ξ゚听)ξツンと星空と海風のようです
- 488: ◆DyhKUHe1jM :2007/10/31(水) 12:29:14.44 ID:GMYVJWfZ0
- ―8月28日(火曜日)―
―時刻・PM7:49―
('A`)「……ふぅ」
机に向かい、参考書を閉じるとドクオはため息を吐いた。
('A`)「……あとは、英語の課題ですべて終了か。今年は順調だな」
毎日のようにとまではいかなくても、
週2〜3日ペースでブーンの勉強に付き合っていたせいもあって、
今年は順調に課題が終わっていた。
('A`)「明日で終わりそうな量だし、今日はこの辺にしておこうか」
英語の問題集をパラパラと捲って残りを確認したドクオは、そのまま問題集を机に放り投げた。
('A`)「……ちょっと、走りにいこうかな」
時計を見ると時刻は八時前。
最近は夜風が涼しくなり、
バイクを走らせるには丁度良いかもしれないと思っていたところだった。
('A`)「ここんとこバイトやら、あいつらの付き合いやらで忙しかったしな」
- 492: ◆DyhKUHe1jM :2007/10/31(水) 12:32:23.66 ID:GMYVJWfZ0
- そんな事を呟くと不意に携帯が鳴った。
('A`)「……しぃから電話? 珍しいな」
画面で発信者を確認して通話ボタンを押す。
('A`)「……もしもし、何か用か? 」
(* - )「……ドックン。……助けて」
普段からは想像もつかないくらい、暗い声でしぃの声が届く。
('A`;)「おい! どうした、何があったんだ! 」
(* - )「……ツンちゃんが……ツンちゃんが」
('A`;)「おい、しぃ! ツンがどうした! 」
(*; -;)「……ツンちゃんが居なくなっちゃうよぉ」
嗚咽が混じりの声でしぃはそう告げた。
- 493: ◆DyhKUHe1jM :2007/10/31(水) 12:34:20.46 ID:GMYVJWfZ0
- ―時刻・PM8:03―
('A`;)(……うそだろ)
ドクオは既に切れた携帯を机に戻すことなく、左手をダラリと垂らす。
その手に握られていた携帯が、床にゴトリと音を立てて転がった。
しぃに聞いた話を要約すると……
【ツンが父親のところに行く】
言葉にすればたったこれだけのことだった。
('A`;)(なんで、今更)
しぃやブーンとの問題も解消された今、ツンに美府市を去る理由なんか無いはずなのに。
ドクオがそんな事を考えて居ると携帯が再び鳴った。
その画面に記された発信者の名前は……
- 494: ◆DyhKUHe1jM :2007/10/31(水) 12:36:24.54 ID:GMYVJWfZ0
- ―時刻・PM9:12―
ξ゚听)ξ「うーん、やっぱりここの景色いいわね」
ツンは美府岬の展望台の先端で大きく伸びをする。
ξ゚听)ξ「ホント、何もかも忘れられそうだわ」
月明かりの下、海から吹いてくる夜風にツインテールがヒラリヒラリと踊っている。
('A`)「……何考えてんだよ」
『私、この夏休みが終わると同時にパパの所に行くから。
最後に、もう一度あそこ、……美府岬に連れて行ってよ』
さきほどツンが電話で言った言葉を、思い出しながらドクオがツンに話しかける。
ξ゚听)ξ「はい、今日は私が奢ってあげるわ」
ツンはドクオの言葉に答えず、缶コーヒーを差し出す。
('A`)「……」
電話の後、そのことに関して何も語らないツンに苛立ちを覚えつつ、
ドクオは缶コーヒーを受け取り手すりに寄り掛かる。
- 495: ◆DyhKUHe1jM :2007/10/31(水) 12:38:18.08 ID:GMYVJWfZ0
- ξ゚听)ξ「……電話で言った通りよ」
暫く海を眺めながら、紅茶を飲んでいたツンが不意に口を開く。
ξ゚听)ξ「夏休みが終わったら、私はパパの所に行く」
('A`)「なんでだよ! なんで今更、美府市を離れる必要があるんだよ」
どうにも納得がいかないドクオが声を荒げる。
ξ゚听)ξ「前々からパパに、こっちに来いって言われてたの」
夜風にさらわれた髪を押さえつけながら、ツンは静かに語る。
ξ゚听)ξ「……やっぱり年頃の娘が、一人暮らしって言うのも不安みたいでさ」
('A`)「でも、お前は今までずっと美府市に居るって言ってたじゃねーか」
ξ゚ー゚)ξ「そこにこだわる理由が無くなっちゃったもん」
ツンはドクオに向かって寂しそうに微笑む。
ξ゚听)ξ「私がここにいたい理由はブーンがいたから。今は、こだわる必要がなくなっちゃた」
('A`)「ちょっと待てよ。しぃはどうすんだよ! 」
ξ゚听)ξ「……大事な友達よ。だから一回離れたいの」
- 496: ◆DyhKUHe1jM :2007/10/31(水) 12:40:32.03 ID:GMYVJWfZ0
- ('A`#)「ワケわかんねぇよ! 」
ツンの言葉の真意が読み取れないドクオは声を荒げた。
('A`#)「やっと、お前らのわだかまりが無くなって、しぃも打ち解けてきたのになんで……」
ドクオの言葉を遮るようにツンの静かな、それでいてしっかりと通った声が響く。
ξ゚听)ξ「私たち何処にいてもずっと友達でしょ? 」
('A`;)「……」
ξ゚听)ξ「どうしても、一回気持ちをリセットしたいの。
このまま一緒にいたら、また同じことを繰り返しそうだから」
まるでツンの決意を表わすかのように、凛と透き通った声が響く。
ξ゚ー゚)ξ「だから、一度みんなから離れるの。
……ワガママなのは分かってるけど、私はしぃと本当の友達になりたい」
そういったツンの笑顔は、今までドクオの見てきたツンの笑顔の中で一番綺麗だった。
ξ゚ー゚)ξ「……だから約束して。ブーンとしぃとドクオ、
三人誰一人かけることなく美府大に合格するって、そこでまた再会するって」
今までずっと一緒にいた幼馴染だから、ドクオには分かってる。
今、止めても絶対にツンは受け入れない。
- 499: ◆DyhKUHe1jM :2007/10/31(水) 12:43:48.82 ID:GMYVJWfZ0
( A ;)「……断る!! 」
それでも、ここで引き下がるほどドクオは大人ではなかった。
- 503: ◆DyhKUHe1jM :2007/10/31(水) 12:46:06.42 ID:GMYVJWfZ0
- ( A ;)(ここでツンを行かせるくらいなら、死んだほうがマシだ! )
ドクオは前触れも無くツンを抱きしめた。
ξ;゚听)ξ「ちょ、ドクオ!! 何すんのよ!! 離して!! 」
急な出来事に暴れるツン。
( A #)「……うるせぇ、黙れ」
ξ;゚听)ξ「……ドクオ? 」
だが、ドクオの静かで短い言葉にツンは暴れる手を止める。
( A #)「ブーンと一緒にいるために残りたいって言ったり、
しぃと本当の友達になりたいから離れたいって言ったり、
ワガママなんだよ。オメーは」
ξ;゚听)ξ「……」
( A #)「昔っからそうだ。いつでも、俺とブーンにワガママ言い放題。
……でもな、今回は、……今回だけは俺のワガママ通させてもらう」
それまで怒気を含んでいたドクオの声が、急に優しくなる。
- 505: ◆DyhKUHe1jM :2007/10/31(水) 12:48:12.06 ID:GMYVJWfZ0
- ( A )「気持ちなんか俺が全部リセットさせてやる」
そこまで言ったドクオは腕の力を抜き、手をツンの肩に乗せると、
真正面からツンを見据える。
ドクオの瞳には驚いた表情のツンが
ツンの瞳には真剣な表情のドクオが
それぞれ映っている。
('A`)「俺は、ツンがずっと好きだった。だから行くな。
……俺は、お前とずっと一緒にいたい」
ドクオは懇願するように言い切った。
- 508: ◆DyhKUHe1jM :2007/10/31(水) 12:50:04.71 ID:GMYVJWfZ0
- それからその場は沈黙が支配した。
二人の耳に聞こえてくるのは、波の打ち寄せる音と
自分の鼓動の音だけ。
そして、その沈黙を打ち破るようにツンの声が響く。
- 510: ◆DyhKUHe1jM :2007/10/31(水) 12:52:00.57 ID:GMYVJWfZ0
- ξ )ξ「……ドクオ、ありがとう……でも、ゴメン」
その言葉は感謝と拒絶。
ξ )ξ「ドクオの私を想ってくれてる気持ちは、女の子としてスゴク嬉しい。
……でも、ううん、だからこそやっぱり一緒にいられない」
ξ )ξ「ドクオの気持ちに真剣に答えたい。
だから、ブーンへの気持ちもしぃへの気持ちも、
ちゃんと自分自身で答えを出したい」
- 511: ◆DyhKUHe1jM :2007/10/31(水) 12:54:01.23 ID:GMYVJWfZ0
- ξ )ξ「すごくワガママでゴメン。……でも、今はこれしか言えない」
ツンの言葉にドクオは何も言えなかった。
なぜなら……
ξ;凵G)ξ「……本当にゴメンね」
ずっと好きだった子が泣いていたから。
- 512: ◆DyhKUHe1jM :2007/10/31(水) 12:56:06.56 ID:GMYVJWfZ0
- ('A`)「……わかった。もう何も言わないし、答えは再会した時に聞く」
ドクオはツンの肩に置いた手を下ろし、
ポケットからハンカチを取り出すとツンに渡した。
ξ;凵G)ξ「……ゴメンね。……こんなに想ってくれてるのに何もしてあげられなくて、
答えすら出してあげられなくて……ホントにゴメンね」
('A`)「いいさ、まだ答えが出ないって事は、振られてこれっきりってワケじゃねーんだ。
……それに、待つのには慣れてる。今まで待ってたんだし、後1年半くらいなんでもねーよ」
ξつー;)ξ「ありがとう……私、ドクオが友達で本当に良かった」
ツンはそういってドクオから受け取ったハンカチで涙を拭う。
('A`)「まぁ、再来年には『友達』じゃなくて『彼氏』になってるといいがな」
ツンが泣き止んだのを見てドクオは、いつものように「へっ」っと意地の悪い笑顔を浮かべる。
ξ゚听)ξ「それはどうかなー? ドクオ、顔がいまいちなんだもの」
ドクオが普段の調子で話すのにつられるように、ツンも普段の調子を取り戻していた。
- 515: ◆DyhKUHe1jM :2007/10/31(水) 12:58:01.87 ID:GMYVJWfZ0
- ('A`)「確かにイケメンじゃねーのは認めるけど、ブーンに比べりゃ大分マシだろ? 」
ξ゚听)ξ「あれはあれで愛嬌があるわよ? 」
('A`)「……悪かったな、邪悪な顔してて」
ドクオはいじけた様に呟く。
ξ゚ー゚)ξ「クー姉は美人なのに、何で似てないのかしらね? 」
('A`)「言ってろ。……そろそろ帰るか? 」
ξ゚ー゚)ξ「うん」
そういって頷き、二人は美府岬を後にした。
- 518: ◆DyhKUHe1jM :2007/10/31(水) 13:00:00.88 ID:GMYVJWfZ0
- ―時刻・PM11:03―
深夜の住宅街にバイクの排気音が響く。
('A`)「ほい、到着っと」
ξ゚听)ξ「ん。ありがと」
ツンはバイクを降りるとヘルメットをドクオに渡す。
ξ゚听)ξ「……ねぇ、ドクオ」
('A`)「なんだ? 」
ξ゚听)ξ「ホントに待っててくれるの?
……いい人がいたら別に私の事なんか気にしないで、付き合ってもいいんだよ? 」
受け取ったヘルメットをフックにかけるドクオに、ツンは少しだけ寂しそうに呟く。
('A`)「お前、それ皮肉か? 俺がそう簡単に彼女なんてつくれるわけねーだろ……それに」
ξ゚听)ξ「……それに? 」
('A`)「お前よりいい女なんて、そうそう見つかるかよ。……チャンスがあるうちは、待ってるよ」
既に自分の気持ちを言ってしまったドクオは、ためらうことも無くぶっきらぼうに答える。
- 520: ◆DyhKUHe1jM :2007/10/31(水) 13:02:08.59 ID:GMYVJWfZ0
- ξ////)ξ「あ、ありがと」
そういってツンは顔を赤くすると俯く。
('A`)「じゃあ、俺帰るわ。……出発の日は見送りに行くから」
そういってドクオはヘルメットを被りなおし、エンジンをかける。
ξ////)ξ「ど、ドクオ! ちょっとヘルメット脱いで」
ツンは慌ててドクオを呼び止めた。
('A`)「ん? 」
ツンの言葉にドクオはヘルメットを脱いで振り返る。
目の前にはツンの顔があった。
- 521: ◆DyhKUHe1jM :2007/10/31(水) 13:03:20.99 ID:GMYVJWfZ0
- ドクオがそれを確認したと同時に頬に何かが触れる。
ξ--)ξ「……んっ」
('A`;)(……ツンの唇)
その感触は一瞬だけですぐに離れた。
('A`;)「ツン、おま、何してんだよ! 」
ξ////)ξ「……えっと、美府岬に連れって行ってくれた事とか、
いい女って言ってくれた事とか、全部ひっくるめたお礼と、
後は、その……えっと……これから待たせる分の利息」
ドクオの言葉に対して、ツンはしどろもどろに答えるとまた俯く。
('A`;)「……なぁ、それは答えとは違うのか?」
ξ#///)ξ「か、勘違いしないでよ! ただ、私のワガママで一年半も待たせるのは
悪いかなって思っただけなんだから! 自惚れんじゃないわよ!! 」
('A`)「へーへー、分かりましたよ。再会してから振られても文句言いませんよ」
そういってドクオはヘルメットを被り直し、深夜の闇の中に消えていった。
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