( ^ω^)桜舞い散る中に忘れた記憶が戻ってくるようですξ゚听)ξ
- 2: ◆ECmvgmi7GI :2008/05/15(木) 19:26:08.81 ID:s1FhlFn+0
暗い道を、弟者さんの車に揺られて進む。
整備などされていない田舎道は、車だとひどく揺れる。
慣れない人だと酔ってしまうそうだが、バスでの登校に慣れた私には、
揺りかごの様なものだった。
色々あったこと、それに時間のせいもあり、まぶたが少し重くなる。
それを必死に堪えて、弟者さんの言葉に耳を傾けた。
(´<_` )「ツンちゃんの家の方に、桜が植えられた公園があるよね?」
ξ ゚听)ξ「はい 小さい頃によくあそこで遊んでました」
思い出すのは、今日の出来事。
そして、ブーンと遊んだ、幼い日の思い出。
あの場所は私にとって、とても大切な場所だ。
でもなぜ突然そんなことを?
静かに前を見つめ、運転している弟者さんの横顔は、
何かを考えているような表情だった。
(´<_` )「実は…」
そして、ゆっくりと口を開いた。
- 4: ◆ECmvgmi7GI :2008/05/15(木) 19:28:17.96 ID:s1FhlFn+0
(´<_` )「あの公園が取り壊されるのは、知ってるかい?」
眠気が、飛んだ。
ξ ゚听)ξ「え?」
聞こえていた。はっきりと。
でもなぜかもう一度、聞き返してしまう。
(´<_` )「来週の工事で、取り壊されるんだ 桜も…」
頭の中が、真っ白になった。
あの公園が、あの桜が…なくなってしまう?
そんな、そんな……。
うまく思考がまとまらない。
私はただただ、呆然とするだけだ。
(´<_` )「ブーン君から聞いたんだが」
その間も、弟者さんは構わずに話を続ける。
(´<_` )「あの場所は、ツンちゃんにとっても大切な場所なのだろう?」
- 5: ◆ECmvgmi7GI :2008/05/15(木) 19:30:33.92 ID:s1FhlFn+0
そうだ。
あの場所は、特別な場所。
大切な思い出が生まれた場所。
今日も一つ、思い出ができたばかりの場所。
ξ ゚听)ξ「はい…」
自分のあまり覇気のない声に驚いた。
ブーンにどこまで聞いたのかはわからないけど、
多分昔のことを話したのだろう。
私とブーン、それと多分クーにとっても、あの公園は特別な場所だ。
(´<_` )「実は、俺にとってもあの場所はちょっとした思い入れがあるんだ」
ξ ゚听)ξ「そうなんですか…?」
(´<_` )「ああ、ペニも悲しむだろうな」
ペニサスさんも…。
二人もあそこで何かあったようだ。
意外なとこでの共通点に、少し驚いた。
- 6: ◆ECmvgmi7GI :2008/05/15(木) 19:32:50.82 ID:s1FhlFn+0
(´<_` )「聞きたいかい? 意図がなかったとは言え、
ツンちゃん達の話を聞いてしまったし、聞く権利はあると思うが」
ξ ゚听)ξ「……いえ、大丈夫です」
正直、知りたかった。
でも今は色々と考えがまとまらず、とてもそんな気分にはなれなかった。
それに聞くなら、ブーンと一緒がいい。
(´<_` )「そうか まぁ機会があった時にでも」
どうやら私の心中を察してくれたらしく、少し嬉しかった。
ξ ゚听)ξ「また今度、是非」
私の返事を聞いて、弟者さんは静かに笑った。
つられて私も笑顔になる。
弟者さんの大人の優しさに、少し救われた。
(´<_` )「大切な桜だ」
そして、ぽつりと──。
- 7: ◆ECmvgmi7GI :2008/05/15(木) 19:33:59.08 ID:s1FhlFn+0
── 散らせはしない ──
( ^ω^)桜舞い散る中に、忘れた記憶が戻ってくるようですξ゚听)ξ
───第十話 『苦悩』───
- 8: ◆ECmvgmi7GI :2008/05/15(木) 19:36:09.48 ID:s1FhlFn+0
(´<_` )「すまんな、こんな時間に」
ツンちゃんを送った後、俺はペニに電話をした。
思ったよりも早く、ペニは電話に出てくれた。
('、`*川『ううん、いいよ どうしたの?』
(´<_` )「ちょっと話があるんだが…会えないか?」
('、`*川『え、今からくるの?』
(´<_` )「いや、実はもう近くまできてるんだ」
('、`*川『ふーん…わかったよ ついたら教えてね』
(´<_` )「ああすまん、それじゃまた後で」
携帯を閉じ、ペニの家に向かう。
向かう間、昔のことを思い出す。
思えばペニと付き合うことになったきっかけは、あの桜だ。
その前にも、俺に大きな分岐点をくれた。
- 9: ◆ECmvgmi7GI :2008/05/15(木) 19:37:44.31 ID:s1FhlFn+0
しかし、つくづく不思議な桜だ。
ここまで人の心に残る桜なんて、他にあるのだろうか。
……珍しく熱くなっている自分に気付く。
まぁそれは当然なのかもしれない。
ブーン君達だけじゃない。俺にとっても、大切だ。
工事は来週、上等だ。手段はある。
俺が守ってやるさ。
あの木と、みんなの思い出を。
………。
……。
…。
- 11: ◆ECmvgmi7GI :2008/05/15(木) 19:39:20.00 ID:s1FhlFn+0
ξ ゚听)ξ「ふぅ…」
お風呂から上がり、パジャマに着替えて、一息。
本当に今日は色々なことがあった。
良い事、それに悪い事。
ありすぎて、頭がパンクしそうだ。
少し考えて、携帯を手に取る。
件名は入れず、起きてる?と一言だけの短いメール。
送信先はクーだ。
三十秒もしないうちに、同じように短く、起きてると返事が返ってきた。
もう一度、電話してもいい?と短くメールを打つ。
すると、クーからかけてきてくれた。
そのまま電話に出る。
ξ ゚听)ξ「もしもし? ごめんね」
川 ゚ -゚)『いや、大丈夫だ どうした?』
ξ ゚听)ξ「今日お花見した公園のことなんだけど…」
- 12: ◆ECmvgmi7GI :2008/05/15(木) 19:41:03.49 ID:s1FhlFn+0
川 ゚ -゚)『ああ、どうかしたのか?』
ξ ゚听)ξ「実はね…来週の工事で、取り壊されるみたいなの…」
川 ゚ -゚)『……本当か…? 桜はどうなるんだ?」
ξ ゚听)ξ「弟者さんから聞いたんだけど…一緒になくなっちゃうらしいわ…」
川 ゚ -゚)『そう…か…』
クーの声に、落ち込みの色が混ざる。
私だけじゃない。クーにとってもあの桜は大切な存在だ。
ξ ゚听)ξ「一応…話しておこうかと思って…」
川 ゚ -゚)『そうか…ありがとう』
ξ ゚听)ξ「メールでもよかったんだけど、直接言いたかったの」
ああ、と短く返事が返ってきた。
ξ ゚听)ξ「ねぇ、クー?」
- 16: ◆ECmvgmi7GI :2008/05/15(木) 19:43:07.13 ID:s1FhlFn+0
川 ゚ -゚)『ん?』
ξ ゚听)ξ「明日は一緒に学校に行かない?」
川 ゚ -゚)『ん、ああ 私もそうしようと思ってたんだ』
ξ ゚听)ξ「よかった、それじゃあ明日、一緒にね」
川 ゚ -゚)『わかった』
ξ ゚听)ξ「ブーンも、桜の事知ってるみたいだから…」
川 ゚ -゚)『そうなのか』
ξ ゚听)ξ「うん それじゃあ…今日は何度もごめんね」
川 ゚ -゚)『気にするな』
ξ ゚听)ξ「おやすみ…」
川 ゚ -゚)『おやすみ』
少し名残惜しく電話を切り、ベットに横になる。
そしてゆっくりと、目を閉じた。
- 18: ◆ECmvgmi7GI :2008/05/15(木) 19:45:16.38 ID:s1FhlFn+0
最初に浮かんだのは、ブーンの顔。
相変わらず笑っている顔だ。
その笑顔が、私はとても好き。
次に浮かぶのは、今日見たクーの笑顔。
いつも思っていたけど、あの時のクーの笑顔はこれまでにないくらい、綺麗だった。
私もあんな笑顔でいたい。
ブーンの笑顔、クーの笑顔…。
その後ろで揺れるのは、大きな桜の木。
もう、来年は見られないのだろうか。
もう、あの木の下で皆とお花見することはできないのだろうか。
ブーンは帰ってきてくれたのに、あの桜は思い出の中だけの物になってしまうのだろうか。
ゆっくりと、夢の中へと誘われて行く。
目蓋の裏に映る桜の木へと、私は静かに歩いていった。
………。
……。
…。
- 19: ◆ECmvgmi7GI :2008/05/15(木) 19:47:56.84 ID:s1FhlFn+0
朝。いつものように朝食をとり、家を出る。
早朝はまだ少し寒い。
でもそれは、眠い頭を覚醒させるのに丁度いい。
バス停につくと、そこにはツンとクーがいた。
今日はクーも一緒なんだと、駆け寄る。
( ^ω^)「おはようだおー」
ξ ゚听)ξ「おはよー」
川 ゚ -゚)「おはよう」
( ^ω^)「昨日はお疲れ様だお」
川 ゚ -゚)「ああ、楽しかったな」
ξ ゚听)ξ「そうね」
……?
なんとなく、違和感を感じた。
それと同時に、工事の事を思い出す。
( ^ω^)「んと、二人とも…」
- 20: ◆ECmvgmi7GI :2008/05/15(木) 19:50:15.52 ID:s1FhlFn+0
ツンとクーは、工事のことをすでに知っていた。
田舎は噂が広まるのが早い、なんて言葉を思い出したが、
それが単なる噂ではなく、すでに決まったことなのが寂しく思えた。
二人とも、普段と変わらない表情をしているが、寂しさの色が滲み出ていた。
きっと僕も、二人と同じような感じだろう。
桜の事を話し終えた後、沈黙が僕らを包んだ。
何も言えない。
意気消沈とはこういうことだろうか。
窓の流れる景色に目を移す。
一面の青空、そして田んぼ。
二つの色が流れてゆく。
いずれこの景色にも、前にいた街と同じ色…
冷たい灰色が混ざる時がくるのだろうか?
……いけない。考え方がネガティブになっている。
仕方がないんだ、もう決まった事なのだから。
それでいいじゃないか。
町は、変わっていくものなんだ。
- 21: ◆ECmvgmi7GI :2008/05/15(木) 19:52:37.84 ID:s1FhlFn+0
重い空気のまま、学校に着く。
教室に入ると、明るい挨拶で迎えてくれたショボン達。
僕が席に着くなり、なんだか元気ないねと、心配してくれた。
工事の事を、ショボン達に話す。
皆口を揃えて、残念だね、と言った。
( ^ω^)「でももう、仕方がないんだお」
僕は出来るだけ明るく振舞った。
それよりも、昨日のお花見は楽しかったね、と。
いい思い出になったね、と。
ショボンもドクオも、それにのってきてくれた。
そんな僕を、ツンは黙って見つめていた。
- 22: ◆ECmvgmi7GI :2008/05/15(木) 19:54:11.34 ID:s1FhlFn+0
友達といる時間は、寂しさを忘れさせてくれた。
こういう気持ちにさせてくれるのが友達なのだと、実感する。
引っ越す前は、ずっと一人だった。
本当に、ここへ引っ越してきてよかったと思う。
素晴らしい友達が出来てよかった。
思い出はまた、この仲間達と作っていけばいい。
そしてその思い出は、もう二度と、絶対に忘れない。
朝の重い空気を吹き飛ばし、いつもの楽しい時間が過ぎて行く。
登校時間の方が、長く感じた。
………。
……。
…。
- 23: ◆ECmvgmi7GI :2008/05/15(木) 19:56:39.51 ID:s1FhlFn+0
(´・ω・`)「なぁドクオ」
('A`)「ん? どうした?」
移動教室の時、僕はドクオを捕まえて、疑問を投げかけた。
それは、ブーンとツン、そしてクーのこと。
(´・ω・`)「あの三人、なんだか無理に振舞ってるね」
('A`)「あぁ…詳しく聞いてねーけど、あの桜がなくなるの、相当きついみたいだな」
(´・ω・`)「そうみたいだね まぁ僕も理由はわからないけど」
ブーンが昔、こっちの方に住んでいた事は聞いていた。
でもツンとの関わりについては知らない。
多分、聞けば教えてくれるだろう。
でもそれはしたくない。
変な意地を張ってしまう。僕としては、聞かなくても教えてほしいからだ。
('A`)「まぁでも、友達にだって言えないことはあるだろ」
(´・ω・`)「……」
- 25: ◆ECmvgmi7GI :2008/05/15(木) 19:58:53.09 ID:s1FhlFn+0
('A`)「言える事なら、そのうち話してくれるさ」
相変わらずさっぱりとした奴だ。
ドクオのそんな性格は、嫌いじゃなかった。
(´・ω・`)「そうだな」
('A`)「ああ、果報は寝てから、っていうだろ?」
(´・ω・`)「……」
('A`)「あれ? 違った?」
こういう…。
(´・ω・`)「ふふっ そうだな」
馬鹿なところも、嫌いじゃない。
………。
……。
…。
- 26: ◆ECmvgmi7GI :2008/05/15(木) 20:01:58.31 ID:s1FhlFn+0
川 ゚ -゚)「なぁ、ブーン」
学校が終わり帰る途中、バスから降りた所で、クーに呼び止められた。
( ^ω^)「お?どうしたお?」
川 ゚ -゚)「ちょっと、公園まで付き合ってくれないか?」
( ^ω^)「? 別にいいけど、どうしたんだお?」
川 ゚ -゚)「なんとなく、な 急に桜が見たくなったんだ」
なんだろうか?
昨日も見たばかりなのに…。
川 ゚ -゚)「ツンも一緒に…」
ξ ゚听)ξ「私は…途中まで一緒に行くわ」
( ^ω^)「ツンはこないのかお?」
- 27: ◆ECmvgmi7GI :2008/05/15(木) 20:04:21.37 ID:s1FhlFn+0
ξ ゚ー゚)ξ「うん テストも近いしね」
嫌なことを思い出してしまった。
そういえば近々テストがあった気がする…。
川 ゚ー゚)「ブーンは勉強は大丈夫か?」
(;^ω^)「大丈夫だお 多分…」
正直前の学校では勉強ばかりしていたせいで、自信はあった。
言葉通り、大丈夫だろう。
…多分。
川 ゚ -゚)「じゃあ、ツンの家まで一緒に行こうか」
クーの切り出しを合図に僕らは頷いて、歩き出した。
- 29: ◆ECmvgmi7GI :2008/05/15(木) 20:06:17.85 ID:s1FhlFn+0
ツンの家に向かう途中はテストの事を話した。
極力、工事の話題を避けて。
話しながらふと、ツンの顔を見る。
夕暮れの赤に照らされた彼女の顔は…。
ξ ゚ー゚)ξ
なんだかいつもより、綺麗に感じた。
ξ ゚听)ξ「ブーン? どうしたの?」
(;^ω^)「おっ? いやなんでもないお」
知らないうちに見入っていたのだろうか、ツンと目が合い、
照れくさくなって顔を背けてしまった。
頭によぎる、弟者さんの言葉。
──ツンちゃんのことが好きなのかい?──
- 30: ◆ECmvgmi7GI :2008/05/15(木) 20:08:29.35 ID:s1FhlFn+0
ツンのことが、好き?
ちらりとまたツンを見る。
……綺麗だ。
僕なんかじゃ、絶対に釣り合わない。
でももし、ツンのような可愛い子が彼女だったら…。
…いやいや、それ以前に、ツンのことが好きってわけじゃ…。
なんだかよくわからなくなってきた。
混乱しているうちに、気付けばツンの家に着いていた。
( ^ω^)「ふぉっ?」
少し驚いて、素っ頓狂な声を出してしまう。
- 31: ◆ECmvgmi7GI :2008/05/15(木) 20:10:34.65 ID:s1FhlFn+0
ξ ゚听)ξ「どうしたの? なんかさっきから変ね」
(;^ω^)「な、なんでもないお ちょっとぼーっとしてたんだお」
ξ ゚听)ξ「ふーん…」
ツンのことを考えていました、なんて言えない。
ξ ゚听)ξ「それじゃあ、また明日ね」
( ^ω^)「また明日だお」
川 ゚ -゚)「…ツン」
ξ ゚听)ξ「ん?」
川 ゚ -゚)「…ありがとう」
何に対してのお礼だろうか?
お礼を言われた当のツンは…。
ξ ゚ー゚)ξ
何も言わずに笑顔で返し、家の中へと入っていった。
- 32: ◆ECmvgmi7GI :2008/05/15(木) 20:13:31.16 ID:s1FhlFn+0
( ^ω^)「じゃあ、いくかお?」
ツンが家に入るのを見送り、クーを促す。
川 ゚ -゚)「ああ、付き合ってもらってすまないな」
( ^ω^)「気にしなくていいお 僕も…」
言いかけ、言葉を飲み込む。
──できるだけ、見ておきたいし──
そう言いかけた。
寂しさを生み出す言葉は、できるだけやめよう。
( ^ω^)「ん、とにかく、気にしないでほしいお」
川 ゚ -゚)「ああ、ありがとう」
そして僕とクーは、並んで公園へと歩き始めた。
- 33: ◆ECmvgmi7GI :2008/05/15(木) 20:16:06.55 ID:s1FhlFn+0
川 ゚ -゚)「思い出したんだな」
ぽつりと、呟いた。
( ^ω^)「お?」
川 ゚ -゚)「ツンとの思い出さ」
( ^ω^)「ツンから聞いたのかお?」
クーは静かに、こくりと頷く。
( ^ω^)「思い出したお 全部、しっかりと」
川 ゚ -゚)「全部…か?」
( ^ω^)「全部だお」
すると、少し切なそうな顔をして、言った。
川 -)「手を…」
- 36: ◆ECmvgmi7GI :2008/05/15(木) 20:18:30.75 ID:s1FhlFn+0
川 -)「女の子の手を引いて、ここに来た覚えはあるか…?」
( ^ω^)「お…」
クーの言葉を聞き、僕は思い出してみる。
女の子の手を引いて……公園に…。
( ^ω^)「うーん…」
ツンと遊んでいたことは、鮮明に思い出すことができる。
だけど手をつないで公園に来たことは…。
( ^ω^)「多分…ないと思うお」
クーの歩みが、止まった。
どうしたのかと、僕も立ち止まる。
辺りはオレンジ──…いや、少し暗い赤に染まりつつあった。
そのせいで、うつむいたクーの顔が、よくわからない。
顔を上げたクーは、
川 ー)「そうか」
なぜか寂しそうな笑顔だった。
- 38: ◆ECmvgmi7GI :2008/05/15(木) 20:20:48.95 ID:s1FhlFn+0
( ^ω^)「?? クー? どうしたん…」
川 ゚ー゚)「気にするな さぁ、暗くなる前に行くぞ」
そう言って、クーは駆け出した。
僕も慌ててついていく。
結構、早い。そういえば、クーは運動もできたんだっけ。
ほとんど勉強漬けだった僕には情けないことだが、追いかけるのが精一杯だった。
寂しげな笑顔が、妙に頭に残る。
一体どうしたのだろうか。
気に触ることでも言ってしまったのだろうか。
考えながらも、段々と追いつく事に夢中になっていった。
ちょっと、体力不足かもしれない…。
そう言えばドクオは結構スマートで…ショボンは結構がっしりとしてたっけ…。
何かスポーツでも…始めようかな…。
- 40: ◆ECmvgmi7GI :2008/05/15(木) 20:23:15.82 ID:s1FhlFn+0
クーの背中を必死に追いかける。
…これは本気で、体力不足だと思う。
疲れてしまい、走るのをやめて、下を向く。
その時、それが目に映った。
今まで気付かなかった、それを。
大きな、重い何かが通った跡。
嫌な汗が背中を伝うのがわかる。
もう疲労など気にしない。
僕は必死にクーの後を追った。
やがて公園が見えてくる。暗くなったせいではっきりとは見えないが、
桜はまだちゃんとあるようだ。
そして、公園の入り口で立ち尽くすクーに並び、
それを、見た。
- 43: ◆ECmvgmi7GI :2008/05/15(木) 20:25:58.02 ID:s1FhlFn+0
色が、形が、全てが──。
この場所には余りに不釣合いな存在──。
『重機』
人を乗せていないそれは、獲物を狙う猛獣のように…。
僕らの大切なものを、簡単に破壊してしまう残酷な爪を掲げていて…。
昨日、本当に自分はここにいたのかと思う程に、そこは冷たい空気に埋もれていた。
はっとして、隣にいるクーを見た。
呆然と、立ち尽くしている。
(;^ω^)「クー…」
川 ゚ -゚)「……始まるんだな」
始まる……始まってしまう。
絶望的な程の現実。
- 46: ◆ECmvgmi7GI :2008/05/15(木) 20:27:31.84 ID:s1FhlFn+0
川 ゚ -゚)「できれば…」
クーは静かに、桜を見つめながら…。
川 ゚ -゚)「こんな物がないところを、もう一度見たかったな…」
寂しそうに、呟いた。
僕は何も言えずに、ただクーの隣に立ち尽くすだけだった。
………。
……。
…。
- 48: ◆ECmvgmi7GI :2008/05/15(木) 20:29:18.05 ID:s1FhlFn+0
(´<_` )「すまん、父者、母者」
真剣な表情で、弟者は両親を呼ぶ。
ここまで真面目に両親と話すのは、弟者にとって初めてのことだった。
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( ノ`)「どうしたんだい?」
雰囲気を察したのか、少し驚いたような表情で、母者が返事をする。
(´<_` )「大事な話があるんだ」
それは、とても大事なこと。
弟者にとっても。
ブーン達にとっても──。
続く……。
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