( ^ω^)ブーンは歩くようです

138: 以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします。 :2008/03/19(水) 14:56:12.96 ID:ZC1hkslO0

― 12 ―

サナアを出て二時間以上が経過した。道中で南中を迎えた太陽はわずかに西へと下り始めている。

そして太陽と同じように、新郎新婦一行もまた、西に向けて山道を下り続けていた。
一行の最後尾からさらに距離をとって、僕もまた、歩いていた。

西の平原、火の道とやらは一向に見えてこない。周囲は平原どころか傾斜続きの山道で、
それはメッカ遺跡からサナアまでを縦断していた肥沃な山岳地帯アシールに良く似ていて、田畑や川の流れが点在していた。

そんな道中を、薬箱を背負ったオワタから背中にジャンビーヤを突き付けられつつ歩いた。
無言を貫き不機嫌を装いながら、ずっと一つのことを考え続けて。

(;^ω^)(……困ったお)

ツンデレはこれから歩けなくなる。僕の見越していた戒律による制約からではなく、直接的に足を切り取られて。
彼女にもはや猶予はない。そして僕にもまた、猶予はない。



139: 以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします。 :2008/03/19(水) 14:58:38.55 ID:ZC1hkslO0

甘かった。僕は本当に甘かった。

当初考えていた、今日ツンデレに道を告げて、
その返答次第で後日行動を起こすなんてことは、はなから甘い見通しだったのだ。

もう十年以上前。ドクオの村に一年も滞在していたというのに、僕は村人たちがアヘンを吸っていることに気付かなかった。

同じようにこのサナアでも、二年間、実質一年間は屋敷にこもりきりだったが、結局僕は今の今まで、
この「足を切る」という伝統に気づかないでいた。つまり、かつて犯した愚行を僕はまた繰り返してしまったのだ。

理性を得た人間の究極である天才の名は、僕の現状を見て嗚咽を漏らしながら泣いていることだろう。

判断材料が足りなかった。別のことに集中していた。
サナアという理性的な町に、そんな伝統があるなんて想像もつかなかった。

弁解が許されるのなら、上記の事情が僕にはあった。



144: 以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします。 :2008/03/19(水) 15:01:01.98 ID:ZC1hkslO0

けれどそんな言い訳を重ねても、本当に何の意味もないし状況は何一つ変わらない。
今、過去のことを悔いるのは、さらなる過ちを重ねることと同義だ。

僕の馬鹿さ加減は否定しないが、それを悔いるのはすべて終わってからで十分。
わずかな可能性が残っている限り、僕は今できる最善のことを尽くさねばならない。

そうやって僕は神の木と神の実を消す手助けが出来た。神の国を見つけることが出来た。
追い詰められても道はまだ残っていて、そこを突き進むことで僕はこれまで歩いてこられたのだ。

それだけが、あらゆることで後手に回ってしまう馬鹿な僕の、たったひとつだけ自信を持って言える長所。
確かにヒッキーだけは救えなかったが、それこそ同じ過ちは繰り返さない。彼の犠牲は今につなげる。

ツンデレに道を与える。過去に内藤ホライゾンが辿った道を、彼女にだけは辿らせない。
そうすることにより、これまで与えられてきた道を僕自身のものにする。

そして、ツンデレだけでなくジョルジュを――



145: 以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします。 :2008/03/19(水) 15:03:36.08 ID:ZC1hkslO0

(; ^ω^)(……そのためにはどんな方法が残されてるんだお?)

二時間以上の道の上、天才の頭脳を生かせない馬鹿な意識でそれだけを必死に考え続けた。
けれど、浮かんだ考えはたったひとつ。限りなく不可能に近い以下の方法だけだった。

これから行われるであろう誓いの儀の中で、ツンデレに別の道があることを告げる。
彼女が望むなら、僕が町の外へと連れ出してやることを告げるのだ。

そして彼女に考える時間を与えるため、抵抗してくるであろうオワタを、その他新郎新婦の一団に加わっている成員を、
何より新郎を、稀代のジャンビーヤ使いであるジョルジュを、食い止める。

その上でツンデレが歩きたいと言えば、彼女を連れてその場から逃げだす。そうでなければ、僕一人で逃げ出す。



148: 以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします。 :2008/03/19(水) 15:05:08.09 ID:ZC1hkslO0

(; ^ω^)(でも……そんなことが出来るのかお?)

あたりを見渡す。誓いの儀に向かう一行は、僕を除くと全部で七人。

ツンデレ、ジョルジュは当然として、あとはラクダに乗ったよぼよぼのサナア現長老、その側近と考えられる老人が二人、
そして僕の背中にジャンビーヤを突き付け続けているオワタと、ジョルジュの側近たる見覚えのある若者がもう一人。
ラクダはジョルジュ、ツンデレが乗っている一頭と、現長老が乗っている一頭、合わせて二頭。

敵にはなり得ないツンデレと、最近急激に老けてきたらしい現長老を除き、壁となり立ちはだかると考えられるのは五人。

そのうち、現長老の側近である老人二人はなんとかなるだろうと踏んでいる。



150: 以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします。 :2008/03/19(水) 15:07:51.63 ID:ZC1hkslO0
 
ナイフ捌きなどの技術面は歳を重ねるごとに磨きがかかり、いわゆる老獪の域に達する。
しかし持久力や瞬発力を支える体力や筋力は、歳とともにどうしても衰えてしまうものなのだ。

結果、老年の戦い方とは先の先、自ら仕掛けていく戦い方ではなく、
後の先、相手の出方に応じそれに切り返すカウンターを主体とした戦い方にどうしてもなってしまう。
彼らはその面において相当の腕前を誇るが、逆に言えば、こちらから手を出さなければその実力が発揮されることはない。

と、いつかの訓練でジョルジュが言ってた。
つまり今回の場合、ジョルジュの言葉を信頼するならば、老人二人は放っておけば大した脅威にならないのである。

問題はジョルジュの側近であるオワタともう一人だ。
どう楽観的に考えても、二人はそれぞれが僕以上の腕を持っているはず。
戦い方も、若さから考えて先の先。放っておいても向こうから仕掛けてくるだろう。

しかしこの二人についても、この道中、もしくは火の道とやらに着いたのち、
不意打ちという卑怯な手段を使えば、僕にも行動不能に出来る可能性が残されている。

壁がこれだけだったらなんとかなりそうである。

けれど、最悪なことに、あいつがいる。



154: 以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします。 :2008/03/19(水) 15:10:19.58 ID:ZC1hkslO0

新郎。サナアの歴史上最高のジャンビーヤ使いと謳われているジョルジュ。

たとえ逆立ちしたとしても、彼には勝てる気がしない。
奇跡が起きようとも埋められない実力差が、僕とジョルジュの間には横たわっている。

何度も彼と訓練を重ねてきたのだから嫌でもわかる。訓練で彼は一度も息を切らすことなく、軽く僕をあしらっていた。
その時の彼は、本来の実力の三分の一も出していなかったであろう。
唯一僕を敵と認識して襲いかかってきたメッカでのナイフ捌きも、彼すべての実力を出し切ったものであるという保証はない。

彼の実力は未知数。底が見えない。一方で僕の実力は、ジョルジュに完全に把握されてしまっている。
不利だとかそんなチャチなレベルではなく、僕にはジョルジュに勝てる要素が何ひとつといってないのだ。

(; ^ω^)(……いや、ひとつだけあるお)

懐にそっと手をやる。銃。
残り一発となった弾丸をそれで放てば、確かに僕でもジョルジュを行動不能に出来る。殺すことだってできる。

最も現実的に思えるこの方法。しかし、今回僕が成すべき行動の性質上、この方法を取るわけにはどうしてもいかない。



157: 以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします。 :2008/03/19(水) 15:12:29.92 ID:ZC1hkslO0

例えば、ツンデレの足の切り取りを阻止することが今回の行動の目的だとしよう。
それならば、僕は真っ先にジョルジュへと弾丸を撃ち込めばいい。

稀代のジャンビーヤ使いを地に伏せれば、それだけで他の者たちに対する十分すぎるほどの威嚇になる。
ジョルジュを生かしておいてその頭に銃を突き付けて脅せば、たとえ弾丸が込められていない銃であっても、
彼らはそのことを知らないのだ、ツンデレが道を選ぶだけの時間を十分に稼ぐことが出来る。

けれどそれは、ツンデレを脅すことにもなる。換言すれば、彼女を脅して道を選び取らせることと同義なのだ。
以上の方法はジョルジュを人質にした脅迫に他ならない。そんな風に選び取らせた道が、彼女自身が選び取った道になるはずがない。

僕の行動の本旨は、ツンデレが歩けなくなることを阻止するのでは無く、ツンデレに自分で道を選び取らせることにある。
ならば、脅すのと同様の以上の方法を取るわけにはいかない。

おまけに、足を切り取られるという現実をツンデレは目の前にしている。
彼女はただでさえ正常な判断が出来ない状況にあるのに、それをさらに助長させる方法は用いるわけにはいかないのだ。



162: 以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします。 :2008/03/19(水) 15:14:50.12 ID:ZC1hkslO0

結局、僕にはツンデレに道を告げ、選ぶ時間を稼ぎ、
彼女の選択に沿って彼女とともに、もしくは自分一人で脱出するしか方法はない。

銃の使用は脱出まで取っておかなければならないし、その時以外で使うことはツンデレを脅すことに他ならないタブーとなる。
それまではナイフか、それ以外の手段でなんとかするしかない。

まったく、とんでもないことを引き受けてしまったもんだ。

( ^ω^)「おっおっお」

けれども、なぜか笑えた。目の前にあるのは限りなく不可能に近い道なのに、
まるで冬という季節に向かって北へと歩き出したあの時のように、「なんとかなるさ」と、気持ちが軽い。

やっぱり僕には何かが欠けている。ドクオの村を旅立った時と同じことを僕は思う。
あれから十数年が経ち、様々な出来事に遭遇する中で僕は少なからず変化してきた。しかしこの点だけは変わっていないらしい。



165: 以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします。 :2008/03/19(水) 15:16:41.56 ID:ZC1hkslO0

\(^o^)/「……どうしたんですKA?」

あの時と同じように晴れた午後の空を仰いでいると、背中からオワタの訝しげな強張った声が聞こえてきた。
知らず、僕は笑いを声として漏らしてしまっていたらしい。

しかし、だからどうということはなかった。
むしろ二時間以上にわたる自問自答にも飽きてきたところだったので、僕は笑いながらオワタの問いかけに答える。

( ^ω^)「おっおっお。気にしないでくれお。
      それより、そろそろ話してくれてもいいんじゃないかお? 火の道ってのはなんなんだお? 」

\(^o^)/「そうですNE。間もなく着く頃ですし、話しても問題ないでSHOW」

返ってきたのは柔らかな声。同時に、ずっと背中に感じ続けてきた固い石のような雰囲気が一気に和らいだ。
僕にジャンビーヤを突き付け続けた二時間弱、どうやらオワタは相当に気を張っていたらしい。

歩く道のりは相変わらず緑色の斜面の上。オワタは続ける。



171: 以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします。 :2008/03/19(水) 15:18:12.07 ID:ZC1hkslO0

\(^o^)/「火の道とは言葉通り、燃える道のことでSU。正確には燃えていた道ですGA。
      遥か昔、ジャンビーヤの代わりにその火が花嫁の足を切り取っていたそうですが、なぜか今では燃えなくなっていまSU。
      ジャンビーヤの伝統はその代替として生み出されたのではないかと、僕たちの間では考えられていますNE」

今朝のような明るい口調で、得意げに、そしてさらりととんでもないことを言ってみせるオワタ。
僕の背後にいるためその表情は見えないが、きっと彼は笑っているのだろう。
しかしそれでも、背中からジャンビーヤの気配は消えない。依然としてジャンビーヤは突き付けられたままのようだ。

会話の隙に乗じて行動を起こそうと思っていたのだが、どうやらそれは難しいらしい。
その代わりと言ってはなんだが、僕はオワタの言葉の意味について軽く考えてみることにした。



175: 以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします。 :2008/03/19(水) 15:19:55.65 ID:ZC1hkslO0

火の道。燃える道。一瞬マグマの流れる火口を思い浮かべたが、即座にそれは否定された。

この近辺に活火山は存在しないし、たとえ千年の時の中でこの近辺に活火山が発生していたとしても、
僕たちは今山道を下っているのだ、目的地がマグマの流れる火口なわけがない。

( ^ω^)「……となると」

中東の山の中腹。平原。かつては燃えていて、少なくとも燃えているように感じられて、今は燃えていない。
これらの条件を満たす上で考えられるのは、地雷原。もしくはそれに準ずる、クラスター爆弾かその類いが埋まっている場所。

燃えるとは地雷による地面の爆発、燃えなくなったというのは地雷が風化して機能しなくなったか爆発し尽くしたかのいずれか。
そして、燃える道により足を切り取っていたというのは――。

( ^ω^)「……新婦に火の道の上を歩かせたていたのかお。恐ろしい話だお」



177: 以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします。 :2008/03/19(水) 15:22:08.90 ID:ZC1hkslO0

\(^o^)/「そうでもないですYO」

僕の返しをすぐさま否定したオワタ。続けて発せられた声は低く、強い感情が込められていた。

\(^o^)/「愛する人間に足を切り取られる、愛する人間の足を自分で切り取る、
      その方がよほど恐ろしI……」

( ^ω^)「……」

見えはしないが、背中にあるはずのオワタのジャンビーヤが震えたように感じられた。

ジャンビーヤを持っているということは、オワタもその儀式を通過した成人ということになる。
彼も妻の足を切り取ったのだろう。そして今、その時の光景を思い出した。
だから手にしたジャンビーヤが震えたのではないだろうか。

道からは田畑が消え、背の高い広葉樹が目立つようになる。

それからしばらく口を閉じたオワタは、話題を変えるように、唐突にこんなことを口にした。



182: 以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします。 :2008/03/19(水) 15:24:19.53 ID:ZC1hkslO0

\(^o^)/「そうそう、勘違いして欲しくないので言っておきますNE。
      僕だって好きでこんなことしてるんじゃないんでSU。
      僕だけでなく、ジョルジュさんの側近はみな、あなたを尊敬しているんでSU。
      あなたにこの町に留まってほしいと願っているんですYO」

( ^ω^)「おっおっお。人の背中にジャンビーヤを突きつけておいてよく言うお」

\(^o^)/「オワHAHAHA! まったくでSU! しかしこうでもしなきゃ、
      結婚式の真相を知ったあなたは、なんとしても誓いの儀を止めようとしたでSHOW?」

オワタの独特な笑い声。続けられた言葉の真偽は果たしてどうだろう?

ツンデレの存在を知らず、何の目的もなくサナアに留まり続けると考えていた場合、
僕はそれでも誓いの儀を止めようとしただろうか?



185: 以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします。 :2008/03/19(水) 15:26:29.19 ID:ZC1hkslO0

――多分、止めなかったと思う。
そういう伝統なんだろうと否定せず、いつものように傍観者を気取っていたはずだ。

あの時、アヘンを吸うことを強要されたように、僕自身が足を切り取られるわけではない。
サナアの足を切るという伝統は、そのせいで町の子どもたちを夕闇に置き去りにするといったこともない。

僕が純粋にまっさらだった場合、僕にはそういった伝統を否定する特別な権利はないし、理由も存在しない。

しかし、ドクオの村の人々といいサナアの町の住人といい、なぜみんな僕に真実を告げたがるのだ。
彼らはみな、僕から巧妙に伝統を隠し続けていたではないか。ならばそれを続ければいいだけの話だ。

そうすれば余計な気遣いも懸念もなに一つ必要ない。
互いが互いに一定の距離感を保ったまま、心地よい関係を保っていられたのに。

( ^ω^)「……なら、初めから結婚式に僕を呼ぶなお。
      ここまで判断材料を提示されなければ、僕はこのことに気付かなかったお」



187: 以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします。 :2008/03/19(水) 15:28:23.62 ID:ZC1hkslO0

\(^o^)/「もちろん、我々ジョルジュさんの側近はあなたの参列に反対しましたYO。
      しかし、ジョルジュさんたっての意向なのでSU。それを聞き、我々も納得せざるを得ませんでしTA。
      彼はあなたには町のすべてを知ってもらい、その上で後見委員長になるか否かを判断してほしいのですYO」

この町のすべてを知ってもらいたい、か。
隠し続けることは辛く苦しいことだから、相手にすべてを告げて楽になり、その上で判断を相手に委ねる、ということだろう。

人間は弱いものだと改めて思う。しかしそれは僕も同じなのだ。
僕もあのとき、ショボンさんに同様の手法を取った。だから僕も、人のことをとやかく言える人間ではない。

けれど実際に判断を委ねられる立場に立った時、「いいえ、それは言わなくても結構です」と言いたくもなる。

それにしても――。

( ^ω^)「……後見委員長って、何の話だお?」



192: 以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします。 :2008/03/19(水) 15:30:38.60 ID:ZC1hkslO0

\(^o^)/「はい、ジョルジュさんの結婚を機に、現長老は引退なさりまSU。
      そして次代長老の任をジョルジュさんが担うのでSU。ジョルジュさんは人望も厚く、
      才にも溢れており、長老の器を十分すぎるほど持っていらっしゃりまSU。しかし、あまりに若すぎRU。

      それがネックとなり、現長老派の老人たちから条件として後見委員会の創設を要請されましTA。
      まあ、それはあくまで口実で、彼らは現長老の引退により自らの権力が削がれることを懸念しているのでSU。
      そこで後見委員会を設立させ、その席に座り、引き続き権力を振るおうと画策しているのでSHOW」

政治抗争か。サナアほど発展した都市ではさもありなん。
出来れば関わりたくない対立ではあるが、オワタの語り口からして、僕はもうそれに巻き込まれてしまっているのだろう。

\(^o^)/「もちろん、多少卑怯な手を用いればその要求を撥ね退けることも出来ましTA。けれどもジョルジュさんは、
      『後見委員会の設立はのちに合議制を敷くためのいい足がかりになる』とおっしゃり、その設立を認めましTA。
      しかし、現長老派の老人たちはジョルジュさんがこれから断行する改革の反対勢力にしか成り得ないのです。

      我々も手を尽くしましたが、残念ながら後見委員会から現長老派の勢力を完全に排除することはできませんでしTA。
      改革を断行するためには、ジョルジュ派にもっと力が要りまSU。そしてその力に、あなたは成り得るのですSU。
      ジョルジュさんを含めた我々は、あなたに後見委員の長になっていただきたいのでSU」



196: 以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします。 :2008/03/19(水) 15:33:18.16 ID:ZC1hkslO0

( ^ω^)「……」

参った。巻き込まれているどころか、僕はもうその抗争の矢面に立たされるらしい。
知らないところでずいぶんと色々なことが起きているのは、僕がそれだけ歳をとってしまったからなのだろう。

後見委員長というのは、そんな年老いた僕への最後の花道だったのかも知れない。悪くない。むしろ嬉しさを感じる。

しかし、それは別の未来、あり得たかもしれない夢の話。今の僕にそんな選択肢はない。
他人事のように別の未来を想像し、未練がましく微笑みながら、僕は続きをオワタに尋ねる。

( ^ω^)「なるほど。で、その改革とやらは一体何なんだお?」

\(^o^)/「ジョルジュさんを筆頭に、我々はあなたから得た政治知識をもとに町の体制を変えようとしていまSU。
      それを我々は改革と呼んでいまSU。その足がかりが合議制であり、そのために後見委員会を活用したいのでSU。
      我々は後見委員会をもとに、ジョルジュさんと、そしてあなたと共に改革を断行したいのでSU。
      もちろんその際、この町の良いものは残しまSU。しかし悪いところは排除せねばなりませN」



199: 以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします。 :2008/03/19(水) 15:35:45.44 ID:ZC1hkslO0

( ^ω^)「……その立案はジョルジュが?」

\(^o^)/「もちろんでSU。そして我々は彼に賛同したのでSU」

背中からオワタの誇らしげな声。それを聞き、僕は目を細める。
息子のように思っていたジョルジュが、僕の知識を今に活かそうとしてくれているのだ。これが嬉しくないはずがない。

確かに、彼らの言う、ジョルジュの行おうとしている改革が具体的にどのようなものを指すのかを僕は知らない。
しかし二年ほど親密な付き合いをしてきたのだ。心配なんてほとんどしなかった。

ジョルジュなら急激な改革など決して行わない。
若い彼の長期に渡るであろう在位期間を逆手にとり、無理が生じないよう穏やかに緩やかに改革を進めていくはずだ。

そのための知識も僕が伝えてあるし、伝えそびれたものも書物としてほとんどを遺してある。
それさえあれば、僕がいなくともジョルジュならば大丈夫。

ただし、オワタの言葉を聞く中でいくつか気になる点がある。
僕の知るジョルジュなら決してやらないであろうことが、オワタの口からいくつか語られているのだ。



200: 以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします。 :2008/03/19(水) 15:36:16.17 ID:ZC1hkslO0

( ^ω^)「……少し聞くお」

\(^o^)/「なんでSHOW?」

( ^ω^)「お前は、後見委員会とやらから現長老派の勢力を一掃しようとしたと言ったお?」

\(^o^)/「はI」

( ^ω^)「それはお前たちの独断でやったんだお?」

背後から漂うオワタの雰囲気がわずかに変わった。どうやら図星だったらしい。
僕はオワタに見せつけるようにあからさまなため息をひとつつき、続ける。



203: 以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします。 :2008/03/19(水) 15:37:38.52 ID:ZC1hkslO0

( ^ω^)「いいかお? そんなことしても労が多いだけで、利なんてほとんどないんだお。
      考えてもみるお。現長老派とかいう老人たちなんて、あと五年もすれば嫌でも退役するお。
      ジョルジュの長老在位期間を考えれば、五年なんて大した長さじゃないお。
      だから改革とやらにも特別な支障なんて出ないお。
      むしろその五年で現長老派から学べる実務知識の方が大きいお。
      そしてジョルジュなら、そのくらいわかってるはずだお」

\(^o^)/「……」

( ^ω^)「これは僕からの最後の忠告だお。
      お前たちがジョルジュを信奉しているなら、下手に独断行動なんかしちゃダメだお。
      いくら長が有能でも、側近の独断で政権が崩れてしまうことはままあるんだお。わかったかお?」

\(^o^)/「……」

首をひねりちらりと背後を盗み見れば、うつむいたオワタが視線を地面に縛りつけていた。
説教臭かった自分の言動を反省しながらも、どうしても聞いておかなければならないので、僕は続ける。

( ^ω^)「それと、もうひとつ。ジャンビーヤと足を切る伝統は残すつもりかお?」



204: 以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします。 :2008/03/19(水) 15:39:12.53 ID:ZC1hkslO0

\(^o^)/「それは……もちろんでSU」

口どもりながらも、即答したオワタ。どうやらその点だけは改革の中でも揺るぎない決定事項らしい。
しかしハッキリとしたその声は、周りを取り囲む木々のざわめきに紛れていく。

( ^ω^)「……その理由は?」

\(^o^)/「この伝統はサナアの根幹ですかRA」

( ^ω^)「答えになっていないお。明確な理由の提示を要求するお」

\(^o^)/「それは……誓いの儀を見ていただければ嫌でもわかりまSU」

オワタの声の直後、あたりに生える木々の数が目に見えて減っていることに僕は気付く。
歩く道のりは、いつの間にか下り坂ではなく平坦なものになっている。

間もなくの到着を予感した僕は、口早に続けた。



208: 以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします。 :2008/03/19(水) 15:41:18.28 ID:ZC1hkslO0

( ^ω^)「百聞は一見に如かずかお? でも、それでわからないことだってあるんだお。
      百見は一聞に如かない時が、世の中には稀にあるんだお。それが今だお。
      説明も尽くさないで見ればわかると言われても、今の僕には納得できないお」

\(^o^)/「……説明しても、我々と異なる価値観の持ち主であるあなたにはわからないかも知れませN」

( ^ω^)「おっおっお。馬鹿なこと言うなお。言ってることが支離滅裂だお。
      価値観が違うから説明してもわからないって言うなら、見たってわかるはずがないお」

\(^o^)/「……見ればわかることだってありまSU」



210: 以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします。 :2008/03/19(水) 15:42:54.79 ID:ZC1hkslO0

( ^ω^)「……」

オワタの声の調子がおかしい。
平静を装おうとしていらしいが、不機嫌になっているのが声色だけでも明らかにわかる。

もしかして、彼は意外にも激情しやすいたちなのだろうか? 
漠然とそんなことを思っていると、前を進む一団の足が止まる。目の前の景色から立木の緑が完全に無くなる。

\(^o^)/「……ちょうどいい、着きましたYO」

オワタの一言を受け、立ち止まった。

あたりに広がるのは、一面果てしのない平原。淡い黄緑色の短草たちが悠々とその葉を風にさらしていた。
草たちのこすれあう声が、強い緑たちの草いきれが、風に乗り僕の耳と鼻に届く。

そしてその真ん中、地平線のかなたまで埋め尽くしている黄緑の中心に、見覚えのある建物を僕は見つけ出す。



213: 以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします。 :2008/03/19(水) 15:44:55.70 ID:ZC1hkslO0

(; ^ω^)「あれは……」

サナアの建築様式とは明らかに異なる、半ドーム状の、まるで玉ねぎを乗せたかのような屋根。
メッカ遺跡の中心部に鎮座していた大聖堂とそっくりな建物が平原の中にあった。

ただしそれは、メッカ大聖堂と比べ明らかに小さかった。
距離の問題からそう見えるのではなく、単純に小さかったのである。

言ってみれば、メッカ大聖堂を縮小したコピー。そして僕には、その姿が模型のように感じられた。
それはきっと、その建物が平原から浮いた明らかに場違いな存在だったからだろう。

\(^o^)/「ここが火の道でSU。ご安心ください、もう道は燃えませんかRA」

ジッと眼前の光景に目を凝らしていた僕に、オワタが的外れな気休めの言葉をかけてくる。

(; ^ω^)「そ、そうかお。それで、あの建物の中で儀式が行われるのかお?」

\(^o^)/「そうでSU。詳しい話は彼かRA……」



216: 以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします。 :2008/03/19(水) 15:47:05.03 ID:ZC1hkslO0
 
(; ^ω^)「お……」

オワタの声に視線を移動すれば、
平原を前にした新郎新婦の一団の中から、ジョルジュがこちらに向けて歩いてくるのが見えた。
僕と彼の視線が一本の線となり、中空で結びつく。
  _
( ゚∀゚)「……」

(; ^ω^)「……」

ぞくりとした。一歩一歩短草を踏みつけて向かってくるジョルジュの眼を見るだけで、
オワタにジャンビーヤを突き付けられても流れなかった汗がだくだくと全身から溢れ出てきた。

蛇に睨まれたカエル、とでも言うのだろうか。身動きが取れず、呼吸することさえ辛い。

これがあのジョルジュなのかと、本気で疑った。
おちゃらけたいつもの雰囲気は皆無で、小さいはずの彼の姿は巨木のように大きく感じられた。
その背後からはメラメラと炎が湧き上がっているように感じられる。火の道だけに。

そして、濃い眉の下の双眸は形容しがたいほどに鋭い。

そう、それこそまるで、ジャンビーヤの刃のように――。



224: 以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします。 :2008/03/19(水) 15:49:10.34 ID:ZC1hkslO0
  _
( ゚∀゚)「動くなよ」

(; ^ω^)「!!」

――そう思ったと同時に、ジョルジュのジャンビーヤが僕の眉間へと突きつけられた。
いつの間にか距離を詰められていたらしい。
もとから動かなかった体が、さらに硬直する。汗が滝のように噴き出し、喉がカラカラに乾く。
  _
( ゚∀゚)「……オワタ、麻酔を」

\(^o^)/「ただいMA」

僕にジャンビーヤを突き付けたまま、ジョルジュがオワタに命令する。
オワタは背負っていた薬箱を地面に下ろすと、そこから麻酔らしき一式を取り出し、ジョルジュに手渡す。

\(^o^)/「使用方法は以前説明した通りでSU。それで確実に痛みはなくなりまSU。
      しかし体に負荷がかかるのには変わりないので、
      儀式が済み次第、直ちに僕を呼んでくださI。あとの処置は僕がしますのDE」



230: 以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします。 :2008/03/19(水) 15:50:40.52 ID:ZC1hkslO0
  _
( ゚∀゚)「わかった」

受け取った麻酔一式を懐に仕舞うと、ジョルジュは真正面から僕を睨みつける。
僕は依然として動けないまま、彼の低い声を耳にする。
  _
( ゚∀゚)「わりーな、無理やり連れてくる形になってよ」

(; ^ω^)「……」
  _
( ゚∀゚)「言いたいことは山ほどあるだろう。だが、今は呑みこんどいてほしい。
    儀式が終わった後、あの建物へオワタと一緒に来てくれ。その時に全部聞こう」

ジョルジュがジャンビーヤを腰に仕舞った。
そのままマントを翻し、引き返していく。その背中は果てしない壁のように大きく感じられた。

同時に、入れ替わるようにオワタのジャンビーヤが突きつけられるのを背中に感じる。
動けず、すくんだままの体で、なんとか声を振り絞り、僕は背を向けたジョルジュへと尋ねる。

(; ^ω^)「足を切り取るのは……見られないのかお?」



232: 以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします。 :2008/03/19(水) 15:52:10.73 ID:ZC1hkslO0
 
\(^o^)/「見られませN。誓いの儀は伝統の頂点に位置するもNO。
      たとえ長老であろうと、立ち会うことは許されませN」

答えたのはオワタ。一方でジョルジュは何も言わず、
建物の方を見詰めたまま動かないツンデレへと歩いて行くだけ。

金縛りを受けたように動けない僕。
妙にはっきりとした視界の中で、最後にジョルジュが振り返った。
  _
( ゚∀゚)「あー、そうそう。ブーンに伝言を頼みてーんだわ」

(; ^ω^)「……」

振り返った彼の顔は、不敵に笑っていた。まるで僕を挑発しているかのような笑み。
緩んだ彼の唇が、言葉を形作る。
  _
( ゚∀゚)「あんた、今朝、『誰かがツンデレを連れ去ろうとしたらどうする』って聞いたよな?
    その誰かさんに伝えといてくれ。『てめーが来るまであそこで待っててやるよ』ってな」



233: 以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします。 :2008/03/19(水) 15:53:55.85 ID:ZC1hkslO0

(; ^ω^)「……」

ジョルジュの口元がさらにつり上がる。建物を指差して身を翻す。

その口が発した「誰か」。それは一体誰を指す?

突如吹き荒れた強い風が、ジョルジュのマントを揺らした。その裾は僕へと向いている。
答えはきっと、そういうことだ。

ツンデレのもとへ歩み寄ったジョルジュは、そっと彼女の肩に手をやる。
そのまま彼女に寄り添いながら、火の道の先、メッカ大聖堂のコピーへと向かっていく。



239: 以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします。 :2008/03/19(水) 15:55:36.34 ID:ZC1hkslO0

時間がない。直ちに行動を起こさなければならない。
けれど体は依然ジョルジュの雰囲気に縛られたまま、指一本動かせない。

遠ざかっていく二人の背中。固まって眺めることしか出来ない僕。

長老も、その側近二人も、ジョルジュの側近たるもう一人も、
そして僕の背中にいるオワタも、新郎新婦の動向だけを注視していた。

そして二人は建物の扉の前にたどり着く。ジョルジュがその扉を押し開ける。
二人の背中がその中へと吸い込まれていく。

その、わずかな一瞬。

こちらを振り返ったツンデレの瞳が、僕を射ぬいた。

扉が閉じる音が、平原に響いた。
同時に金縛りが解ける。

固まっていた体が緩んだ瞬間、僕の体はその反動からかバネのように躍動した。



240: 以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします。 :2008/03/19(水) 15:56:59.84 ID:ZC1hkslO0

( ゚ω゚)「おおおおおおおおおおおおおおおおおおおお!」

\(^o^)/「!?」

腰のレアメタル製ナイフを右手で抜くとともに体をよじり、その柄を背後のオワタのこめかみへ向けて横薙ぎにする。
おそらくはジョルジュとツンデレの背中に目を奪われていたのであろうオワタに、それを避けることは適わなかった。

ゴッと鉄が骨を打つ鈍い音が響く。不意打ち成功。
しかし残念ながら、柄はこめかみでなくオワタの頬骨を穿ったようだ。

体勢を崩したものの踏みとどまったオワタは、不安定な姿勢ながら、僕に向けジャンビーヤの切っ先を向けてくる。



243: 以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします。 :2008/03/19(水) 15:58:41.44 ID:ZC1hkslO0
 
\(^o^)/「オワタァ!」

( ゚ω゚)「遅いお!」

突いてきたオワタ。
しかし姿勢が定まっていないためか、はたまた頬のダメージが大きいためか、突きに勢いがない。

僕は回転の勢いをそのままに、スナップを利かせ左手でナイフを持ったオワタの手首を打つ。

オワタの突きのベクトルが逸れ、切っ先の延長線上から僕の体が外れる。
ジャンビーヤの刃は空を突く。

そのまま、オワタの体が前のめりに地面へ向けて倒れていく。
うつぶせに倒れた彼の利き腕に向け、僕はナイフを突き立てる。

( ゚ω゚)「すまんお!」

\(^o^)/「オワアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアタ」

漆黒のナイフが深々と、地面ごとオワタの手の甲に突き刺さる。
引き抜けばその手から血が溢れ出してくる。

こんな状態の手ではジャンビーヤを握ることなど到底適うまい。
これでオワタは無力化出来た。



245: 以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします。 :2008/03/19(水) 16:01:02.62 ID:ZC1hkslO0

( ゚ω゚)「つぎぃ!」

地面に転がったオワタのジャンビーヤを左手に取り、すぐさま立ち上がりあたりの様子を見る。
一瞬のめまいのあと、すぐさま視界は元に戻る。

真ん中には目的地である建物。右斜め前には長老とその側近が二人。
彼らはジャンビーヤを手に長老の前を塞ぎ始めたが、こちらに向かってくる素振りを見せてはいない。

即座に視線を左斜め前に移す。
ジョルジュのもう一人の側近がジャンビーヤを片手に、雄たけびをあげながらこちらに突進してきていた。

僕もそちらに向かい突進する。
距離が詰まったところで、オワタのジャンビーヤを投げつける。

相手は目を見開き、体をひねってそれを避ける。
懐に入るにはその一瞬で十分だった。



249: 以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします。 :2008/03/19(水) 16:02:30.54 ID:ZC1hkslO0

( ゚ω゚)「悪いが眠っていてくれお!」

腰を屈めて相手の懐に潜り込み、ショボンさんのナイフの柄で鳩尾を強く打つ。
続けざまに足を払い、相手を倒す。
地面に転がった相手の体にのしかかり、全体重をこめて彼の腹の上に肘鉄を落とす。

低いうめき声を上げ胃の中のものを吐きはじめた彼の手からジャンビーヤを奪い取り、
再び、跳ねるようにして立ち上がった僕。平原の奥の建物に向けて一気に駆けだす。

また、めまいが襲ってくる。顔を左右に、振り払うように強く動かす。
視界が再び元に戻る。

その端に、長老の側近たる老人が一人、こちらへ駆けだしてくるのが見えた。

( ゚ω゚)「来るんじゃないお!」

走りながら奪い取ったジャンビーヤを投げつける。
老人は体をひねってうまくそれを避けたが、走る勢いと老いが災いしたのか、足をからませて地面に転がり倒れた。



253: 以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします。 :2008/03/19(水) 16:04:30.66 ID:ZC1hkslO0
 
これで道を塞ぐものはなくなった。
あとは最後の難関をどうにかするだけ。

足をさらに動かす。
懐かしいと言わんばかりに、両足は意のままに加速してくれた。

メッカ遺跡のコピーがぐんぐんと近づいてくる。
扉が眼前まで迫ってくる。

(; ゚ω゚)「鍵がかかってないのを願うお!」

加速し、右肩を前面に押し出し、扉の直前で地面を蹴り上げる。
もしこれで扉が開かなかったら一巻の終わりだ。

オワタも、もう一人の側近も不意打ちによりなんとか無力化出来た。
しかし老人二人はそうではない。

不意打ちも二度目は通じない。
たとえ相手が老人であろうと、純粋な戦いとなれば僕に勝ち目はない。

(; ゚ω゚)「ぶおおおおおおおおおおおおおおおおおおお!」

咆哮をあげる。三度襲ってきためまいとともに、僕の体は扉へと激突した。



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