( ^ω^)ブーンがあの世で死んだようです

274: ◆xh7i0CWaMo :2006/10/15(日) 18:36:09.60 ID:M2Gge9g00
  
ーーーしいの家ーーー

( ゚∀゚)「はぁ」
<ヽ`∀´>「ホルホル」

服を整えて、ジョルジュとニダーは立ち上がる。
横たわるしぃ。
捨てられたぼろ雑巾のように、何もかもが汚れてしまっていた。

( ゚∀゚)「さて、これで借金はチャラだぜ、お嬢ちゃん」

そういって、ポケットから借用書らしきものをとりだす。
そしてそれを、ビリビリに破いて、しぃの身体の上に撒き散らした。

( ゚∀゚)「さて、帰るか」
<ヽ`∀´>「わかりましたニダ」

仕事を終えてすっきりとした表情で、ジョルジュとニダーは玄関へと歩き去っていった。



286: ◆xh7i0CWaMo :2006/10/15(日) 18:43:19.66 ID:M2Gge9g00
  
ドアの閉まる音が聞こえた。
しぃは呆けたまま天井を見つめる。
自分は何をされたのだろう。
今さっきのことなのに、記憶としてほとんど残っていない。
だが、そのほうが良かった。

(*゚ー゚)「……」

ふと、思いついた。

(*゚ー゚)「死のう……」

わずかでも記憶を残しておきたくない。死んだ方がマシだ。
便器としての価値しかないなら、死んだ方がマシだ。
汚れたまま生きていたくない。死んだ方がマシだ。
母親も自分を誘っていた。死んだ方がマシだ。

つつ、と再び涙が流れる。

(*゚ー゚)「死のう、死のう……」

だが、そこで。
また、ふすまが開いた。



289: ◆xh7i0CWaMo :2006/10/15(日) 18:49:02.91 ID:M2Gge9g00
  
J( 'ー`)し「……!!」

当然のように立っていたのは、しぃの母親。
さすがの彼女も、その光景を見て絶句していた。
何が起こったのか。一目瞭然だったのだろう。
彼女にも、同じような経験があるだけに。

(*゚ー゚)「……なんで……」

しぃが両手で顔を覆う。

(*゚ー゚)「なんでこんなときに出てくるの? 一番見られたくないときに。一番知られたくないときに!」

ヤケクソだった。八つ当たりしても仕方が無いのはわかっている。

(*゚ー゚)「どうしてもっと早く出てきてくれなかったの!? いっそのこと出てきてほしくなかったよ!」

ヒステリックに怒鳴る。
母親は無言でしぃを見つめていた。



290: ◆xh7i0CWaMo :2006/10/15(日) 18:54:38.86 ID:M2Gge9g00
  
(*゚ー゚)「……ねぇ、お母さん」

突如、しぃが声のトーンを落とした。

(*゚ー゚)「お母さん、遺書に書いてたよね。それに、この前も言ってたよね」
J( 'ー`)し「……」

(*゚ー゚)「死んだ方がいいって。後を追ってくださいって」

こくり、と母親は首を縦に振った。

(*゚ー゚)「私、死ぬよぉ。もう無理。色々無理だよ」
J( 'ー`)し「……そう」

母親の反応はあまりにも薄い。
まるでどうでもいいことのように。

(*゚ー゚)「ねえ、お母さん。あの世ってどんなところ?」
J( 'ー`)し「綺麗なところ」
(*゚ー゚)「そこに、私もいけるんだよね」

( ・∀・)「無理じゃないでしょうかねえ」

今回は、男の登場が早かった。



291: ◆xh7i0CWaMo :2006/10/15(日) 19:00:24.78 ID:M2Gge9g00
  
( ・∀・)「あらあら、こんなに汚れちゃって……ぐちゃぐちゃじゃないですか」
(*゚ー゚)「あなた、あの世を知ってるんでしょ」
( ・∀・)「……」
(*゚ー゚)「私も行けるよね? 今死んだらお母さんと一緒に行けるよね?」
( ・∀・)「うーん、仕事を増やしてもらいたくないですねえ」

( ・∀・)「第一、それ相応の恨みを持っていないと、あの世には行けませんよ。死んでも天国に直行です」
(*゚ー゚)「じゃあうらむよ。さっきの奴ら。全力で恨んでやる」
( ・∀・)「元気な人ですねえ……」

( ・∀・)「ま、好きにしてください。この世の人間に何かを強制する権利は持ってませんので」

( ・∀・)「では、一足先にお母さんの方を」

J( 'ー`)し「……しぃちゃん」
(*゚ー゚)「おかあさん?」

J( 'ー`)し「……」

彼女は言葉を失い、直後、男の刃の餌食となった。

何を言おうとしたのか。
しぃが知ることはできない。



295: ◆xh7i0CWaMo :2006/10/15(日) 19:09:20.01 ID:M2Gge9g00
  
無音が戻ってきた。

しんとした空間。
天井を見つめていると、時間が止まったようでもある。

(*゚ー゚)「……」

決意は固まっている。だが起き上がるのが面倒だ。

(*゚ー゚)「うん、死のう」

椅子とロープ。
それが必要だ。

ゆっくりと起き上がり、身体の上の紙くずを掃う。

(*゚ー゚)「ロープとか、あったっけ……あぁ。マフラーでも大丈夫、かな」



297: ◆xh7i0CWaMo :2006/10/15(日) 19:13:02.61 ID:M2Gge9g00
  
その気になれば、準備など数分でできる。

天井から垂れ下がるマフラー。
あとはそこに、首を引っ掛けるだけだ。

(*゚ー゚)「……よし」

晴れ晴れとした顔でしぃは独り、頷いた。

(*゚ー゚)「……遺書はいらないか。どうせ誰も読まないし」

なぜか気分がいい。

椅子の上に立つ。
目の前の輪で首をくくる。
それで終わりだ。

(*゚ー゚)「……あー、そういえば、ギコ君」

思い出したのは、昨日出会った、ギコの赤い顔。

(*゚ー゚)「好きになってくれたのはいいんだけど……うん、ごめん」

その時、ノックの音が再び。

(*゚ー゚)(うるさいなあ……ほっとけばいいか)

(*゚ー゚)「……」

(*゚ー゚)「さよなら」



300: ◆xh7i0CWaMo :2006/10/15(日) 19:20:44.02 ID:M2Gge9g00
  
ーーー201号室 入り口ーーー

川 ゚ -゚)「いないのかな」

数度のノックに反応は無い。

( ,,゚Д゚)「出かけてるのかもしれない。昨日も出かける途中だったし」
川 ゚ -゚)「ふむ……む。でも開いてるぞ」

そういってクーは、扉を少し開いてみせる。

(´・ω・`)「中にはいるのかな」
('A`)「なんか、ヤバい想像しかできないんだが」
川 ゚ -゚)「……開けるぞー!」

クーがそう言い放ち、遠慮もせずに扉を開け放った。
廊下の向こう。
ぶら下がる人が一人。

川 ゚ -゚)「……!」

( ,,゚Д゚)「しぃ!」
(´・ω・`)「ドクオ、救急車!」
('A`)「お? お、おう」

しょぼんとクーとギコが走ってしぃの元へ向かう。

ドクオは携帯のボタンを、せわしなく押していた。



304: ◆xh7i0CWaMo :2006/10/15(日) 19:28:14.82 ID:M2Gge9g00
  
(*゚ー゚)(……)

ふわり、と身体が浮いているような気がする。
まるで無重力を体験しているようだ。
だがそのうち、海中深くを泳いでいるような感覚に襲われた。

(*゚ー゚)(あー、死ねるんだ……)

誰かの声が聞こえている。
だがそんなことは気にもならない。
意識は混濁し、やがて消えた。

・・・

・・





312: ◆xh7i0CWaMo :2006/10/15(日) 19:34:27.93 ID:M2Gge9g00
  
ーーーあの世ーーー

しぃの母親と、男がこちらに戻ってきて数十分。
彼らは、しぃを待っていた。

( ・∀・)「来ませんねえ」
J( 'ー`)し「……」
( ・∀・)「推測してみたところ、彼女はレイプされたようです。加えて自殺となると、ここに来る可能性が極めて高いと睨んだのですが……」
J( 'ー`)し「……」
( ・∀・)「あれですかね。失敗したんでしょうか」
J( 'ー`)し「失敗……?」
( ・∀・)「首吊りで死ぬのって、結構難しいんですよ」
J( 'ー`)し「……」
( ・∀・)「まぁ、あなたがどちらを望んでいるのかは知りませんがね」
J( 'ー`)し「……生きるのは辛いでしょう」
( ・∀・)「ほう」
J( 'ー`)し「天国があると知っていると、生きたくなくなるのですよ」
( ・∀・)「そんなもんですか。しかしあなたも狡猾です」
J( 'ー`)し「?」
( ・∀・)「ここにくるということは、天国には行けないわけですから」
J( 'ー`)し「……親バカですから」
( ・∀・)「開き直りですか」
J( 'ー`)し「ですね」



315: ◆xh7i0CWaMo :2006/10/15(日) 19:46:37.82 ID:M2Gge9g00
  
( ・∀・)「ところで、少年」
( ^ω^)「お?」
( ・∀・)「あなたはまだ自分の恨みについて話していないそうですね」
( ^ω^)「……」
( ・∀・)「そこまで隠されると、逆に好奇心が湧いてきます」
( ^ω^)「気にしなくていいお」
( ・∀・)「貴方ほどの年でそれほど恨むことがあるとすれば、それは人間関係しかありえませんね。それもいじめとか、恋愛とか」
( ^ω^)「……」

( ・∀・)「調べさせてもらいますよ」

・・・

・・





319: ◆xh7i0CWaMo :2006/10/15(日) 19:52:29.69 ID:M2Gge9g00
  
ーーーツンの家ーーー

ξ゚听)ξ「……はあ」

恋煩いにでもなっているかのような、ツンのため息。
彼女は今、クーから返してもらった手帳を見つめている。
しばらく見つめて。
やがて恥ずかしくなり、それを放り投げた。

ξ゚听)ξ「……委員長とか、勘付いてるのかな」

外見を繕うことは難しいものだ。
女性となればなおさらである。
そして、繕うには金が必要となる。

ξ゚听)ξ「……」

呆けて天井を見上げていると、携帯が鳴った。

ξ゚听)ξ「……また、か」

最早ため息しか出ない。



320: ◆xh7i0CWaMo :2006/10/15(日) 19:54:30.02 ID:M2Gge9g00
  
ーーー某病院 病室ーーー

(*゚ー゚)「……?」

目覚めた場所は、白に囲まれた空間だった。

川 ゚ -゚)「起きたのか」
(*゚ー゚)「!」
川 ゚ -゚)「……」

(*゚ー゚)「あれぇ、私……」
川 ゚ -゚)「発見がもうあと十分、遅れていたら死んでいたかもしれない」
(´・ω・`)「首吊りって、死ぬまでに十数分から三十分ぐらいかかるんだってね」
('A`)「今言うべきことじゃねーだろ」
( ,,゚Д゚)「……」

(*゚ー゚)「なんだぁ、私死んだんじゃなかったんだ……」
川 ゚ -゚)「何があったんだ?」
(*゚ー゚)「……なんで来たの? 私の家に」
('A`)「心配だったからだよ。なあ、ギコ」
( ,,゚Д゚)「え、俺? まあ、うん」



325: ◆xh7i0CWaMo :2006/10/15(日) 20:00:32.52 ID:M2Gge9g00
  
(*゚ー゚)「来なければ良かったのに」
川 ゚ -゚)「しぃさん。なんで死のうと思ったんだ?」
(*゚ー゚)「色々あったんだよ」
川 ゚ -゚)「色々だとわからない」
(*゚ー゚)「ほっといてよ」
川 ゚ -゚)「ほっとけるか!」
(´・ω・`)「クー、病室だから……」

怒鳴ったクーをしょぼんがなだめる。
そして改めて、しぃを見た。

(´・ω・`)「話は全部聞いたよ」
(*゚ー゚)「……」
(´・ω・`)「警察に相談しようよ。そうすれば、全てが良い方向にいくからさ」
(*゚ー゚)「良い方向なんて、ないよ。あるとすれば、単純に死ぬことだけ」
('A`)「なんでそんな考え方になるんだ……」
(*゚ー゚)「だって知ってるもん。私は死後の世界を知ってるもん」
(´・ω・`)「死後の世界を……?」
川 ゚ -゚)「君も、ブーンに会ったのか?」
(*゚ー゚)「ブーン?」
(´・ω・`)「ちょっと、詳しく話してみて」

しぃは少しためらったが、小さく口を開き、話し始めた。
母親が生き返ったことを・・・



331: ◆xh7i0CWaMo :2006/10/15(日) 20:08:27.28 ID:M2Gge9g00
  
('A`)「……つまりあれか。ブーンとしぃの母ちゃんは今、同じような境遇に陥ってると」
(´・ω・`)「みたいだね」
(*゚ー゚)「……だからあの世は良い世界なんだよ。少なくとも、この世よりはずっと」
川 ゚ -゚)「そんなことがあるものか。それに、そこに行ってしまったら死ぬことを延々と繰り返さないといけないんだぞ」
(*゚ー゚)「少なくとも、レイプされる心配は無いね!」
川 ゚ -゚)「!」
( ,,゚Д゚)「……ッ!」

ギコが傍にあったくずかごを蹴っ飛ばした。

(*゚ー゚)「だからもういいんだよ。死後のことが怖くないのになんで生きてないといけないの」
(´・ω・`)「……」

(´・ω・`)「さっき、言ったよね。ブーンのこと」
(*゚ー゚)「うん」
(´・ω・`)「彼もそんなことを言ってたよ。死ぬことは、いいことだ、みたいな」
(*゚ー゚)「正しいじゃん」
(´・ω・`)「でもそれは同時に、一生自らの恨みに縛られるということでもあるんだよ」



337: ◆xh7i0CWaMo :2006/10/15(日) 20:16:45.55 ID:M2Gge9g00
  
(´・ω・`)「そのおかげで、かどうかは知らないけど、ブーンは壊れてしまっていた」
('A`)「少なくとも、俺たちの知るブーンじゃなかったな」
(´・ω・`)「君のお母さんはどうだった?」
(*゚ー゚)「何が」
(´・ω・`)「おかしくなかったかい?」

そんなことはない。
と言おうとしたが、言えなかった。
確かにいつもの母親ではなかった。妙に言葉遣いで丁寧で、上辺だけのような冷静さを見せていた。

(´・ω・`)「そんな状態に、君はなりたくないだろう?」
(*゚ー゚)「……はは、そんなことないよ」

(*゚ー゚)「だってもう、私壊れてるもん」

( ,,゚Д゚)「んなことねえよ」

ギコが泣きそうな声を出す。

(*゚ー゚)「ギコ君」
( ,,゚Д゚)「そんなに自分を虐げてどうすんだよ。俺がバカみたいじゃねえか」
(*゚ー゚)「……なんでギコ君がバカみたいなの?」
( ,,゚Д゚)「だってよ、好きになったやつが死にたいとか言ってるなんてよ、俺に人を見る目が無いみたいじゃねえか」
('A`)「さりげなく爆弾落としてるな」
(´・ω・`)「不器用なんだね」
川 ゚ -゚)「素直なのはいいことだ」



344: ◆xh7i0CWaMo :2006/10/15(日) 20:22:07.34 ID:M2Gge9g00
  
(*゚ー゚)「んー、じゃあそういうことなんじゃない?」
( ,,゚Д゚)「そこで肯定すんなよ」
(*゚ー゚)「ごめんね、ギコくん。私なんかに執着するより、もっと他の人を探すべきだと思うよ」
( ,,゚Д゚)「……」

(*゚ー゚)「ところで、私はいつになったらここを出られるかな」
川 ゚ -゚)「……医師によると、今日中に退院できるらしいが」
(*゚ー゚)「よかった」
川 ゚ -゚)「だが、家には帰さん」
(*゚ー゚)「なんで?」
川 ゚ -゚)「どうせまた死のうとするだろう」
(*゚ー゚)「当たり前でしょ。お母さんが待ってる」
川 ゚ -゚)「させない。意地でもさせない」
(*゚ー゚)「どうしてさ……」
川 ゚ -゚)「人が死ぬのを見過ごしていられない。ましてや、君は同級生なのだから」
(*゚ー゚)「根っからの委員長気質なんだね……」

(*゚ー゚)「わかったよ。どこにでも連れてって」
川 ゚ -゚)「よし」

クーが満足げに頷いた。

(*゚ー゚)(全部終わったら、自由だもん……)

・・・

・・





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