ξ゚听)ξツンと星空と海風のようです
- 196: ◆DyhKUHe1jM :2007/10/31(水) 08:35:30.56 ID:GMYVJWfZ0
- ―6月15日(木曜日)―
数日振りに雨が上がり、梅雨の晴れ間の太陽が覗く平日の放課後。
これと言って変わりはなく、今まで通りの関係が続いていた様に見える4人だったが
最近、一つだけ変化が起きていた。
ξ゚听)ξ「じゃ、私。これから用があるから、先に帰るわね」
('A`)「……俺もちょっと用があっから先帰るわ」
帰宅する時にツンとドクオは先に帰ること事が多くなった。
( ^ω^)「なんか、最近二人とも付き合い悪くないかお? 」
毎日ではないが、週に三日くらいはこんなことが起きるようになった。
ξ゚听)ξ「そう? まぁ、仕方ないんじゃない? 中間テストもあったし、すぐに期末もあるしね」
('A`)「……悪ぃな。俺、こないだの中間悪かったから、ちょっと気合入れないとまずいんだわ」
( ^ω^)「なら、4人で勉強するお! 」
ブーンがそう提案するが、ツンは受け入れない。
ξ゚听)ξ「いやよ。あんたがいると勉強にならないじゃない」
(;^ω^)「そ、そんなことないお。だから4人でやるお」
- 200: ◆DyhKUHe1jM :2007/10/31(水) 08:36:48.67 ID:GMYVJWfZ0
- ブーンの言葉にツンが珍しく声を荒げる。
ξ#゚听)ξ「しつこいわね! 勉強ならしぃに見てもらえばいいでしょ! 」
(;゚ー゚)「つ、ツンちゃん、言いすぎだよ」
ツンの剣幕にそれまで黙っていたしぃが口を挟む。
ξ#゚听)ξ「いいのよ! これくらい言わないと、この馬鹿は解らないんだから! 」
Σ(;゚ー゚)「っ! 」
仲裁に入ったしぃも怒鳴りつけたツンに対し今度はドクオが仲裁に入る。
('A`)「おい、ツン! しぃに当たるのは間違いだろ」
ξ#゚听)ξ「うるさい! とにかく、私は帰るから! 」
そう言い捨てるとツンは教室を飛び出していった。
(;^ω^)「……」
(;゚ー゚)「……ツンちゃん」
ツンの様子に二人は呆然としていた。
- 201: ◆DyhKUHe1jM :2007/10/31(水) 08:38:50.46 ID:GMYVJWfZ0
- ('A`)「……しぃ、ゴメンな。ツンって一回へそ曲げるとあんな感じなんだわ」
(;゚ー゚)「……」
('A`)「別に、しぃのこと嫌ってるとか、そんなんじゃねーから。
……その、今はそっとしておいてやってくれや」
(;゚ー゚)「……うん」
ドクオの言葉にしぃは、納得しているのかいないのか分からない様な返事を返す。
('A`)「……とりあえず、俺に任せておけよ」
そういうと、ドクオも教室を出ていく。
(;^ω^)「……待つお」
廊下に出たドクオをブーンは追ってきた。
('A`)「ん? 」
(;^ω^)「ツンのところに行くなら、僕も行くお! 」
('A`)「お前が来たら話がこじれるから来るな。
ツンの機嫌の悪い原因に気付いて無いならなおさらだ」
(;^ω^)「で、でも……」
- 202: ◆DyhKUHe1jM :2007/10/31(水) 08:41:02.19 ID:GMYVJWfZ0
- ('A`)「それに、今お前が気にかけなきゃいけない相手はしぃだろ」
(;^ω^)「それでも、ツンは大事な友達だお」
なかなか引き下がらないブーンに、ドクオはため息をつく。
('A`)「そう思ってるなら俺に任せておけ。……それに」
(;^ω^)「……それになんだお?」
('A`)「しぃにとっても、ツンは大事な友達だろ。……しぃだってショックだったんじゃないのか? 」
(;^ω^)「っ! 」
('A`)「しぃに付いててやれよ。……じゃ、俺は行くぜ」
そういって軽く手を挙げてドクオは昇降口に向かった。
- 204: ◆DyhKUHe1jM :2007/10/31(水) 08:43:15.98 ID:GMYVJWfZ0
- ドクオを見送り、ブーンが教室に入るとしぃは自分の席に座り、ぼんやりしていた。
(*゚ -゚)「……」
(;^ω^)「しぃ、大丈夫かお? 」
(*゚ -゚)「……あ、ブーン。ドックン何だって? 」
(;^ω^)「ツンの事は任せておけって言ってたお」
(*゚ -゚)「……そっか」
それっきり二人は無言になる。
しばらくして、しぃが口を開いた。
(*゚ -゚)「……ねぇ、ブーン」
(;^ω^)「なんだお? 」
(*゚ -゚)「私のせいかな? 」
しぃは無表情のまま、ブーンに問いかける。
(*゚ -゚)「私のせいで三人の仲が壊れちゃったのかな? 」
(;^ω^)「そ、そんな事無いお! 」
(* - )「嘘だよ。……私のせいだよ。私が三人の仲に入ったせいだよ」
- 207: ◆DyhKUHe1jM :2007/10/31(水) 08:45:26.49 ID:GMYVJWfZ0
- いつの間にか、しぃの声は震えていた。
(* - )「ゴメンね。私のせいで」
(#`ω´)「そ、そんな事無いって言ってるお! 」
ブーンの言葉を聞き入れないしぃに対してブーンは激しい口調で叫ぶ。
(#`ω´)「しぃが居なかったら、今幸せになれている僕は存在しないお! 」
(* - )「……」
( ^ω^)「だから、そんな事を言わないで欲しいお。僕はしぃに会えて、よかったと思ってるお」
(*; -;)「……ブーン」
ブーンの言葉に顔を上げるしぃ。
そのしぃの顔には一筋の涙が流れていた。
( ^ω^)「泣かないで欲しいお。しぃには笑顔が一番似合うお」
(*;ー;)「……ホントに、ありがとう」
そのブーンの一言に、しぃは笑顔を浮かべる。
しかし、ブーンの心の中にはまだ不安要素が眠っていた。
(;^ω^)(もしかしたら、僕達はもう元には戻れないのかお?)
それでも、今はしぃの笑顔が消えないように、その感情を押し殺す。
- 208: ◆DyhKUHe1jM :2007/10/31(水) 08:47:18.67 ID:GMYVJWfZ0
『この笑顔の為なら僕は全てを捨てても構わないお』
ブーンはその想いで全ての不安を塗り潰していった。
- 211: ◆DyhKUHe1jM :2007/10/31(水) 08:49:37.24 ID:GMYVJWfZ0
- ツンは校門を出ると自宅とは反対方向に向かった。
五分ほどで市立図書館に着いたツンはそのまま建物に入ると
本棚に向かわず 【自習室】 と書かれたプレートの掛かった扉を開ける。
完全防音の自習室の中には誰もおらず、空調の音だけが静かに響いていた。
ξ゚听)ξ「……ふぅ」
ツンは無言のまま一番奥の席に座ると、小さくため息を付いた。
ξ゚听)ξ「……」
それから暫く、何をするわけでもなく、ぼんやりと何も無い空中を眺めもう一度ため息を付く。
ξ゚听)ξ「さてと、やりますかね」
誰に言うわけでなくポツリと呟くとカバンから教科書と、ノートを取り出し勉強を始めた。
だが、それも15分と続くことなくノートに走らせていたシャーペンが止まる。
- 212: ◆DyhKUHe1jM :2007/10/31(水) 08:51:18.16 ID:GMYVJWfZ0
- ξ )ξ「……っ、……ん」
まだ、数行の英文が書かれただけのノートに一滴、また一滴と雫が落ちる。
最近は何をやっても、ずっとこんな調子だった。
『諦めたい』
『心から祝福してあげたい』
『こんな気持ち忘れたい』
ツンの心はこの一ヶ月、その言葉だけが支配していた。
- 215: ◆DyhKUHe1jM :2007/10/31(水) 08:53:14.14 ID:GMYVJWfZ0
- そう思って、勉強に没頭してみる。
そうすれば、高校受験の時を思い出す。
一人だけボーダーラインに届いていなかったブーンに、ドクオと勉強を教えたことを。
……あまりの物覚えの悪さにキレたドクオに、ブーンが逆切れした。
…………逆切れしたブーンの顔面にツンの右ストレートが入った。
駅前のお気に入りの喫茶店に行ってみる。
そうすれば、高校の入学式の後に初めて来た時を思い出す。
帰りに制服のまま三人でこの店に来て、調子に乗ったブーンが真新しい制服にコーヒーを溢して火傷をした事を。
……家に帰ったら火傷の心配するより、制服を汚したことで怒られたって、ブーンは激怒していた。
…………それを見て、ドクオとツンは大爆笑した。
一人で近所の公園を散歩してみる。
そうすれば、幼い頃三人で遅くまで遊んで、親にもの凄く怒られた事を思い出す。
『僕達、男だからツンを家まで送るお!』とませた事を言って、ブーンとドクオに挟まれて手を繋いで家まで帰った事を。
……ブーンとドクオが『ツンは悪くない! 僕達が無理やり付き合わせたんだ(お)! 』と必死で庇ってくれた。
…………その時は子供ながらに胸が熱くなった。
- 216: ◆DyhKUHe1jM :2007/10/31(水) 08:55:12.20 ID:GMYVJWfZ0
- どこに行こうと、何をしようと、必ず三人で過ごした日々が脳裏をよぎった。
ξ;凵G)ξ「……私たち、もう昔みたいは戻れないの? 」
この二ヵ月で状況はめまぐるしく変わった。
ξ;凵G)ξ「……もう一度、戻りたいよ」
流れる時間の残酷な仕打ちに、ツンは一人涙した。
この図書館は市立にしては珍しく夜7:30まで開いており、
完全防音で空調完備の自習室は、普段学生が多数いる。
だが、この日は中間テストが終わったばかりということもあって、
幸か不幸かツン以外の利用者はいなかった。
自習室には空調の音とツンの嗚咽だけがいつまでも、響いていた。
- 218: ◆DyhKUHe1jM :2007/10/31(水) 08:57:18.96 ID:GMYVJWfZ0
- ―時刻・PM7:52―
('A`)「……」
ドクオはバイクに腰を預け、その日3本目の缶コーヒーを飲み干した。
('A`)「あの馬鹿、何してんだ? 」
携帯は繋がらない。
だから、家まで来たものの家にいる様子も無い。
仕方ないので、帰ってくるのを待っていたら四時間がたっていた。
('A`)「……このまま、帰ってこねーつもりか? 」
そうぼやきながら、空になった缶コーヒーを捨てに行こうと腰を上げた時、目的の人物が現われた。
ξ゚听)ξ「……ドクオ」
('A`)「よう、先に帰ったくせに随分遅いご帰宅だな。お姫様」
ξ゚听)ξ「……なんで、いるのよ? 」
ドクオの皮肉を無視してツンはドクオを睨む。
- 220: ◆DyhKUHe1jM :2007/10/31(水) 08:59:14.79 ID:GMYVJWfZ0
- ('A`)「……お互いに独り身のうちは、いつでも連れて行ってやるって言ったろ」
ξ゚听)ξ「別に、行きたくないわよ」
そういい捨ててツンは自宅に入ろうと門に手をかけるが、その手をドクオが掴む。
('A`)「じゃあ、なんでこんな時間の帰宅なんだよ。帰って勉強するんじゃなかったのか? 」
ξ゚听)ξ「……うっさいわね。別に、私が何処で何しようと勝手でしょ」
('A`)「……いいから、乗れよ」
ドクオの腕を振り払おうとしたツンだったが、ドクオの有無を言わせない雰囲気に振り払うことが出来ずにいた。
ξ゚听)ξ「……アンタ、強引ね。そんなんじゃ彼女出来ないわよ? 」
('A`)「うるせぇよ。俺の事はこの際どうでもいいんだよ」
ぶっきらぼうに言ったドクオは、少しだけ優しい口調で言葉を続ける。
('A`)「……お節介だとは分かっちゃいるんだが、今のお前を放っておくなんて出来ないんだ」
ξ゚听)ξ「なんでよ」
('A`)「……ツンも、ブーンも、しぃも俺の大事な友達だから」
少し照れながらドクオが言う。
- 222: ◆DyhKUHe1jM :2007/10/31(水) 09:02:15.52 ID:GMYVJWfZ0
- ξ゚听)ξ「くっさい、セリフねー。アンタに似合わないから、やめたほうがいいわよ」
('A`;)「う、うるせーな!! いいから乗れよ! 」
ツンの冷静な切り返しに、ドクオはわめき散らすようにごまかす。
ξ゚听)ξ「そんなに、恥ずかしいなら言わなきゃいいじゃない」
('A`;)「てめぇ、いい加減に……」
ドクオがそこまで言いかけた時、それを遮るようにツンが口を開く。
ξ゚ー゚)ξ「……着替えてくるから、10分くらい待ってて」
('A`;)「え? 」
ξ゚ー゚)ξ「え? じゃ無いわよ。スカートでバイクの後ろなんか乗れるわけ無いじゃない。
ドクオがそこまで言うなら仕方ないから付き合ってあげるわよ」
('A`;)「あ、ああ」
ツンの態度の変化に戸惑いながらも、ドクオが何とか返事をすると
ツンは満足そうに頷き、家の中に入っていった。
('A`;)「……ちったぁ、機嫌直ったかな? 」
ツンの表情が少し柔らかくなったのを見てドクオはそんな事を呟いた。
- 225: ◆DyhKUHe1jM :2007/10/31(水) 09:04:15.57 ID:GMYVJWfZ0
- ―時刻・PM8:31―
ξ゚听)ξ「おまたせ」
10分待っててといいながら家に入ったツンは、それから30分後に出てきた。
('A`)「……おせーよ」
ドクオはげんなりとした声で呟くが、ツンにはしっかり聞かれてしまったらしい。
ξ#゚听)ξ「うっさいわね! 女の子にはそれなりに事情ってもんがあるのよ! 」
さっきまでの制服姿とはうってかわって、スリムのジーンズにピンクのキャミソール。
その上に白のカーディガンを羽織っていた。
('A`)「……そんな気を使う様な仲でもねーだろうに」
ブツブツ言いながらドクオがツンにヘルメットを渡す。
ξ゚听)ξ「アンタは『親しき仲にも礼儀あり』って言葉知らないの? 」
ドクオの愚痴に対してそんな事を言いながらツンはバイクの後ろに跨る。
- 226: ◆DyhKUHe1jM :2007/10/31(水) 09:06:09.59 ID:GMYVJWfZ0
- ('A`)「若干、使い方を間違ってる気が……ん? 」
ドクオはそこまで言いかけて、ツンから甘い匂いがすることに気付く。
('A`)「お前、香水つけてる? 」
ξ;゚听)ξ「え? う、うん。……今日、結構暑かったから、汗かいちゃったし。
ホントはシャワー浴びたかったんだけど、そこまで時間無いし
……もしかして、香水の匂いとかって嫌い? 」
('A`)「いや。甘くていい匂いだなって思っただけ」
ξ゚ー゚)ξ「ありがと。これ、お気に入りなの」
お気に入りの香水を誉められたのが嬉しかったのか、ツンは笑顔で答える。
('A`)「そうかい。じゃ、発進するからしっかり掴まってろよ」
そういってドクオはバイクにエンジンを掛けると、アクセルを開けた。
- 229: ◆DyhKUHe1jM :2007/10/31(水) 09:08:13.78 ID:GMYVJWfZ0
- ―時刻・PM8:54―
ξ゚听)ξ「相変わらず、スゴイ景色ねー」
展望台の上に立ち海を眺めながら、ツンが感嘆の声を上げる。
ξ゚听)ξ「……なんか、ここに来ると全ての事が、ちっぽけな事みたいに思えてくるわね」
('A`)「それには同意するわ。……ほれ、オメーの分だ」
ξ゚听)ξ「ありがと」
ツンはドクオの差し出した缶の紅茶を受け取ると、プルトップに指を掛けて力を込める。
わずかな抵抗の後、プシュと音と共に飲み口に穴が開いた。
ξ゚听)ξ「……甘くて、おいしい。やっぱり、紅茶はロイヤルミルクティーに限るわ」
('A`)「それには同意できんな。紅茶はレモンティーのほうが美味い」
ドクオはそういってツンの横に並び、缶コーヒーを開けて一口飲む。
そのまま、二人は黙り込む。
- 231: ◆DyhKUHe1jM :2007/10/31(水) 09:09:48.39 ID:GMYVJWfZ0
- 数日振りに晴れ間の覗いた一日だっただけに、夜になっても空は月が浮かび、輝く星々に彩られ、
時折吹く風は、先日の雨に洗われたかのように澄んで、どこか幻想的な雰囲気を醸し出している。
そんな雰囲気の中、波の打ち寄せる音だけが不規則に響いていた。
ξ゚听)ξ「……ねぇ、ドクオ」
どこか、別の星に来てしまったのではないかと、勘違いしてしまいそうな錯覚にとらわれ始めた頃、
唯一聞こえている波の音を掻き消すように、ツンが口を開く。
('A`)「……ん? 」
ξ゚听)ξ「……私ってさ。嫌な女だよね? 」
('A`)「……なんでだ? 」
ξ゚听)ξ「だってさ、ブーンとしぃに「おめでとう」なんて奇麗事を言っておきながら、
同じ口で、子供みたいに癇癪起こして、ブーンやしぃやドクオに当り散らしてさ」
('A`)「……」
ξ 凵@)ξ「それだけの事しておきながら、悪いことしたなんて思ってなくて。
しぃがお人好しなの知ってて、これがきっかけで別れたらいいとか思ってるんだよ? 」
('A`)「……」
- 233: ◆DyhKUHe1jM :2007/10/31(水) 09:12:11.43 ID:GMYVJWfZ0
- 自嘲気味に語るツンに、ドクオは何も答えず、ただ海を眺めながら黙って話を聞いていた。
ξ 凵@)ξ「……どう思う? 」
('A`)「……どうって? 」
ξ 凵@)ξ「……とぼけないでよ。アンタ、気付いてるんでしょ? 私がブーンの事、好きだって事」
('A`)「……まぁ、付き合い長いしな」
ξ 凵@)ξ「付き合いの長さは関係ないわよ。その証拠にブーンは気付いてくれない」
('A`)「……」
ツンの指摘を上手くかわしたつもりのドクオだったが、ツンの切り返しに言葉が詰まる。
ξ 凵@)ξ「……どうして、気付いてくれないのかな? 」
('A`)「……アイツが気付くはず無いだろ。アイツの鈍さはお前だって知ってるはずだ」
ξ ー )ξ「そうね」
そう儚く笑った後、ツンは再び黙り込み、ドクオもそれに倣った。
- 234: ◆DyhKUHe1jM :2007/10/31(水) 09:14:55.58 ID:GMYVJWfZ0
- 短い沈黙のあと、口を開いたのは今度はドクオだった。
('A`)「……なんで、アイツに言わないんだよ。言わなきゃ分からないだろ? 」
ξ 凵@)ξ「……い、言えるわけ無いじゃない。言ったって結果が見えてるのに」
('A`)「でも、しぃと付き合う前だって、いくらでも機会はあっただろ」
ξ 凵@)ξ「それこそ無理よ。私だってそこまで自惚れたりしないわよ」
('A`)「……」
ξ 凵@)ξ「言ってこの関係が崩れるくらいなら、今はチャンスを待とうって決めてたのに……」
('A`)「……」
ξ;凵G)ξ「ずっと、ずっと、何年も待ってたのに。……結局、後から来たしぃに取られちゃった」
('A`)「……ツン」
いつの間にか小さく震えるツンが泣いていることにドクオは気付く。
- 236: ◆DyhKUHe1jM :2007/10/31(水) 09:17:19.50 ID:GMYVJWfZ0
- ξ;凵G)ξ「ねぇ、ドクオ。……私はどうしたらよかったの? 振られるの覚悟で言えばよかったの? 」
('A`)「……」
ξ;ー;)ξ「言ったらなにか変わってたのかな? 」
そういってドクオのほうに向き直るツンは、涙を流しながら笑っていた。
まるで触れば砕けてしまう儚い氷細工のように。それほど弱々しい笑顔で。
('A`)「……変わっていただろうな。それがどう変わっていたかは分からないが」
ξ;ー;)ξ「そうね。でも、もう無理。今のあの二人に、こんな話できない」
('A`)「……」
ξ;ー;)ξ「……私もう、疲れちゃった。ブーンを好きじゃないフリ、祝福するフリ、二人の友達でいるフリ」
('A`)「……やめろ」
ξ;凵G)ξ「しぃがもっと嫌な娘だったら、こんなに悩まないのに……。
なにがあっても、ブーンを取り返すのに! でも、でも、あの娘、良い娘なんだもん!
嫌いになれないんだもん! 私だって友達でいたいんだもん! 」
('A`)「……ツン、やめろ! 」
ξ;凵G)ξ「だから、頑張ってブーンへの気持ち隠して、二人の前で笑って……。
でも、私もう限界だよ!! 二人の前で笑顔でいるのも!
会話をするのも! 私だってブーンのk……」
('A`)「ツン!! 」
- 237: ◆DyhKUHe1jM :2007/10/31(水) 09:19:39.33 ID:GMYVJWfZ0
- ドクオは思わず、ツンを抱きしめる。
ξ;凵G)ξ「っ! 」
('A`)「もういい、やめるんだ」
ドクオはツンの耳元でそっと囁き、頭を撫でる。
('A`)「……落ち着いたか? 」
ξ;凵G)ξ「……うん。ゴメン、ドクオ」
ツンの返事を聞き、ドクオはそっとツンを開放する。
('A`)「わりぃ。好きでもない男にこんなことされたらいい気分じゃねーよな」
ξ;ー;)ξ「そうね、あまりいい気分じゃないわ。……でも、今はそれほど悪い気分でもないわ」
ドクオは照れ隠しに頭をガシガシ掻くと、顔を背ける。
('A`)「なんて言うかさ」
ξ;凵G)ξ「 ? 」
('A`)「……お前の気持ち、ブーンに伝えたらいいんじゃないか? 」
ξつ听)ξ「それは出来ないよ。二人に迷惑だもん」
ドクオの言葉にツンは涙を拭いながら答える。
- 240: ◆DyhKUHe1jM :2007/10/31(水) 09:21:35.39 ID:GMYVJWfZ0
- ('A`)「安心しろよ。俺ら、それくらいで壊れるような関係じゃないだろ? 」
ξ゚听)ξ「……そうかな? 」
('A`)「そうだよ。だから、伝えろ! 」
ドクオの言葉にツンは少し考え込むと、何かを決意したように頷く。
ξ゚听)ξ「……うん、分かった。ドクオ、ありがとう」
('A`)「それでいい、一発かまして来い」
ドクオの言葉にツンは、いつもの調子で答える。
ξ゚ー゚)ξ「……ドクオって、こうしてみると結構カッコいいね。……顔はともかく、中身はだけど」
('A`)「うるせーよ、ばーか。……帰るぞ」
ξ゚ー゚)ξ「……そうだね」
そういって二人は展望台を後にした。
('A`)(『壊れるような関係じゃない』か。果たしてホントにそうなのか?
……俺は勢いで取り返しの付かないことしたんじゃないのか? )
唯一つ、ドクオの心に不安を残し、展望台には波の音がやけに大きく響いた。
- 243: ◆DyhKUHe1jM :2007/10/31(水) 09:24:17.11 ID:GMYVJWfZ0
- ―時刻・PM11:52―
('A`)「……ただいまーっと」
既に家族は寝ているらしく家の中は静まり返っていた。
ドクオは足音を立てないように素早く二階に上がる。
姉の部屋の前を通り抜け、自室のドアノブに手をかけた所で後ろから声を掛けられる。
川 ゚ -゚)「高校生がシンデレラタイムにご帰宅とは、感心しないな」
Σ('A`;)「クー姉! まだ、起きてたのかよ! 」
川 ゚ -゚)「声が大きい。みんなが起きてしまうだろう」
('A`;)「……ああ」
クーの忠告にドクオは声のトーンを落とす。
川 ゚ -゚)「念願のバイクを手に入れて、浮かれる気持ちは分かるが、
あまり家族に心配をかけるんじゃない」
('A`;)「……ああ、すまねぇ」
川 ゚ -゚)「で? どこ行ってたんだ? 」
('A`)「ちょっと、美府岬までフラッとな」
そういって話を切り上げて部屋に入ろうとするドクオ。
- 244: ◆DyhKUHe1jM :2007/10/31(水) 09:26:07.45 ID:GMYVJWfZ0
- 川 ゚ -゚)「女の子とか? 」
クーの一言でドクオは固まった。
Σ('A`;)「……何のこと? 」
川 ゚ -゚)「別に責めてる訳じゃないんだから、誤魔化さなくてもいいだろう」
('A`;)「そ、そりゃ、まあ、そうだけど。……なんで分かった? 」
クーの言葉に、しどろもどろになりながらドクオは聞き返す。
川 ゚ -゚)「……その匂い。エンジェルハートだろう?
女の子が付けるなら分かるが、男が付けるようなものじゃない」
('A`;)「クー姉には敵わねーな」
川 ゚ -゚)「当たり前だ。何年、女をやってると思ってる」
('A`;)「……20年だr」
そこまで言いかけたところで、ドクオの鳩尾にクーの拳がめり込む。
(゚A゚;)「はぐぅ! 」
川 #゚ -゚)「まだ、19だ」
('A`;)「……ごめんなさい」
- 247: ◆DyhKUHe1jM :2007/10/31(水) 09:28:10.05 ID:GMYVJWfZ0
- 川 ゚ -゚)「それは、いいとして」
('A`;)(……いいなら、殴るなよ)
そんな言葉が浮かんだが、次はお得意のローキックが飛んできても困るのでドクオは黙っていた。
川 ゚ -゚)「彼女をそんな時間まで連れまわすような、彼氏になるのは止めさい」
('A`;)「だから、彼女じゃねーよ。一緒にいたのはツンだよ」
川 *゚ -゚)「……ほぉ、ツンと付き合ってたのか? それはお姉さん知らなかった」
クーにとって意外な相手だったのか、クーは興味を示した。
川 *゚ -゚)「それは、興味深い。詳しく聞かせてもらおうか? 」
そういってクーはドクオの腕を掴むと部屋に引きずり込もうとする。
('A`;)「ちょ、だから、ツンと付き合ってるわけじゃ……」
川 *゚ー゚)「でも、一緒にいたんだろう? 」
('A`;)「それはそうだけど、ちょ、まて! 」
川 *゚ー゚)「いーから、いーから」
抵抗も空しく、あっさりとドクオはクーの部屋に引きずり込まれた。
- 250: ◆DyhKUHe1jM :2007/10/31(水) 09:30:08.58 ID:GMYVJWfZ0
- 川 *゚ー゚)「で? いつからそんな関係になったんだ?
おねーさんに分かるように説明してもらおうか? 」
クーはドクオをソファーに座らせると自分は机の椅子を引っ張り出して扉の前に陣取った。
('A`;)(どう足掻いても逃げられない布陣だな)
ソファーの前のテーブルには、クーがキッチンの冷蔵庫から持ってきたペットボトルのカフェオレが置かれ、
クーは一緒に持ってきたミネラルウォーターを手に持ち
「何時間でも付き合ってやるから、話せ」というオーラが漂っている。
川 *゚ー゚)「ドクオがまさかツンと付き合うとは思わなかった。
あんな義妹が出来るとは、おねーさんは嬉しいぞ」
('A`;)「だから、付き合ってねーって」
川 *゚ー゚)「謙遜するな。詳しく聞かせなさい」
('A`;)(こりゃ、話すまで出られそうもねぇな)
観念したドクオはため息を付くと全て話すことを決めた。
('A`;)「事の発端は4月に遡るんだけどな……」
- 253: ◆DyhKUHe1jM :2007/10/31(水) 09:32:24.10 ID:GMYVJWfZ0
- それから、4月から起こったことを全て話した。
しぃと出合った事。
4人で遊びに行ったこと。
その時からブーンがしぃに惹かれてる様子があったのに気付いたこと。
それ以来、ツンの様子がおかしかった事。
ツンを初めて美府岬に連れて行った時の事。
ブーンとしぃが付き合ったこと。
その後、ツンの態度がますますおかしくなった事。
ツンがブーンの事を好きだったこと。
しぃと出会ってから今日まであった事の全てをクーに話した。
('A`)「……ってわけで、別に俺とツンが付き合ってるわけじゃないんだ」
ドクオがそういって話を一段落させる。
川 ゚ -゚)「ふむ、そういうことだったのか」
いつの間にかクーの表情からは好奇心は消えうせ、真面目な表情になっていた。
- 255: ◆DyhKUHe1jM :2007/10/31(水) 09:34:02.44 ID:GMYVJWfZ0
- ('A`)「なぁ、クー姉。俺、間違ってたのかな? 」
全てを話したドクオは、素直に先ほど感じた不安を吐露する。
川 ゚ -゚)「さぁ、それは分からないな。答えを出すのは私じゃなくてツンだ」
そういって、クーは手にしたミネラルウォーターを一口飲む。
川 ゚ -゚)「強いて言うなら、誰も間違っていないと思う」
('A`)「なんでだよ? 」
川 ゚ -゚)「人生の選択肢に正解なんて無いからな。
何を選ぶかじゃなくて、選んだ後どうするかが重要なんじゃないか?」
('A`)「……そうかな? 」
川 ゚ -゚)「少なくとも私はそう思ってる」
('A`)「そっか」
ドクオはクーの答えに納得したような、納得できないような表情でぬるくなったカフェオレに口を付ける。
川 ゚ -゚)「しかし、「ブーンに気持ちを伝えろ」なんてよくお前が言えたもんだな」
('A`)「……? なんで? 」
川 ゚ー゚)「まさに「お前が言うな」って事だ」
- 257: ◆DyhKUHe1jM :2007/10/31(水) 09:36:07.58 ID:GMYVJWfZ0
- Σ('A`;)「っ! 」
川 ゚ー゚)「まぁ、がんばれ。若造」
('A`;)(ホントに、クー姉には敵わんな)
そんな事を考えた時、ドクオは一つ気に掛かる事を思い出した。
('A`;)(クー姉なら……あの意味が分かるかも)
川 ゚ -゚)「どうした?」
('A`)「なぁ、クー姉。今日、別れ際にツンが
「…私達、いつまでも、何処にいても友達だよね? 」って言ってたんだけど、どう思う? 」
川 ゚ -゚)「んー。確かツンは今、一人暮らしだったよな? 」
('A`)「ああ」
川 ゚ -゚)「……おじさんの所に行くのかもしれないな」
('A`;)「やっぱり、そうかな? 」
ドクオにも予感はあった。それでも、それはありえないと否定していたことだった。
川 ゚ -゚)「あくまで推測だ。本当の事を知りたければ、ツンに聞いてみるしかないんじゃないか? 」
('A`)「もし、そうだったら、ツンを引き止めるにはどうしたらいいと思う? 」
ドクオは真剣な目でクーを見つめる。自分の想いを見透かされた事など、どうでもよくなっていた。
- 259: ◆DyhKUHe1jM :2007/10/31(水) 09:38:26.28 ID:GMYVJWfZ0
- 川 ゚ -゚)「ブーンの傍にいる辛さから逃れるより、ここに残る理由があればいいんじゃないか? 」
('A`)「ここに残る理由……」
川 ゚ -゚)「どっちにしろ、最後に判断するのはツンだが」
('A`)「……そうか」
そういって、ドクオは俯いて何かを考え込む。
川 ゚ -゚)「まぁ、悩むなら自分の部屋に戻ってからにしろ。私は寝るぞ」
('A`)「……自分で部屋に引きずり込んでおいてよく言うわ」
川 ゚ -゚)「頼りになる姉がいてよかっただろう? 」
('A`)「はいはい。ありがとよ」
そういって、ドクオはクーの部屋を後にして自室に戻るとベッドにダイブした。
('A`)「……ここに残る理由か」
頼れる人生の先輩の言葉を反芻し、目を閉じると、ドクオは眠りに落ちた。
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