( ^ω^)ブーンがあの世で死んだようです

155: ◆xh7i0CWaMo :2006/10/15(日) 12:42:08.76 ID:M2Gge9g00
  
ーーー公園ーーー

このあたりで公園、というと一つしか思い浮かばない。
それは、閑静な住宅街の中にあった。
鉄棒とブランコとベンチ、それに時計台だけが設置された安上がりな公園である。

時刻は12時。昼飯時だからか、ドクオたち3人が訪れたとき、そこに佇んでいたのは1人だけだった。

('A`)「ブーン」

一目でわかる。彼はブーンだ。

何の違和感も無く、そこにいる。
時計を見上げたまま、立ち尽くしている。

(´・ω・`)「色々、聞かないといけないよね」
川 ゚ -゚)「あぁ。だがそれよりも、先ずはブーンの用件を聞こう」

意を決し、ドクオが大声を出した。

('A`)「ブーン!」



159: ◆xh7i0CWaMo :2006/10/15(日) 12:46:57.59 ID:M2Gge9g00
  
( ^ω^)「……」

振り向いたブーンには、平坦な笑顔がはりついている。

心持ち距離をおいて、3人とブーンは対峙した。

(´・ω・`)「また、ここに帰ってきたんだね」
( ^ω^)「お」
(´・ω・`)「どうやって僕たちにメールを送ったんだい?」
( ^ω^)「……」

( ^ω^)「それは、関係のないことだお」
('A`)「てめえ……!」

素っ気無い態度が鼻についたのか、ドクオが一歩進み出る。
だが、クーが彼をやんわりを止めた。

川 ゚ -゚)「……用件が聞きたい」



163: ◆xh7i0CWaMo :2006/10/15(日) 12:56:32.30 ID:M2Gge9g00
  
( ^ω^)「……僕を殺して欲しいんだお」
(´・ω・`)「なんだって?」
( ^ω^)「あの人が言ってた事を覚えているかお?」
('A`)「あの男か。お前を連れ去った」
( ^ω^)「僕には恨みがある。だから死ねないんだお」

( ^ω^)「そんな恨みを、僕の代わりに晴らしてほしいんだお」
川 ゚ -゚)「君の代わり?」
( ^ω^)「そうだお。僕は長くここにいることはできないんだお」
('A`)「恨みさえ晴らせれば、お前は成仏できる……そういう寸法か」
( ^ω^)「たぶん」

成仏ではなく、消失なのだろう。
ブーンはすでに、救われない魂として認識されているのだから。

川 ゚ -゚)「で、その恨みとやら、教えてもらおう」
(´・ω・`)「場合によっては、引き受けなくも無い」

('A`)(あっさりしすぎだろ、てめえら……)

( ^ω^)「ツンを知ってるかお?」
(´・ω・`)「うん」
( ^ω^)「あいつ、あいつを殺してほしいお」

('A`)「……は?」

流石に、その要求は推測の内に無かった。



167: ◆xh7i0CWaMo :2006/10/15(日) 13:04:02.34 ID:M2Gge9g00
  
川 ゚ -゚)「冗談か? 笑えないが」
( ^ω^)「違うお。僕は本気だお」

にへら、とだらしなく笑っているブーン。
どう見ても、本気とは思えない。

(´・ω・`)「殺してほしいって。自分が何言ってるのかわかってるのかい?」
( ^ω^)「死ぬことはいいことだお」

('A`)「この野郎、いい加減にしろよ!」

周囲をはばからず、ドクオが怒鳴り散らす。

('A`)「なんでてめえのために人殺ししなきゃいけねーんだよ!」
( ^ω^)「頼むお。そうしないと僕は、これから永遠に死に続けないといけないお」
川 ゚ -゚)「それほど大きな恨みを、お前は抱いているのか」
( ^ω^)「お」
(´・ω・`)「一体何なの? その、恨みって」
( ^ω^)「それも、知る必要は無いお」
('A`)「畜生が」



169: ◆xh7i0CWaMo :2006/10/15(日) 13:10:03.35 ID:M2Gge9g00
  
(´・ω・`)「現時点では、なんともいえないよ」

しょぼんは逡巡の後に、そう言い放った。

('A`)「おい、しょぼん。こんな無理難題、拒否しちまえばいいじゃねえか」
(´・ω・`)「でも、そうなるとブーンは一生痛みを伴う死を繰り返さないといけないんだよ? そんな友人を、僕はほうっておけない」

真面目人間は、どうやら不器用らしい。
今のブーンを、ドクオは親友だと思いたくなかった。

(´・ω・`)「ツンにも聞きたいことがあるし」
川 ゚ -゚)「どうせ君は、教えてくれそうに無いからな」

皮肉のようなクーの台詞も、ブーンに効果は無い。

( ^ω^)「出来るだけ早くお願いするお」

一方的なブーンの懇願。
ドクオは吐き気すら覚えていた。



171: ◆xh7i0CWaMo :2006/10/15(日) 13:18:04.22 ID:M2Gge9g00
  
そのときである。

( ・∀・)「やれやれ」

3人の後ろ、すぐ近くからため息。
一瞬背中が凍る。

( ・∀・)「ここにいましたか……あぁ、またこの世の人間と勝手に接触して」
( ^ω^)「……」

( ・∀・)「ほら、いきますよ」

音も無く現れた男は再び、ブーンを連行しようとする。

('A`)「おい、お前ブーンに何やったんだよ!」
( ・∀・)「……はあ? 私ですか?」

( ・∀・)「私は何もやってませんがねえ。ただ、何度も殺しているだけで」
('A`)「……」

( ^ω^)「それじゃあ、みんな頼んだお」

( ^ω^)「君たちは、僕の友達だお」

裏切り者のような言葉を吐いて。
ブーンは男とともに、彼方へと去っていった。



172: ◆xh7i0CWaMo :2006/10/15(日) 13:21:55.38 ID:M2Gge9g00
  
('A`)「キチガイになってるよ、あいつ。何が死ぬことはいいこと、だ。何が君たちは僕の友達、だ!」

ドクオは苛立ちを隠さない。

(´・ω・`)「観念が狂ってるんだろうね」
川 ゚ -゚)「と、いうと?」
(´・ω・`)「よくいうだろ?死後の世界を知ってしまうと、死生観とか、色々狂っちゃうって」
川 ゚ -゚)「宗教じみた問題だな」
('A`)「宗教だか哲学だか知らねえけど、俺はあいつを理解できねえ」
(´・ω・`)「かといって、放っておけるかい?」
('A`)「……」
川 ゚ -゚)「ともかく明日、ツンに聞いてみよう」
(´・ω・`)「それとなく、ね」

・・・

・・





174: ◆xh7i0CWaMo :2006/10/15(日) 13:29:31.64 ID:M2Gge9g00
  
ーーー同時刻 しぃの家周辺 路上ーーー

( ,,゚Д゚)「なんで俺はまた、ここに来てるんだ」

この自問はすでに8回目。
道路をうろつき始めてすでに30分ほど。
人通りが多ければ、今頃不審者として警察官に肩を叩かれていてもおかしくない。

( ,,゚Д゚)「いや、そうだ。今日こそ俺は」

言いながら周囲を見渡す。
昨日は邪魔してくれたドクオたち3人も、今日はいない。

( ,,゚Д゚)「覚悟、決めるか……」

アパートの前に立つ。
そして、おそるおそる、階段の一段目に足を置いた。



176: ◆xh7i0CWaMo :2006/10/15(日) 13:36:01.52 ID:M2Gge9g00
  
( ,,゚Д゚)「……ふいー」

二階にたどりつくことが、これほど困難だとは思っていなかった。

201号室はすぐそこにある。

( ,,゚Д゚)「……うし!」

気合を入れて、ギコはその扉の前まで移動しようとした。
ところが。

その扉が、前触れ無く開かれた。
不意を衝かれたギコがその場で硬直する。

現れたのは、目的の人。

(*゚ー゚)「……?」

しぃはギコを視認して、首をかしげている。
だがすぐに、それが赤面したギコであることに気付いたようだ。

(*゚ー゚)「ギコくん、どうしたの?」

( ,,゚Д゚)「お、おう。あ。い、いや。ええっと」

明らかに挙動不審のギコ。



177: ◆xh7i0CWaMo :2006/10/15(日) 13:43:51.44 ID:M2Gge9g00
  
ギコの目的は、単純にしぃを見舞いにきた。それだけである。
それ以上のことは何も考えていなかった。二言三言、言葉を交わせればそれでいいと思っていた。
だからこそ、不測の現状に過剰に混乱しているのだ。

( ,,゚Д゚)「いや、その。元気か?」
(*゚ー゚)「……うん」
( ,,゚Д゚)「な、なんか随分、やせたよな」
(*゚ー゚)「……うん」
( ,,゚Д゚)「あー、あー、げほっ……それじゃ」
(*゚ー゚)「それだけ?」
( ,,゚Д゚)「いや、その、なんだろうな。うん、それだけ」
(*゚ー゚)「なんか変だよ」

細い笑みを浮かべるしぃ。

ギコは視線を反らす。

( ,,゚Д゚)「ど、どこか行くのか?」
(*゚ー゚)「うん……あてはないけど」
( ,,゚Д゚)「そりゃどういうことだ?」
(*゚ー゚)「……」

(*゚ー゚)「ねぇ、ギコくん」

しぃは歩いて、手すりによりかかる。

そんなしぃを、ギコは不思議そうに見つめた。



181: ◆xh7i0CWaMo :2006/10/15(日) 13:55:32.60 ID:M2Gge9g00
  
(*゚ー゚)「私、壊れてる?」
( ,,゚Д゚)「は……はあ?」

急な問いに、ギコはすぐに返答できない。

(*゚ー゚)「学校にも行かなくてさあ。気付いたらこんなにやせちゃってさあ」

(*゚ー゚)「お母さんも、死んじゃってさあ……」

(*゚ー゚)「壊れたみたいなんだよ、わたし」
( ,,゚Д゚)「母さんが、死んだのか」

(*゚ー゚)「首吊ったんだよ……一ヶ月前にさぁ」
( ,,゚Д゚)「マジかよ……」
(*゚ー゚)「まだ、死体あるよ」
( ,,゚Д゚)「何……」
(*゚ー゚)「見る?」

自分の家を指差して、しぃは悲しそうに笑った。



182: ◆xh7i0CWaMo :2006/10/15(日) 14:05:40.61 ID:M2Gge9g00
  
( ,,゚Д゚)「なんでだよ。その、葬式、とか」

声が震え始める。
事態はギコが予測していた以上に、深刻なのだ。

(*゚ー゚)「そんなお金、どこにあるの?」
( ,,゚Д゚)「……」
(*゚ー゚)「私、もともとお父さんいなかったんだよ」

(*゚ー゚)「母さんが一生懸命働いて、それでもお金が無くて。それで、あの日……」

(*゚ー゚)「あの日お母さんは、車を盗んだ」
( ,,゚Д゚)「あの日?」
(*゚ー゚)「お母さんは運転になれてなかった。挙句の果てに暴走して……」

(*゚ー゚)「人を轢いた」
( ,,゚Д゚)「人……」
(*゚ー゚)「ブーンだよ」
( ,,゚Д゚)「!」
(*゚ー゚)「ブーンを殺したのは、私のお母さん。でも、私も同罪」
( ,,゚Д゚)「なんでだよ」
(*゚ー゚)「だってそのとき、私助手席にいたもん」



185: ◆xh7i0CWaMo :2006/10/15(日) 14:13:37.39 ID:M2Gge9g00
  
ブーンのひき逃げは、未だ解決していないと聞いていた。
だが、なんのことはない。
犯人は、身近に存在したのだ。
同級生の母親だったのだ。

(*゚ー゚)「……って、なんでこんなこと話してるのかな。わたし」

(*゚ー゚)「やっぱり壊れてるみたい」
( ,,゚Д゚)「……それ、誰かに言ったのか?」
(*゚ー゚)「ううん。ギコくんが初めてだよ。おかしいでしょ」
( ,,゚Д゚)「警察にも?」
(*゚ー゚)「だって、お母さんその日のうちに死んじゃったもん」
( ,,゚Д゚)「……」
(*゚ー゚)「死に時だからって。前から死にたがってたみたい」

(*゚ー゚)「だから私、1人なんだよね」
( ,,゚Д゚)「ッ……!」

ギコは舌打ちする。
やるせない。重たい話を聞かされ、何のフォローもできない自分がやるせなくて仕方ないのだ。



190: ◆xh7i0CWaMo :2006/10/15(日) 14:22:05.92 ID:M2Gge9g00
  
だが、一つの事実が判明した。
しぃはブーンが好きだったから、不登校になったというわけではない。噂はあくまで噂だった。
実際は、ブーンを殺したのが自分の母親だということ。そしてその母親が死んでしまったことがショックだったからだろう。
つまり、壊れたから不登校になったのである。

(*゚ー゚)「……でさ、ギコくん」
( ,,゚Д゚)「ん……」

ギコは憔悴したような表情をしている。

(*゚ー゚)「本当は、何しに来たの?」
( ,,゚Д゚)「本当はって」
(*゚ー゚)「あ、今の話聞いて引いちゃった?」

自嘲気味なしぃの言葉。

(*゚ー゚)「まぁいいんだけどね」
( ,,゚Д゚)「いや……その」

ギコは言葉を適当な探す。

( ,,゚Д゚)「お前、今日は良くしゃべるなあって」
(*゚ー゚)「うん……そうかな」
( ,,゚Д゚)「そうだよ。いつも学校だったらあんまり喋らないじゃん」
(*゚ー゚)「まぁ……そうかも。でも、家ではよく喋ってたよ。内弁慶ってやつ?」
( ,,゚Д゚)「へえ……」



195: ◆xh7i0CWaMo :2006/10/15(日) 14:30:18.34 ID:M2Gge9g00
  
( ,,゚Д゚)「いや、マジでお前が元気かなって、それを確認しにきただけっていうか……」
(*゚ー゚)「何、その下心丸見えの理由は」
( ,,゚Д゚)「えー……」

しぃの客観的な台詞はまさに図星だった。

(*゚ー゚)「そうでもないと、わざわざこんなとこまでこないでしょ?」
( ,,゚Д゚)「……う……」
(*゚ー゚)「……ま、いいんだけど。でももうそんな気もなくなったでしょ。人殺しの娘、あまつさえいつ死ぬかわからない人間だもん、私」
( ,,゚Д゚)「何も言えねえよ、俺」
(*゚ー゚)「何も言わなくていいよ。私は、独りでいいんだよ」
( ,,゚Д゚)「……」

しぃの話を聞いて、ギコが若干引いたのは紛れも無い事実である。
だが、放っておけばしぃは死ぬのもほぼ、確実だ。

放っておくか、何かするのか。

ギコは、非常に微妙なジレンマに苛まれていた。



199: ◆xh7i0CWaMo :2006/10/15(日) 14:38:51.94 ID:M2Gge9g00
  
そんなジレンマもすぐに解消された。

(*゚ー゚)「じゃあ、私行くよ」
( ,,゚Д゚)「行くあてもないのにか?」
(*゚ー゚)「まぁね。家にいても仕方ないから」
( ,,゚Д゚)「ああ……」

(*゚ー゚)「それじゃ」

そういい残し、しぃはゆっくりと階段を下っていく。

その後姿を見て、ギコは改めて後悔した。
何か元気付けられるようなことを言えばよかった、と。

だが実際のところ、今のしぃを慰めるような言葉をギコは持ち合わせていない。

・・・

・・





戻る次のページ