( ^ω^)桜舞い散る中に忘れた記憶が戻ってくるようですξ゚听)ξ

5: ◆ECmvgmi7GI :2007/12/04(火) 18:59:11.77 ID:XdG6ihta0

『あの公園ね、来週の工事で……取り壊されるの』


嫌な予感がした。


『桜も、なくなるのかお?!』


信じたくなかった。


『全部なくなっちゃうらしいわ』


現実は、残酷だった。


『今日回ってきた回覧板の工事予定の所にね……』


最後まで聞かず、僕は家を飛び出していた。

────────────────────────



7: ◆ECmvgmi7GI :2007/12/04(火) 19:00:44.59 ID:XdG6ihta0

『そして今日、この桜の下で確信した』


嫌な予感がした。


『私は……ブーンが、好きだ』


信じたくなかった。


『今日はこれで、帰る』


クーの姿を見る事ができなかった。


『どうして……』


その声に答える人はいない。


私はそこから、一歩も動けなかった。

────────────────────────



8: ◆ECmvgmi7GI :2007/12/04(火) 19:02:15.19 ID:XdG6ihta0

がむしゃらに走った。

忘れてしまった思い出の場所を目指して。

胸騒ぎが、不安が、全身を駆け巡った。

あの桜がなければ、僕は何も思い出せない気がする。

なぜかわからないけど、そんな予感がする。

予感が、僕を走らせる。


辿り着いた真っ暗な公園には、桜の大きな影と……


そこに佇むもう一つの影があった。

────────────────────────



9: ◆ECmvgmi7GI :2007/12/04(火) 19:03:35.10 ID:XdG6ihta0

誰もいない、私しかいない。

桜と一緒に、ただただ立ち尽くすだけ。

親友の思わぬ告白。

彼と会ってからの幸せが、音を立てて崩れた。

私はどうしたらいいの?

彼と親友を選ぶことなんて、できるわけがない。

帰ろうと思っても、足が動かない。

まるで、桜の根が足に絡み付いているように。

時間だけが、過ぎていった。


その時、息を切らせた彼が……来た。

────────────────────────



10: ◆ECmvgmi7GI :2007/12/04(火) 19:05:10.69 ID:XdG6ihta0
(;^ω^)「ツ……ツン…」

その人影、ツンに近づき、乱れた呼吸で名前を呼んだ。

ξ )ξ

顔を上げる彼女。なぜかその表情は暗い。
クーと何かあったのだろうか。
桜のこともあったが、僕はツンのことが心配になった。

( ^ω^)「なんか暗い顔してるけど、なんかあったのかお?」

僕がそう聞くと、ツンは首を勢いよく左右に振り、僕を見た。

ξ゚ー゚)ξ「なんでもないわよ」

その顔は、笑顔だった。
でもそれは、いつもの笑顔とはどこか違っていた。

まるでそれは、無理をしているような──。



12: ◆ECmvgmi7GI :2007/12/04(火) 19:06:59.25 ID:XdG6ihta0
ξ゚ー゚)ξ「それより、どうしたの?」

ツンの声で、僕はハッと我に返る。
多分、ツンには何かあったはずだ。
これ以上負担をかけさせまいと、桜のことは黙っておく事にした。
それに、いずれ知ることになるだろう。

( ^ω^)「まだいるのかってちょっと心配になったんだお」

即席の嘘だ。

ξ゚ー゚)ξ「そっか……ありがと」

( ^ω^)「……大丈夫そうでよかったお」

ツンのお礼に、また嘘で返した。
何でもなかったのなら、こんなところにまだいるわけがない。

そして、最初に会った時のような沈黙が僕等を包む。

あるのは、ざわざわと揺れる桜の音だけだ。



13: ◆ECmvgmi7GI :2007/12/04(火) 19:08:48.64 ID:XdG6ihta0
( ^ω^)「ツン」

ξ゚听)ξ「なに?」

( ^ω^)「ちょっと夜桜でも眺めないかお?」

沈黙が苦しくて、僕はそう提案した。
その場凌ぎだ。どうせまた沈黙が訪れる。

でも今は、ツンと桜を見たい気分だった。


もう、少しの間しかこの桜を見ることができないから──…。


ツンは静かに頷き、桜を見上げる。
僕も隣に立ち、桜を見上げた。



14: ◆ECmvgmi7GI :2007/12/04(火) 19:10:38.37 ID:XdG6ihta0
こんな田舎の公園に証明などは無く、月明かりだけが桜を照らしていた。
それだけなのに、なぜか桜はよく見えた。
月を背負う桜は、ぼんやりと青白く見える。

ざわざわと、桜が歌う。

それはとても悲しそうに聞こえる。

まるで、自分の近い運命を知っているかのように。

ひらひらと、桜が舞う。

僕には、舞い落ちる花びらが涙のように思えた。


ξ゚听)ξ「なんか……悲しそうだね」


桜を見上げながら、ツンがそう言った。

それは僕に向けてなのか、桜に向けて言ったのか、わからない。



15: ◆ECmvgmi7GI :2007/12/04(火) 19:12:52.37 ID:XdG6ihta0
ξ゚听)ξ「あの時の……私みたい……」

あの時。それは多分、僕が忘れてしまった記憶。

ξ )ξ「ブーンが帰るって知って…ここでずっと泣いてた」

ツンの声が、少し変わった気がした。

ξ )ξ「また…絶対帰ってくるって、言ってくれたけど…でも…わた…し…」

ツンの声が途切れ途切れになる。混じるのは、嗚咽。

ξ;凵G)ξ「怖かった…寂しかった……」

頬につたうのは、涙。
ツン、泣かないで。桜まで泣いてるのに。
僕も悲しくなってくるじゃないか。

今の僕が謝っても、それは言葉だけのことだ。
全てを忘れてしまった、今の僕じゃ……何も……
僕は、これ以上涙を見るのが辛くなり、静かに目を閉じた。



18: ◆ECmvgmi7GI :2007/12/04(火) 19:14:29.19 ID:XdG6ihta0

ひらひらと、桜が僕を撫でるのがわかる。


最後の花を、散らしている。


聞こえるのは、隣にいるツンの嗚咽。


桜と一緒に、泣いている。


いつだろうか、こんな光景を目にした事がある。


それはゆっくりと、舞い落ちる桜の涙と共に、蘇ってきた。



20: ◆ECmvgmi7GI :2007/12/04(火) 19:16:26.59 ID:XdG6ihta0

『う……ひっく……内藤くん……』

聞こえるのは、女の子の嗚咽。

目を閉じているのに、鮮明に映る姿。

見えるのは、夢で見た女の子。

そして、見覚えのある特徴的な髪型。

あぁ……この子は、ツンだ。

今のツンと同じ様に、桜の涙の下で、泣いている。


そうだ。

僕はあの時、この泣いている姿を見ていたはずだ。

でも僕は……話しかけにくくて……そのまま帰ってしまった。



22: ◆ECmvgmi7GI :2007/12/04(火) 19:18:49.74 ID:XdG6ihta0

   あの日からずっと、ツンは心の奥で泣いていたはずだ。


        僕の夢の中でも、泣き続けている。


          今度こそ、声をかけよう。


           この涙を止めよう。


        僕の大好きな笑顔をみるために。
        



23: ◆ECmvgmi7GI :2007/12/04(火) 19:19:59.54 ID:XdG6ihta0

風が、止まった。

( ^ω^)「ツン」

ξ;凵G)ξ「……うん?」

( ^ω^)「僕はもう、どこにも行かないお」

ξ;凵G)ξ「え……?」

( ^ω^)「僕が帰る前の日、ここでツンが泣いてるの、見てたんだお」

ξ;凵G)ξ「それって…」


そう。


僕は、思い出した──。



24: ◆ECmvgmi7GI :2007/12/04(火) 19:21:38.62 ID:XdG6ihta0
( ^ω^)「あの時の僕は、なんだか照れ臭くて、そのまま帰ったんだお」

はっきりと蘇る、あの時の光景。

( ^ω^)「絶対帰ってくるから、泣かないでって、あの時言いたかったんだお」

あの時の桜も、今と同じ様に泣いていた。

いや、もう桜は、泣いていない。

ツンももう、泣いていない。

ξ゚听)ξ「…ブーン…」

( ^ω^)「絶対帰るから、帰ったら一緒にあの約束を果たそうって…」

ξ゚听)ξ「約束……思い出したの?」

真っ直ぐにツンを見つめながら、静かに頷いた。



26: ◆ECmvgmi7GI :2007/12/04(火) 19:23:09.37 ID:XdG6ihta0
呆然と、ツンは僕を見つめている。
頬に残る涙の跡が見え、少し胸が痛んだ。

再び沈黙が僕達を包む。
でももう泣き声は聞こえない。

全てを思い出した今、ここは僕にとっても思い出の場所になった。l

ξ゚听)ξ「ほんとに……ほんとに思い出したの?」

( ^ω^)「本当だお」

ツンを安心させるよう、はっきりと言う。
でもまだツンは信じられないといった顔をしていた。

僕は足元に目をやり、一本の枯れ木を拾う。

( ^ω^)「あの時、一緒に埋めたあれを、掘り出そうお」

ξ゚听)ξ「──!」

ツンが驚く。
驚いたツンに笑顔で返し、桜の根元に近づいた。



29: ◆ECmvgmi7GI :2007/12/04(火) 19:24:37.42 ID:XdG6ihta0
しゃがみこみ、枯れ木で地面を掘る。
端を短く持ち、折れないように少しずつ。

頼りない枯れ木は、今にも折れてしまいそうだ。
お願いだから、折れないでくれ。

ツンは僕をじっと見つめていた。

何を考えているんだろう。

何を思っているんだろう。

あの時のことを思い出しているんだろうか。
僕も枝を地面に突き刺しながら、ゆっくりとあの時のことを思い出した。

………。
……。
…。



30: ◆ECmvgmi7GI :2007/12/04(火) 19:26:26.76 ID:XdG6ihta0
ねぇ、ブーン?

あなたは本当に思い出してくれたんだね。

一生懸命に土を掘ってるあなたは、あの頃とそっくりだよ?

あなたが帰る前の日に、一緒に埋めた思い出。

再会したら、一緒にそれを掘り出すって交わした約束。

寂しくて、今までに何度掘り出そうとしたかわからない。

でもきっと、きっといつかこの日がくるって信じて、我慢してた。

あの頃の私は、土を掘るあなたを見ながら、泣いてた。

これが終わったら、あなたが帰ってしまう。そう思ってたから。

でも今度は、泣かないでしっかり見てるよ。

あの頃とは、もう違うんだから……。

………。
……。
…。



32: ◆ECmvgmi7GI :2007/12/04(火) 19:28:18.86 ID:XdG6ihta0
『ほんとに……明日帰っちゃうの?』

少女が問う。

『うん…ごめんお』

少年が答える。

『また会える、よね?』

それは不安げに。

『絶対またくるお! 約束だお!』

それは力強く。

『それで……ツン、これを』

取り出したのは、紙と鉛筆。

『これは……?』



35: ◆ECmvgmi7GI :2007/12/04(火) 19:30:26.83 ID:XdG6ihta0
『これに願い事を書くんだお!』

少年が元気に言う。

『ねがい…ごと?』

『だお それで、この飴の入れ物にいれて、ここに埋めるんだお』

『…それでどうするの?』

『また会った時に、一緒に出すんだお』

少女は不思議そうな顔をして、少年を見つめる。

『それでその時に、みせあいっこするんだお!』

『……あはは なにそれ 変なの!』

少女が笑う。少年と同じ様に。
その目に涙を浮かべたままで。

『いいよ 約束だからね?』

『もちろんだお!』



38: ◆ECmvgmi7GI :2007/12/04(火) 19:32:51.42 ID:XdG6ihta0

『そして僕は願い事を書いた』

『そして私は願い事を書いた』

『絶対に帰ってくると約束して』

『絶対に帰ってくる事を信じて』
 
『それはいつになるかわからない』

『いつまでも待つと、誓った』

『結局、12年も待たせてしまった』

『12年、ずっと待っていた』

『今、その瞬間をやっと迎える』

『今、その瞬間が目の前にある』



《大切な、二人の約束が果たされる瞬間が》



40: ◆ECmvgmi7GI :2007/12/04(火) 19:36:21.07 ID:XdG6ihta0
ひたすらに、ブーンは土を掘る。
思い出したばかりの記憶を、大切に掘り起こす。

ツンは静かに見つめる。
大切にしまっていた記憶を、思い出しながら。


やがて、何かに当たった音がした。
ブーンはその周りをまた丁寧に掘る。
だんだんと姿を現すそれは、あの頃の飴玉の缶。

ブーンがそれを手にとり、土を手で払う。
12年前ぶりに外に出されたそれは、当然の如く汚れていた。

しかしそれは、二人には大切な物。
大切な、思い出。

( ^ω^)「待たせてごめんお」

その言葉は、ツンに向けてなのか、缶に向けてなのかはわからない。
ツンは静かにそれを見つめていた。



42: ◆ECmvgmi7GI :2007/12/04(火) 19:38:26.02 ID:XdG6ihta0

( ^ω^)「開けるお?」

ブーンの問い掛けに、ツンは静かに頷いた。

ブーンが両手に力を込め、蓋をゆっくりと開ける。

その手に重なる、もう一つの手。

ξ゚ー゚)ξ「一緒に、開けよ?」


二人で開ける、二人の思い出。

重なる手、重なる記憶。


月と桜の下に、再び──…



45: ◆ECmvgmi7GI :2007/12/04(火) 19:40:19.08 ID:XdG6ihta0
中には、折りたたまれた色褪せた紙が2枚。
それぞれに、「ホライゾン」「ツン」と書かれている。

二人は顔を見合わせ微笑み、自分の名前が書かれた紙を手に取る。

( ^ω^)「懐かしいお…」

ξ゚ー゚)ξ「忘れてたくせに」

(;^ω^)「あうあう…ごめんお」

ξ゚ー゚)ξ「冗談よ」

そう言い、笑い合う二人。
その姿は、12年前のそのままで。

二人は手に取った紙を見つめる。
色褪せた紙を見て、思い出しているのだろうか。

色褪せない、記憶を。



46: ◆ECmvgmi7GI :2007/12/04(火) 19:41:55.26 ID:XdG6ihta0
( ^ω^)「ツンはなんて書いたんだお?」

ξ*゚听)ξ「えっ? あーそのー…」

ブーンの問い掛けに、ツンは少し顔を赤らめ、慌てる。

( ^ω^)「僕のも見せるから、見せてくれお」

そう言った自分の紙を差し出すブーン。

ξ゚听)ξ「……ごめんブーン」

それを見つめながら、ツンが謝った。
その顔からは笑顔は消えていた。

( ^ω^)「お? どうしたんだお?」

ξ゚听)ξ「まだ、これは見せられないの」

( ^ω^)「どうしてだお?」

ツンは静かに俯き、大きく息を吸い、再び顔を上げる。
その顔は、決意の表情。



48: ◆ECmvgmi7GI :2007/12/04(火) 19:43:45.93 ID:XdG6ihta0
ξ゚听)ξ「私には、まだこれを見せる資格がないの」

しっかりとした口調で、そう言った。
ブーンはどうしていいのかわからず、反応に困っている。

ξ゚听)ξ「だから、待ってほしいの …だめ?」

( ^ω^)「……ツンがそう言うのなら、待つお」

ツンの強い口調から何かを感じたのか、ブーンも同じく強い口調で応えた。

( ^ω^)「今度は僕が待つ番だお」

ξ゚听)ξ「……ごめんね」

( ^ω^)「いいお 12年も待たせたんだから、へっちゃらだお!」

自分は大丈夫だと、安心させるように笑顔で言った。

ξ゚ー゚)ξ「ありがとう」

ツンも笑顔で、応えた。



49: ◆ECmvgmi7GI :2007/12/04(火) 19:45:55.14 ID:XdG6ihta0
( ^ω^)「僕のはどうするかお?」

ξ゚听)ξ「どうするって、見るかってこと?」

ブーンが頷く。
ツンは少し悩んだ顔をした。

ξ゚听)ξ「見てもいい…?」

( ^ω^)「いいお はいお」

もう一度差し出した。
ツンがゆっくりとそれを受け取る。

書いてある名前を見つめ、深呼吸。
長い時間を過ごしたその紙は、ぼろぼろだ。

ツンは静かに、丁寧に紙を開いた。



52: ◆ECmvgmi7GI :2007/12/04(火) 19:48:37.29 ID:XdG6ihta0
そこには、乱れた幼い平仮名。
4歳の時に書いた物だから、当然だ。

あまりの字の汚さに、ツンは思わず笑った。

(;^ω^)「我ながらひどい字だお」

覗き込んだブーンも苦笑している。

ξ゚ー゚)ξ「ちょっと読めないかも」

(;^ω^)「僕も読めないお…」

ξ゚听)ξ「ちょっと! それじゃわかんないじゃない!」

( ^ω^)「大丈夫だお 覚えてるお」

そう言ったブーンの顔を、ツンが見つめる。

ξ゚听)ξ「…なんて書いたの?」

ツンはそう聞いて、静かに言葉を待った。



54: ◆ECmvgmi7GI :2007/12/04(火) 19:51:09.39 ID:XdG6ihta0
( ^ω^)「またあえますように って書いたんだお」

ξ゚ー゚)ξ「なにそれ もう叶ってるじゃない」

( ^ω^)「だお だからきっとツンの願い事も叶うお」

ξ*゚听)ξ「…だといいね」

少し顔を赤らめうつむいたツン。
ブーンは不思議そうな顔をしている。

( ^ω^)「やっぱり教えてくれないかお?」

気になったのか、そう問いかける。

ξ゚听)ξ「うん…ごめんね」

( ^ω^)「……わかったお」

ξ゚听)ξ「絶対いつか見せてあげるから、待ってて」

さっきと同じ様に、強く言った。



55: ◆ECmvgmi7GI :2007/12/04(火) 19:52:43.90 ID:XdG6ihta0
その時、強い風が吹いた。

風は地面に落ちた桜の花びらを持ち上げ、空へと放つ。

二人はその桜を見上げる。12年前と同じ様に。

舞い上がった桜はゆっくりと、二人に降り注ぐ。

それはまるで、二人を祝福しているようで。

暫くの間、思い出に浸りながら二人はじっとそれを見上げていた。

………。
……。
…。



56: ◆ECmvgmi7GI :2007/12/04(火) 19:54:48.32 ID:XdG6ihta0
ξ゚ー゚)ξ「さーて、そろそろ帰らない?」

( ^ω^)「おっ もう結構遅いはずだお」

ξ゚听)ξ「お腹空いちゃった」

( ^ω^)「クーの料理たくさん食べたけど、僕も晩御飯前にはお腹空いてたお」

ブーンの言葉に、ツンは少し身を堅くする。

クーの名前に、反応した。

( ^ω^)「ツン? 帰ろうお」

ξ゚听)ξ「あ…うん いこっ」

ツンの頭の中で、クーの言葉が繰り返される。

宣戦布告ともとれた親友の告白が、重くのしかかる。
だからツンは、決意した。

私も前に、進もうと。



57: ◆ECmvgmi7GI :2007/12/04(火) 19:56:41.61 ID:XdG6ihta0
ξ゚听)ξ「ねぇブーン」

暫く歩き、ツンの家が見えてきたところで、立ち止まる。

( ^ω^)「お?」

ξ゚听)ξ「ちょっと寄る所があるから、先に帰っててくれない?」

こんな田舎には民家しかない。
どこに寄るのだろうとブーンは疑問に思ったが、雰囲気を察した。

( ^ω^)「わかったお また明日だお」

ξ゚ー゚)ξ「うん またね」

一言交わし、二人は別れた。
ツンは深く息を吸い、そのまま息を吐く。
そして真っ直ぐに、歩き出した。

目指すのは、クーの家。

………。
……。
…。



59: ◆ECmvgmi7GI :2007/12/04(火) 19:58:49.08 ID:XdG6ihta0

ξ゚听)ξ(クーはなんであんなことを言ったんだろう)

歩きながら、考える。

ξ゚听)ξ(私の気持ちだって、わかってるはずなのに)

そう思いつつも、自分の気持ちは誰にも伝えていないことに気付いた。

ξ゚听)ξ(今度は……私の番)

真っ直ぐに前を見て、進む。
クーがなぜあんな事を言ったのかは、もうわかっていた。
わかりたくなかっただけだ。拒否したかっただけだ。

だから、私は言おう。クーをしっかり見て、話そう。

ブーンとの約束を、果たす為に。

………。
……。
…。



60: ◆ECmvgmi7GI :2007/12/04(火) 20:00:06.56 ID:XdG6ihta0

少年は記憶を取り戻した。

少女はそれを喜んだ。

そして再度、約束を交わした。

少女はその約束を果たす為、親友のもとへと向かう。

それは、少女なりのけじめ。

か弱い少女の胸に、力強く宿るのは──…



( ^ω^)桜舞い散る中に忘れた記憶が戻ってくるようですξ゚听)ξ



         ───第八話 『決意』───  
         

続く……。



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