('、`*川新聞部が嘘吐きを探すようです

97: 以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします。 :2008/03/31(月) 23:56:07.67 ID:THXrEZiwi
 



 号外 「――――――事件(でぃの日記編)」




 彼女が、嘘吐きが死んでから、部長は部活に来なくなった。
まぁ12月という時期に未だ3年生の部長が居る、って方が変なんだけど。

その後、冬休みの終わり、年が変わった後。
部長は一度だけ顔を見せ、デレさんを部長にする事を私たちに伝えた。

妹者がなぜか憤慨したけど、とりあえず宥めておいた。
来年まだ私達が新聞部に居るならば、彼女には部長をやってもらう事になるだろうし。

その時の部長は左腕を庇うようにしていて、薄らと顔も痩けていた。
受験勉強に疲れたから、と苦笑いをして部長は言ったけど、本当の理由を私だけが知っている。



100: 以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします。 :2008/03/31(月) 23:59:15.00 ID:THXrEZiwi
 あの雨の日から1週間後、その昼休みに。
部長は私の元にやって来て、デレさんを頼むと言った。

そしてその日にあった、事の顛末も話す。

正直言って、彼女が飛び降りたのには部長の責任もあると思う。
まぁそんな事は、自身で十も分かってるだろう。
だからこそかもしれないけど、続けてこんな話もした。

デレさんが、嘘吐きの存在を忘れたという事。これには最初から最後までの、全てが含まれてる。
秋から冬にあった嘘吐き関連の事件から、その調査まで。

ミセリさんが飛び降りる直前、その生涯最後に使った嘘吐きの能力により、
デレさんはチラと廊下ですれ違ったりした、ミセリという人の記憶すらも丸々失ったのだ。

部長はそこに付け加えて、私に1つ目のお願いをした。

たぶんデレさんがミセリさんの事を聞けば、何かが引っ掛かり、不思議に思うかもしれない。
その時は強引にでいいから、お茶を濁してほしい、と。

事実その翌日にあった集会にて、ミセリさんが屋上から転落し亡くなった事が全校生徒に告げられた。
するとデレさんは眉間に皺を寄せ、何かを忘れてる、と一人考えていた。
言われた通りに私は「そんなのどうでもいいから指示をください」と、完璧に話題スライドを成功させた。



102: 以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします。 :2008/04/01(火) 00:01:37.14 ID:MrtLJyS1i
もう一つ、部長は私に、ミセリさんの死は新聞部で取り扱わない事を約束させる。
こればっかりは正直難しいかもと思ったが、暗い新年を迎えさせたくない、と
阿部先生が異例の地獄寒中水泳2を開催、その記事を中心にする事で何とかなった。

ちなみに阿部先生は「来年居なくなるだろう教師」ランキングでぶっ千切りの1位だ。

さらにもう1つ、嘘吐きの関連する新聞、記事、資料を全て私が持ち帰り、保管する事。
これも、デレさんが彼女の事を思い出せば、少なからずの傷を負う事が予想されるから。その処置だという。

だけどそれは、部長が逃げる為の口実。そんな風に私には聞こえた。
その項を言うと、部長はこう返す。やっぱり部長は部長だった。

オカルト研究会に嘘吐きの事が知れれば、彼彼女らは部室に押し寄せてくるだろう、と。
嘘吐きなんてのは、オカルトの権化、未知なる存在、不思議の塊だ。
彼らが放っておく理由は確かにないし、パン失踪事件を未だ追っているという噂も聞いている。

そうとなれば話は別。私は直ぐに嘘吐きの資料を、関連するだろう妹者の絵すらも持って帰る事を誓った。
オカ研だかバカ研だか知らないけど、見ず知らずの連中に部室にやって来られては堪らないもの。

後は妹者だが、上手く言っといてくれ、だそうだ。
随分と適当でカチンと来たが、私が言えばなんとかなるらしい。

意味は分からないが、まぁ悪い気はしないから許す。



105: 以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします。 :2008/04/01(火) 00:05:01.89 ID:MrtLJyS1i
最後に、部長は私が新聞部に居てくれて良かった、と呟いた。
そして、自分のようにならないで欲しい、とも。

あとなんか妹者に早く告白しろとかホザいてたのがウザかった。
殴りたかったけど年上だし勘弁してやった。感謝して欲しい。

 この日記は、押し入れの上段に資料と一緒に入れておく事にする。
私だって嘘吐きには関連していたから、彼女の事を忘れちゃいけないのだ。

部長は懺悔の念を込め、自分の左腕に彼女の記憶を刻んだ。
それを見るたびに部長は彼女を思い出し、きっと深く後悔するのだろう。

私がもしも部長の立場だったら、多分そんな事はしない。
もしかしたらそこが、部長の言っていた、自分のようにならないで、という言葉の真の意味なのかもしれない。

 最後に、部長が私にたくさんのお願いをしたように、私も私にお願いをする。

私がこの日記を読み返した時、変わらず妹者が傍に居てくれたら、とても嬉しいと思う。
そしてまた、妹者が私の事を好きだと言ってくれたのならば、今度は素直に答えて欲しい。
それに対する妹者の返答が良くても悪くても、そうすれば多分、私は後悔しないだろうから。

 それと、メリークリスマス。明けましておめでとう。
大凶でもいい事あるさ。


                    2008.1.18 でぃ



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