冬だけどホラーのようです

32: 以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします。 :2007/11/09(金) 21:10:46.63 ID:9Prm7raG0
26.
ドクオは血を吐いた。

蛇口の壊れた水道みたいに吐き続けた。

吐瀉物もいくらか混ざっている。

さっきカフェで食べたサンドイッチの欠片だろうが、全部ミートソーススパゲティのように見えた。

ドクオはそれらと一緒に何か言っている。

命乞いか罵倒かはわからない。

ツンは彼の体を片足で踏み付けて固定し、首の切断にとりかかった。

男の筋肉は女とは比べようもなく硬かったが切れなくはなかった。


ξ ゚听)ξ(クーより大変だったわ)


ツンはその自分の考えを変に思った。

クーはドクオよりも後に殺した筈なのに。



33: 以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします。 :2007/11/09(金) 21:11:45.40 ID:9Prm7raG0
27.
はみ出した腸を掻き集めて腹の中に詰め戻し、ツンは死体を運び出した。

車の前にはすでに運び出したクーの死体がダンボールに梱包されている。


ξ ゚听)ξ(また混線している…クーはまだ殺していない筈じゃ?

      ううん、もう殺していたけれどそれは記憶の混線のせいで…)


悩んだが答えは出ない。

どうでも良くなってダンボールを車に積み込んだ。

一度帰宅する。

シャワーを浴び着替える。

それから死体を郊外の山奥へ埋めに行った。

すべてを終えてから再び家へ。

明かりを消してベッドに入った。

時計の音だけがしている。



34: 以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします。 :2007/11/09(金) 21:12:42.23 ID:9Prm7raG0
28.
目が覚めた。

現状を確認する。


ξ ゚−゚)ξ「朝七時ちょうど。私は自分の部屋で目を覚ました」


ベッドの隣で裸のドクオが眠っている。

毛布をめくってみる。

腹はどうともない。切り裂かれた痕跡はない。

ツンは両手で顔を覆って眼を閉じた。


ξ ゚听)ξ(これは二人を殺す前の記憶だわ)


手をどけて瞼を持ち上げる。

枕元にドクオのケータイがあった。

何となく手に取って開く。



35: 以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします。 :2007/11/09(金) 21:13:40.17 ID:9Prm7raG0
29.
メールボックスを開く。

ツンやクー、仕事先や友人などとのやり取りがある。

その一つ一つを開いて見ていくと、こんなメールがあった。


『次の日曜の夕方にやる ナイフを忘れるな』


クーに向けられたものだ。

ツンは隣に眠っているドクオの肩を揺すった。


ξ ゚听)ξ「ドクオさん、奥さんを殺すのっていつだった?」

('A`)「う、うーん、何だ? 寝かせてくれ…」

ξ ゚听)ξ「奥さんを殺す日にちよ」

('A`)「日曜日だろ。夕方」

ξ ゚听)ξ(奥さんに教えている…? それにナイフって?)



36: 以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします。 :2007/11/09(金) 21:14:35.40 ID:9Prm7raG0
30.
ツンはベッドを出てシャワーを浴び、朝食を取ってバイトに向かった。

カウンターに立つ。

現状の確認。

肉まんをあっためる機械のノイズ音だけがする。

カウンターは木製になっていた。

全然知らない人間が突然ツンの疑問に答えた。

∧∧
(,,゚Д゚)「つまり被害者である鬱田ドクオと鬱田クーは、共謀して被告ツンを殺そうと…

     鬱田ドクオは被告には妻を殺すと言って地下駐車場に呼び出し…

     だが被告はそれをケータイを見てあらかじめ察知しており…

     逆に二人を…」


ひどく遠くに聞こえる。

要所要所で何を言っているかがわからない。



37: 以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします。 :2007/11/09(金) 21:15:30.97 ID:9Prm7raG0
31.
最後に裁判長がこう言ったのだけは良く聞こえた。


「責任能力無しと判断」

「起訴を却下」

「被告は治療を旨とした施設へ…」


ツンは白い壁に囲まれた独房のような病室に送られた。

窓はなく扉には三重に鍵がつけられている。

ぼそぼそと話し声が聞こえる。

ツンはそっと扉に近づき、耳を押し付けた。


(-_-)「稀に見る重度の分裂病ですね。日本でこんなにひどい症例は始めてだ」

(´・ω・`)「分裂病ってのは?」

(-_-)「夢とか妄想とか、過去の記憶とかが全部ゴッチャになって現実と区別がつかなくなるんです」



38: 以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします。 :2007/11/09(金) 21:16:25.97 ID:9Prm7raG0
32.
(-_-)「話はできますが、恐らく支離滅裂かと…」

(´・ω・`)「死体の一部がどうしても見つからないんだ。遺族に申し訳が立たない」

(-_-)「聞いても無駄だと思いますがね。じゃあ開けますよ、刑事さん」


扉が開いた。

刑事と医者の二人は聞き耳を立てていたツンと鉢合わせになる形となった。

ぎょっとした表情の二人にツンは聞いた。


ξ ゚听)ξ「分裂病? それが私の病気なんですか?」

(-_-)「何言ってるんです? さあ、ベッドに戻って。起きちゃダメですよ」

ξ ゚听)ξ「私の病気はどういうものなんです?」

(-_-)「今日はその話はしません。こちらの方が別のことを聞きたいそうです」

(´・ω・`)「あんたが隠したものについて聞きたいんだ」



39: 以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします。 :2007/11/09(金) 21:17:22.27 ID:9Prm7raG0
33.
ツンは両手で顔を覆って眼を閉じた。

怖い。

恐怖で冷たい汗が噴き出す。

心臓に太い氷柱が突き刺さっているみたいだ。


ξ ゚听)ξ(1.私は一ヶ月前まで分裂病で入院していた(とても長い期間)。

     2.退院してからアパートを借り、バイトをして暮らしている。

     3.ドクオさんと出会い付き合った。

     4.私とドクオさんは奥さんを殺す計画を立てた。

     5.地下駐車場に呼び出した(奥さんを)、しかし私は二人を殺した。

     6.警察に露見し私は捕まった。

     7.どこかの病院に送られた。

     8.私は一ヶ月前まで分裂病で入院していた(とても長い期間)。

     9.退院してからアパートを借り、バイトをして暮らしている)



42: 以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします。 :2007/11/09(金) 21:18:18.55 ID:9Prm7raG0
34.
ξ ゚听)ξ「10.ドクオさんと出会い付き合った。

     11.私とドクオさんは奥さんを殺す計画を立てた。

     12.地下駐車場に呼び出した(奥さんを)、しかし私は二人を殺した。

     13.警察に露見し私は捕まった。

     14.どこかの病院に送られた。

     15.私は一ヶ月前まで分裂病で入院していた(とても長い期間)。

     16.退院してからアパートを借り、バイトをして暮らしている)

     17.ドクオさんと出会い付き合った。

     18.私とドクオさんは奥さんを殺す計画を立てた。

     19.地下駐車場に呼び出した(奥さんを)、しかし私は二人を殺した。

     20.警察に露見し私は捕まった。

     21.どこかの病院に送られた。

     22.私は一ヶ月前まで分裂病で入院していた(とても長い期間)。

     23.退院してからアパートを借り、バイトをして暮らしている)



44: 以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします。 :2007/11/09(金) 21:19:16.28 ID:9Prm7raG0
35.
出口がない。入り口もない。

どこから始まってどこで終わっている?

時計の音がする。

風の音がする。

機械のノイズ音。

コーヒーメーカーのコーヒーが沸き立つ音。

ドクオとクーの悲鳴。

気管に血が詰まる。ごぼごぼ。

肉が切れる。ぶちぶち。

何も聞こえない。

また時計の音。

また風の音。

また機械のノイズ音。


おしまい



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