( ^ω^)桜舞い散る中に忘れた記憶が戻ってくるようですξ゚听)ξ

4: ◆ECmvgmi7GI :2007/11/25(日) 00:12:49.91 ID:coUv4dhy0
───3月26日 19:49 内藤ホライゾン───

夕食を食べ終えた僕は、居間でくつろいでいた。
挨拶回りでカーチャンは野菜をたくさんもらったらしい。
その野菜は煮物、味噌汁、サラダとなって食卓に並び、とてもおいしかった。
どうやらもらいすぎたようで、まだまだ残っているようだ。
野菜も好きな僕にとって、とても楽しみだった。

食器を洗い終えたカーチャンが戻ってくる。

J( 'ー`)し「はい」

差し出された湯のみを受け取り、少し熱いお茶に口をつけた。

( ^ω^)「ふー… ありがとうだお」

J( 'ー`)し「どういたしまして」

テーブルの向かいに座ったカーチャンも、同じ様にお茶を飲み、一息。
食後の安らぎの一時。
都会を離れたせいもあってか、今までにない程ゆったりとした気分だった。



7: ◆ECmvgmi7GI :2007/11/25(日) 00:14:51.92 ID:coUv4dhy0
部屋の隅に目をやれば、そこには積み重なったダンボール。
ここだけじゃない。廊下や玄関にはまだ開封されていないダンボールが山積みだ。
まだこっちに着いて一日しか経っていない。
いつの間にか届けられていた引越しの荷物を見て、それを実感した。

この一日で、色々な人に出会った。
その誰もが良い人で。
たったの一日で、僕はこの町が好きになった。

そして、初めての友達も出来た。
その子は、僕が知らない過去を知っている女の子。

よく考えたら、その時は友達だったのかもしれない。
だったら初めての友達ではないんじゃないのだろうか。
でもどうしても思い出せない。
ふと、覚えていないと告げた時の彼女の寂しそうな顔が過ぎり、そこで思い出すのをやめた。

もう僕等は、友達になった。
それでいいじゃないかと、考えることにした。



10: ◆ECmvgmi7GI :2007/11/25(日) 00:16:58.91 ID:coUv4dhy0
( ^ω^)「カーチャン」

テーブルの向かいでゆっくりとお茶をすすっているカーチャンに、僕は話しかけた。

J( 'ー`)し「なんだい?」

( ^ω^)「明日、学校に手続きに行ってくるお」

J( 'ー`)し「あら…一人で大丈夫?」

( ^ω^)「ツンと友達になったんだお それでツンがついてきてくれるんだお」

そう言って、少し照れ臭くなる。

J( 'ー`)し「そうなの? 早速お友達ができてよかったわねぇ…」

カーチャンは心から喜んでくれているようだった。

J( 'ー`)し「ツンちゃんとは、昔一緒に遊んでたもんね」

(;^ω^)「そのことは全然思い出せないんだお」

J( 'ー`)し「へぇ…どうしてかしらね?」

そしてまた湯のみを傾けるカーチャン。



13: ◆ECmvgmi7GI :2007/11/25(日) 00:18:28.08 ID:coUv4dhy0
( ^ω^)「でももう、友達だお」

僕はさっき自分で出した結論を、はっきりと口に出した。
カーチャンはお茶を飲んだ後に、にっこりと笑う。

J( 'ー`)し「手続きの書類は用意しておくからね」

( ^ω^)「よろしくだお」

J( 'ー`)し「何時くらいにいくの?」

( ^ω^)「10時くらいにツンが迎えにきてくれるらしいお」

J( 'ー`)し「じゃあそれまでに準備しておくわね」

そう言ったカーチャンの顔は嬉しそうだ。
僕は残りのお茶を一気に飲み干した。

( ^ω^)「先に風呂入ってくるお」

J( 'ー`)し「いってらっしゃい」

カーチャンの声を背中で受け、僕は風呂場へ向かった。



15: ◆ECmvgmi7GI :2007/11/25(日) 00:19:49.09 ID:coUv4dhy0
薄暗い廊下を手探りで歩く。
まだこの家には慣れていない。
多少のリフォームはしてあるが、都会の灯りには及ばない。

田舎と言っても、水を汲んで薪を焚いてお湯をわかすほどの田舎じゃない。
水道も電気も通っているし、お湯はガスで沸かせられる。
そういった意味では、景色以外はあまり変わらない気がする。
いや、交通の便もあったか…。

どうやら問題はそれくらいらしい。
交通面は田舎に住む以上覚悟していたし、それぐらいなら許容範囲だ。
利便性なんかよりも大切な、素敵な人達に出会えた僕には、そんなことはどうでもよかった。

お風呂についた僕は、早々に服を脱いで、湯船に浸かる。
今日は色々なことがあって、流石に疲れてしまった。
でも、心地良い疲れだ。

僕は肩までお湯に浸かり、ゆっくりと目を閉じて、今日の事を思い出していた。

………。
……。
…。



16: ◆ECmvgmi7GI :2007/11/25(日) 00:21:32.39 ID:coUv4dhy0
───3月27日 2:40 ツン・デレ───

予想通り、全く眠れない。
これは困った。明日はブーンと出かけなきゃいけないのに…。
もう今日、何度思い出したかわからないブーンのことを思い出す。

…だめだめ。いい加減にしないと、ほんとに寝坊しちゃう。
でもそう言い聞かせても、浮かぶのはブーンの笑顔。
友達になったこと。携帯番号を交換したこと。


一緒に桜を見たこと。


彼は覚えていなかったし、私ももう気にしないと誓ったはずなのに。
どうしても思い出してしまう。

小さい頃、あそこで一緒に遊んでいたこと。
そして、あそこで交わした約束のことを…。

………。
……。
…。



17: ◆ECmvgmi7GI :2007/11/25(日) 00:22:42.63 ID:coUv4dhy0
空を、見上げた。
一面に広がる、青。
少し視線を落とすと、もう一つの色。
それは優しい、鮮やかな桜色。

風が吹く。青いキャンパスにキラキラと桜の花びらが舞う。
それは美しく、儚く見えた。

そんな桜のある公園で、小さな男の子と女の子が遊んでいた。
僕はその二人を見つめていた。

声も出ないし、足も動かない。
僕はそれで、これが夢であることに気づいた。
たまにこういうことはある。

これが夢なのだとわかる時が。

僕は二人を見ていることにした。



18: ◆ECmvgmi7GI :2007/11/25(日) 00:24:30.05 ID:coUv4dhy0
本当に仲がよさそうな二人。
顔はよく見えないが、楽しそうだ。

男の子の笑い声が聞こえる。
でもなぜか、女の子の笑い声は聞こえない。

いつの間にか青い空は、夕日の赤で染まっていた。
二人は桜の木の下に立っている。

女の子がうつむき、何かを言ってるようだった。
それがなんなのか、まったく聞き取れない。

なぜかその少女の言葉は、とても大切な言葉のように感じた。

言い終えた少女の後、少年は力強く、はっきりと。

       
        『わかったお!』
       
       
少年が誓った瞬間、桜が舞い散り、空へと消えていく花とともに僕の意識も溶けていった。

………。
……。
…。



20: ◆ECmvgmi7GI :2007/11/25(日) 00:26:39.38 ID:coUv4dhy0
三度夢の中で出会った少年。

それは、遠い過去の記憶。

だがそんなことには気づくはずもなく。

少年は流れに身を任せる。

それは、少女も決めていたこと。

思い出は、胸にしまう。

大事なのは、これからなのだ。


( ^ω^)桜舞い散る中に忘れた記憶が戻ってくるようですξ゚听)ξ


───第五話『友達』───



21: ◆ECmvgmi7GI :2007/11/25(日) 00:28:23.74 ID:coUv4dhy0
───同日 9:20 ツン・デレ───

カーテンから漏れる暖かい日差しが、顔にかかる。
お布団の暖かさも相まって、とても心地良い。
夢を見ていたらしいが、よく思い出せない。

まだ少し眠い。
春休みが終わるまでまだ少しある。
私は貴重なゆっくりできる時間をもう少し楽しもうと、再び夢の中へ…。

ξ;゚听)ξ「旅立つなぁぁぁ!」

ブーンとの約束を思い出した私は、飛び起きた。
時計を見る。9時26分。
約束は10時…これは朝食を食べる時間はない。

私は急いで制服に着替えた。
休みであっても、学校へ行く時は制服でなくてはならない。
めんどくさい校則だ。

顔を洗いに、洗面所へ向かう。



23: ◆ECmvgmi7GI :2007/11/25(日) 00:30:08.27 ID:coUv4dhy0
ドタドタと足音をたててしまった為、母親に注意された。
でもそんなことに構っている時間はない。

洗面所に着き、顔を洗い、歯を磨く。
そして強敵のくせっ毛に挑む。
なんでこんな不思議なくせっ毛になったのだろうか…。
と思いつつも、手入れはめんどくさいが、嫌いではなかった。
どちらかというと、お気に入りだ。

ξ゚ー゚)ξ「よしっと」

鏡に映った姿を見て、満足気に微笑み、一言。
時間もないので母親に朝食はいらないと告げ、私は家を出た。

今日も暖かくて、いい天気だ。
ふと、昨日見た桜を思い出す。
この陽気で、またいくつか蕾が開くんだろうか。
満開になったら、昨日話したとおりお花見をしよう。

今から、楽しみだ。



25: ◆ECmvgmi7GI :2007/11/25(日) 00:31:29.94 ID:coUv4dhy0
ふと、ブーンと携帯番号を交換していたことを思い出す。
私はもう少しで着く、とメールをしてみた。
程なくして、返事が返ってくる。

『わかったお! 家の前で待ってるお!』

ブーンの独特の口調がそのままメールに出ていて、少し笑ってしまった。
携帯をしまい、前を向く。

そういえば久しぶりに制服を着た。
春休み、ほぼ毎日ごろごろしていた。足が太くなっていないだろうか…。
私は短めのスカートから伸びた足を見る。
…うん。多分大丈夫。
それに、今更気にしたってどうしようもない。
そう前向きに考えて、歩みを進めた。

学校が始まったら、ブーンとも一緒に通うことになるのかな。
そう思うと、休みが終わるのも惜しい反面、学校が楽しみになってきた。

ブーンが来てから、楽しいことだらけになっていた。



27: ◆ECmvgmi7GI :2007/11/25(日) 00:33:13.39 ID:coUv4dhy0
やがて、ブーンの家が見えてきた。
メールの通り、ブーンは家の前に出ていた。
ブーンもこっちを見て手を振っている。
私はそれを見て駆け寄った。

ξ゚听)ξ「ブーン お待たせ」

( ^ω^)「おはようだお」

ξ゚听)ξ「おはよー」

朝の挨拶を交わす。
それだけで嬉しくなる。

( ^ω^)「それ、制服かお?」

ξ゚听)ξ「うん 休みでも学校には制服で行かないといけないの」

( ^ω^)「なるほど、納得したお」


ブーンは私服だったが、転入生だし問題ないだろう。
とりあえず行こうと言いかけた、その時。



28: ◆ECmvgmi7GI :2007/11/25(日) 00:34:54.25 ID:coUv4dhy0
( ^ω^)「制服可愛いお 似合ってるお」

ξ////)ξ「ちょ、ちょっと急に何言い出すのよ!」

突然のブーンの言葉に、一気に顔が熱くなった。
そんな私の言葉にも、首を傾げて頭に?マークなんか出している。
よく恥ずかしげもなく言えるもんだわ…。

( ^ω^)「ツン? どうしたお?」

ξ*゚听)ξ「いいから! 行きましょ!」

これ以上何を言われるかわかったもんじゃない。
私は無理やり話を打ち切り、そう促した。


…まぁ、嬉しかったけどさ……。


私の気持ちを知ってか知らずか、後に続く彼の顔は笑顔だった。

……知るわけないか。



30: ◆ECmvgmi7GI :2007/11/25(日) 00:36:41.53 ID:coUv4dhy0
バス停に着いた時、丁度バスが来る頃だった。
早めに出たと思ったが、ブーンとのやり取りのせいでギリギリになってしまったらしい。
これを逃がしたら1時間待たなくてはいけなかったので、助かった。
ほっとして、バスに乗り込む。

中はがらんとしていた。
元々、バスを利用する人は少ない。
バス停ができる前は公共の移動手段がまったくなかった為、自家用車が必須だった。
だからそれがある人達は、今でも自分達で街へ行く。
それがない私達、つまり学生や病院通いのお年寄り達が主に利用していた。

ξ゚听)ξ「荒巻さん、おはようございます」

/ ,' 3「ツンちゃんか、おはよう」

すでに顔見知りの運転手、荒巻さんに挨拶をする。

( ^ω^)「おはようございますお」

/ ,' 3「おはようさん 確か…内藤さんの所の?」

( ^ω^)「そうですお」

荒巻さんが私とブーンを交互に見る。



31: ◆ECmvgmi7GI :2007/11/25(日) 00:38:13.15 ID:coUv4dhy0
/ ,' 3「なるほど… 手が早いのう」

ξ*゚听)ξ「ち、違います! ただの友達です!」

すぐに否定して、座席に座った。

( ^ω^)「? お?」

ξ;゚听)ξ「いいからブーン! こっち!」

本当にブーンは鈍い。
それが面白いんだけど、ね。

荒巻さんが笑いながらバスを発進させた。

隣に座っているブーンをちらりと見る。
落ち着かない様子でキョロキョロしていた。
少し可笑しくなり、視線を窓の外へ移す。
流れるのは見慣れた、退屈な風景。

でも隣にはブーンがいる。
それだけで、なぜか違う気がした。



32: ◆ECmvgmi7GI :2007/11/25(日) 00:39:50.51 ID:coUv4dhy0
( ^ω^)「ツン」

不意に、ブーンに呼ばれた。

ξ゚听)ξ「ん?」

( ^ω^)「ツンも毎朝バスで学校に通うんだおね?」

ξ゚听)ξ「そうよ たまにクーも一緒かな?」

( ^ω^)「たまになのかお?」

ξ゚听)ξ「クーは妹がいてね、妹達は車で送ってもらってるから、
     一緒に送ってもらってることが多いの」
     
( ^ω^)「なるほど、納得したお」

ξ゚听)ξ「で、私は毎日バスだけど、どうしたの?」

話を戻す。

( ^ω^)「じゃあ、毎日一緒に学校行こうお」



33: ◆ECmvgmi7GI :2007/11/25(日) 00:41:29.62 ID:coUv4dhy0
まただ。なんでこうも私をドキっとさせることを、平気で言うんだろう。
きっと、間違いなく本人に自覚はないのだろうけど…。
私も意識しすぎて、過剰に反応してるのかもしれない。

ξ゚ー゚)ξ「いいわよ」

私もそのつもりだし。と心の中で付け加えた。
照れ隠しに笑顔で答えるのがやっとだった。

その後も、学校のことや街のことを色々話した。
本当だったら、学校までの退屈な時間が、とても楽しく過ぎていく。
ブーンが帰ってきただけで、こんなにも世界が変わる。
もちろんクーと一緒にいる時も、一人で登校する時よりは楽しい。
でも何かが違う。

私にとって、ブーンはやはり特別な存在なんだと、実感した。

………。
……。
…。



34: ◆ECmvgmi7GI :2007/11/25(日) 00:44:41.66 ID:coUv4dhy0
───同日 11:50 内藤ホライゾン───

バスを降り、電車に乗り、さらに歩いて15分のところにVIP高校はあった。
片道約1時間半。通学はなかなかに、大変そうだ。

学校に入ると、春休みにも関わらず、結構な人が居た。
グラウンドには運動部の声が飛び交っている。
ツンによると、職員室のある校舎はグラウンド寄りにあるらしい。
僕とツンは並んで歩く。

すると、一人の生徒がこっちに走り寄ってきた。
女の子だ。

(*゚ー゚)「ツーン! どうしたの? 珍しいね?」

ξ゚听)ξ「やっほー、しぃ ちょっと付き添いでね」

(*゚ー゚)「ん! 男の子! これは何か匂います!」

ξ;゚听)ξ「ちょっと、やめてよ!」

どうやら二人は友達らしい。
僕はどうしていいかわからず、呆然と二人を眺めていた。



36: ◆ECmvgmi7GI :2007/11/25(日) 00:46:26.23 ID:coUv4dhy0
ξ゚听)ξ「この人は内藤ホライゾン君 昨日引越してきたの
     で、道もよくわかってないから学校まで案内したの」
     
(*゚ー゚)「ふーん、そうなんだ」

ξ゚听)ξ「ブーン、この子は去年同じクラスだった友達の、しぃ」

(*゚ー゚)「よろしくねー」

( ^ω^)「よろしくですお」

(*゚ー゚)「で、ブーンって何?」

ξ゚听)ξ「昔ブーンブーン言ってたから、ブーンなんだって」

(*゚ー゚)「あはは! なにそれー! おもしろい」

(;^ω^)「恥ずかしいですお」

(*゚ー゚)「ごめんごめん ブーン君、よろしくね!」

なんていうか、明るい子だなと思った。



37: ◆ECmvgmi7GI :2007/11/25(日) 00:48:18.77 ID:coUv4dhy0
ξ゚听)ξ「しぃはサッカー部の練習?」

(*゚ー゚)「うん といってもほとんど自主練なんだけどね」

ξ゚听)ξ「ギコ君、ね」

(*゚ー゚)「その通り〜♪」

ξ゚听)ξ「あーっと、しぃはサッカー部のマネージャーでね
     サッカー部エースのギコ君と付き合ってるの」
     
( ^ω^)「なるほど、把握したお」

会話についていけない僕に気づいたツンが、フォローしてくれた。
すると、誰かが近づいてきた。

(,,゚Д゚)「しぃ、何してんだ?」

(*゚ー゚)「あー 噂をすればギコ君だー」

(,,゚Д゚)「? 俺の噂してたのか?」

どうやらこの人がギコ君という人らしい。
僕よりも少し背が高く、ワイルドな感じがする。



39: ◆ECmvgmi7GI :2007/11/25(日) 00:50:06.78 ID:coUv4dhy0
一方のしぃさんは、背はツンより少し低い。
が、胸はツンより大きい。
どちらも、顔はいい。
美男美女で、お似合いだった。

ξ゚听)ξ「ギコ君、これ転入生の内藤ホライゾン君 あだ名はブーン」

これってツンさん。

(,,゚Д゚)「お、転校生か! 俺はギコだ よろしくな」

( ^ω^)「よろしくですお」

(*゚ー゚)「ブーン君学年は?」

( ^ω^)「ツンと一緒で、今年から2年ですお」

(,,゚Д゚)「じゃあタメだな」

(*゚ー゚)「だねー 皆一緒のクラスになれるといいねっ」

( ^ω^)「その時はよろしくですお」

(,,゚Д゚)「硬いって もっと気軽にしゃべってくれよ」

( ^ω^)「じゃあ、よろしくだお!」

(*゚ー゚)「よろしくー!」



40: ◆ECmvgmi7GI :2007/11/25(日) 00:51:40.52 ID:coUv4dhy0
ξ゚听)ξ「じゃあそろそろ行きましょ?」

(*゚ー゚)「あ、引き止めちゃってごめんね?」

( ^ω^)「大丈夫だお 二人も練習頑張ってくれお」

(,,゚Д゚)「ありがとな 新学期からよろしくな!」

(*゚ー゚)「まったねー!」

そう言って二人は仲良くグラウンドへ戻っていった。
一緒のクラスになったら、友達になれるだろうか。

ξ゚听)ξ「じゃあ、行きましょ」

密かな期待を胸に、僕はツンと校舎に向かった。

( ^ω^)「あの二人、ほんとに仲良さそうだったお」

ξ゚ー゚)ξ「もー呆れるくらいラブラブよ」

( ^ω^)「ツンも仲良さそうだったお」

ξ゚听)ξ「この辺は学校が少ないからね 小学校からの付き合いよ」

( ^ω^)「そうなのかお」



41: ◆ECmvgmi7GI :2007/11/25(日) 00:53:14.53 ID:coUv4dhy0
このVIP市以外の学校となると、少し離れたラウンジ市まで行かなくてはいけなかった。
ちなみに、僕が前に住んでいた所がラウンジ市だ。

受験の時に確認した記憶がある。
進学校のラウンジ高校と、スポーツのVIP高校。
いわゆる学校の評価は、そんな感じだった。
それでも、VIP高校も多少偏差値が高かったのを、僕は覚えていた。

外見が綺麗な校舎に入る。
入ったところで、ツンが先生を呼んできてくれるらしく、僕は待つことになった。
連絡はすでにカーチャンがしてくれているはずだ。
退屈凌ぎに、校舎内を見渡す。

しっかりと掃除の手が行き届いているらしく、とても綺麗だ。
もしかしたら新校舎かもしれない。
後でツンに聞いてみよう。

そんな事を考えている内に、ツンが先生らしき人を連れて戻ってきた。



44: ◆ECmvgmi7GI :2007/11/25(日) 00:55:17.68 ID:coUv4dhy0
( ・∀・)「やぁ 君が内藤君かい?」

落ち着いた雰囲気の男性が、着くなり僕に声をかけた。

( ^ω^)「そうですお よろしくお願いしますお」

( ・∀・)「こちらこそ 私は来月から2年生の学年主任を担当する、モララーだ」

挨拶も程々に、僕は応接室に案内された。

( ・∀・)「君はどこかで待っていてくれ すまないね」

ξ゚听)ξ「わかりました」

( ・∀・)「すぐ終わると思う」

一緒について来たツンを入り口に残し、僕とモララー先生は応接室に入った。

………。
……。
…。



45: ◆ECmvgmi7GI :2007/11/25(日) 00:57:04.56 ID:coUv4dhy0
───同日 12:21 ツン・デレ───

ブーンとモララー先生の背中を見送り、私は一息ついた。
暇になってしまった。
このまま一人でいるのも退屈なので、しぃの所へ行こうかと思っていた、その時。

(*゚∀゚)「あーまったく! なんで休みに学校こなくちゃなんないのさ!」

勢い良く教室の戸を開け、不満をたらしながら出てくる一人の生徒がいた。
私はその子を知っている。

ξ゚听)ξ「つーじゃない どうしたの?」

呼びかけ、つーに近づく。

(*゚∀゚)「おっとツンじゃない! ちょっと聞いておくれよ!」

そう言って、ヨヨヨと大袈裟に泣き真似をした。
彼女は去年同じクラスで、友達のつー。
とても明るい女の子だ。

(*゚∀゚)「青春に精一杯打ち込んでる私にこの仕打ち…ひどいと思わないかい?!」

ξ゚听)ξ「よくわかんないんだけど」

まったく、理解不能だった。



46: ◆ECmvgmi7GI :2007/11/25(日) 00:58:56.69 ID:coUv4dhy0
「よーするに、部活に熱中しすぎて補習くらったってこった」

私の疑問に答えたその声は、つーの後ろから聞こえた。

('A`)「ま、俺も似たようなもんだけどな」

ξ゚听)ξ「あら、ドクオもいたんだ」

('A`)「おう もう一人いるぜ」

(´・ω・`)「やぁ」

ξ゚听)ξ「あれ? ショボンまで補習?」

(´・ω・`)「いや、ちょっと学校に用事があってね ドクオもいたんで少し話してたのさ」

(*゚∀゚)「ショボンは優等生だからねぇ…羨ましい限りだよ!」

ドクオとショボンも、去年同じクラスだった友達だ。
席が近かったせいもあり、クラスの中では特に仲が良くなった。

(*゚∀゚)「そういえば、ツンはどうして学校にいるんだい?」



48: ◆ECmvgmi7GI :2007/11/25(日) 01:00:54.89 ID:coUv4dhy0
ξ゚听)ξ「うん、近くに引越してきた転校生の付き添いでね」

そう言った瞬間、ドクオとつーが目を輝かせた。

('A`)「まじか?! 何年だ? 女か?!」

(*゚∀゚)「ほんと?! 男の子?! かっこいい?!」

(´・ω・`)「落ち着きなよ」

ξ゚听)ξ「男の子で、同じ学年よ」

('A`)「男かよー せっかくフラグ立ったと思ったのに…」

(*゚∀゚)「ドクオには永遠にフラグなんか立たないって 男の子かー!」

ξ゚听)ξ「うん 今手続きしてるところ」

(*゚∀゚)「へー じゃあ一緒に待ってていい?」

ξ゚听)ξ「それは構わないわよ」

(´・ω・`)「僕も興味がある」

('A`)「俺も俺も!」



50: ◆ECmvgmi7GI :2007/11/25(日) 01:02:21.73 ID:coUv4dhy0
ということで、私達4人は一緒に待つことになった。
一緒のクラスになったら、ブーンもこの輪に加わることになるんだろうか。
今から、楽しみだった。

4人でぞろぞろと応接室に向かう。
途中でブーンについて質問責めにあった。
その時、私は名前と年以外ブーンのことを何も知らないことに気づいた。
誕生日も、血液型も、身長も。

答えられないことが、少し悔しかった。

私も今度、ブーンのことを色々と聞いてみよう。

私のことも、教えるから。

………。
……。
…。



52: ◆ECmvgmi7GI :2007/11/25(日) 01:04:19.68 ID:coUv4dhy0
───同日 12:50 内藤ホライゾン───

( ・∀・)「じゃあ、始業式までに制服は用意しておいて」

( ^ω^)「わかりましたお」

思ったよりも手続きは早く済んだ。
カーチャンが用意してくれた書類を渡して、何やらよくわからない書類にサインしただけだ。
話した感じ、いい先生だった。
落ち着いた口調が安心させられる。
これが大人の余裕という物だろうか。

( ・∀・)「よし、では4月からよろしく頼むよ 内藤君、我が校は君を歓迎する」

( ^ω^)「よろしくお願いしますお」

手を差し出され、それを握り返す。
僕より大きなその手は、温かかった。

( ・∀・)「ほら、友達も待ってるようだ 行ってあげなさい」

そう言われ、僕は戸を見る。
貼り付けられた窓には人影がいくつか見えていた。

( ^ω^)「それでは、失礼しますお」

モララー先生に一礼し、僕は応接室を後にした。



53: ◆ECmvgmi7GI :2007/11/25(日) 01:06:06.14 ID:coUv4dhy0
ξ゚听)ξ「お疲れ様」

廊下に出た僕に、ツンが労いの言葉をかけてくれた。
その直後。

(*゚∀゚)「ブーン君だって? おもしろいあだ名だね!」
('A`)「ブーンって呼んでいいか?」
(´・ω・`)「やぁ、こんにちは」

知らない三人に一斉に声をかけられた。
思わず後ずさりして、3人をキョロキョロと見る。

ξ;゚听)ξ「ちょ、ちょっと 順番順番! 困ってるじゃない」

見かねたツンが、助け舟を出してくれた。
3人と僕の間に割って入り、紹介し始める。

3人の興味の視線を感じながら、ツンに紹介される。
ちょっと、居辛かった。

………。
……。
…。



54: ◆ECmvgmi7GI :2007/11/25(日) 01:08:19.18 ID:coUv4dhy0
自己紹介をした後、どこかでゆっくり話をしようということになり、
お腹も空いてきたこともあり、僕達は長岡食堂へ行くことにした。
その道中も僕は質問責めにあった。
次々に飛んでくる質問に戸惑ったが、嬉しくも思った。

そして、長岡食堂に着く。

( ゚∀゚)「いらっしゃい!」

中に入ると、ジョルジュさんの景気のいい声が飛んできた。
店内は空いていたので、僕等は5人で座れるテーブル席についた。

ξ゚听)ξ「まぁ、オムライスよね」

(*゚∀゚)「だねー おいしいし財布にも優しい!」

(´・ω・`)「うん 問題ない」

('A`)「俺もそれでいいぜ」

…おっぱいオムライスはまた今度頼むことにしよう。
満場一致で注文が決まり、ジョルジュさんを呼んだ。



55: ◆ECmvgmi7GI :2007/11/25(日) 01:09:56.36 ID:coUv4dhy0
( ゚∀゚)「よー 早速きたか」

( ^ω^)「約束通り、きましたお」

( ゚∀゚)「ったくおっぱい4つも連れてきやがって 手がはええなおい!」

ξ゚听)ξ「はいはーい注文注文! オムライス5つね!」

( ゚∀゚)「あーいよ せっかちなおっぱいだぜ」

ξ#゚听)ξ「……」

ツンの殺気を感じてか、ジョルジュさんは逃げるように厨房へと戻っていった。

('A`)「んで、ブーンはなんか部活やってたのか?」

( ^ω^)「何もしてないお」

(´・ω・`)「へぇ じゃあ僕と一緒だね」

( ^ω^)「ショボンも何もしてないのかお?」

(´・ω・`)「うん ちょっと家を手伝わないといけなくてね」

(*゚∀゚)「ショボンの家、パン屋さんなんだよ!」



56: ◆ECmvgmi7GI :2007/11/25(日) 01:13:00.63 ID:coUv4dhy0
ξ゚ー゚)ξ「おいしいのよねー」

( ^ω^)「そうなのかお それは1回食べてみたいお」

(´・ω・`)「じゃあ今度うちにくるかい? 歓迎するよ」

( ^ω^)「まじかお! 行きたいお!」

不思議な程、気軽に話せていた。
自分はこんな口調で話すことができるんだと、驚いた。

(*゚∀゚)「あっとそうだ メアド交換しようよ!」

('A`)「おー 俺も頼むわ」

(´・ω・`)「それじゃ僕も」

突然の申し出に、僕は少し戸惑ってしまう。
慌てて携帯を取り出す。

( ^ω^)「よろしく頼むお」

こうして、僕の携帯に新しく3人のメモリが登録された。



57: ◆ECmvgmi7GI :2007/11/25(日) 01:16:07.84 ID:coUv4dhy0
( ^ω^)「あの」

携帯を閉じ、3人を見て、口を開く。
ツンも交じり、4人の視線が僕に集中する。

( ^ω^)「僕はあんまりこういうのに慣れてないけど…」

少し、胸の鼓動が早くなる。

( ^ω^)「よかったら、僕と友達になってほしいお」

望みを、言えた。
3人は顔を見合わせている。
ツンは、なぜか笑っていた。

('A`)「ていうか、もう友達じゃね?」

(´・ω・`)「うん 僕はそう思ってたけど」

(*゚∀゚)「あはは! いいよいいよ! じゃあ今から友達ってことで!」

そう、言ってくれた。



59: ◆ECmvgmi7GI :2007/11/25(日) 01:17:57.02 ID:coUv4dhy0
('A`)「んじゃ、改めてよろしくな ブーン」

(´・ω・`)「よろしく」

(*゚∀゚)「よろしくね!」

ξ゚ー゚)ξ「なんとなーく流れに混じって、よろしくね」

4人が、友達が、笑顔で僕を見ていた。


僕も、応えなきゃ──。


( ^ω^)「よろしくだお!」

はっきりと、『友達』に伝えた。

………。
……。
…。



61: ◆ECmvgmi7GI :2007/11/25(日) 01:19:54.07 ID:coUv4dhy0
夕日はすでに沈み、辺りは薄暗くなっていた。
朝歩いた道を、僕はツンと一緒に並んで歩く。

長岡食堂で昼食をとった後、皆でVIP市内を歩いて回った。
初めてできた友達と、初めて一緒に遊んだ。
その楽しい時間はあっという間に過ぎていった。
それから駅で別れ、今に至る。

ξ゚ー゚)ξ「嬉しそうね?」

顔に出ていただろうか。ツンがそう話しかけてきた。

( ^ω^)「一気に友達が増えて、嬉しいお」

僕は正直に答える。

ξ゚ー゚)ξ「同じクラスになれるといいね」

( ^ω^)「きっとなれるお そんな気がするお」

なぜそう思ったかはわからなかったが、今はそう言いたい気分だった。
ツンは静かに笑い、クーも一緒にね、と言った。

学校が、こんなにも待ち遠しく、楽しみに思ったのは、初めてのことだった。

………。
……。
…。



62: ◆ECmvgmi7GI :2007/11/25(日) 01:20:59.89 ID:coUv4dhy0
───同日 22:36───

空を、見上げた。そこには、満天の星空。

キラキラと光る星が、いつか見た空に舞い散る桜の花びらのように見えた。

私は手を伸ばす。星は掴めない。当然だ。

いつだったか、私のこの手を掴んでくれた人のことを思い出す。

あの時確かに感じた、温かいぬくもり。

私はそれをずっと覚えていた。

そしてそのぬくもりは、帰ってきてくれた。

でも、それは───……。

………。
……。
…。



続く……。



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