( ^ω^)桜舞い散る中に忘れた記憶が戻ってくるようですξ゚听)ξ

2: ◆ECmvgmi7GI :2007/11/29(木) 01:39:31.35 ID:SzSQz2Tx0
───4月5日 11:27 内藤ホライゾン───

('A`)「ブーン そっちもってくれ」

( ^ω^)「把握したお」

返事し、僕とドクオは大きなビニールシートを広げた。
動かないように両端を固定し、荷物を置く。

気持ちのいい晴れ間が広がる日曜日。
僕等は公園に花見をしに来ていた。

といっても、大きな街の公園じゃない。
僕とツンの家の近くの、小さな公園だ。
街の方にも花見をする場所はあるが、とても混んでいる。
なのでこちらでしようと言う話になった。

桜を見上げる。
満開になったその姿は、大きさのせいか街の桜並木に勝るとも劣らない存在感だ。
美しい衣を身にまとった大きな桜は、まるで歌うようにざわざわと風に揺れていた。



4: ◆ECmvgmi7GI :2007/11/29(木) 01:42:50.84 ID:SzSQz2Tx0
lw´‐ _‐ノv「どうぞ」

クーの妹、たしかシューちゃんが、お茶の注がれた紙コップを渡してくれた。
僕はありがとうと言ってそれを受け取る。
僕にお茶を渡し終えたシューちゃんは無表情で次のお茶を注ぎに戻っていった。

ノパ听)「シュー! 私にもくれぇぇ!」

lw´‐ _‐ノv「自分で注げ」

……姉のヒートちゃんには厳しいらしい。

近くでは、クーが何やらたくさん重箱を広げている。
弁当を作ると言い出した彼女は、どうやら相当の気合を入れて作ってきてくれたらしい。
朝食を抜いてきて、正解だったようだ。

(´・ω・`)「クーの弁当、楽しみだね」

僕の視線で何を考えているのか察したのか、隣にいたショボンがそう言った。

( ^ω^)「入れ物からしてなんか凄そうだおね」

僕はそう返す。



5: ◆ECmvgmi7GI :2007/11/29(木) 01:45:42.92 ID:SzSQz2Tx0
('A`)「学校で評判の美女、クーの手作り弁当……きてよかったぜ」

ξ゚听)ξ「クーの料理はすっごくおいしいのよ」

( ^ω^)「そうなのかお それは楽しみだお」

いつの間にか、皆近くに集まって座っていた。
両隣にショボンとドクオ、その向かいにツンとつー。
準備は完全に素直姉妹に任せてしまっていた。

クーがテキパキと指示を与え、二人でそれをこなす。
ヒートちゃんが重箱の蓋に手を……伸ばしたところでシューちゃんがその手をつねる。
どっちが姉かわからないその光景に、思わず笑ってしまった。

(*゚∀゚)「いやぁしかし、春だねぇ」

つーが桜を見上げ呟いた。
それを聞いて、皆が桜に目を移す。

(´・ω・`)「ほんと 晴れてよかったね」



8: ◆ECmvgmi7GI :2007/11/29(木) 01:47:54.16 ID:SzSQz2Tx0
この一週間雨が降らず、暖かい日が続いた。
おかげで桜は散ることもなく、どんどんと蕾を開かせていった。
天気も桜も、万全だ。

('A`)「こんな花見スポットがあったなんてな」

(´・ω・`)「桜は一本だけだけど、立派だから見応えがあるね」

(*゚∀゚)「だねぇ 時間かけて来た甲斐があったってもんさ!」

3人ともVIP市に住んでいる。どうやらここに来たのは初めてらしい。

ξ゚听)ξ「地元じゃちょっとした名所なのよ」

('A`)「毎年ここで花見してるのか?」

ξ゚听)ξ「私はそんなにお花見はしなかったかな〜」

川 ゚ -゚)「大人達は毎年してるな」

弁当の準備を終えたクーが会話に混ざる。
ヒートちゃんもシューちゃんも傍に座っていた。
その手には皆と同じ様に飲み物が注がれた紙コップを持っている。



10: ◆ECmvgmi7GI :2007/11/29(木) 01:49:39.74 ID:SzSQz2Tx0
ξ゚听)ξ「私は……小さい頃よくここで遊んでたくらいかな」

そう言って静かに笑ったツン。
皆は普通に聞き流しただろうその言葉が、耳に残る。
思い出せない、眠ったままの記憶。
今この満開の桜を見ても、思い出すことはなかった。

川 ゚ -゚)「……」

その時、クーの視線を感じた。
なんだろうと思い、クーを見る。

lw´‐ _‐ノv「お姉ちゃん……割り箸」

川 ゚ -゚)「ああ、ありがとう、シュール」

一瞬目が合ったが、シューちゃんに呼ばれたクーはすぐに目を逸らした。
そういえば、クーとツンは小さい頃から一緒に遊んでいたと言っていた。
二人もこの公園で遊んだ時があったんだろうか。
ふと、そんなことが気になった。



11: ◆ECmvgmi7GI :2007/11/29(木) 01:51:23.82 ID:SzSQz2Tx0
('A`)「そろそろ始めようぜ」

ドクオの声に、僕は我に返る。

そうだ。今はお花見を楽しもう。
そう考えたらお腹が減ってきた。

(*゚∀゚)「ショボン! 頼んだよ!」

(´・ω・`)「? なんで僕が?」

ξ゚听)ξ「なんかこういうのが一番合ってそうじゃない」

(´・ω・`)「やれやれ… よくわからないけど、それじゃ」

言い、ショボンがこほんと咳払いをした。
皆の視線がショボンに集まる。
その手には飲み物が注がれた紙コップ。
なんとなく、紙コップを持つ手に力が入る。

そして、ショボンが口を開いた。



12: ◆ECmvgmi7GI :2007/11/29(木) 01:54:04.20 ID:SzSQz2Tx0
(´・ω・`)「やぁ、ようこそバーボンh」

ξ;゚听)ξ「ストォーップ!」

すかさずツンがツッコミを入れた。

(´・ω・`)「ほんの冗談さ」

(;'A`)「なんか知らねぇが寿命が縮まった気がするぜ……」

(;^ω^)「それはなんかやってはいけない気がするお」

ショボンの冗談に、皆何かを感じたのか、冷や汗をかいていた。

lw´‐ _‐ノv「お姉ちゃん……バーボンって?」

川 ゚ -゚)「聞くな」

シュールちゃんがわけがわからないといった感じで、キョトンとしていた。
……世の中には、知らない方がいいこともある。



13: ◆ECmvgmi7GI :2007/11/29(木) 01:56:28.04 ID:SzSQz2Tx0
(´・ω・`)「じゃあ気を取り直して」

(*゚∀゚)「頼むよっ」

ノパ听)「早くぅぅぅ! お腹すいたぞぉぉ!」

lw´‐ _‐ノv「ヒート、うるさい」

と言いつつも、シュールちゃんも待ちきれない様子だ。
他の皆も気を取り直して、ショボンを見る。

(´・ω・`)「新学期と」

ショボンと目が合う。
僕と目が合うと、口元を緩ませた。

(´・ω・`)「ちょっと遅くなったけど、ブーンの引越しを祝って」

手に持つ紙コップを、少し高く掲げる。

(´・ω・`)「乾杯」


     『かんぱーい!』



14: ◆ECmvgmi7GI :2007/11/29(木) 01:58:50.50 ID:SzSQz2Tx0
青空と桜の下、お花見が始まった。
開始の音頭に僕のことが扱われたのが、少し照れ臭い。

ドクオ、つー、ヒートちゃんは早速お目当ての料理に手を伸ばしている。
重箱の蓋を開けた時、全員から感嘆の声が上がった。
見ただけで、おいしそうだと解る。
味だけでなく、色合いも計算されたクーの料理は、芸術と言っても言いすぎじゃない。
そこには、もう一つの華が咲いていた。

(*'A`)「うおぉぉぉ!! うめぇぇぇぇ!!」

ノハ*゚听)「うまいぞぉぉぉ!」

(*゚∀゚)「クーこれお金とれるよ!!」

3人程叫びはしないものの、他の皆も料理を絶賛していた。

川 ゚ -゚)「ありがとう たくさん作ったからどんどん食べてくれ」

クーも嬉しそうだ。僕も遠慮なく料理に手を伸ばす。

川 ゚ -゚)「ブーン、うまいか?」



16: ◆ECmvgmi7GI :2007/11/29(木) 02:01:28.75 ID:SzSQz2Tx0
( ^ω^)「めちゃくちゃうまいお! クーは料理上手なんだおね」

僕は素直に褒めた。実際、本当においしいのだから。

川*゚ -゚)「そうか あ、ありがとう」

クーが少し赤くなった。
初めて見るクーの表情になんだか照れ臭くなり、料理に目を移す。

(*゚∀゚)「ほんと、おいしいよっ!」

ξ゚听)ξ「今までで一番おいしいわ……」

(´・ω・`)「うん 楽しみにしてた甲斐があったよ」

ノハ*゚听)「最高にうまいぞぉぉ!」

lw´‐ _‐ノv「おいしい」

('A`)「クーと結婚できる人は、毎日が天国だなこりゃ……」

皆、大絶賛だ。このおいしさはとても言葉では言い表せることができない。

川////)「あ、ありがとう……」

当のクーは、真っ赤になってうつむいていた。



18: ◆ECmvgmi7GI :2007/11/29(木) 02:03:38.69 ID:SzSQz2Tx0
しばらく、皆夢中で料理を食べていた。
お茶を飲もうと、紙コップを手に取る。

すると、桜の花びらがひらひらと降り、そのまま僕の紙コップの中へと落ちた。
そういえば、花見をしにきてたんだっけ……。
クーの料理にすっかり心を奪われ、忘れていた。

お茶に浮かんだ花びらが、ゆらゆらと浮かんでいる。
それがまるで、主役を奪われて嫉妬しているように見えた。

僕は苦笑し、桜を見上げる。

来た時と同じ様に、綺麗に、雄々しく咲き誇っている。

ξ゚听)ξ「ブーン」

ふと、ツンに呼ばれた。
視線を戻すと、ツンがお茶の入った水筒を持って僕をみていた。

ξ゚ー゚)ξ「お茶」

その言葉に、僕は紙コップを差し出す。



19: ◆ECmvgmi7GI :2007/11/29(木) 02:05:15.29 ID:SzSQz2Tx0
( ^ω^)「ありがとうだお」

ξ゚ー゚)ξ「いえいえ」

ツンがお茶を注いでくれる。

ξ゚听)ξ「……玉子焼き、食べた?」

( ^ω^)「お? 食べたけど、どうかしたかお?」

ξ゚听)ξ「ど、どうだった?」

( ^ω^)「おいしかったお さすがクーだお」

ξ゚ー゚)ξ「あ、そう それはよかったわ」

ツンは満足気に微笑み、今度はつーと話し始めた。
玉子焼きがどうかしたんだろうか。
確かにおいしかったけど、ツンがなぜそんなことを聞いたのか、わからなかった。

lw´‐ _‐ノv「ブーンさん」

唐突に、後ろから声をかけられた。
僕は少し驚いて、振り返る。



20: ◆ECmvgmi7GI :2007/11/29(木) 02:07:07.28 ID:SzSQz2Tx0
( ^ω^)「シュールちゃんかお どうしたんだお?」

そこには、シュールちゃんがおにぎりを持ってちょこんと座っていた。

lw´‐ _‐ノv「ツンお姉ちゃん、お弁当作るの手伝ってたの」

( ^ω^)「そうなのかお?」

lw´‐ _‐ノv「うん ほとんど盛り付けるだけだったけど」

( ^ω^)「僕だったらきっと、邪魔なだけだったと思うお…」

lw´‐ _‐ノv「でも、その玉子焼きを作ったのは、ツンお姉ちゃん」

そう言って、シュールちゃんが玉子焼きを指差す。

lw´‐ _‐ノv「それだけ」

そして、シュールちゃんはクーの隣へと戻っていった。

僕は玉子焼きを一つ取る。



22: ◆ECmvgmi7GI :2007/11/29(木) 02:09:44.70 ID:SzSQz2Tx0
さっきのツンの質問の意味が、やっとわかった。
ツンも料理ができるのか。少し、意外だった。
そんな事を言ったらきっと怒るだろう。
怒ったツンの顔を想像し、少し可笑しくなった。

玉子焼きを口に運ぶ。

怒った顔のツンを思い浮かべながら食べた玉子焼きは、甘かった。

なぜかそれが、とてもツンらしいと思えた。

気付けば、僕は玉子焼きを全て食べてしまっていた。

なんとなく、ツンを見る。

その顔は、少し照れたような、笑顔だった。

………。
……。
…。



23: ◆ECmvgmi7GI :2007/11/29(木) 02:11:26.00 ID:SzSQz2Tx0


   友達と桜とともに、ゆったりとした時を過ごす少年。

     同じく、思い出の場所で同じ時を過ごす少女。

            少女は今を楽しむ。

        今までの隙間を、埋めるように。

   思い出すと言ってくれた少年との約束を、胸に秘めて。

          同じ想いを共有する二人。
 
       だが、少年は勿論、少女も知らない。

   思い出を秘めた少女が、もう一人、いることを──……



( ^ω^)桜舞い散る中に忘れた記憶が戻ってくるようですξ゚听)ξ



         ───第七話 『告白』───



26: ◆ECmvgmi7GI :2007/11/29(木) 02:14:42.23 ID:SzSQz2Tx0
───同日 16:29 ツン・デレ───

楽しい時間は、本当にあっという間に過ぎていった。
今までにも何度かこうして友達と集まったことがあったが、
今日以上に楽しいと思った日はない。

お酒を隠し持っていたドクオが悪乗りし出した時は、本当に可笑しかった。
皆で笑っている時に、こっそりヒートが酒を飲んで、さらにヒートしたり。
クーの一睨みでヒートは大人しくなったけど……。

後片付けを終えた頃、辺りはすっかりと夕日の色に染まっていた。
ドクオはまだふらふらしている。ちょっと心配になる。

(´・ω・`)「やれやれ ドクオはちゃんと家まで送るよ」

( ^ω^)「頼んだお」

ショボンが送ってくれるらしい。少し安心した。

('∀`)「あれー? こんなにたくさん桜あったっけー?」

……やっぱりちょっと心配。



27: ◆ECmvgmi7GI :2007/11/29(木) 02:16:55.04 ID:SzSQz2Tx0
ヒートとシューちゃんは、一足先に帰っていた。
お父さんが迎えに来てくれたからだ。
買い物帰りだったらしい。

(*゚∀゚)「さーて、帰ろっか」

つーの声に、私達は静かに頷く。

ξ゚ー゚)ξ「今日は楽しかったね」

( ^ω^)「ほんとだお クーの料理もうまかったお」

ほんとに、クーの料理は皆大絶賛だった。
そういえば、ブーンは玉子焼きを一人でほとんど食べてたっけ。
きっと、私が作ったなんて知らないんだろう。
でも、おいしいと言ってくれたのは嬉しかった。

帰ろうと言い出してからも、会話が止む事は無い。

まるで、今日を終わらす事を惜しんでるように。



29: ◆ECmvgmi7GI :2007/11/29(木) 02:18:52.33 ID:SzSQz2Tx0
('∀`)「クー! 毎日俺のために弁当を作ってくれぇぇぇ!」

(*゚∀゚)「おぉっと! ドクオさんのプロポーズです! 果たして返事は!?」

川 ゚ -゚)「だが断る」

(*゚∀゚)「玉砕ッ! ドクオの恋は実らなかったァーッ!!」

いつの間にか、一つの恋が終わっていた。
こんな馬鹿騒ぎも、楽しくて仕方が無い。

でも、時間は無限じゃない。

(´・ω・`)「さぁ、暗くなっちゃうよ 明日も会えるし、帰ろう」

( ^ω^)「そうするかお」

(*゚∀゚)「そーれじゃ、行きますか」

今度こそ、今日が終わる。
私達は出口に向かって歩き出した。

その時だ。



30: ◆ECmvgmi7GI :2007/11/29(木) 02:21:08.48 ID:SzSQz2Tx0

     「ツン」

     
不意に、誰かに呼ばれた。
私は後ろを振り向く。


川 ゚ -゚)


クーが、私を見て立っていた。
どうしたんだろうか。
真剣なクーの表情に、思わず返事を返せなかった。

川 ゚ -゚)「ツン」

もう一度、呼ばれた。

ξ゚听)ξ「どう……したの?」

今度は、ちゃんと返事をした。



31: ◆ECmvgmi7GI :2007/11/29(木) 02:23:30.27 ID:SzSQz2Tx0
川 ゚ -゚)「ちょっと話があるんだ」

真剣な表情を崩さずに、そう言った。

ξ゚听)ξ「え……いいけど、どうしたの?」

私はそう返す。そうとしか、言えなかった。

川 ゚ -゚)「皆、すまないが先に帰っていてくれ」

さっきまでの楽しかった空気が、凍りつく。
ブーン達は顔を見合わせている。

(´・ω・`)「わかった じゃあ先に帰ることにするよ」

(*゚∀゚)「うん 明日学校でねー」

( ^ω^)「また明日だお」

ショボンが空気を溶かし、皆がそれに従う。

川 ゚ -゚)「すまないな……」

クーが、申し訳なさそうに言った。



33: ◆ECmvgmi7GI :2007/11/29(木) 02:25:40.31 ID:SzSQz2Tx0
ブーン達の背中を見送り、私はクーに視線を戻す。
こんな真剣なクーを見るのは初めてだ。
張り詰めた雰囲気に、身が硬くなる。

ξ゚听)ξ「どうしたの?」

私は切り出した。

川 ゚ -゚)「ツンもすまない 桜の下へ行こうか」

背中を向け、クーが歩き出す。

私もそれについて行く。

夕焼けに染まる桜は、その色を赤に変える。

その姿は、どこか寂しげで──…

クーの背中に、似ていた。

………。
……。
…。



34: ◆ECmvgmi7GI :2007/11/29(木) 02:28:56.65 ID:SzSQz2Tx0
───同日 19:56 内藤ホライゾン───

夕食を食べ終え、食後の一息。
ゆったりと過ごせるはずのその時間は、今日は落ち着けずにいた。


ツンとクーはもう帰っただろうか。


あの後、バス停までショボン達を見送り、僕は真っ直ぐに家に帰った。
ドクオは別れるまでフラフラしていたが、ショボン達がいるから大丈夫だろう。
……ドクオには悪いけど、僕の頭はツンとクーのことで頭がいっぱいだった。

クーのあの真剣な表情。一体なんだったのだろうか。
付き合いが長いツン達でさえ、只ならぬ雰囲気に凍り付いていた。

時計を見る。カチカチと、時間を刻む秒針が、やけに遅く感じた。
できるなら、この時間の流れを楽しい時に感じたかった。

J( 'ー`)し「ブーン」

いつの間にか、カーチャンが居間に戻ってきていた。



35: ◆ECmvgmi7GI :2007/11/29(木) 02:30:45.11 ID:SzSQz2Tx0
カーチャンを見る。その手にはお茶の入った湯飲み。
僕はそれを受け取る。

( ^ω^)「ありがとうだお」

J( 'ー`)し「お花見、楽しかった?」

そう言いながら、カーチャンもゆっくりと座る。

( ^ω^)「すごく楽しかったお」

今考えていることを忘れるように、僕は答える。
実際本当に楽しかったから、その言葉はすぐに口に出た。

J( 'ー`)し「お友達、たくさんできたのね」

カーチャンはどこか嬉しそうだ。

( ^ω^)「たくさんって程じゃないけど、いい友達ができたお」

頭に過ぎる、友達の顔。



39: ◆ECmvgmi7GI :2007/11/29(木) 02:33:31.05 ID:SzSQz2Tx0
J( 'ー`)し「よかったね……カーチャン嬉しいよ」

( ^ω^)「心配させてごめんお」

あの頃の僕は正しいと思っていた。しかしそれはカーチャンを悲しませていた。
今の嬉しそうなカーチャンを見ていると、今度こそ僕は間違っていないと確信できる。

だから、僕はもう一度謝る。全てがわかった、今。

J( 'ー`)し「いいのよ これからもその調子でね」

カーチャンの言葉に、僕は笑顔で応えた。

J( 'ー`)し「野菜もおいしいし、のどかだし、自然もいっぱい
      ほんとに良い所ね」
      
( ^ω^)「僕もそう思うお 引越してきてよかったお」

駅の開発は進んでいるが、そんなに早く環境は変わらないだろう。
田舎も充分楽しめそうだ。

( ^ω^)「お花見を毎年恒例にするつもりだお」

その言葉は、なんの躊躇も無く、口に出た。



40: ◆ECmvgmi7GI :2007/11/29(木) 02:35:34.47 ID:SzSQz2Tx0
J( 'ー`)し「お花見って……あの公園で?」

( ^ω^)「? そうだお あの桜はなんか好きだし……」

なんだろう。カーチャンが言う言葉が、やけに引っ掛かった。

( ^ω^)「カーチャン? どうしたのかお?」

J( 'ー`)し「あぁ……ブーンは知らないのね」

知らない? 何が?

胸の鼓動が、早くなる。

(;^ω^)「知らないって、何がだお?」

心を無理やり落ち着かせ、声を絞り出す。

J( 'ー`)し「……あの公園ね…」

………。
……。
…。



42: ◆ECmvgmi7GI :2007/11/29(木) 02:37:47.97 ID:SzSQz2Tx0
───同日 17:28 ツン・デレ───

どれくらい、そうしていただろうか。
すでに夕暮れの赤は、夜の黒に変わろうとしていた。
クーは桜を見上げたまま、黙っている。

空気が、痛い。
この場にいるのが、なぜか怖い。

そして、ゆっくりと、時間が動き出す。

川 ゚ -゚)「すまないな ツン」

ゆっくりとこちらを振り向いた、クー。
その顔は、さっき見たままの真剣な表情だった。

ξ゚听)ξ「どうしたの?」

今度こそ、私はしっかりと声に出す。

川 ゚ -゚)「少し前に、私に好きな人がいることを話したのを覚えてるか?」

突然の、まったく予想していなかった、切り出し。



43: ◆ECmvgmi7GI :2007/11/29(木) 02:40:45.60 ID:SzSQz2Tx0
ξ゚听)ξ「覚えてる……けど」

私は声を絞り出す。

川 ゚ -゚)「少し、昔話になるんだが」

こくり、と、自分が唾を飲み込む音が聞こえた。
クーは私を見ながら、話を続ける。

川 ゚ -゚)「小さい頃……確か、4歳の時」

4歳。私の、大切な思い出が生まれた歳と同じ。

川 ゚ -゚)「ここの辺りで、迷子になったんだ 恥ずかしい話だけどな」

そう言ったクーは、少し笑った。

川 ゚ -゚)「それで、途方に暮れて……泣いていた時だ」

自然と、手に力が篭る。

川 ゚ -゚)「誰かが、私の手を引っ張ってくれたんだ」



44: ◆ECmvgmi7GI :2007/11/29(木) 02:43:27.00 ID:SzSQz2Tx0
川 ゚ -゚)「今思うと、誘拐だったら私はここにいなかったかもしれないな」

冗談を混ぜ、続ける。笑えない。

川 ゚ -゚)「ずっと……手を引かれて、着いたのがこの公園だった」

クーが桜を見上げる。

川 ゚ -゚)「名前も、お礼も言わないで、私は喜んだ」

私は……クーから目が離せない。

川 ゚ -゚)「振り向いたら、その人は笑顔だった」

笑顔。今の私はどんな顔をしてるんだろうか。

川 ゚ -゚)「結局名前も聞かずに公園で遊んで、そのまま別れた それっきりだ」

なんだろう。突然なんでこんな話をするんだろう。

川 ゚ -゚)「その人は、同じ歳くらいの男の子だった」

手に汗が滲む。



46: ◆ECmvgmi7GI :2007/11/29(木) 02:46:05.79 ID:SzSQz2Tx0
川 ゚ -゚)「それで、その人のことが頭から離れなくてな」

私は、カラカラに渇いた口を開く。

ξ゚听)ξ「その人が……クーの好きな、人?」

川 ゚ -゚)「そうだ」

はっきりと、私を見てそう言った。

川 ゚ -゚)「そして今日、この桜の木の下で、確信した」


お願い。それ以上言わないで。


私の心が、醜い部分が、そう叫んでいる。


やめて、やめて、やめて──……



47: ◆ECmvgmi7GI :2007/11/29(木) 02:48:23.90 ID:SzSQz2Tx0










川 ゚ -゚)「私は……ブーンが、好きだ」











51: ◆ECmvgmi7GI :2007/11/29(木) 02:52:15.51 ID:SzSQz2Tx0

( ゚ω゚)「今……なんて?」

よく聞き取れなかった。

カーチャンの言葉が。

いや、多分しっかりと聞こえたはずだ。

でも、僕の頭が、心が、それを受け入れることを拒否した。

僕の問い掛けに答えるため、カーチャンがまた、口を開く。

僕は……僕は……


まだ何も思い出してないのに──…っ!



52: ◆ECmvgmi7GI :2007/11/29(木) 02:53:43.55 ID:SzSQz2Tx0










J( 'ー`)し「あの公園……来週の工事で取り壊されるのよ」










54: ◆ECmvgmi7GI :2007/11/29(木) 02:54:57.19 ID:SzSQz2Tx0



続く……。



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