('、`*川新聞部が嘘吐きを探すようです
- 35: 以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします。 :2007/11/14(水) 19:52:33.44 ID:1iCabTZbO
( ´ω`)「……」
彼、内藤ホライゾンは落ち込んでいた。
理由は簡単。好きなあの娘が振り向かないからだ。
彼女とは幼なじみで家も近く、物心付いた時には好きだった。
つまりは、初恋の相手だ。
中学に入って、猿のように毎日ナニをナニしてた時も当然ながらあった。
そりゃあ彼も男だ、無いよりある方に曳かれる時期もある。
が、落ち着きだした昨今では、DNAに刷り込まれた性癖からか無い方が恋しくなり、
潜在的なM性を持っている彼はツリ目の方に恋い焦がれた。
ぶっちゃけ選べる立場ではない。
帰宅部だし、顔もアザラシみたいだし、頭も良くはない。
でも彼の人間性は、確かに付き合っていて気持ちのいい、
人に楽しいと思わせるような、そんな性格だった。
でも今は違う。
落ち込んでいる人間と居て、楽しいと思う奴は居ないだろう。
もしかしたら今は改変期なのかもしれない。
いつまでも彼女に縋っていてはいけないのかもしれない。
それでも彼は、彼女が好きだった。
- 36: 以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします。 :2007/11/14(水) 19:54:46.39 ID:1iCabTZbO
号外「文化祭乱闘事件(頑張れ妹者!編)」
- 37: 以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします。 :2007/11/14(水) 19:56:52.69 ID:1iCabTZbO
2-Bのスーパー縁日が、スーパーたる所以。
ある作戦の存在、それが全てだ。
浴衣を着た女生徒、それも可愛い女生徒を教室前に配置して客を呼び込み、
ホイホイ釣られたマヌケな野郎共を、フンドシ一丁の漢店員が待ち受ける。
名付けて『煌めけ俺達の褌2007』
満場一致で一直線に可決されたこの作戦は、ものの見事に大成功。
店員が美男子なら女性客ごと持ってイケるので、来客は0だ。
('∀`)「いらっしゃ――――」
そして今もまた、客が一人減っていった。
笑顔がキモい、色が白すぎ、腕が細い、笑顔がキモい。
理由は幾つもあれど、結果は一つ。
彼を見た瞬間に、客は踵を返すのだ。
('A`)「……なんだよなんだよ。
男は顔じゃねぇんだよ……畜生」
- 38: 以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします。 :2007/11/14(水) 20:00:06.53 ID:1iCabTZbO
ぶつぶつとそんな事を呟きながら、彼はパイプ椅子に腰を落とした。
ヒヤリと太股に当たる冷たい感触が、なんだか癖になりそうだ。
('A`)「……お前達はいいな……周りに仲間が居てさ」
水風船が大量に溢れる水槽を見下ろしながら、彼はまた呟く。
なぜ休日にこんな格好で、こんな事をしなければならないのか。
考えれば考えるほど情けなくなり、彼はガックリと肩を落とし、活動を止めた。
( ´ω`)「はぁ……」
(´・ω・`)「何回幸せを逃がす気なんだい?」
( ´ω`)「……はぁ」
(´・ω・`)「駄目だこりゃ」
彼の古くからの友人であるショボンは、あまりに情けないブーンの姿を見てそう呟いた。
ちなみにブーンとは彼、内藤ホライゾンのあだ名だ。
昔走る時に両手を広げながら、ブーン!と言っていた事から付いた愛称。
彼の友人、いや彼を知ってる人間ならば皆そう呼ぶ二つ名だ。
- 40: 以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします。 :2007/11/14(水) 20:04:59.82 ID:1iCabTZbO
(´・ω・`)「そう落ち込まないでよ、ブーンもドクオも。
さっきから負のオーラでパンクしそうなんだから、この教室」
('A`)「……」
( ´ω`)「……」
(´・ω・`)「……そりゃ客来ねぇよ」
客側から見て、左に水風船釣り担当ドクオ。
真ん中はブーン、金魚掬い担当で、右はショボンの綿菓子売場。
売ってる物こそ違えど格好は同じ。裸にフンドシだ。
が、彼らの股間をガードする白い褌は、まったく煌めく気配すら見せない。
実際煌めいて貰っても気味悪いのだが、現状を打開する力にはなってくれるやもしれない。
少なくとも今のままじゃ、やがて来るこのクラスの委員長にぶん殴られるだろう。
(´・ω・`)「と言っても誰も来ない……。
ていうか覗いて帰ってく。そりゃそうか」
このまま何もせず、委員長に殴られるだけなのか。
このまま何もせず、童貞3(スリー)の烙印を押されるだけなのか。
このまま何もせず、クラスの疫病神と言われるだけなのか。
- 42: 以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします。 :2007/11/14(水) 20:07:42.13 ID:1iCabTZbO
(´・ω・`)「……」
( ´ω`)「……」
('A`)「……」
(´・ω・`)「……まぁ、もう……それでもいいや」
落ち込むブーン、現実に疲れ命を止めたドクオ。
もう仕事なんざする気もない彼らを見て、ショボンは今日という青春を諦めた。
と、ここにある一人の少女がやって来る。
天使か、はたまた悪魔かは今は知れないが、
少なくとも一人には天使どころか神だったらしい。
('A`)「……ぁ」
(´・ω・`)「ん?」
l从・∀・ノ!リ人「おぉッ! 縁日なのじゃー!」
('∀`*)「め、女神キタ━━━━(*'A`*)━━━━ッ!!」
ピンクな浴衣を着る妹者が、喜びの感情を振り撒きながら教室に入ってくる。
ちなみにその浴衣は、一番上の兄が買ってきた物だ。
- 44: 以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします。 :2007/11/14(水) 20:09:31.17 ID:1iCabTZbO
そんな妹者がこんな所に居らっしゃる理由は、まぁ簡単だ。
トイレに行ったでぃを待っていた妹者だが、彼女の鼻に何か薫る物があった。
気付けば足はふらふらと、それを目指し動き出している。
それを止める術は彼女には持ち合わせてないし、
歩が進めば進む程に止める理由も希薄になっていく。
そして気付くと、妹者は2-C教室前に来ていた。
そこでの出し物は、うなぎの蒲焼き。意外性だけで決めた感丸出しだ。
が、蒲焼きは蒲焼き。
妹者は速攻でそれを買い、速攻でそれを平らげた。
流石に満腹になったのか、でぃの事などすっかり忘れ散歩していると
このスーパー縁日を見付け、ふらりと足を運んだ、という訳だ。
l从・∀・ノ!リ人「綿菓子おくれーなのじゃー!」
(´・ω・`)「あ、はいはい……」
まだ食うらしい。甘いものは別腹、というやつなのか。
とにかく妹者は、入って早々ワタアメを頼んだ。
- 45: 以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします。 :2007/11/14(水) 20:11:47.19 ID:1iCabTZbO
ここの綿菓子は市販まんまなので、透明な袋に入ったのを個別売りしている。
前に妹者が持ってたのとは違うのだが、ワタアメはワタアメの筈だ。
l从・∀・ノ!リ人「いくらなのじゃ?」
(´・ω・`)「50円だよ」
l从・∀・ノ!リ人「釣りはいらねぇ……」
(´・ω・`)「ちょうどお預かり致します」
穴の開いた鈍い銀の硬貨を渡し、ワタアメを受け取る妹者。
直ぐ様封を開けると小さな指でそれを摘み出し、一気に口内へと詰め込んだ。
頬をパンパンに膨らませながら妹者は目を瞑り、
徐々に溶け染みていくその甘さを、突っ立ったまま楽しみ出した。
そのアホな姿をショボンは奇異な目で見つめていたが、
ドクオはどこか惚けながらも、薄ら笑いと共にしっかり脳に焼き付けている。
(´・ω・`)「……君、小学生かい?」
('A`*)(ナイス質問だぜショボン!)
- 46: 以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします。 :2007/11/14(水) 20:14:10.08 ID:1iCabTZbO
l从・ー・ノ!リ人「もーもーめーまもま!」
(´・ω・`)「……は?」
(;'A`)「こ……高校生だとッ!?」
(´・ω・`)「なぜわかる」
ドクオの超人的な理解力の高さは置いておく。
それよりもショボンには、ワタアメを食べ終わった妹者が
それを証明するように自分に向け口をあーんと開け、
喉ちんこを見せながら嬉しそうにしている方が謎だった。
(´・ω・`)「……馬鹿だ」
(;'A`)「な、なんと羨ましいポジション……ッ!!
おいショボンッ! 代われよッ!!」
代われ代われとせがむフンドシ野郎がキモウザかったので、ショボンはそいつを一発殴っといた。
l从・∀・ノ!リ人「おぉ! 金魚掬いなのじゃ!」
そんな2人を余所に目ざとい妹者は、すぐに興味を引かれる物を見つけた。
というか興味が無い物などないのじゃないか、そんな気がする。
- 47: 以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします。 :2007/11/14(水) 20:17:20.91 ID:1iCabTZbO
l从・∀・ノ!リ人「やらせてーなのじゃ!」
( ´ω`)「……」
l从・∀・ノ!リ人「……死んでるのじゃ」
(´・ω・`)「生きてるよ……多分」
妹者は俯くブーンの顔を覗き込み、おーい!と呼ぶが、彼に反応はない。
l从・∀・ノ!リ人「……死んでるのじゃ」
(´・ω・`)「……かもしれない気がしてきた」
('A`*)「しょしょしょ、しょんな死人の金魚しゅくいよりッ!
俺の水風船をををををを釣ら釣ら釣ら釣らないきゃッ!!??」
l从・∀・`ノ!リ人「むー、妹者は金魚掬いがやりたいのじゃ……」
妹者が少し悩ましい顔をした瞬間、ブーンの横っ腹にドクオの蹴りがめり込まれた。
(♯'A`)「おい糞豚ッ!! なにちんたらやってんだ糞豚ッ!
女王さまがやりたいっつってんだよ糞豚ッ! 起きろ糞豚ッ!」
(´・ω・`)「決めた。アイツの友達やめる」
- 50: 以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします。 :2007/11/14(水) 20:19:13.33 ID:1iCabTZbO
落ち込む人間にも容赦ないウンコ……もといドクオは、
ブーンがやっとこさ現状に気付くまで、彼を蹴り続けていた。
( ´ω`)「……」
ブーンは顔を伏せたまま、足元にあるポイを一つ取り、妹者に渡す。
偶然にも、紙を囲むプラスチックの色はピンク。
妹者ちゃんにはピンクが似合うぜ!とドクオは思っtどうでもいい。
(´・ω・`)「1回30円になります」
(♯'A`)「バッキャロウこの眉毛ッ!!
なんで彼女が金を払わなきゃならんのじゃッ!?」
(´・ω・`)「商売だからだ」
(♯'A`)「お前には夢ってもんが無いんdアッ―――!!!1!」
変な叫び声を上げながら、ドクオがショボンに飛び掛かる。
勢いのまま押し倒されたショボンだが、当然黙っちゃいない。
マウントを取られまいと横に転がると、2人は裸で抱き合いながら、もみくちゃになった。
- 51: 以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします。 :2007/11/14(水) 20:21:30.90 ID:1iCabTZbO
l从・∀・ノ!リ人「わーい、金魚♪ 金魚♪」
( ´ω`)「……」
そんな男祭りを余所に、妹者はしゃがみ込んで金魚を狙う。
……が、
l从・∀・ノ!リ人「……活きが悪すぎなのじゃ」
金魚はまるでブーンのように、ほとんどが死にかけだった。
そりゃ当然。酸素を入れてないんだから。
l从・∀・ノ!リ人「むぅー! これじゃ面白くないのじゃー!」
ただ掬うだけが金魚掬いではない。
脳の小さな魚 対 その数千倍は大きい脳を持つ人間
その野性と理性との戦い。ポイの弱さ。作戦。そして獲得。死。
そこまでを楽しんでこそ、真の金魚掬いなのだから。
l从・∀・ノ!リ人「うぉーい、金魚が死にかけでつまらんのじゃー」
( ´ω`)「……」
- 52: 以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします。 :2007/11/14(水) 20:23:45.61 ID:1iCabTZbO
一応ブーンに呼び掛けてみる。
すると意外な事に、彼は反応を示した。
おもむろに右腕を金魚の水槽に突っ込むと、乱暴にその中を掻き回し始めたのだ!
l从・∀・ノ!リ人「おぉ! めっちゃ動いてるのじゃ!」
バシャバシャと音を立てながら5、6回腕を泳がせると、ブーンはそれを引っ込めた。
でも水槽の中では変わらずに、金魚達が元気に動き回っている。
一定方向にただぐるぐる回っているようにも見えなくはないが恐らく気のせいだろう。
l从・∀・ノ!リ人「よっしゃ! 取るのじゃッ!!」
妹者は果敢に、ポイを一気に水へと差し込む。
そのまま金魚の下に移動させ、グアッ!と掬い上げる!
結果、水から出てきたのは真ん中に大きな穴を空けたピンクのポイだけ。
妹者はそのポイをポイと捨てると、次ッ!とブーンに手を差し出す。
無駄に従順に、ブーンは左手で新しいポイを掴み妹者に渡した。
- 53: 以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします。 :2007/11/14(水) 20:25:48.80 ID:1iCabTZbO
l从♯・∀・ノ!リ「ぜってー掬ってやるのじゃ!」
そう言ってまた勢いよくポイを突っ込む。
そして破き、ポイと捨て、次を貰う。
また破き、捨て、貰い、破き、捨て……。
そんなループを暫らく続けるも、掬い上げた金魚を入れる器を
渡されていない事に、結局妹者が気付く事はなかった。
l从♯ ∀ ノ!リ「はァ……はァ……はァ……」
( ´ω`)「……」
(♯)ω(♯)「…………」
(♯)A(♯)「…………」
ポイの山を後ろに、妹者はわなわなと拳を震わせていた。
- 54: 以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします。 :2007/11/14(水) 20:27:29.74 ID:1iCabTZbO
隣の綿菓子屋の後方では、さっきまで殴り合っていた
フンドシ達が気絶しているのだが、そんな事はどうでもいい。
l从♯・∀・ノ!リ「次なのじゃッ!!」
( ´ω`)「…………まだやるのかお?」
l从♯・∀・ノ!リ「当然なのじゃ! 掬うまで諦めないのじゃ!」
するとブーンは、掬った金魚を入れる小さなビニール袋を一つ取った。
首を傾げる妹者を無視し、両手で袋の口を広げ水ごと金魚を2、3匹吸い込ませる。
l从・∀・ノ!リ人「……何してるのじゃ?」
( ´ω`)「……」
無言のままブーンは袋の口を紐で閉じ、ボケッとする妹者に差し出す。
( ´ω`)「……はい、あげるお。
だからもう帰っt」
ブーンのその腑抜けたツラに、妹者の鉄拳が炸裂した。
l从♯・∀・ノ!リ「馬鹿にするななのじゃッ!!」
- 56: 以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします。 :2007/11/14(水) 20:29:48.79 ID:1iCabTZbO
後方の壁にぶち当たるまで吹っ飛んだブーンに、妹者が吠える。
ブーンはガックリと壁に背を付け俯いたまま、だがピクリともしない。
l从♯・∀・ノ!リ「妹者は金魚掬いをやりに来てるのじゃッ!!
そんな物欲しかったら、最初からホームセンターで金魚を買うのじゃッ!!」
(♯)ω`)「……」
l从♯・∀・ノ!リ「大体そんな死にかけの金魚いらないのじゃッ!!
持って帰っても処分に困るだけなのじゃッ!!」
(♯)ω`)「……」
l从♯・∀・ノ!リ「大体フンドシとかありえないのじゃッ!!
もう妹者はプンスカなのじゃァッ!!!1!11」
そこまで言うと妹者はズンズン歩き、綿菓子を3個ふん掴み教室を後にした。
別にいい事を言うわけでもなく、ワタアメのお代も払ってない。
ただの強盗だ。
- 57: 以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします。 :2007/11/14(水) 20:31:54.79 ID:1iCabTZbO
(♯)ω`)「……」
そんな強盗妹者の鉄拳と説教は、ブーンの心に何故か響いた。
“何かをやる”
それは、人から与えられては駄目なのだ。
自分の力でふん掴め! きっと妹者はそう言いたかったのだ。
(♯)ω^)「……目が覚めたお」
マジかよ、とツッコミを入れる人間は誰もいない。
( うω^)「……僕は、何をやってたんだお。
勝手にフラれて、勝手に落ち込んで……」
勝手にフラれるのは普通だと思う、とツッコミを入れる人間もいない。
( ^ω^)「僕は……ツンが好きなんだお!
たとえツンに嫌われても、
いつか僕は彼女の心をふん掴んで見せるおッ!!」
別に格好よくはないが、彼の決意は確かなものだ。
その証拠にブーンの乳首は立っていた。
( ^ω^)「ショボン! ドクオッ!
まだ文化祭は終わってないおッ!!」
- 59: 以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします。 :2007/11/14(水) 20:34:31.74 ID:1iCabTZbO
仲間に喝を入れ、ブーンは立ち上がった。
そう、文化祭はまだ終わってないのだ。
俺達の青春は終わらない!
( ^ω^)「絶対に童貞を卒業してみせるおッ!!」
ブーンの貞操が奪われる事を祈って!
ご愛読ありがとうございました!
戻る