに帰る。さっきのデレのように。
そんな放課後、ペニサスは一人になった部室にて
まったりとした時間を過ごしていた。
そんな彼女の元に慌ててやって来た、でぃの口から出た情報。
それは簡潔に言えばジョルジュが消えたという事。
捜索願いまで出されたと言われれば、ただ事ではない気もする。
(;#゚;;-゚) 「……どう、思いますか?
ちなみに、バスケ部のマネージャーさんから聞いた話です」
('、`*川「んー……ただの家出じゃないの?
今時のワカモノだし、お金なら持ってるでしょ?」
友人知人の家でなくとも、漫画喫茶やカプセルホテルに寝泊りは、まぁ出来る。
それくらいの施設ならばいくつかこの近所にはあるし。
しかし、ジョルジュはまだ高2。17だ。
未成年という枷は大きいし、学生ならば尚更。
- 9: 以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします。 :2007/11/14(水) 19:20:48.75 ID:1iCabTZbO
それに2週間という長さ。
そこまでして帰らない理由というのも、やや希薄かもしれない。
(#゚;;-゚) 「やっぱり……警察の方に質問とかされるんですかね?」
('、`*川「……捜索願いって言っても、無理して探すわけじゃないからね。
確か、勤務のついで、職質とかに付随される系だったような……」
(#゚;;-゚) 「事件性がないと……ってアレですか?」
('、`*川「そ。そんな感じ。
まぁ事件性の有り無しなんてのは、向こうが決める事だけどさ」
結局は分からない話だ。
警察に言うくらいなのだから、ジョルジュは携帯には出ないのだろう。
そこから矢張り、帰りたくないという推理もできる。
だが最終的には、分からない。そこに行き当たる。
ジョルジュの考えなど彼女らには、到底知れる事じゃあない。
(#゚;;-゚) 「……私、調べていいですか?」
('、`*川「ジョルジュの事は記事にできないよ?
個人的には興味曳かれるけど、デレちゃんだって居るし」
- 11: 以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします。 :2007/11/14(水) 19:23:52.48 ID:1iCabTZbO
(#゚;;-゚) 「私個人で調べます。皆には秘密で。
……なんか引っ掛かるんですよ、この話」
それでもでぃは、知りたいらしい。
理由はもやもやとした、得体の知れぬモノだが。
いや逆に、それが調べたいという本当の理由になっているのかもしれない。
('、`*川「ふむ……まぁでぃちゃんがやりたいならいいよ。
ただ一つ、あんまり派手にやらないでね?」
(#゚;;-゚) 「はい。ありがとうございます」
この礼が意味する事は一つ。
関わるなと散々念を押されてきたジョルジュの件。
それが学校に知れ怒られても、部長が責任を取ってくれ、そういう事だ。
それは部長よりも、顧問の先生がする仕事に近い。
が、一つの唸りで了承するくらいだから、ペニサスだって知りたいのだろう。
(#゚;;-゚) 「では、早速行ってきます」
('、`*川「ほーい、ガンガレー」
でぃは踵を返し、スタスタと部室を出て行く。
付き合いの短い者には分からないかもしれないが、
確かにペニサスには、その歩みには熱が籠もっているのを感じた。
- 12: 以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします。 :2007/11/14(水) 19:25:45.83 ID:1iCabTZbO
それから、たった三日。
たった三日で、でぃはこの事件について調べ上げてきた。
ここに、でぃが調べてきた事を書かせて頂く。
ジョルジュが行方不明になったのは、17日土曜の夕方から。
それはつまり、文化祭の後という事。
最後に目撃されたのは学校で、という事だ。
乱闘の後、ジョルジュ各位は教師に連れられ教務室に行った。
そこで全員時間をズラし自宅に帰らされたのだが、
ジョルジュだけはその場で、今回の事の反省文を書かされた。
そのため最後に帰宅したのはジョルジュ。
もうその頃には文化祭も片付けに入っていて、数人だがその目撃証言も取れている。
- 16: 以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします。 :2007/11/14(水) 19:28:29.48 ID:1iCabTZbO
肝心なのは次。
誰もジョルジュが校門を出たのを見ていないのだ。
でぃ個人が調べた事なので完全ではないのは事実だが、
校門の飾り付け、それの回収を行った生徒会に聞いた所、
ジョルジュが帰宅するのは見なかったという。
時間的に見ても、学校内にて消えた、と考えるのは
まぁ妥当な線であり、でぃ自身もそう考えている。
ならば、と次の推理。
ジョルジュはそのまま帰らず、暫らく校内に居たのではないか。
ジョルジュが何をしたいか、敢えて記述は取らないが、
その為に来たという意味合いも、彼の口から出た言葉より推測は出来る。
ジョルジュは校内に居て、学生が帰った後に帰宅したのかもしれない。
この辺りは、所詮推測に終わる。
なので次。ジョルジュが未だ家に帰っていないという事について。
ジョルジュの自宅に友達を名乗り行った所、母親とは少し話せた。
それによると、母親は働いていない為、知らぬ内に
ジョルジュが帰宅したという事はないらしい。
文化祭時は上手く言い包められ、学校に行くとは思っていなかったようだ。
- 18: 以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします。 :2007/11/14(水) 19:30:54.54 ID:1iCabTZbO
それともう一つ。
ジョルジュは家ではおとなしく、真面目だという事。
彼と親しかった友人の話では、ジョルジュの父親はかなりの厳格者で、
それについて時偶愚痴を洩らしていたらしい。
そうなってくると、矢張り家に帰るのは恐いのか。
素性がバレた以上、携帯の電源を切り、
どこかに身を潜ませた、という考えが一番強力だろう。
だがその考えを覆す証言を、確かにでぃは手に入れた。
その証言とは……
(#゚;;-゚) 「マザコンらしいです」
('、`*川「……は?」
- 20: 以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします。 :2007/11/14(水) 19:33:23.06 ID:1iCabTZbO
(#゚;;-゚) 「だからマザコンですよ。マザーコンプレックス。
しかも重度の。ヒクくらいらしいです」
厳しい父親とは違い、彼の母親は優しかった。
どうやら夫婦仲も良いようで、家は、母親は彼の支えのようだ。
そんなモノを放っぽりだす。2週間も。
('、`*川「……ありえない、って?」
(#゚;;-゚) 「私はそう思います」
ならば。
ならばジョルジュは、一体どうなったのか。
(#゚;;-゚) 「学校で消された。私はそう考えます」
('、`*川「……まさか。誰がそんな」
(#゚;;-゚) 「嘘吐きが」
('、`*川「……ありえないって」
- 22: 以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします。 :2007/11/14(水) 19:35:35.51 ID:1iCabTZbO
(#゚;;-゚) 「この事件とパン失踪事件。
状況はそれなりに似ていると思いませんか?」
学生達の目の前で、パンを消す事。
学校の各所に散らばっている生徒達の目に触れず、ジョルジュを消す事。
どこかで通じる、というよりもこれは、
“嘘吐きならば可能”と、そう考える方が正しいか。
('、`*川「……まぁ言い出しっぺの私が言うのも変だけどさ、
そりゃ流石に強引、突飛すぎるって」
(#゚;;-゚) 「不思議事件の根本は嘘吐き。
部長ならそう考えると思ったんですが」
('、`*川「……」
ペニサスは3年間、この部活を続けてきた。
こんな不思議は起こり得ないと思っていたし、
事実今までの歴史を調べても、こんな類の事件は無かった。
そんな彼女にやって来た、今年のもう終わりという時期に起こった2つの事件。
矢張り同一犯と考える方が――いくつもの前提があれど――素直ではあるだろう。
- 25: 以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします。 :2007/11/14(水) 19:38:06.84 ID:1iCabTZbO
でもペニサスは、信じたくなかった。
“嘘吐き”は、そんな事をする人間じゃないと。
何処かで彼女は、嘘吐きを信じていたのかもしれない。
いや、信じる、とはまた違う、もっと儚いような……。
……どうやら、言葉にするのは難しそうだ。
('、`*川「……」
(#゚;;-゚) 「……部長?」
('、`*川「……どっちにしろ、私達に手は出せない。
でもアクションを起こしたのなら……網に掛かってるかも」
このペニサスの読みは、事実正しい。
今は知らないが、確かに“嘘吐き”は、彼女が張った網に掛かっていたのだ。
- 28: 以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします。 :2007/11/14(水) 19:40:43.18 ID:1iCabTZbO
それは、今から1週間前に遡る。
彼女は、ある少女を呼び出した。
ζ(゚ー゚*ζ「お邪魔しまーす」
从 ゚∀从「……おう、来たな」
ペニサスの網、秘密兵器ハイン。
彼女が呼び出したのは網の主ではなく、なぜかデレだった。
ζ(゚ー゚*ζ「どうしたの? 突然」
从 ゚∀从「まぁ、座れよ」
ζ(゚ー゚*ζ「あ、うん……」
- 30: 以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします。 :2007/11/14(水) 19:44:24.39 ID:1iCabTZbO
言われ、デレはハインの対面の椅子へと座った。
それは理科室の、一番端の窓側の机。
ハインは窓に背を向け、その後ろからオレンジの日が射し込んでいる。
デレからはハインの顔に影が被り見えないのだが、その声のトーンから、
飛び切りの笑顔を浮かべていない事は分かる。
ζ(゚ー゚*ζ「……どうしたの? ハインちゃん」
デレの問いに対してハインは、自分の間を取り口を開いた。
从 ゚∀从「……信じたくないけど、これは多分真実だ。
それをお前にだけ話す」
ζ(゚ー゚*ζ「……もしかして、嘘吐きの事?」
从 ゚∀从「なんだよ……勘いいんじゃねぇか。
ペニの野郎から超抜け女って聞いてたんだがな」
ζ(゚ー゚;ζ「ちょ、超抜け……?」
- 32: 以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします。 :2007/11/14(水) 19:46:35.65 ID:1iCabTZbO
妙に静かな理科室は、ハインの小さな笑いすらハッキリと聞き取れた。
そしてそれが終わり、ハインの呼吸すらも、ハッキリと。
从 ゚∀从「……とりあえず簡単に言う」
ζ(゚ー゚*ζ「……」
ゴクリとデレは唾を飲む。
重々しい雰囲気は好きじゃないデレだから、今この場も得意じゃあない。
妙に緊張して、長く居ればお腹も痛くなってくる。
でも幸い、お腹は痛くならなそうだ。
驚きすぎて、それどころじゃないから。
从 ゚∀从「嘘吐きは……居る」
科学部の部長が認めた、非科学的な存在。
その影は探すまでもなく、新聞部の前に現われたのだ。
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