('A`)は丸い部屋に閉じこもっているようです
- 51: 以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします。 :2007/11/24(土) 19:50:17.30 ID:P4OBzRL50
- 猟犬。そう彼は言った。そして彼はもういない。
犬だ。所詮は犬だ。僕はそいつに負けたりはしない。
はすたあ。それに仕えると彼は言った。そして彼はもういない。
どこにあるのかも分からない場所に行くと言い遺して、
この部屋から出て行ってしまった。
逃げるわけにはいかない。僕は逃げたりなどしない。
でも、どうすればいいのか分からない。
もちろん、覚悟はある。
いつか彼は僕に言った。
るるいえ。そこで俺は、人間には計り知れない存在を目にした、と。
- 52: 以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします。 :2007/11/24(土) 19:50:59.31 ID:P4OBzRL50
- あの時の彼の目を僕は決して忘れないだろう。
らんらんと輝く瞳孔を震わせて、彼は言葉を尽くした。
ゆえに、俺達は彼に従属せねばならない。彼に支配されねばならない、と。
るいるいと続く、人間の理解を超えた建築物を見た、と。
所々に浮かぶ、ふかきものの目と触腕とを見た、と。
でも、僕には分からなかった。彼は何を見たのか。何を言っているのか。
君の言ったことは、見たものは理解できなかった。何だというのだろう、君
をそこまで狂熱に駆り立てるほどのものは。今の君を作ってしまったものは。
見えないものに怯え、丸い部屋の中で膝を抱えて過ごす。それが結末だった。
手を震わせて、硝子の球体をいつまでも弄びながら。
いつか見た君の面影は失せていた。思い返す度に、決心は強まる。何が君を。
るるいえ。そこに行けば、君が見たものが理解できるのか。
- 53: 以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします。 :2007/11/24(土) 19:51:41.25 ID:P4OBzRL50
- 決心したのはあの時だ。
ししょくきょうてんぎ、というあの書物を見たとき。
手を触れた瞬間、何かとても恐ろしい予感が頭を掠めたのを覚えている。恐ろしい。
気のせいだったかも知れない。そうでなかったかも知れない。でも今は分かる。
付いて来てしまったものがいる。あの時から付いてきてしまったものがいる。
いつでも、どこからも僕を狙っているあの忌まわしい猟犬。
てんてんと全身から滴らせる青い脳漿の跡を残して、錐のような舌で僕を狙う。
はぁはぁと荒い息をつきながら鼻を衝く悪臭を振り撒いている。
いつも僕の後をつけ回し、どんなに逃げても部屋の隅から姿を現す。
毛ほどの隙間もない僕の部屋にまで。ここにいるときしか僕に安全はない。
なんとかして、こいつが僕の命を奪う前に。行かなければ。
いつか彼が見たものを、人間の知性を超えたものを見るために。そして知るために。
- 54: 以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします。 :2007/11/24(土) 19:52:32.31 ID:P4OBzRL50
- そうすれば対抗策が見付かるかも知れない。あの忌まわしい猟犬から僕の人生を取り戻す。
のんびりしている暇はない。
瞬きをする毎に、奴は、少しずつ、そう少しずつ、僕に、近づいてくる。
間隔が狭まってくる。
君と同じ所には行きたくない。僕は戻らないといけない。こいつを殺してでも。だから、
もうここに戻ることはない。君のものだった部屋に。僕も行く。るるいえに。君が見たものを確かめるために
猟犬はどこ逃でもいる あらゆる所で君を見手いる
決し手気付いてはい毛ない その瞬間 君も
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