( ^ω^)桜舞い散る中に忘れた記憶が戻ってくるようですξ゚听)ξ
- 2: ◆ECmvgmi7GI :2007/11/18(日) 05:36:43.70 ID:DLTUE4My0
- ───3月25日 21:48 ツン・デレ───
『ぷっ…くふふ……ぷふっ』
電話の向こうから、変な音が聞こえる。
こうなるとは思っていたが…。
音の正体は、すぐにわかった。
ξ;゚听)ξ「ちょっとそんなに笑わなくてもいいじゃない…」
電話の向こうで笑っている失礼な親友、クーに悪態をつく。
川 ゚ -゚)『すまんすまん まさかそんな展開になるとは思ってなくてな』
落ち着いたクーがそう言う。
私だって、あんなことになるなんて思っていなかった。
ぎこちない挨拶。
ぎこちない自己紹介。
そして、本気のタックル。
川 ゚ -゚)『とりあえず、「吹っ飛ばしてきた」だけじゃわからないから
詳しく話してくれないか?』
そうだった。クーにはまだそこしか話していなかった。
相当混乱していたらしい。
私はあの時のことを思い出しながら、クーに説明を始めた。
- 3: ◆ECmvgmi7GI :2007/11/18(日) 05:38:25.76 ID:DLTUE4My0
- 川 ゚ -゚)『なるほど それでタックルぷっ…してしまったのか』
また笑われた。
川 ゚ -゚)『しかし、彼は覚えていなかったか』
そう。
彼は私の事を覚えていない様子だった。
それが、現実だった。
川 ゚ -゚)『頭に強い衝撃を与えれば思い出すんじゃないか?』
ξ;゚听)ξ「ちょ、ちょっと…」
川 ゚ -゚)『冗談だ』
冗談に聞こえなかった。
川 ゚ -゚)『で、ツンはどうするんだ?』
ξ゚听)ξ「とりあえず明日、謝りに行くわ」
川 ゚ -゚)『それがいい』
次のことは、もう決めてあった。
先ず、謝る。
そして笑顔で、話す。
- 4: ◆ECmvgmi7GI :2007/11/18(日) 05:40:26.26 ID:DLTUE4My0
何を話すかは決めていない。
でも笑顔で接するということだけは決めていた。
川 ゚ -゚)『昼に見せた笑顔を忘れないようにな』
ξ゚ー゚)ξ「わかってるわよ」
クーには見えないが、私は笑顔でそう返事した。
川 ゚ -゚)『ツンの笑顔を見せれば、男はイチコロだ 自信をもて』
ξ゚听)ξ「よく言うわよ」
学校でも人気のあるクーに言われ、少し照れた。
クーはかなりモテる。
整った顔立ちに、大人びたクールな性格。
成績優秀、運動神経もよい。
何をやらせても、そつなくこなす。
…胸も私より大きい。
そんなクーを、年頃の男子がほかっておくはずがない。
でもクーは、そんな男子の告白をことごとく蹴っていた。
その為、入学して1年が経った今、クーに告白する猛者はいなくなっていた。
そんな美人の親友をもてて、私は少し鼻が高かった。
- 6: ◆ECmvgmi7GI :2007/11/18(日) 05:42:24.60 ID:DLTUE4My0
- そんな事を考えていると、ふと1つの疑問が生まれた。
ξ゚听)ξ「クーは、好きな人いないの?」
今までにもたまにそれを思いついたことはあった。
けどなんとなくタイミングを逃していて、聞けずにいた。
その疑問を、今ぶつけてみる。
川 ゚ -゚)『唐突だな 好きな人ならいるぞ』
え…?
ξ;゚听)ξ「いるの?!」
川 ゚ -゚)『失礼だな 私だって女の子だぞ』
その言葉に思わず笑いそうになる。
予想外の答えに、私は少し興奮気味になる。
ξ゚听)ξ「で、誰なの?」
川 ゚ -゚)『ヒ・ミ・ツ』
そんな可愛く言われても。
川 ゚ -゚)『私が頑固なのは知ってるだろう? 誰かは言わないぞ』
確かにクーは、昔から頑固だった。
- 7: ◆ECmvgmi7GI :2007/11/18(日) 05:44:08.80 ID:DLTUE4My0
昔一度クーと言い争いをしたことがあったが、とにかく頑固だった。
それを思い出した私は、これ以上の追及をやめた。
時計を見る。22時半を少し回っていた。
川 ゚ -゚)『明日は忙しくなりそうだし、寝ておいた方がいいんじゃないか?』
言い出そうとしたことを、先にクーが言った。
ξ゚听)ξ「うん、ありがとう そうするね」
私は親友の気遣いに甘えることにした。
川 ゚ -゚)『おやすみ』
ξ゚听)ξ「今日はありがとう おやすみ」
礼を言い、電話を切る。
昨日からクーに頼りっぱなしだ。少し反省した。
目を閉じて、彼のことを思い出す。
私を忘れていること以外、全然変わっていなかった。
だから、その姿で「覚えてない」と言われた時は、悲しかった。
頭の中が真っ白になってしまった。
- 8: ◆ECmvgmi7GI :2007/11/18(日) 05:45:59.73 ID:DLTUE4My0
彼は悪くない。それなのにバカだなんて言った挙句、突き飛ばしてしまった。
きっと印象は最悪。
だから明日謝ろう。
全てはそこから。謝って、友達になって、それから…。
果たして、思い出してくれるのだろうか。
ξ;゚听)ξ「あー!だめだめだめ!」
わざと口に出し、自分の弱さを否定した。
一歩一歩、確実に進んでいこう。
前向きに考えよう。時間もチャンスも、いくらでもある。
彼は帰ってきたのだから。
ベットに入る。
目を閉じれば、彼の顔。
どうやら今夜も、なかなか眠れそうにない…。
………。
……。
…。
- 10: ◆ECmvgmi7GI :2007/11/18(日) 05:48:05.55 ID:DLTUE4My0
- ───同日 23:17 内藤ホライゾン───
( ´ω`)「くぁ……」
お風呂から上がり、新しい自室に戻った僕は大きなあくびをした。
眠い目を擦り、部屋を見渡す。
そこにはまだ、ぽつんと敷かれた布団しかない。
部屋に漂う畳の匂いがなんだか心地よかった。
流石に疲れたのか、カーチャンももう寝ているようだ。
眠気と布団の誘惑に負け、布団に入る。
今この家には、僕とカーチャンの二人しかいない。
カーチャンの両親は、少し前に老人ホームに移っていた。
元々病気がちだったらしいが、この機会にと入居を決意したらしい。
僕にはそれが、カーチャンにこれ以上苦労をかけまいとする気遣いに思えた。
目を閉じて、今日の事を思い出す。
真っ先に浮かんだのは、僕を知っている僕が知らない女の子、ツン。
挨拶をして、自己紹介をして、吹っ飛ばされた。
衝撃的な出会いとはこういうことを言うんだろうか?
一番衝撃を受けたのは、彼女の泣き顔だったが…。
次に会った時は、彼女の笑顔を見ることができるだろうか。
今度会ったら、謝ろう。
そう思いながら、溶けていく意識の流れに僕は身を委ねた。
- 11: ◆ECmvgmi7GI :2007/11/18(日) 05:50:19.91 ID:DLTUE4My0
- 暖かい日差し。
鳥がさえずり、蝶が踊る。
麗らかな春の田舎道を、僕は歩いていた。
いや、僕だけではなかった。
後ろに伸びた手は、一人の幼い少女の手をしっかりと握っていた。
僕に引っ張られる少女は、ただただ泣くばかり。
それを無言で、半ば強引に引っ張る形で、僕は歩いていた。
ひたすらに、進む。
聞こえてくる少女の嗚咽が、とても痛々しく聞こえた。
でもなぜか僕は、歩くことをやめなかった。
僕がどこを目指して歩いているのか、僕にもわからない。
変な話だ。
どれくらい歩いただろうか。
田んぼばかりだった景色に、人が住む家が混じり始めた。
その頃になると、少女の嗚咽はいつの間にか小さくなっていた。
強く力を込めて繋がれた手は、今はもう自然な形で繋がれていた。
そして、大きな桜の木が目に映る。
その瞬間、少女は桜の木目掛け走り出した。
繋がれた手は、そのままに。
前を走る少女の顔は、きっと笑顔に違いないと思った。
………。
……。
…。
- 13: ◆ECmvgmi7GI :2007/11/18(日) 05:52:01.01 ID:DLTUE4My0
再会を終えた少年は、再度不思議な夢を見る。
再会を終えた少女は、どんな夢を見ているのだろうか。
少年は夢の中で、少女の笑顔を見たいと思った。
少女は明日、笑顔で語りかけようと思った。
想いは繋がり、惹かれ合う。
最悪の出会いは、最高の印象を与えていた。
果たして少女は、少年に笑顔を見せることができるのだろうか。
少年を想いぐっすりと寝ているその顔は、幸せそうな笑顔だった…。
( ^ω^)桜舞い散る中に忘れた記憶が戻ってくるようですξ゚听)ξ
───第二話『笑顔』───
- 14: ◆ECmvgmi7GI :2007/11/18(日) 05:53:38.60 ID:DLTUE4My0
- ───3月26日 8:25 内藤ホライゾン───
( ^ω^)「いただきますお」
食卓に着き、十数年食べていても飽きないカーチャンの手料理に手をつける。
新しい環境で食べる朝食は、いつもよりおいしく感じた。
おいしいと言えば、起きた時に窓を開けて入り込んだ外の空気もおいしかった。
都会より少し寒く感じたが、それも心地い良い。
澄んだ空気。素直においしいと感じた。
おいしい空気を全身に送り、おいしいカーチャンの朝食を食べる。
一日目から、こっちに引っ越してよかったと思った。
朝食と共に幸せを噛みしめていると、カーチャンが口を開いた。
J( 'ー`)し「食べ終わったら、ご近所さんに挨拶にいくわよ」
ご近所さんと聞いて、そう言えば田舎のわりにこの辺りは家が多いことを思い出した。
小さな公園もあり、この辺りは田舎ながらに発展していることが伺えた。
僕はカーチャンにそのことを聞いてみることにした。
( ^ω^)「この辺は家が結構多いけど、何かあるのかお?」
J( 'ー`)し「カーチャンが嫁入りする前からね、この辺に駅ができる話が持ち上がってるのよ」
なるほど。カーチャンの言葉に僕は納得した。
- 15: ◆ECmvgmi7GI :2007/11/18(日) 05:55:26.46 ID:DLTUE4My0
- その計画が出た頃から、建設予定地になるこの土地周辺に引越してくる人が増えたと言う。
土地柄のわりに新しい家が多いと思ったのもそのせいか。
駅の工事は、大分前から始まっているらしかった。
おかげで、それ以来この周辺にもバス停が設置された。
昔はここから多少歩かなければバス停がなかったらしい。
そのことも引越してくる理由の一つになっていた。
引っ越したばかりの田舎は、便利に発展する中心にあった。
僕はバスの運転手の荒巻さんを思い出し、少し寂しくなった。
しかし引っ越してくる人間は、田舎に居た人そのままなわけで。
新しい住人となった僕らは、挨拶をする必要がある。
田舎のそんな礼儀は、嫌いじゃなかった。
J( 'ー`)し「ここよりもっと田舎から引っ越してきた人もいるらしいからね
カーチャンも知らない人が多いし、そういうのはちゃんとしなくちゃね」
カーチャンがそう付け加える。
僕は部屋の隅に置かれた菓子折りの山を見た。
結構な量だ。
( ^ω^)「何軒くらい回るのかお?」
J( 'ー`)し「とりあえず回覧板を回してる範囲かしらねぇ…」
田舎にはそう言った組合のような物がある。
回覧板とは、その組合での連絡事項等を記載して、各家に配られる物だ。
僕は菓子折りの隣に回覧板が置いてあることに気付いた。
- 16: ◆ECmvgmi7GI :2007/11/18(日) 05:57:34.55 ID:DLTUE4My0
- それを見ようと思った僕は、朝食を一気に平らげる。
( ^ω^)「ごちそうさまでしたお」
J( 'ー`)し「お粗末様でした」
食事の終了を宣言し、回覧板を手に取る。
ファイル調になっている表紙には、「VIP町回覧板」と実に簡素に書かれていた。
表紙をめくる。
最初にあったのは、回覧板を回す順番が書かれた物だった。
書かれた苗字を数える。
そこに書かれた名前は、27軒分あった。
内藤、自分の名前を省くと、26軒。
挨拶回りは結構骨が折れそうだった。
そしてページをめくる。
駅建設のことがメインらしく、大きく書かれていた。
完成予定日は、来年の春。
工事は結構進んでいるらしかった。
見に行ってみるか。そう思いページをめくる。
他の内容は、朝市の宣伝や、自家製の醤油や漬物の配布のお知らせ等だった。
都会にはなかった町内の繋がりが、なんだか暖かく感じた。
回覧板を見終え、置いてあった場所に戻すと、片付けを終えたカーチャンが戻ってきた。
- 18: ◆ECmvgmi7GI :2007/11/18(日) 05:59:09.14 ID:DLTUE4My0
- J( 'ー`)し「さーて、挨拶回りに行こうかしらね」
気合を入れて、カーチャンはそう言った。
( ^ω^)「僕も手伝うお」
僕も気合を入れて応える。
J( 'ー`)し「じゃあカーチャンは自転車で遠い方に行こうかしら」
( ^ω^)「近場は僕に任せてほしいお」
田舎道は入り組んでなく、分かりやすい。
高い建物もない為、周囲も見渡せる。
僕は自信満々にそう言った。
J( 'ー`)し「うちの前の道沿いにあるお家を頼むわね」
そう言われ、いくつかの菓子折りを受け取る。
全部で11個。結構あった。
一緒に渡された袋に、それを詰める。
J( 'ー`)し「ちゃんと挨拶するのよ?」
心配なのか、念を押される。
( ^ω^)「大丈夫だお 任せてくれお」
僕のその返事に、カーチャンはにっこりと微笑んだ。
- 19: ◆ECmvgmi7GI :2007/11/18(日) 06:00:45.13 ID:DLTUE4My0
- J( 'ー`)し「お隣のデレさんの所は、もう挨拶してあるからね」
そう言われ昨日会った少女、ツンのことを思い出した。
あの子には会えないのか…少し残念だ。
今は挨拶回りが優先だと、僕は思考を切り替えた。
J( 'ー`)し「カーチャンはちょっと後から行くから、先にいってらっしゃい」
( ^ω^)「わかったお」
J( 'ー`)し「気をつけてね」
カーチャンの言葉に、僕は笑顔で応えた。
居間を出て、玄関へ向かう。
木の床が軋む音すら、今の僕には心地良い。
単なるお使いだったが、新しい土地を回るという意味で、僕は楽しみで仕方なかった。
この町に住む人達は、どんな人達なのだろうか?
僕と同年代の人はいるのだろうか?
期待を胸に、僕は外へと歩き出した。
………。
……。
…。
- 20: ◆ECmvgmi7GI :2007/11/18(日) 06:02:19.19 ID:DLTUE4My0
- ───同日 10:13 ツン・デレ───
寝坊してしまった。
急いで着替え、顔を洗い、歯を磨き、髪を整える。
食事時は控えようと、余裕をもってお昼前に内藤君の家を訪ねようと思っていたのに…失敗だ。
幸先不安。朝から気が滅入る。
私はクーの励ましを思い出して、鬱になった気分を吹き飛ばす。
ξ゚听)ξ「よしっと…」
鏡に映った整え終えた髪を見て、静かに呟く。
自分の中では会心の出来。
後は、笑顔が問題だ。
鏡に向かって微笑んでみる。
ξ゚ー゚)ξ「……」
ぎこちない笑顔だった。
こんなので大丈夫なんだろうか。
でも、何もしないよりはマシだ。
そう思い、私は携帯を取り外へ出た。
迎えてくれた日差しは、とても暖かかった。
迷いの晴れた私は、すぐ近くにある内藤君の家へと向かった。
- 22: ◆ECmvgmi7GI :2007/11/18(日) 06:05:36.53 ID:DLTUE4My0
- ξ゚听)ξ「ごめんくださーい」
内藤君の家の玄関の前で、大きく声を出す。
………。
返事はない。
ξ゚听)ξ「ごめんくださーい!」
もう一度、さっきよりボリュームを上げて、声を発した。
しかし返事はなかった。
どうやら留守のようだ。
いきなり出鼻を挫かれてしまった。
どうしようと玄関の前で途方に暮れる。
悪いことは続くものなのか、あの再会からこっち、不安だらけだ。
どうしようか考えていると、後ろで気配を感じた。
「どうしたの?」
気配は声をかけてきた。
私は振り返る。
ξ゚听)ξ「あ…」
振り返った先には、私の知っている顔があった。
- 23: ◆ECmvgmi7GI :2007/11/18(日) 06:07:11.93 ID:DLTUE4My0
- ('、`*川「どうしたの?」
私の知っているその人が、もう一度心配そうにそう尋ねる。
ξ゚听)ξ「こんにちは、ペニサスさん」
私はとりあえず挨拶をした。
('、`*川「こんにちは、ツンちゃん」
そして挨拶を返すペニサスさん。
私の家の近くに住む大学生の彼女には、昔からよくお世話になっていた。
勉強やお料理等を、色々教えてもらっている。
そんな優しい彼女の目に留まり、心配させてしまったらしい。
私はすぐに事情を説明した。
ξ゚听)ξ「この家の人を訪ねてきたんですけど、留守みたいで…」
('、`*川「あぁ、内藤さんね ちょっと前にうちに挨拶をしに来てたわよ」
ξ;゚听)ξ「ほ、ほんとですか?」
どうやら入れ違いだったようだ。
改めて寝坊したことを後悔した。
('、`*川「対応したのはうちの母だけど、ご近所を回ってるんじゃないかしら?」
なるほど…じゃあ追いかければどこかで会えるかもしれない。
- 24: ◆ECmvgmi7GI :2007/11/18(日) 06:08:47.21 ID:DLTUE4My0
- ξ゚听)ξ「ありがとうございます」
('、`*川「いえいえ〜 ちょっと今大学に行く途中なんだけど、
ツンちゃんバス停まで付き合ってくれないかしら?」
その間に、帰ってくるかもしれないしね、と彼女は付け加えた。
確かに、また入れ違いになるよりはいいかもしれない。
そう思った私は、ペニサスさんに付き合うことにした。
('、`*川「それで、内藤さんの家にはなんの用事だったの?」
暫く歩いていたら、ペニサスさんが質問してきた。
覚悟はしていたが、やはり聞かれた。
ξ゚听)ξ「…昔遊んだ子も引越してきてて、挨拶しようかなって」
('、`*川「なるほどね〜 で、好きなの?」
ぶっ。彼女のその言葉に思わず吹いてしまった。
ξ;゚听)ξ「ななななんでそうなるんですかぁ!」
('、`*川「あら やっぱり男の子なのね」
やられた…。後悔しても、もう遅かった。
- 25: ◆ECmvgmi7GI :2007/11/18(日) 06:10:41.86 ID:DLTUE4My0
- ('、`*川「まぁやけにおめかししてたし、予想はついてたんだけどね」
そう言ってクスっと笑うペニサスさん。
その笑顔はとても魅力的だった。クーといい私の周りには美人が多い。
そんな環境では、自分に自信を持つなんてなかなかできなかった。
('、`*川「ツンちゃん、可愛いわよ その子もきっとびっくりするわ」
そう言われても素直に喜べない。
ξ゚听)ξ「だといいんですけどね…」
私は覇気なくそう返事をする。
('、`*川「? まぁ自信を持って、がんばりなさい」
彼女の応援に、私は苦笑して、はいと静かに返事をした。
そんな話をしながら10分ほど歩き、バス停が見えてきた。
その時、私の携帯が鳴り出した。
………。
……。
…。
- 26: ◆ECmvgmi7GI :2007/11/18(日) 06:12:52.36 ID:DLTUE4My0
- ───同日 10:45 内藤ホライゾン───
のどかな田舎道を、ひたすら歩く。
菓子折りの数は、残り2個まで減っていた。
家を出て、約2時間。家の間隔はさほど広がってはいなかった。
が、訪ねる家の先々で、お茶を飲んでいけ等もてなされ、相当時間を食ってしまった。
田舎の温かみというのか、そういうものに触れて嬉しかったのだが…。
流石にお腹もお茶やお茶菓子でいっぱいになってしまい、前の2,3軒からは断っていた。
そんなことを考えているうちに、僕は次の家に着いた。
表札には、「流石」と書かれている。
僕は玄関の前に立ち、家主を訪ねた。
( ^ω^)「ごめんくださーい」
程なくして、玄関の戸が開かれた。
(´<_` )「はいはいっと、何の用事だ?」
( ^ω^)「昨日この辺りに引っ越してきた、内藤と言いますお よろしくお願いしますお」
何回も繰り返した台詞を言い終え、菓子折りを差し出す。
(´<_` )「おお、わざわざすまないな 俺は流石家の次男、弟者だ よろしく」
そう言って菓子折りを受け取る弟者さん。
(´<_` )「すまないが、家族は外出中なんだ 引っ越してきた旨は、伝えておこう」
- 27: ◆ECmvgmi7GI :2007/11/18(日) 06:14:56.40 ID:DLTUE4My0
- ( ^ω^)「わかりましたお 僕はホライゾンと言いますお」
(´<_` )「うむ、覚えた これからよろしく頼む」
そう言って、弟者さんは手を差し伸べてきた。
僕もそれに応え、手を出し握手をした。
どうやらいい人そうだ。
挨拶も程々に、そろそろお暇しようと思ったその時、家の奥から一人の男性が現れた。
( ´_ゝ`)「弟者、なにやら食い物の匂いがするぞ」
(´<_` )「起きたのか兄者 昨日この辺りに引っ越してきた内藤さんらしい」
( ´_ゝ`)「そうか、とりあえず弟者よ、その菓子折りをよこせ」
(´<_` )「兄者、時に落ち着け」
突然現れたその人、兄者という人の登場で、僕はどうしていいかわからず、棒立ちしていた。
(´<_` )「この人は俺の兄、兄者だ 兄者、この人は引っ越してきたホライゾン君だ」
弟者さんにそう言われ、兄者さんは僕の方を見た。
( ´_ゝ`)「よろしく頼む で、ホライゾン君は妹とかいるか?」
兄者さんの思わぬ質問に、面食らってしまった
- 28: ◆ECmvgmi7GI :2007/11/18(日) 06:17:09.83 ID:DLTUE4My0
- (;^ω^)「一人っ子ですお」
( ´_ゝ`)「そうか、残念だ」
(´<_` )「初対面の人に妹はいるかと聞く人間は、兄者しかいないだろうな」
( ´_ゝ`)「幼女の素晴らしさに気付けない弟を持って、兄は悲しいぞ」
(´<_` )「ロリコンの兄を持って、弟は悲しいぞ」
兄者さんが変態だと言うことはよくわかった。
(#´_ゝ`)「失礼だな とりあえずその菓子折りを渡してもらおう」
そう言った兄者さんは、弟者さんから菓子折りを奪い、廊下の奥へと消えていった。
(´<_` )「すまないな 変わり者なんだ」
( ^ω^)「面白そうな人ですお」
(´<_` )「そう言ってくれるとありがたい」
純粋に、面白かった。二人のやり取りを見て、仲が良いということも窺えた。
思ったより長居してしまったことに気付いた僕は、そろそろお暇しようと思った。
- 29: ◆ECmvgmi7GI :2007/11/18(日) 06:19:48.61 ID:DLTUE4My0
- ( ^ω^)「ではそろそろお暇しますお」
(´<_` )「そうか、お茶も出さずにすまなかった」
( ^ω^)「大丈夫ですお その言葉だけで充分ですお」
(´<_` )「何か困ったことがあったら、いつでも訪ねてきてくれ」
兄者には、気をつけてくれ、と付け加えられた。
それを聞いて思わず笑ってしまった。
( ^ω^)「おっおっ わかりましたお それでは失礼しますお」
(´<_` )「うむ 気をつけてな」
弟者さんに見送られ、僕は次の、最後の家へ向かった。
出会った人は皆親切で、面白くて、改めて引っ越してよかったと思った。
相変わらずの田舎道を進む。
もうすぐお昼だろうか、太陽の位置が高い。
お昼時にお邪魔したら悪いと思い、僕は早足で次の家へと向かった。
見えるのは一面の田んぼ。
気持ちの良い風に、脇道の草が踊る。
よく見るとつくしも顔を出していた。
幼い頃、僕はこの道を歩いたのだろうか。
あの桜を見ても、幼い時の記憶が甦る事はなかった。
今の僕には、見える景色が全て初めて見る物に感じられていた。
- 30: ◆ECmvgmi7GI :2007/11/18(日) 06:22:36.17 ID:DLTUE4My0
- そして、最後の家に着いた。
「素直」と書かれた表札を一瞥し、僕は玄関の前に立つ。
( ^ω^)「ごめんくださーい」
程なくして、玄関の戸が開かれた。
川 ゚ -゚)「はーい」
出てきたのは、とても美人な女性だった。
女性に免疫がない僕は、思わず魅入って、うろたえる。
川 ゚ -゚)「? どうかしたか?」
女性の声に、我に返った。
(;^ω^)「あ、昨日この辺に引っ越してきた、内藤と言う者ですお よろしくお願いしますお」
そう言った瞬間、女性は何かを考えているような表情をした。
そしてその顔が、笑顔に変わった。
川 ゚ー゚)「そうか、君が内藤君か よろしく頼む」
彼女はそう言った。まるで僕のことを知っているかのように。
( ^ω^)「? 僕のこと知ってるんですかお?」
僕はそのまま疑問をぶつけた。
- 33: ◆ECmvgmi7GI :2007/11/18(日) 06:24:55.06 ID:DLTUE4My0
- 川 ゚ -゚)「もちろんだ それと私と君とは同い年だから、そんなに硬くならないでくれ」
( ^ω^)「そうなのかお じゃあお言葉に甘えさせていただくお」
そう言われ、緊張が解ける。
大人びた印象の彼女が同い年だったことには、少し驚いた。
川 ゚ -゚)「私は素直クール クーとでも呼んでくれ」
( ^ω^)「僕は内藤ホライゾンだお ブーンって呼んでほしいお」
川 ゚ -゚)「ブーンか、了解した さっきの質問だが…」
聞き直そうと思っていたが、クーは自分から話し始めてくれた。
川 ゚ -゚)「昨日、ある女の子に会わなかったか?」
( ^ω^)「ツンさんのことかお?」
川 ゚ -゚)「そうだ 私はそのツンの友達なんだ で、君の事はツンから聞かされている
納得したか?」
( ^ω^)「納得したお」
なるほど、簡単な理由だった。
- 34: ◆ECmvgmi7GI :2007/11/18(日) 06:27:02.08 ID:DLTUE4My0
- しかし、友達に報告しただなんて、やはり気にしていたのだろうか。
あの時のツンの顔を思い出す。
少し胸が痛んだ。
川 ゚ -゚)「別にツンは落ち込んではいないから安心してくれ」
表情に出ていたのか、クーがそう言ってくれた。
( ^ω^)「ありがとうだお」
クーの気遣いに、礼を返す。
ふと、菓子折りのことを思い出した僕は、慌ててそれを渡す。
( ^ω^)「これ、よかったら食べてほしいお」
川 ゚ -゚)「おお、すまないな 有り難くいただこう」
( ^ω^)「クーさんは、VIP高校なのかお?」
川 ゚ -゚)「クーでいい 私もツンも、VIP高校の普通科だ」
( ^ω^)「じゃあ僕と一緒だお よろしくだお」
川 ゚ -゚)「よろしく頼む」
心配していた学校生活に、一筋の光が差した。
まったく知らない人だらけで始まるよりは、断然いい。
- 35: ◆ECmvgmi7GI :2007/11/18(日) 06:28:40.45 ID:DLTUE4My0
- 川 ゚ -゚)「家族には、私から伝えておく 今から帰るとお昼を過ぎてしまうぞ」
そう言われ、僕は帰ることにした。
( ^ω^)「じゃあそろそろ帰ることにするお」
川 ゚ -゚)「ああ 気をつけてな」
クーの言葉聞き、軽く手を挙げ、背を向けた。
数歩歩いた、その時。
川 ゚ -゚)「ブーン」
呼び止められた。
何かと思い、振り返る。
川 ゚ー゚)「ツンのこと、よろしく頼む」
笑顔でそう言われた。
( ^ω^)「? わかったお」
意味がよくわからなかったが、僕は承諾した。
そうして前を向き直し、歩き始めた。
なぜだろうか。クーが見せた笑顔が、少し寂しそうな気がした。
………。
……。
…。
- 36: ◆ECmvgmi7GI :2007/11/18(日) 06:30:20.02 ID:DLTUE4My0
- ───同日 11:28 ツン・デレ───
着信音が、メールだと言うことを知らせていた。
私は携帯を取り出し、メールを確認する。
クーからだった。
『内藤君が挨拶回りでうちにきた。うちに向かえば会えると思う。
頑張れ。』
メールにはそう書かれていた。
ξ゚听)ξ「ペニサスさん」
('、`*川「うん?」
ξ゚听)ξ「ごめんなさい急用ができました」
('、`*川「あらあら 行っておいで〜 付き合ってくれてありがとうね」
ξ゚ー゚)ξ「また遊びましょうね」
笑顔でそう言い、私は元来た道を走った。
空回りしたが、やっと会えるかもしれない。
胸の中は期待に満ちていた。
- 37: ◆ECmvgmi7GI :2007/11/18(日) 06:31:54.66 ID:DLTUE4My0
- 5分ほど走って、流石に疲れた私は、歩くことにした。
そもそも息切れした状態では、普通に話せる自信がない。
乱れた呼吸は直っても、胸の鼓動は治まらなかった。
この道の先に、内藤君がいる。
それを考えただけで嬉しくなり、緊張が高まっていった。
もうすぐ、会える。
まずは昨日の謝罪、そして…笑顔。
ちゃんと笑える自信はない。
でも会わなくちゃ、前に進めない。
私は覚悟を決めた。
髪を手でいじったり、少し止まって深呼吸をしたり。
他人が見たら、随分と落ち着きがない様子に見えるだろう。
それでも構わない。今から私は、大勝負に臨むのだ。
ふと、メールの事を思い出し、クーにお礼のメールを送ることにした。
歩く足はそのままに、メールを打ち込む。
『ありがとっ! クーの家の方に向かってみるね!』
そう短く文を打ち込み、送信。
…なんとなく、内藤君のメモリを呼び出してみた。
果たしてここに、番号とメールアドレスを入れることができるのだろうか?
馬鹿らしい、私の楽しみ。
私は苦笑して携帯を閉じ、顔を上げた。
- 39: ◆ECmvgmi7GI :2007/11/18(日) 06:33:42.96 ID:DLTUE4My0
- 道の先に、人影が見えた。
私はそのシルエットに見覚えがあった。
それを見つめ、歩く。
高鳴る心臓の音。
段々と大きくなる、彼。
今ははっきりと目に映る。
内藤君だ。
彼も私に気付いたらしく、こっちを見ていた。
縮まっていく距離。際限なく高鳴る鼓動。
そして、彼が目の前に、立ち止まった。
( ^ω^)「こんにちはだお」
彼も話しかけるつもりだったのか、挨拶をしてくれた。
ξ゚听)ξ「こんにちは」
なるべく落ち着いた口調で、挨拶を返す。
頭の中で繰り返される彼の声。
いけない…まずは謝らなくちゃ。
( ^ω^)「クーからツンさんのこと聞いたお」
- 40: ◆ECmvgmi7GI :2007/11/18(日) 06:35:16.51 ID:DLTUE4My0
- 先に話されてしまった。
でも何を聞いたんだろうか?
ていうかもうクーって呼んでる?
( ^ω^)「二人は友達で、VIP高校なんだおね? 僕も同じ高校なんだお」
同じ高校なのは予想がついていた。
この辺から通える高校はVIP高校だけだから。
彼の口からそれが確定したのは、嬉しかった。
ξ゚听)ξ「そうなんだ じゃあ新学期からよろしくね」
嬉しいくせに、出た台詞にはまるで感情がこもっていなかった。
( ^ω^)「だお それと…ツンさんの事覚えてなくて、ごめんお」
先に謝られてしまった。
ξ゚听)ξ「ううん それはもういいの」
謝らなくちゃ。
ξ゚听)ξ「私も取り乱しちゃって、昨日はごめんなさいね」
言えた。やっと謝ることができた。
( ^ω^)「気にしてないから大丈夫だお」
彼はそう言ってくれた。
- 41: ◆ECmvgmi7GI :2007/11/18(日) 06:36:56.46 ID:DLTUE4My0
- 昨日よりは、頭の中は落ち着いている。
でも胸の高鳴りは相変わらず。
謝罪は済んだ。
後は、笑顔。
ξ゚听)ξ「と、ところで、私のことは呼び捨てでいいわよ」
さん付けで呼ばれるのがとても離れている気がして、そう言った。
( ^ω^)「わかったお、ツン 僕のことはブーンでいいお」
ξ゚听)ξ「ブ、ブーン?」
何の関連性もない呼び名に、思わず聞き返してしまった。
( ^ω^)「走るのが好きで、ブーンブーン走ってたら、こう呼ばれるようになったんだお」
ブーンブーン走ってたから、ブーン…?
ξ゚听)ξ「ブーン…」
( ^ω^)「おっ?」
ξ゚听)ξ「変なの」
思わず口に出してしまった。
- 42: ◆ECmvgmi7GI :2007/11/18(日) 06:38:39.60 ID:DLTUE4My0
- (;^ω^)「ツンひどいお… やっぱり覚えてないこと根に持ってるのかお」
ξ;゚听)ξ「そ、そうじゃないってば! つい口に出ちゃったの!」
( ^ω^)「ツンは正直者なんだおね」
だめだ。悪い印象ばかり与えてしまっている気がする。
口に出るのは、彼を傷つける言葉ばかり。
( ^ω^)「ところでツンは、クーの家に行く途中なのかお?」
ブーンに会いにきたなんて、言えるわけがない。
どうしようどうしよう。なんて言ったらいいのか…
迷った上に出た答えは…。
ξ゚听)ξ「そ、そうよ! 文句ある?!」
(;^ω^)「も、文句はないお…」
また突っかかってしまった…。
本当に素直になれない自分が嫌になる。
( ^ω^)「じゃあそろそろお昼も近いし、僕は帰るお」
- 44: ◆ECmvgmi7GI :2007/11/18(日) 06:40:14.61 ID:DLTUE4My0
- だめだ。ブーンが帰ってしまう。
ξ;゚听)ξ「あ…」
( ^ω^)「ツン」
名前を呼ばれた。
ξ゚听)ξ「う、うん?」
( ^ω^)「これからよろしくお願いするお」
ξ゚听)ξ「……」
彼は笑顔で、そう言った。
その笑顔は、とても輝いて見えた。
私も…応えなきゃ。
ξ゚ー゚)ξ「こちらこそ、よろしくね」
笑顔で言えた、気がした。
………。
……。
…。
- 46: ◆ECmvgmi7GI :2007/11/18(日) 06:42:18.39 ID:DLTUE4My0
(*^ω^)「やっと笑ってくれたお」
ツンの笑顔を見て、思わず口に出た。
見たかった、ツンの笑顔。
それはとても可愛らしく、眩しく見えた。
ξ////)ξ「ば、ばか! 知らないんだから!」
真っ赤になった彼女はそう言って、クーの家の方へと走っていってしまった。
一人ポツンと残された僕。
ツンの笑顔を思い出し、一人でにやけていた。
これからはもっと自然な形で、彼女は笑顔を見せてくれるのだろうか?
もっと彼女の笑顔を見てみたい。
気がつけば僕は、ツンのことばかり考えていた。
少し恥ずかしくなった僕は、家へと向かう。
その間も、頭に浮かぶのはツンの…
眩しい、笑顔だった。
………。
……。
…。
- 47: ◆ECmvgmi7GI :2007/11/18(日) 06:43:03.37 ID:DLTUE4My0
少女は笑顔を見せることができた。
少年は笑顔を見ることができた。
しかし少女は、相変わらず素直になれなかった。
果たして少女は、自然に少年と話すことができるのだろうか?
別の道を歩く二人。
小さな願いが叶った二人は、お互いのことをまた考えていた。
お互いの笑顔を、思い出しながら。
思い出す二人の顔はまた、笑顔だった。
続く……。
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