冬だけどホラーのようです

18: 以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします。 :2007/11/09(金) 21:01:32.95 ID:9Prm7raG0
16.
隠したもの? この男は何を言っているのだろう。

ツンは両手を顔に当てて眼を閉じた。


ξ ゚听)ξ(ちょっと一度、整理してみよう。

     1.私は一ヶ月前まで何かの病気で入院していた。

     2.退院してからアパートを借り、バイトをして暮らしている。

     3.ドクオさんと出会い付き合った。

     4.私とドクオさんは誰かを殺す計画を立てた。

     5.地下駐車場に呼び出した(誰を?)。

     一番新しい記憶が5ということは、今自分がいる時間にもっとも近い場所がそこ)


ところどころで大事な記憶が欠落している気がする。

今は何時だろう?

本当はどこにいるんだろう?



19: 以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします。 :2007/11/09(金) 21:02:28.48 ID:9Prm7raG0
17.
翌朝、ツンは自分の部屋で目が覚めた。

時計の音がする。

現状の確認。

シャワーを浴び、着替え、朝食を取る。

病院へ向かう。

病院の一室で馴染みの医者と向かい合った。


(-_-)「ツンさん、どうも。もう一ヶ月になりますか。具合はどうです?」

ξ ゚听)ξ「記憶の混線がまだひどくて」

(-_-)「そうですか。貴方にとっても辛いことだったでしょうから」

ξ ゚听)ξ(辛いこと…入院中のことを言っているのかしら)

(-_-)「長い入院期間でしたが人生はまだまだやり直せます。焦らずに行きましょう」



20: 以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします。 :2007/11/09(金) 21:03:24.31 ID:9Prm7raG0
18.
翌朝、ツンは自分の部屋で目覚めた。

時間を確認し起床しバイトへ行く。

帰り際にカフェへ寄った。ドクオと会う為だ。


ξ ゚听)ξ「ドクオさん…私はドクオさんと会っている。夕方6時34分」

('A`)「良くはないみたいだな。…実は妻にバレそうなんだ。お前と俺のこと」

ξ ゚听)ξ「別れてくれるって言ったじゃない」

('A`)「そう簡単には行かないんだ。わかってくれ」


ドクオは何か大事なことを口に出そうとして苦心している。

大きなものが喉につかえてなんとか吐き出そうとしているみたいに。

カフェに他に客はいない。

コーヒーメーカーがコポコポ言う音だけが聞こえる。

コーヒーメーカーがコポコポ言う音しか聞こえない。



21: 以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします。 :2007/11/09(金) 21:04:20.10 ID:9Prm7raG0
19.
('A`)「クーを殺そう」


ドクオは決心してぼそりとそう言った。


ξ ゚听)ξ「貴方の奥さんを?」

('A`)「そうだ。失踪したように見せかけるんだ」

ξ ゚听)ξ「うまく行くかしら」

('A`)「行くさ。殺すにはいい場所がある。あそこなら誰も来ない」


ツンは枝切りバサミを手に地下駐車場へ入っていった。

暗い。

体に絡み付くほどに重く粘りのある闇だ。

淀んだ空気を掻き分けて進む。

そこに誰かがいた。

ツンは枝切りハサミをその人物に思い切り突き立てた。



22: 以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします。 :2007/11/09(金) 21:05:15.30 ID:9Prm7raG0
20.
甲高い悲鳴を上げうつ伏せに倒れたところで、足首にハサミをあてがい切断する。

人の肉は映画のようにスパンとは切れない。

ジャキンでもザックリでもない。

筋が一本ずつ切れてゆく「ぶちぶち」という音がもっとも的確だ。

ぶちっ

ぶちっ

ぶちっ

最後に骨が切断されるバキンという音がして足は取れた。

ツンはいまだかつてない悲鳴を聞いていた。

猿を酸の風呂に投げ込んだらこんな声を出すんじゃないかって悲鳴だ。

とにかくこれでクーは逃げ切れない。

ツンは彼女の胴を足で踏みつけて押さえ、首にハサミをあてがった。



24: 以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします。 :2007/11/09(金) 21:06:11.13 ID:9Prm7raG0
21.
首を切るのは足を切るより大変だった。

両手で柄をしっかり掴み、思い切り両側から内側に向かって押し込む。

噴水のように血が跳ねてツンはそれを顔に浴びた。

今度はぶちぶちという音に加えてごぼごぼという音がした。


川 ゚ -゚)「がぼっ! ごぽ、ごぽっ」


気道に血が流れ込んで詰まりがちな排水口みたいな音を立てているらしい。

ツンの足に踏みつけられたままクーは死にかけの虫みたいに手足をばたつかせた。

ぶちっ

ぶちっ

ぶちっ

バキン

それから、ゴロリと丸く重いものが硬いアスファルトの上を転がる音。



26: 以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします。 :2007/11/09(金) 21:07:06.57 ID:9Prm7raG0
22.
女の腕でよく切れたものだと思った。


ξ ゚听)ξ(テレビで見たわ…そう、確か火事場の馬鹿力ってやつ。

      人間は極度の緊張状態になるとアドレナリン…麻薬物質が分泌されて、

      痛みや恐怖が麻痺するって)


枝切りバサミをベルトに挟んで両手を自由にすると、ツンはクーの死体を片付けにかかった。

人間の腐敗臭は強烈だ。

こんな地の底であってもすぐに地上に漏れ出すだろう。

場所を変えねばならない。

クーの足首をポケットに突っ込み、左手に頭、右手にクーのくっついてる方の足を持って引き摺ってゆく。

それほど重たくも感じられない。

まだアドレナリンが駆け巡っているのだろうか。



28: 以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします。 :2007/11/09(金) 21:08:00.95 ID:9Prm7raG0
23.
ふとツンは立ち止まった。

両手に持ったそれぞれの物を取り落とし、手の平を顔に被せて眼を閉じる。


ξ ゚听)ξ(ドクオさんと二人で殺す予定の筈…あの人はどこに?)


風の音が聞こえる。

目前に迫った地下駐車場の出入り口から吹き込んでくる風だ。

少しだけ見える空はツンが全身の浴びた血のように赤い。

ツンは地下駐車場を出た。

次の瞬間ツンは駐車場の入り口を覗いている自分になっていた。

別の記憶の自分と移り変わったのだ。

ツンはクーの頭と体と足を引き摺って出てくる自分を見ていた。

猛烈な生臭さを放っている。

血の臭いだ。



29: 以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします。 :2007/11/09(金) 21:08:54.04 ID:9Prm7raG0
24.
ツンは殺しを終えたもう一人の自分を見ていた。

彼女は死体をあらかじめ用意しておいたらしいビニール袋に詰め、大きなダンボールに入れた。

それからもう一度駐車場の中へ入ってゆき、同じように死体を引っ張り出してきた。

ドクオだ。

クーと同じように頭と右足を切られている。

血の跡を道筋のように残しながら引き摺ってくると、その死体もクーと同じく梱包した。

車を持ってきて二つのダンボールを運び込み、姿を消す。


ξ ゚听)ξ(ドクオさんも死んでいる…? 私がやったの? 何故?)


ツンは地下駐車場に入ってみた。

手の中には大きな枝切りバサミがある。

少し行ったところに先に入ったドクオがいてツンを待っていた。


('A`)「クーはすぐに来る。呼び出したのが十分ちょい前だから、もうそろそろ…」



31: 以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします。 :2007/11/09(金) 21:09:50.69 ID:9Prm7raG0
25.
ツンは腰を落として構え、ドクオの腹に枝切りバサミを突き立てた。

クーを殺す手順をべらべら喋っていたドクオは言葉と一緒に血を吐いた。


('A`)「ゴヘッ!!」


ハサミは刃を開いた形で突き刺さっている。

ツンはそのまま思い切り柄に力を込めて刃を閉じた。

ぶちっ

ぶちっ

ぶちっ

ずたずたになった腸が腹腔からずり落ちる。

それはドクオが落としたケータイの画面の光に照らされ、ぬるぬる光っていた。

ツンはハサミを引き抜いて今度はドクオの足にあてがった。

もう彼が動けないことは明白だが、万が一にも逃がしたくはなかった。



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