冬だけどホラーのようです
- 1: 以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします。 :2007/11/09(金) 20:46:34.57 ID:9Prm7raG0
- 1.
時計が寸分の狂いもなく鳴っている。
針の音が一秒単位で世界を刻んでいる。
ツンは自宅のベッドで目を覚ました。
目覚めると同時に必ずすることがある。
ξ ゚−゚)ξ「朝七時ちょうど。私は自分の部屋で目を覚ました」
現状の確認。
これを怠らないように医者に言われている。
続いてツンの確認は少しだけ過去を遡った。
ξ ゚听)ξ「一ヶ月前に退院」
ξ ゚听)ξ(…)
ξ ゚听)ξ(バイトに行かないと)
- 2: 以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします。 :2007/11/09(金) 20:47:46.89 ID:9Prm7raG0
- 2.
ツンはコンビニのレジ前に立っていた。
客は誰もいない。
カウンターに置かれている軽食を温める機械がかすかなノイズをたてている。
虫の羽音みたいな音。
ジー、という音。
ξ ゚听)ξ「朝八時。私はバイトでコンビニのカウンターにいる」
ツンは外を見た。
真っ暗だ。
朝八時なのに真っ暗なのはおかしい。
時計を見ると三時だった。
昼の? 違う。夜中だ。
- 3: 以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします。 :2007/11/09(金) 20:48:46.23 ID:9Prm7raG0
- 3.
ξ ゚听)ξ(記憶が混線しているわ…)
たまにあることだ。
いや、よくあることか。
だからいつも確認しなければならない。
ξ ゚听)ξ(私は夜のシフトではないから、この時間にここにいるのはおかしい)
ξ ゚听)ξ(これは何かの間違い。これは何かの間違い)
両手で顔を覆い、眼を閉じて静かに息をする。
聞こえる音は肉まんが入っている機械のノイズ音だけ。
他には何も聞こえない。
ツンは手を顔からどけて瞼を持ち上げた。
そこは森の中で、ツンは地下駐車場の入り口前に立っていた。
ξ ゚听)ξ(ここは…)
- 4: 以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします。 :2007/11/09(金) 20:49:47.44 ID:9Prm7raG0
- 4.
暗い森だ。
空は血のような夕焼けに染まっている。
紅と黒の溶け合った色。
風がごうごうと吠えている。他に音は何もしない。
木々には申し訳程度の葉しかなく、すべて茶色くなって枯れ落ちている。
足元には枯れ葉が散らばってツンの足は少しだけそこに沈んでいる。
ξ ゚听)ξ(私はこの木々が枯れている理由を知っている。
裏に産業廃棄物が不法廃棄されているせいだわ)
でも何故そのことを知っているんだっけ?
目の前には駐車場の入り口が黒々と口を開けている。
立入禁止の札があるが柵はなく、入り口の両端から切れたチェーンがだらりと下がっていた。
ξ ゚听)ξ(森の中に何故駐車場の入り口があるんだっけ?)
- 5: 以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします。 :2007/11/09(金) 20:50:45.74 ID:9Prm7raG0
- 5.
ツンは帰路についていた。
ξ ゚听)ξ「私は家に帰るところ。時間は夕方五時」
ξ ゚听)ξ(仕事に出ていた記憶がない…最近『混線』がひどいわ)
ξ ゚听)ξ(もう一度病院へ行こう)
自宅に戻ったツンはベッドに腰を下ろした。
家の扉が開いて白い服を着た男と女が入ってきた。
(-_-)「ツンさん、あなたのご病気についてご説明します」
ξ ゚听)ξ(私の部屋に何故医者が…? 私は自分の部屋に戻ったわけだから…
ああ、記憶が混線しているんだ。これは前に入院したときの記憶だわ)
そう理解するとすぐに周囲の風景は白い壁に囲まれ、病院の一室となった。
- 6: 以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします。 :2007/11/09(金) 20:51:45.64 ID:9Prm7raG0
- 6.
そこは病室と言うよりは独房だった。
白い壁、頑丈なドア、パイプのベッド。
すべてが白く無機質だった。
ξ ゚听)ξ「私の病気って何なんですか?」
(-_-)「ご自分をもう一度見つめ直す必要がある病気です。じっくりと長い時間をかけて」
ξ ゚听)ξ「病名はなんて言うんですか?」
(-_-)「今日はここまでにしておきましょう」
医者と看護士は部屋を出ていった。
ドアの鍵が閉まる音がした。
ツンはドアに近寄って耳を押し付けた。
さっきの医者の声が「稀に見る重度の…」という言葉を使っているのが聞こえた。
- 7: 以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします。 :2007/11/09(金) 20:52:47.46 ID:9Prm7raG0
- 7.
ツンは自分の部屋で目が覚めた。
ξ ゚听)ξ「朝七時ちょうど。私は自分の部屋で目を覚ました」
現状の確認。
時計の音。
コンビニへ出勤。
現状の確認。
機械のノイズ音。
現状の確認。
それから仕事を終えた帰り道にカフェへ。
('A`)「まだ悪いのか?」
ξ ゚听)ξ「ドクオさん…私はドクオさんと会っている。夕方6時34分」
('A`)「良くはないみたいだな」
- 8: 以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします。 :2007/11/09(金) 20:53:44.20 ID:9Prm7raG0
- 8.
('A`)「実は妻にバレそうなんだ。お前と俺のこと」
ξ ゚听)ξ「別れてくれるって言ったじゃない」
('A`)「そう簡単には行かないんだ。わかってくれ」
ツンは帰宅し、食事し、入浴した。
現状の確認。
睡眠。
自分の部屋で目を覚まし、病院へ行く。
ξ ゚听)ξ「私は病院へ来た。朝10時ちょうど」
(-_-)「ツンさん、あなたのご病気についてご説明します」
ξ ゚听)ξ「あの、先生…」
(-_-)「ご自分をもう一度見つめ直す必要がある病気です。じっくりと長い時間をかけて」
ξ ゚听)ξ「???」
- 10: 以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします。 :2007/11/09(金) 20:54:44.85 ID:9Prm7raG0
- 9.
外来患者の診察室にいるつもりが、そこは自分が入院していた独房のような病室だった。
(-_-)「今日はここまでにしておきましょう」
医者は看護士を連れて出ていった。
ツンはドアに近寄って耳を押し付けた。
さっきの医者の声が「稀に見る重度の…」という言葉を使っているのが聞こえた。
ξ ゚听)ξ(記憶がどこかで混ざってしまったんだわ)
するとすぐに医者が戻ってきた。
(-_-)「今日で一週間ですか。ご気分は?」
ξ ゚听)ξ「ええ。ところで私の病気は? 一体どういうものなんです?」
(-_-)「どうか落ち付いて聞いて下さい。必ず良くなる病気ですから」
- 11: 以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします。 :2007/11/09(金) 20:55:44.54 ID:9Prm7raG0
- 10.
医者は病状について当たり障りのない言葉や妙な言い回し、専門用語などで説明したので
ツンはどういうことなのかまったく理解できなかった。
ξ ゚听)ξ「よくわからない」
(-_-)「とにかく良くなりますよ、きっと。いや、必ずね」
時計の音がする。
目が覚めた。
現状の確認。
バイトが終わったらドクオと会う。
ξ ゚听)ξ「ここは森。私はドクオさんといる」
('A`)「どうした?」
目の前には地下駐車場の入り口がある。
- 12: 以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします。 :2007/11/09(金) 20:56:42.40 ID:9Prm7raG0
- 11.
('A`)「ここに呼び出す。後は手筈通りに」
ξ ゚听)ξ「えっ?」
('A`)「お前、大丈夫か? しっかりしてくれ、失敗するわけにはいかないんだぞ」
ツンは両手を顔に当てて眼を閉じた。
風の音がする。
風の音しかしない。
ξ ゚听)ξ「私はドクオさんといる…何故ここにいるんだっけ? 駐車場に誰を呼び出すの?」
('A`)「何ぶつぶつ言ってんだ。ところでアレは持ってきたか?」
ξ ゚听)ξ「えっ? 何のこと?」
顔から手をどけるとドクオがうんざりしたような顔をしている。
('A`)「お前どうかしてるのか!?」
- 13: 以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします。 :2007/11/09(金) 20:57:44.25 ID:9Prm7raG0
- 12.
ツンは彼に背を向けて帰宅した。
眠る。
時計の音。
目覚める。
現状の確認。
バイトに行く。
ξ ゚听)ξ「朝八時。私はバイトでレジに立っている」
そう、今日は何も混線してない筈。
両手を顔に当てようとすると、顔に何か硬いものが当たった。
手に枝切りバサミをぶら下がっていた。
両手で使う大きいものだ。
刃に付着した血が柄を伝い、手元に流れ落ちてくる。
- 15: 以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします。 :2007/11/09(金) 20:58:42.85 ID:9Prm7raG0
- 13.
ツンは両手を顔に当てて眼を閉じた。
風の音がする。
風の音しかしない。
ξ ゚听)ξ「私はドクオさんといる…何故ここにいるんだっけ? 駐車場に誰を呼び出すの?」
('A`)「何ぶつぶつ言ってんだ。ところでアレは持ってきたか?」
ξ ゚听)ξ「これのこと?」
ツンは手にした枝切りバサミを見せた。
新品だ。
錆びていない。
刃もきれいだ。
('A`)「あ、ああ…まあ、それでもいい。殺せるんなら」
- 16: 以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします。 :2007/11/09(金) 20:59:39.51 ID:9Prm7raG0
- 14.
森の中には地下駐車場の入り口がある。
ツンは目の前にぽっかり開いたその中を覗き込んだ。
反響を繰り返して何重にも聞こえる足音が近付いてくる。
誰かがこっちへやって来る。
息の詰まるような生臭さが押し寄せてきた。
血の臭いだ。
それもさっき噴き出したばかりの新鮮な血だ。
ξ ゚听)ξ(私とドクオさんは誰かを呼び出し、ここで殺したんだわ。
でも違う…記憶が混線しているけれど、それは違う気がする)
何かがハッキリしない。
頭の中で大事なことが引っかかって出てこない。
- 17: 以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします。 :2007/11/09(金) 21:00:36.83 ID:9Prm7raG0
- 15.
ツンは地下駐車場の入り口から出てくる人物を見ようと待っていた。
足音はどんどん近付いてくる。
足音はドアの前で止まり、医者と看護士が入ってきた。
そこは独房のような病室でツンはベッドに腰を下ろしていた。
(-_-)「どうも、ツンさん。ご気分は?」
ξ ゚听)ξ「私の病気はどういうものなんです?」
(-_-)「今日はその話はしません。こちらの方が別のことを聞きたいそうです」
今日に限って医者と看護士に加え、背広の男が一人いた。
(´・ω・`)「あんたが隠したものについて聞きたいんだ」
ξ ゚听)ξ「私は隠し事なんかしてないわ」
(´・ω・`)「いいや、一つ隠している。とても大事なものをだ」
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