( ^ω^)ブーンは歩くようです

1: 以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします。 :2008/01/09(水) 04:17:25.88 ID:00MzLAvn0

最終部  古に続く伝統と、それでも足を欲しがった女の話


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( メ^ω^)「……」

静かな砂漠の夜に似合わない甲高い銃声をいくつか鳴らした僕は、
空になった薬きょうを砂の上に落とし、これが最後となってしまったストックの弾丸を銃に込め、
足もとに転がる数々の死体を眺めていた。

崩れ落ちた死体は血を流し、流れ落ちたその赤が乾ききった砂の大地に余すことなく吸い取られていく。

夜の砂漠に吹く冷たく乾ききった風が、
すっかり人を殺すことに慣れてしまった僕の唯一の動揺の証しとでもいうべき額の汗を、
何食わぬ顔でぬぐい去ってしまう。

そしてそれさえ無くなれば、死体に対する僕の特別な感情は、もはや何ら浮かんではこない。



3: 以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします。 :2008/01/09(水) 04:19:35.25 ID:00MzLAvn0

( メ^ω^)「……」

また、人を殺してしまった。
南に下って以降、これで何人の人間を殺めたことになるのだろう?

申し訳程度にそんなことを考えて銃を仕舞い、死体から視線を外せば、
テントの傍に繋いでいた僕のラクダが、砂の上に横たわって苦しそうに口から血の泡を吐いているのが見えた。

また、足もとの死体たちに視線を戻す。
どうやらこいつらが、僕を襲う前に、僕の唯一の足であるこのラクダを行動不能にしていたらしい。

( メ^ω^)「……今、楽にしてやるお」

溜息を吐きつつ呟いてラクダへと近づき、腰からナイフを取り出す。

夜と同じ色の刀身をしたあのナイフ。
それでのど元を掻き切ってやれば、間もなくラクダは声を出すことなく、息絶えた。



14: 以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします。 :2008/01/09(水) 04:45:55.88 ID:Q1kkINzE0

( メ^ω^)「……まいったお。……足を失ったのは何とも痛いお」

足元にたくさんの死体を横たえたまま、ラクダの血で濡れたナイフを手に持ったまま、
僕は夜空を見上げて大きくため息をついた。それから周囲に視線を移す。

僕の周りに広がるのは一面、砂の海。砂丘の盛り上がりはさながら海の荒波。
その他、風により出来たさざ波状の砂模様が、砂漠が砂の海だという形容をもっともらしいものに感じさせてくれている。

そして、その向こう側に広がる、屹立した「障壁」。

( メ^ω^)「さて……残りの銃弾はあと一発。移動手段も失ったお。
      これから『あれ』をどう超えりゃいいんだお?」

そんな切実な悩みを抱えながらもラクダの死体の前に腰を下ろし、僕は淡々とその体を解体していく。
野党らしき先ほどの死体たちの荷物を燃やし、ラクダの肉を保存食として蓄える作業に移る。



17: 以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします。 :2008/01/09(水) 04:47:17.21 ID:Q1kkINzE0

今僕がやっているのは、死人の身ぐるみをはがし、旅の友であったラクダを弔うことなく食糧に変えていくということ。
薄情な人間だと誰もが軽蔑するであろう。

しかし、そんな薄情さを身につけなければ、砂漠の大地を、
人間でひしめくユーラシア南西部のこの土地を旅するだなんて、とてもじゃないが出来ることではなかったのだ。



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