( ^ω^)ブーンは歩くようです

5: 以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします。 :2007/11/19(月) 01:08:34.90 ID:tZnXwI7D0

第二部  世界の終わりと、それでも足掻いた人間たちの話


― 1 ―

(# ゚ω゚)「いったいどういうことだお! この国の役人どもは何をやっているんだお!
     流出経路は判明しているのかお!? 流出先は某国で間違いないのかお!?」

川;゚ -゚)「流出経路は依然調査中らしい。流出先は某国で間違いない。
     それどころかやっこさんたち、すでに稼動基地の開発にも着手しているようだ。
     行政、軍事関係者たちがすでにブリーフィングルームに集まっている」

(# ゚ω゚)「プロジェクトメンバーも直ちに全員ブリーフィングルームに集合させるお!」

川;゚ -゚)「りょ、了解した!」

研究所内の通路で怒鳴り散らしながら、僕はクーと一時別れてブリーフィングルームへと直行した。

広々とした室内には、軍部、行政部その他大勢の政府関係者がすでにスタンバイしており、
まもなくクーに連れてこられたプロジェクトチームの全員を交え、早急に事態の説明が始められた。



6: 以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします。 :2007/11/19(月) 01:11:35.65 ID:tZnXwI7D0

(;´∀`)「こ、このたびはまことに遺憾な事態が発生しましたモナ。
      我々行政部も細心の注意を払っていたのですが、
      情報の流出を食い止めることが出来ませんでしたモナ」

(# ゚ω゚)「あんたらはいったい何をやっていたんだお! それがあんたらの仕事だろうがお!
     しかも、流出先はよりにもよって某国かお!? 愚かしいにもほどがあるお!」

この事態が重度の危険性を帯びた理由として、流出先が某国であることが挙げられていた。
某国は極東に存在していた独裁国家で、国際社会から大いに孤立していた社会主義国家のことだ。

追い詰められている以上、何をしでかすか予想がつかない。
最も危険な国のひとつに数えられる国家だった。

(;´∀`)「じゅ、重々承知しております! 
      しかし、細心の注意を払っていながら食い止められなかったということは、
      これはもはや、行政外部から漏れたとしか考えられず……」

(# ゚ω゚)「この件は極秘中の極秘事項だお! 
     知っていたのは一部の行政、軍部関係者と僕たちプロジェクトチームだけだお!
     まさかあんた、僕たちから情報が流出したとでも言いたいのかお!?」



7: 以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします。 :2007/11/19(月) 01:13:11.04 ID:tZnXwI7D0

(;´∀`)「いえ、そんなことは……」

僕たちプロジェクトチームは、前述したように外界から完全に隔絶されていた。
通信、連絡、行動のすべてが監視体制の下に置かれており、情報の流出などできようも無かった。

( ・∀・)「すると、我々軍部の責任だと?」

(;´∀`)「い、いえ、そういうことも……」

軍部高官の低い威圧感のある声。
行政部の役人が額の汗を何度もぬぐいながら、しどろもどろで立ちつくす。

僕の怒り、そして軍部の横槍が彼に向けられ、室内は恐々とした雰囲気に包まれていた。

そんな室内に、静かなあの声が響いた。



9: 以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします。 :2007/11/19(月) 01:16:11.08 ID:tZnXwI7D0

川 ゚ -゚)「今は流出先の特定などどうでもいいでしょう。
    それよりも、今後、この事態をどうやって収拾するのかを話し合うべきだ」

あまりにも正論で、非の打ち所の無いクーの意見。
室内が一気に沈黙した。

彼女の言うとおり、終わった不祥事の原因を突き止めるよりも先に、
その後起こりうる最悪の事態を未然に防ぐ手立てを話し合うことのほうが間違いなく急務だった。

素直に彼女を見直した。下がり続けていた彼女の評価が一気に上がった。
やはりクーは信頼にたる人物だ。

そう考えを改めた僕の視界の先で、
小柄な行政部の役人を押し退けるように大柄な体躯の軍部高官が壇上へと上がった。

( ・∀・)「では、解決策の話し合いに移りましょう。
     こちらが、我々軍部の衛星カメラが捉えた映像です
     以前の某国には無かった建造物が、まるで隠匿するかのように郊外の奥地に建てられております。
     発見が遅れた理由もここにあります。某国も自国の存続のために必死だということでしょうか。
     それで、内藤博士。これはあなたの提唱した新エネルギーシステムの稼動基地と見て間違いありませんね?」

(;^ω^)「……間違いないお」

( ・∀・)「それと、あなたの新エネルギーシステム理論が軍事に転用される危険性はありますか?」



10: 以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします。 :2007/11/19(月) 01:18:48.38 ID:tZnXwI7D0

(;^ω^)「……十二分に有り得るお」

軍事に転用される危険性。これが今回の事態における一番の懸念事項だった。

莫大なエネルギーを生み出しうる僕の理論。
もし軍事に転用されれば、核兵器以上に恐ろしいものとなる。

エネルギーシステムに限らず、
人類に有用な発明は人類に有害な兵器として転用される危険性を内包している。

ダイナマイト然り、原子力然り。

その例に漏れず、僕が提唱した新エネルギーシステム理論もまた、その危険性を悲しいほどに内包していた。
これはこの類の発明のどうしようもない性なのだ。

( ・∀・)「それでは、別の質問です。あの基地が仮に誤作動を引き起こした場合、
      その被害はどの程度のものと考えられるのでしょうか?」

(;^ω^)「その質問はナンセンスだお! 
     誤作動の可能性が無いからこそ、僕はこの理論を提唱したんだお!」

( ・∀・)「それは重々承知しております。あくまで仮に、の話ですよ」



13: 以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします。 :2007/11/19(月) 01:23:07.42 ID:tZnXwI7D0

(;^ω^)「……」

そうたずねて、ニヤリといやらしい笑みを浮かべた軍部高官。

彼の笑みに嫌な予感が脳裏をよぎったが、
確固たる拒否理由が無い以上、僕は答えないわけにはいかなかった。

(;^ω^)「……大都市の二、三個は軽く消滅してしまう規模だお」

( ・∀・)「ほう? その程度の被害で済むのですね?」

(; ゚ω゚)「その程度? 核兵器の数倍の規模だお!? あんたいったい何を考えているんだお!?」

( ・∀・)「なーに、簡単なことです。汚点は消してしまえばいいのですよ」



15: 以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします。 :2007/11/19(月) 01:25:37.55 ID:tZnXwI7D0

(; ゚ω゚)「!!」

予感という、非論理的な感覚が現実化してしまった。

慌てて周囲を見渡してみたが、僕らプロジェクトチーム以外の行政、軍部関係者は、
さも当然といった顔でその場に鎮座していた。

おそらく、話はすでに決まっていたのだろう。
このブリーフィングはあくまで形式上のものに過ぎなかったのだ。

( ・∀・)「もはやこれ以外の手立ては無い。これは我々が提唱する世界平和を脅かす事態なのです」

(;´∀`)「わ、我々行政部も全力を持って外交等の対処に当たりますモナ! 事態は必ず収拾させますモナ!」

( ・∀・)「では、話し合いは以上で。内藤博士、何かご意見はございますか?」

(  ω )「……そんな馬鹿な真似は止めるんだお」

( ・∀・)「ほう? それでは、何か代案があるとでもおっしゃるのですか?」



16: 以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします。 :2007/11/19(月) 01:27:47.10 ID:tZnXwI7D0

(  ω )「それは……」

( ・∀・)「無いのですね? 天才でも考え付かないのであれば、これ以外の方法が有ろうはずが無い。
      この方法こそが最良なものであると、あなたは認めてくださったのですね? では、解散」

(  ω )「……」

軍部高官の皮肉を前に、僕は何も言えなかった。
人類の未来のために苦労して作り上げたシステムが、こともあろうか間逆の事態を引き起こしたのだ。

こんなときに何も言えなくて何が天才だ。そんな天才に、存在価値など微塵もない。
なにより、動機はどうあれ現在の危機の根底を築いたのはこの僕だ。そしてこの国だ。

ブリーフィングルームから次々と退出していく関係者たち。
遠のいていく彼らの足音を耳にしながら、僕は負け犬の遠吠えとでも言うべき言葉をつぶやいていた。

(  ω )「世界の危機を自分たちで作り出しておきながら、矛盾する理論でそれを解決しようとする。
      僕たちはいったい、何をやっているんだお……」



17: 以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします。 :2007/11/19(月) 01:29:32.14 ID:tZnXwI7D0

プルプルと震えていた僕の肩。
うつむいた顔を上げてしまえば悔しさに涙がこぼれ落ちそうで、それは叶わなかった。

やがて誰もいなくなったのであろう、気味が悪いほどにしんと静まり返った室内。
滲む視界が乾いたのを確認した僕は、ゆっくりと重い頭を上げた。

目の前に一人だけ、部屋の真ん中で立ち尽くしている人物がいた。

川 ゚ー゚)「研究者としての性なのか、はたまた天才としての性なのか。
     最悪の状況とはいえ、私たちの作り上げた理論が現実のものとなっているのを前にして
     嬉しいと感じてしまう自分がいるのが、私には憎らしくてしょうがないよ」

川 ゚ー゚)「君も……そう思わないか?」

依然としてスクリーンに投影されていた件の映像を見て、クーがぽつりとつぶやいた。

その直後僕の方を振り返った彼女の顔は、泣き笑いのようなゆがんだ表情を浮かべていて、
僕にはそれが悲しくもあり、なぜか美しくも感じられた。



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