( ^ω^)ブーンがあの世で死んだようです
- 113: ◆xh7i0CWaMo :2006/10/15(日) 10:13:17.11 ID:M2Gge9g00
- ( ^ω^)「どうしてあんたがここにいるお?」
この広い空間には二人しかいないようだ。
ブーンは女に、静かに問いかける。
恨みの対象は、この女ではないらしい。
( ^ω^)「あんたは僕を殺して、のうのうと生き残っているはずだお」
J( 'ー`)し「……」
どこか儚げな表情で、ブーンを見つめる女。
( ^ω^)「……あんた、僕を知ってるのかお?」
その問いに、女はただ黙って俯いた。
( ^ω^)「……」
ブーンは少々面食らう。
この女との関係は、加害者と被害者。それだけだと思っていた。
少なくとも、死ぬ以前の記憶にこの女は現れない。
- 117: ◆xh7i0CWaMo :2006/10/15(日) 10:19:09.46 ID:M2Gge9g00
- ( ^ω^)「ところで、どうするお? あいつはどこかに行ってしまったお」
ブーンがナイフを拾い上げる。
( ^ω^)「悪いけど、あんたを殺すことは容易いお」
J( 'ー`)し「……」
( ^ω^)「でも、もう僕も死にたくないわけじゃないお」
J( 'ー`)し「……」
( ^ω^)「あの世がこんなに綺麗な世界だと知った以上、死ぬことに恐怖はないんだお」
J( 'ー`)し「それは」
( ^ω^)「お?」
初めて、女が口を開いた。
J( 'ー`)し「それは本当ですか」
( ^ω^)「あんたもこの世界を見ればわかると思うお」
( ^ω^)「この世とあの世を自由に行き来できる……楽な生活だお」
J( 'ー`)し「……友達、とか」
( ^ω^)「そんなもの、特に必要ないお」
あっけらかんとしたブーンの口調。
( ^ω^)「死にたいお」
J( 'ー`)し「私も、死にたい」
( ^ω^)「それじゃあ……刺し違えるかお?」
その問いに、女は微かに頷いた。
- 119: ◆xh7i0CWaMo :2006/10/15(日) 10:22:22.03 ID:M2Gge9g00
- ( ・∀・)「……おやまあ」
数分後に戻ってきた男が見たもの。
それは、折り重なって倒れているブーンと女の姿だった。
( ・∀・)「相打ちですか……あー」
がしがし、と頭をかく男。
( ・∀・)「予想外ですねえ……ほとほと困った存在ですよ、あの人たちは」
( ・∀・)(よっぽど、死ぬのが怖くないということでしょうか)
( ・∀・)「……まずは、女を回収しに行きますか」
そんな呟きをした直後。
ブーンと女の身体が、褐色の土となって、崩れた。
海岸に残ったのは、土くれのみである。
- 120: ◆xh7i0CWaMo :2006/10/15(日) 10:25:36.51 ID:M2Gge9g00
- ーーーしぃの家ーーー
天井からぶら下がる肉塊が一つ。
それに群がる昆虫が無数。
元、母親の部屋は、閉ざされたままである。
カサリ、カサリという奇妙な音がしぃの耳を貫く。
(*゚ー゚)「お金、なくなっちゃったなあ」
だがそんな音に気にする風も無く、しぃは呆けたまま呟いていた。
(*゚ー゚)「明日から、どうしよう」
(*゚ー゚)「死んじゃう、かなあ」
- 122: ◆xh7i0CWaMo :2006/10/15(日) 10:31:16.85 ID:M2Gge9g00
- 目の前には茶けた紙が一枚。
拙い字でこう書かれていた。
『死に時だと思いました。だから死にます。あなたも、早く来てね』
この手紙が置かれていたのはちょうど一ヶ月前。
ふと隣の部屋を見ると、そこで母が首をつっていた。
唯一の家族だった。
慕っていた母の最期の言葉が「あなたも早く来てね」である。
(*゚ー゚)「くだらない」
しぃが吐き捨てる。
死ぬことを勧めるなんてくだらなすぎる。
だが、何もなくなった今となっては、死んだほうがいいような気もする。
そのとき。
カタリ、と。
隣の部屋につながる、ふすまが開いた。
誰もいないはずなのに。そこにあるのは死体だけのはずなのに。
- 124: ◆xh7i0CWaMo :2006/10/15(日) 10:36:38.54 ID:M2Gge9g00
- ハッとしぃが振り向く。
女が立っていた。
針金のような身体。安っぽい服。
手入れしていない髪の毛。化粧もしていない虚ろな顔。
J( 'ー`)し「……しぃ」
(*゚ー゚)「おかあさん……!?」
まぎれもない、それは母親の姿。
一ヶ月前の、母親そのものである。
(*゚ー゚)「なんで。どうして……」
今突っ立っている母親の向こう側。ふすまの奥には確かに死体が見える。
ぶら下がっている死体。腐敗して、ところどころ欠けている死体が。
二人の母親が今、視界に入っている。
- 128: ◆xh7i0CWaMo :2006/10/15(日) 10:51:20.36 ID:M2Gge9g00
- ( ・∀・)「っと、失礼しますよ」
(*゚ー゚)「!」
またも背後から、声。
そこには男が立っていた。
しぃの知らない男。
J( 'ー`)し「……」
生きているほうの母親がわずかに後ずさった。
( ・∀・)「時間が無いんですよねえ。女の子にこんな場面を見せるのはどうかと思いますが」
(*゚ー゚)「誰なのよ、あなた……」
( ・∀・)「ま、死体を放置しておくだけの度量があるなら、大丈夫でしょう」
そういった男の手に、ナイフ。
( ・∀・)「それでは」
男はしぃの横を通り過ぎ、母親の前に立つ。
母親は身動き一つとろうとしない。
男はためらいなく、女の腹を貫いた。
J( 'ー`)し「……!!」
(*゚ー゚)「お母さん!?」
J( 'ー`)し「しぃ、ちゃん」
J( 'ー`)し「あなたも、一緒に来ない?」
(*゚ー゚)「!?」
- 130: ◆xh7i0CWaMo :2006/10/15(日) 11:01:19.83 ID:M2Gge9g00
- ( ・∀・)「世迷いごとを」
男がナイフを引き抜いた。
当然のように、血が溢れて床を濡らす。
母親はそのまま前のめりに倒れ、事切れた。
狭い部屋に、死体が二つ。
(*゚ー゚)「ひ……」
( ・∀・)「ここで見たことは口外しないように……といっても、口外しても信じてもらえないでしょうけど」
(*゚ー゚)「なんなの、一体……なんなの!?」
( ・∀・)「知る必要はありません」
その言葉と同時に。
さらり、と。
男の姿は塵と化し、音も無く掻き消えた。
同時に、母親の姿も消える。
血までも、跡形も無く。
- 133: ◆xh7i0CWaMo :2006/10/15(日) 11:13:14.94 ID:M2Gge9g00
- 時間を逆行したように、全てが元に戻った。
相変わらず隣の部屋には死体の方の母親がぶらさがっている。
虫がこちらに這ってくる。しぃは慌ててふすまを閉めた。
(*゚ー゚)「夢……だよね」
夢であると信じたい。
自分が母親を慕っていたゆえの幻想だと信じたい。
そう思い込まないと
とても正常でいられそうにはなかった。
(*゚ー゚)「……」
いや、もうすでに遅いのかもしれない。
しぃは十分、壊れている。
- 134: ◆xh7i0CWaMo :2006/10/15(日) 11:15:11.94 ID:M2Gge9g00
- ーーー高校ーーー
七月中旬ともなれば午前授業だけで帰宅することができるようになる。
ドクオたちの高校も然り。
川 ゚ -゚)「一つ、気になったんだが」
(´・ω・`)「どうしたの?」
しょぼんが帰りのしていると、神妙な面持ちをしたクーが話しかけてきた。
川 ゚ -゚)「ブーンは火葬されたのか?」
(´・ω・`)「……たぶん」
川 ゚ -゚)「だとすれば、あのブーンの身体はなんなのだろう」
('A`)「なんだそれ。土葬だったら、あのブーンはゾンビだったってか」
横からドクオが口を挟む。
川 ゚ -゚)「だってそうだろう。火葬されたはずのブーンが存在するなんて物理的にありえない」
('A`)「ゾンビもありえねーよ、科学的に」
- 135: ◆xh7i0CWaMo :2006/10/15(日) 11:18:01.81 ID:M2Gge9g00
- 川 ゚ -゚)「むぅ……ん?」
(´・ω・`)「どうしたの?」
川 ゚ -゚)「メール、かな」
そういって、クーがバイブ機能によって震えている携帯を取り出す。
('A`)「……っと、俺もだ」
(´・ω・`)「あれ、僕にも」
二人もそれぞれ、自分の携帯を見つめる。
('A`)「!」
(´・ω・`)「これは……」
差出人の名前。
未だ削除していなかった名前。
ブーン。
3人の携帯のディスプレイには、確かにそう表示されている。
- 138: ◆xh7i0CWaMo :2006/10/15(日) 11:27:25.71 ID:M2Gge9g00
- おかしな話だ。
あの事故から一ヶ月も経過している。
そうなれば、ブーンの携帯は解約されていると考えるのが普通だ。
('A`)「幽霊メール、ねえ」
(´・ω・`)「ありえないよね、科学的に」
川 ゚ -゚)「科学的にありえなくても現実的には存在している……内容は、と」
そのメールは3人に一斉送信されたものだった。
川 ゚ -゚)「なになに」
メールの内容は、実に簡潔なものである。
『公園にいますお 来てくださいお』
それだけだった。
('A`)「……」
(´・ω・`)「たとえ、ブーンの携帯が、家族の心情の都合で解約されていないにしても」
川 ゚ -゚)「こんないたずらめいたことはしないな」
('A`)「で、どうするんだよ。行くのか?」
(´・ω・`)「行くしか、ないよね」
川 ゚ -゚)「あぁ」
・・・
・・
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