('、`*川新聞部が嘘吐きを探すようです

4: 以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします。 :2007/11/25(日) 21:26:08.32 ID:mF7vSsQsO

「どうしたの? 相談って、なにかあった?」

 少しの間ができる。

「私……人を、殺しました」

 物音が一つもなくなる。

「……え?」

 困惑して思わず呟かれたらしい。

「……私、どうしたらいいんでしょうか」

 声がこもる。多分俯いてる。

「え、いや……人って……だ、誰を?」

 長い間ができる。

「……もういいです。ありがとうございました」

 呼び止める声が、たった一つで無くなる。
 その後足音があり、扉を開き、閉める音。退室したらしい。

 それから音は、無くなった。



6: 以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします。 :2007/11/25(日) 21:29:20.66 ID:mF7vSsQsO









 14話「――――――事件(前編)」








7: 以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします。 :2007/11/25(日) 21:32:04.14 ID:mF7vSsQsO


从 ー∀从「そっから少しして……俺はなんかのサイト見てた気がする。
     カチカチッて音も近くでするし、多分そうだわ」

それから、チャイム。
昼休みになったから、保健室を出て教室に行った。

ハインは目を瞑りながら、静かにそう言う。

('、`*川「……私はハインを信頼してる。
     アンタも、アンタのその記憶力も」

从 ゚∀从「……だったら?」

スッと目を開いたハインの視界に、厳しい顔をしたペニサスが写る。
どこか抜けてる普段と全く違うそれは、真剣なんだという事をハインに気付かせた。

('、`*川「それは、嘘吐きだね」

キッパリとペニサスが断言する。
それと同時に、嘘吐きの力に少しの差異があることも。

まぁ元々、アレだけの情報からの推理だ。むしろ当たってる方が凄い。



9: 以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします。 :2007/11/25(日) 21:35:22.57 ID:mF7vSsQsO

('、`*川「消された記憶でも、何かの記録があれば戻ると思ってた。
     でもそれなら、ハインがその時だけの記憶を覚えてないのはおかしい」

从 ゚∀从「俺のはまた違うんじゃねぇのか?
     たとえばこう……写真とかじゃないと駄目だとか」

うーん……とペニサスが押し黙る。
頭の中で、少し整理を始めたらしい。

逆に黙っていたデレが、焦りを見せながら口を開いた。

ζ(゚ー゚;ζ「……本当に、その時の事は覚えてないの?」

从 ゚∀从「人殺したって話だぞ? んな簡単に忘れるかよ」

少なくとも、聴いていたなら。

ζ(゚ー゚;ζ「そう……だよね」

('、`*川「……そういえば違和感って言ってたけど、どんな?」

ハインがこの時の音を調べようと思ったのは、違和感があったからだ、と言った。
それは嘘吐きの事を知る上で、大事な起点になる可能性はある。



11: 以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします。 :2007/11/25(日) 21:38:39.47 ID:mF7vSsQsO

从 ゚∀从「んーっとなぁ……」

なんつーんだろ……とハインの言葉が濁る。
どうやら違和感を言葉にしろ、というのは中々の難題らしい。

暫らく俯き唸っていたハインだったが、パッと何かを思い出し、顔を上げた。

从 ゚∀从「そうだそうだ、死んだんだよネズミが!」

('、`*川「……は?」

ζ(゚ー゚;ζ「ね……ねづみ?」

突然電波っぽい事を言い出したハインに、思わずデレはその背を引いた。
しかしハインは気にせずに、テンション高めに続ける。
どうやらパズルがハマった時のような快感があるらしい。

从 ゚∀从「実験用によ、飼ってたんだよマウスを。
     んで放課後にココ来たら、それが死んでたのさ」

ζ(゚ー゚;ζ「が、学校でそんな事してるんだ……」

('、`*川「科学で、しかも学校で生物実験とか……。
     でもま、大体分かったわ。
     そのネズミの死、ってのが違和感に繋がったのね」

从 ゚∀从「おう。んで調べたら……って感じだな」



14: 以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします。 :2007/11/25(日) 21:44:32.01 ID:mF7vSsQsO

どうやら“死”というキーワードが脳の奥に潜んでいて、デジャヴのようにそれが思い出されたようだ。
それだけ保健室での話が印象深かった、という事でもあるのだが。

ただ思い出されたそれは、“何かを忘れてる気がする”という感覚だけで、
ハインのような人間でなければすぐに忘れてしまうような、些細な違和感だった。

从 ゚∀从「ま、大方は多分こんなトコだな」

('、`*川「ふむむ……」

ペニサスが手帳を開き、今までの事を記し始める。
デレは何気なく彼女の手元を見て、その速記の早さに驚いた。

ζ(゚ー゚;ζ「は、速いですね……」

('、`*川「やれば出来る子だから」

とても他人が読める字体じゃなくなってるが、速記とはそういうもの。
ただ後で皆が読めるように書き直す作業が必要で、それは面倒なのだが。

デレは速記が苦手で、それを愚痴のように洩らした。
と、部長からは人には向き不向きがあるのよ、と返され、
白衣からはヘッと鼻で笑われる。



15: 以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします。 :2007/11/25(日) 21:47:57.35 ID:mF7vSsQsO

ハインの方は置いとくとして、ペニサスに言われた向き不向き〜の、
「向き」が全く見えてこないのだが、今はそれを飲み込んでおいた。

('、`*川「……さて。んじゃ、そろそろ核心ね」

ζ(゚ー゚*ζ「核心? まだ何かありますか?」

('、`*川「あるわよ……。
     嘘吐きは誰なの?って所」

ζ(゚ー゚*ζ「あ、忘れてました」

从 ゚∀从「……やっぱ駄目だろコイツ」

('、`*川「……」

ζ( ー *ζ「え……えへへ」

全然照れ笑いする所ではないのだが、言っても無駄だろう。
あほな子を無視してペニサスは、核心を聞くべくハインに問う。

('、`*川「で? どうせ分かってるんでしょ? 嘘吐きを」

从 ゚∀从「……まぁな。
     でもそれを、お前に言うつもりは最初っから無かった」



18: 以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします。 :2007/11/25(日) 21:51:32.47 ID:mF7vSsQsO

('、`*川「一応聞いてやる。なんで?」

从 ゚∀从「一応聞いてやる。お前は取材しに行くだろ?」

ζ(゚ー゚*ζ「??」

('、`*川「一応言ってやる。行くよ、そりゃ」

从 ゚∀从「一応言ってやる。行くな」

('、`*川「……」

从 ゚∀从「……」

ζ(゚ー゚;ζ「あ、あのぉ〜……」

訳の分からない会話に、デレが解説を頼もうと入り込む。

从 ゚∀从「……お前はどうなんだよ。
     お前が俺だったら、ペニに言うか?」

ζ(゚ー゚*ζ「……え? それってどういう……?」

从#゚∀从「……お前さ、どこまでトロいんだよ。
      ちったぁてめぇで考えろやッ」



19: 以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします。 :2007/11/25(日) 21:53:41.76 ID:mF7vSsQsO

まだ分からないデレに、元々短気なハインが静かにキレた。
むしろよく今まで我慢できたな、と思わないでもない。

('、`*川「そんな頭ごなしに怒らなくてもいいじゃない。
    デレちゃんだって、好きで分からないんじゃないんだから」

从#゚∀从「……チッ」

直ぐに庇うペニサスを見て、拗ねたように舌打ちするハイン。
それはデレに向けられたモノではないのだが、思わず彼女は頭を垂れてしまった。

ζ( ー ;ζ「……ごめん」

('、`*川「別にデレちゃんは悪くないわよ。
     悪いのはあの馬鹿なんだから」

从#゚∀从「……」

この発言もかなり地雷っぽいのだが、ギリギリ堪えれたらしい。
どうにもペニサスは過保護な気がすると、ハインはデレを睨みながら思う。

从#゚∀从「話聞いてなかったのかよッ? 嘘吐きは人殺してんだぞ?
     そんな奴に会いに行って話を聞くなんて馬鹿な知り合いを、
     お前は放っておくのか?って聞いてんだよッ!」



21: 以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします。 :2007/11/25(日) 21:56:27.33 ID:mF7vSsQsO

長々と説明を強いられた所為か、語尾が荒ぶった。
どうにもハインはペニサスと同じで、面倒くさがりならしい。

ζ(゚ー゚;ζ「え、えと……そういう事なら……」

从#゚∀从「どっちだよ」

('、`*川「……」

早く言えよと睨むハイン、ボケッと虚空を見つめるペニサス。
そんな2人を一度ずつ見て、意を決めたようにデレが口を開いた。

ζ(゚ー゚*ζ「……部長の好きにさせてあげたいな」

从#゚∀从「ハァ!?」

('、`*川「……それはちょっと意外だ」

二者二様のリアクションを受けながら、デレは続ける。

ζ(゚ー゚*ζ「確かに危ないし、私ならそんな事出来ないけど……
      部長なら大丈夫かな、って」



24: 以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします。 :2007/11/25(日) 22:00:08.49 ID:mF7vSsQsO

なんだそりゃと、ハインは言えなかった。
だってそれは、自分が一番言いたかった言葉だから。

ζ(゚ー゚*ζ「だって……部長だし」

从 ∀从「……んだよソレ」

('、`*川「これが人徳と言うやつなのだよ、ハイン君」

腕を組んでペニサスが言う。

果たして、彼女が慕われているのか、部長というポジションが慕われているのかは分からないが、
どちらにしろデレはペニサスの味方となり、この場は2:1に分けられた。

ただ2:1に分けるのは、最初からハインが望む形ではあった。
ただ当然、自分の方を2にする予定ではあったのだが。

彼女は、最初にデレへとこの話を伝えた。
その理由は簡単で、味方が欲しかったから。



25: 以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします。 :2007/11/25(日) 22:03:13.95 ID:mF7vSsQsO

ただ思わぬデレのネガティヴっぷりで面倒になり、その策は崩れ、
次に案じた“本音を言わせてペニサスに失望計画”も、
2人の仲が向上するという、実に最悪な結果が帰ってきた。

そして最終的な結果がこうだ。
ハインはこの現実に疲れたように、深く俯く。
だけどハインが俯く理由がもう一つあった。

それは、デレ。

彼女が言った事、確かにハインも理解できるのだ。
常日頃から2、3手先を読んでるようなペニサスだ。
なんとかなる気もする。

でもペニサスは、失いたくない。
自分にとって大事な存在なのだ。簡単に、アイツならやれる!なんて言えなかった。

存在の大事さは、それはデレだって同じなんだ。
そしてそれが分かりすぎて分かりすぎて、嫌なのだ。

从 ∀从「お前……ムカつくな」

結局ペニサスを信じきれなかった自分。
それが浮き彫りになった“今”が、投げ出して逃げたいくらいに、嫌だった。



26: 以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします。 :2007/11/25(日) 22:06:16.68 ID:mF7vSsQsO
ζ(゚ー゚*ζ「……ハインちゃん?」

('、`*川「……」

从 ∀从「……2年の、ミセリって奴だ。
     勝手に会いに行けよ……馬鹿野郎」

小さく、言っていた。

投げ出して、しまっていた。

('、`*川「ありがと。んじゃ、行くわよデレちゃん」

ζ(゚ー゚*ζ「え、でも……」

('、`*川「いいのよ。ほら、行った行った」

聞くや否や、デレを促し理科室を出るよう言う。
ペニサスもデレの後ろをスタスタと、出入口の扉を目指した。

('、`*川「……ハイン」

デレが開けた扉に手をやりながら、ペニサスは背を向けたまま言う。
それに対する返事はなく、ただ前方から冷たい空気がやってくるだけ。

('、`*川「likeとloveは……違うからね」

返事を待たないままペニサスは扉を閉める。
今度こそ本当に、理科室は静かになった。



28: 以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします。 :2007/11/25(日) 22:09:11.82 ID:mF7vSsQsO









('、`*川「さーてと」

冷たく寒い廊下にて、嘘吐きの名を手帳に記す。
『ミセリ』と。

('、`*川「名前わかりゃあこっちのもんね」

ζ(゚ー゚*ζ「2年生か……私とはクラス違いますけど、
      ツンちゃんは友達多いし、少し聞いてみますね」

('、`*川「待って」

珍しく行動早くデレが携帯を取り出したが、
耳に当て掛けたそれは、ペニサスにより腕ごと下げられた。



30: 以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします。 :2007/11/25(日) 22:10:55.67 ID:mF7vSsQsO

('、`*川「これは私がやるから」

ζ(゚ー゚;ζ「え……でも一人じゃ……。
       それに、情報収集くらいなら別に……」

('、`*川「気持ちだけでいいわよ。
     なるべく皆を巻き込みたくなかったし」

デレちゃんはまぁ……しょうがないね、と。
中々笑い事じゃないのだが、ペニサスはクスリと言った。

('、`*川「私なら大丈夫なんでしょ?
     そう思うなら私に任せて、部長椅子でも暖めといて」

ζ(゚ー゚*ζ「……」

言ったは言ったが、やはり不安ではあるのだろう。
すぐの返事は、できない。

('、`*川「でぃちゃんは部で一番空気読めるから、
     2つ返事で納得してくれるかなー。
     後はそうだな……」

ζ(゚ー゚*ζ「……妹者ちゃん?」



32: 以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします。 :2007/11/25(日) 22:17:59.34 ID:mF7vSsQsO

('、`*川「……まぁいいや」

Σζ(゚ー゚;ζ

優先順位が低い、というかその概念すら無いらしい。

('、`*川「ま、そんな感じでさ。
     それにこっちからの呼び出しなら、いくらでも手を打てるからね」

ニコッと笑いかけ、デレに言う。
ペニサスは、誰かがいて邪魔をされるのが厄介と思ってるのかもしれない。

それならば、全部やらせてあげようと思う。
一人で、ペニサスのやりたいように。

ζ(゚ー゚*ζ「わかりました。
      私は部長を信じて、待ってます」

ペニサスが頷く。
ハインが嫉妬するほどに、2人は確かな信頼関係が出来ていた。

ζ(゚ー゚*ζ「あ、ハインちゃんになんか劇薬とか作って貰って……」

('、`*川「いらんいらん。それに……」

案外過激思考なデレだったが、あっさりと切り捨てられた。
なぜならペニサスには、その18年間で培ったモノがあるから。

('、`*川「武器ならもう、持ってるからね」



37: 以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします。 :2007/11/25(日) 22:28:36.44 ID:mF7vSsQsO
【次回予告】

愛していた兄達の突然の死……

だが妹者は涙を堪え、仇を取ろうと必死に捜査を続ける!


         表情の付けにくい顔

  友達いるのか?コイツ
                           回を重ねるに連れ幼くなる精神

        減る出番
                                  気付けば仲間外れ


様々な悩みを抱えながら、ついに妹者は決定的な証拠を見つける!

そして―――――

l从#;д;ノ!リ「犯人は……お前なのじゃあッ!!」

身体は子供! 頭脳はもっと子供!
名探偵妹者 次回第15話!!
                        「流石兄弟爆死事件(後編)」

お楽しみに!!

(※この予告は知らせなく変更される場合があります)



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