( ^ω^)ブーンがあの世で死んだようです
- 571: ◆xh7i0CWaMo :2006/10/15(日) 23:18:55.88 ID:M2Gge9g00
- ーーー某所ーーー
暗い場所。
ひたり、ひたりと水滴が落ちる音が聞こえてくる。
それ以上のことは、何もわからない。
ξ゚听)ξ「……」
ツンは目を覚ました。
頭が痛い。
手で頭を抑えようとする。
それは叶わない。
何せ、四肢が拘束されているのだ。
じゃりじゃりと、金属のこすれる音が響くのみである。
ξ゚听)ξ「なんなの……誰が私を……」
いや、わかる。
記憶が途切れる直前に聞いた声。
あれは間違いなく
ξ゚听)ξ「ブーン……?」
???「呼んだかお」
- 576: ◆xh7i0CWaMo :2006/10/15(日) 23:23:57.61 ID:M2Gge9g00
- 不気味な声だった。
しかし、声色は間違いなくブーンのものである。
暗闇のせいで、姿もおぼろげにしか見えない。
ξ゚听)ξ「ブーン、あんた、死んで……」
( ^ω^)「黙れお」
ξ゚听)ξ「!」
( ^ω^)「お前は、僕の気持ちを裏切ったお」
ξ゚听)ξ「何、なんのこと……?」
( ^ω^)「僕はお前のことが好きだったのに。お前は僕を裏切ったお!」
ξ゚听)ξ「なんのこと? わからないわよ!」
( ^ω^)「心当たりが無いとは言わせないお」
ξ゚听)ξ「え……」
( ^ω^)「僕が死んだ日。お前は別の男と歩いてたお!」
言われて、はたと思い出す。
- 590: ◆xh7i0CWaMo :2006/10/15(日) 23:32:13.19 ID:M2Gge9g00
- そもそもデートというものがツンは好きではなかった。
だが、ブーンと共有する時間は好きだった。
こんなジレンマを解消するために、ツンはツンなりに努力をしていた。
本質は変えられなくとも、上辺を塗り替えるのは容易い。
ツンはデートコースというものをひそかに研究していたのだ。
それも、ブーンと楽しく過ごすために他ならない。
デートを好きになろうと思ったのだ。それができなくとも、ブーンの前では明るく振舞えるようになればいいと思っていた。
実験台は、当然の如く荒巻。
あの日も、ツンは荒巻と一緒に暗中模索を続けていた。
ブーンに用事があるからだった。
だがそんな光景を見られてしまっていたのだ。
そして釈明する暇も無く、ブーンは死んだのだ。
ξ゚听)ξ「それは誤解よ!」
( ^ω^)「今更そんなこと言っても、遅いお」
ブーンは少しトーンを落とす。
( ^ω^)「僕が持っている恨み、全部お前にぶつけてやるお!」
笑いの混じった声だった。
狂気の沙汰である。ツンは身を震わせる。
- 597: ◆xh7i0CWaMo :2006/10/15(日) 23:37:09.16 ID:M2Gge9g00
- ( ^ω^)「さあ、何がいいかお。包丁? ナイフ? 鉄パイプ? バールのようなもの?」
ξ゚听)ξ「やめて……」
( ^ω^)「じゃあまずは、包丁から……」
( ・∀・)「勝手に暴れてもらったら、困るんですがね」
闇の中からもう一人の声。
ツンの知らない声だった。
( ^ω^)「お前は」
( ・∀・)「……ほう。やっぱり寸分の狂いも無い、少年そのものですねえ」
( ^ω^)「何を言ってるお」
( ・∀・)「あなた」
( ・∀・)「自分が死んでること、自覚してますか?」
( ^ω^)「……勿論だお」
( ・∀・)「だったらわかるでしょう。この世にいちゃ、いけないことぐらい」
( ^ω^)「邪魔するなら、お前も殺すお」
( ・∀・)「おやおや」
- 603: ◆xh7i0CWaMo :2006/10/15(日) 23:45:11.29 ID:M2Gge9g00
- ( ・∀・)「あなたはどこで生まれたのです? クローン的なものと認識していいのでしょうか」
( ^ω^)「……」
( ・∀・)「と、すると……なるほどねえ」
男の笑い声が周囲に響いた。
どうやらここは、トンネルか、倉庫のような場所らしい。
( ・∀・)「あなた方を生かしておいてはいけない理由がやっとわかりましたよ」
( ^ω^)「……」
( ・∀・)「常々疑問だったんですよねえ。あの世に来る人間はみんな殺してしまうからいつも誰もいない。なぜ魂を生かしておこうという考えが生まれなかったのか」
( ・∀・)「あなたのようなものが発生するからなのですね」
( ^ω^)「うるさいお!」
叫び声と共に、何かが風を切る音が響いた。
- 611: ◆xh7i0CWaMo :2006/10/15(日) 23:52:15.82 ID:M2Gge9g00
- ( ・∀・)「物騒な人だ」
闇の中で何かが起きている。
だがツンはそれをはっきりと確認することが出来ない。
ただ人影が動くのを見て取れるだけである。
( ^ω^)「殺す、殺すんだお! 裏切った女を!」
( ・∀・)「……」
このブーンはどうやら理性が働いていないらしい。
単調な言葉の繰り返し。過剰に壊れているのだ。
( ^ω^)「殺す!」
( ・∀・)「どうすればいいんでしょうねえ……。ま、とりあえず」
( ・∀・)「あなたもあの世に連れて行きましょう」
- 629: ◆xh7i0CWaMo :2006/10/15(日) 23:57:22.27 ID:M2Gge9g00
- ξ゚听)ξ「……」
ツンは困惑したまま彼らの言葉を聞いていた。
あの世、魂……知らない言葉の連続。
そしてそもそも、ブーンは死んでいるはずなのに。
今目の前で、吐血しそうな勢いで叫び狂っている男は本当にブーンなのか。
混乱と恐怖のせいか。
ツンの目から涙が溢れた。
勝負はいとも簡単に決した。
単調な攻撃はそのパターンさえ読めば制することが出来る。
モララーがブーンを刺し貫くまでに、それほど時間はかからなかった。
- 651: ◆xh7i0CWaMo :2006/10/16(月) 00:02:26.43 ID:IUUzAZMB0
- ( ・∀・)「……ふう」
言葉も無く崩れ落ちたブーン。
男はただ、嘆息した。
ξ゚听)ξ「あ、あの」
( ・∀・)「……おやおや、これは見事な拘束プレイですねえ」
ξ゚听)ξ「あなたは……誰?」
( ・∀・)「知る必要はありませんよ」
ξ゚听)ξ「じゃ、じゃあ。ブーンは……」
( ・∀・)「あぁ、この少年ですか」
( ・∀・)「忘れなさい。貴方の記憶においても、この少年は死んでいたはずだ」
ξ゚听)ξ「……そんなこと、簡単には出来ない」
( ・∀・)「ま、できるできないは知ったことではありませんがね。忘れた方が楽だ、という一種の忠告ですよ」
- 675: ◆xh7i0CWaMo :2006/10/16(月) 00:09:50.63 ID:IUUzAZMB0
- ( ・∀・)「さて、私はいかなければなりませんので」
ξ゚听)ξ「あ、ちょっと。た、助けて……」
( ・∀・)「私にそんな頑丈な拘束具がはずせると思いますか?」
ξ゚听)ξ「え……」
( ・∀・)「明日にでもなれば誰かが見つけてくれますよ。たぶん」
無責任丸出しの男は、そういい残してさっさと消えてしまった。
後に残されたのはツンただひとり。
ξ゚听)ξ「……」
ξ゚听)ξ「ブーン……あいつ、なんで……」
混乱しすぎて現状が把握できない。
男がブーンを刺したという事実さえ飲み込めそうにも無かった。
そしてこの状況のまま
ツンは朝を迎えることとなる。
・・・
・・
・
- 705: ◆xh7i0CWaMo :2006/10/16(月) 00:24:43.77 ID:IUUzAZMB0
- ーーーあの世ーーー
( ゜ω゜)「お前は……」
( ^ω^)「……」
( ・∀・)「滑稽な光景ですねえ」
姿かたちはそっくりそのまま。
ただ違うのは、目の色や表情。
それ以外は何も変わらない。
( ・∀・)「合体とか、できないもんですかね」
冗談めいた男の言葉に、二人とも反応を見せない。
( ・∀・)「……あれ、女の方はどこに?」
( ^ω^)「僕が殺してあげたお」
( ・∀・)「また余計なことを……」
しかし、仕事はこなさなければならない
( ・∀・)「二人とも、殺しあったりしないでくださいよ」
そして、モララーはまた、あの世を去った。
- 711: ◆xh7i0CWaMo :2006/10/16(月) 00:28:44.28 ID:IUUzAZMB0
- ( ^ω^)「お前は、誰だお」
( ゜ω゜)「僕はブーンだお」
( ^ω^)「僕もブーンだお」
( ゜ω゜)「僕は、ツンを殺さなければならないんだお」
( ^ω^)「……」
( ゜ω゜)「あいつは、僕を裏切ったばかりは、言い逃れまでしようとしたんだお」
( ^ω^)「言い逃れ?」
( ゜ω゜)「勘違いだって。そんな言葉にだまされるバカはいないお」
( ^ω^)「……」
( ^ω^)(こいつ……僕の持ってないものを全部持ってるみたいだお。でも)
( ^ω^)(僕の持っているものを、こいつは何一つ持っていない気がするお……)
共通するのは、狂気。しかしそれも別種のものだ。
- 718: ◆xh7i0CWaMo :2006/10/16(月) 00:34:51.09 ID:IUUzAZMB0
- ( ゜ω゜)「僕を殺してくれお」
( ^ω^)「……そうして、どうするんだお?」
( ゜ω゜)「ツンを殺しにいくんだお」
( ^ω^)「あの男に連れ戻されるお」
( ゜ω゜)「そうしたら、もう一度行くお」
( ^ω^)「お前、破滅願望でもあるのかお?」
( ゜ω゜)「……」
( ^ω^)「ツンを殺したら、僕らは自動的に消失するお」
( ゜ω゜)「……破滅願望とか、そういうのはよくわからないお。でも、僕はツンを殺すんだお」
( ^ω^)「……」
( ^ω^)「僕はお前を殺さないお」
( ゜ω゜)「どうしてだお?」
( ^ω^)「僕は友達に約束してもらったお。ツンを殺してもらうって」
( ゜ω゜)「……おまえ、狂ってるお」
( ^ω^)「お前に言われたくないお」
・・・
・・
・
- 724 名前: ◆xh7i0CWaMo [>>720 月曜ですし1時ぐらいまでにしようかと思っています] 投稿日: 2006/10/16(月) 00:39:19.41 ID:IUUzAZMB0
- ーーードクオの家ーーー
('A`)「あー、よく寝た」
起床時間は午前11時。
休日においては、比較的早い方である。
枕もとの携帯を見る。
メールを受信したとのメッセージが映し出されていた。
('A`)「誰だ……って、しょぼんか」
受信時刻は午前7時22分。
休日も、平日と生活ペースは変わらないらしい。
('A`)「内容は……っと」
『ニュース見た?』
('A`)「ニュース……?」
- 728: ◆xh7i0CWaMo :2006/10/16(月) 00:44:48.30 ID:IUUzAZMB0
- 小型ブラウン管テレビの電源を入れる。
ニュース番組に切り替えるが、映し出されているのは政治家や評論家の顔ばかりだった。
('A`)「おれに政治討論でも見ろってのか?」
そんなことを思いつつ、適当にチャンネルを変えていると。
ローカルのニュース番組を見つけた。
『では、次のニュースです』
『今朝、午前3時半ごろ、市内を流れる御手洗川の河口付近で、若い女性の溺死体が発見されました』
- 736: ◆xh7i0CWaMo :2006/10/16(月) 00:49:49.35 ID:IUUzAZMB0
- ('A`)「……」
キャスターの顔から、現場の映像に移り変わる。
そこはよく見たことのある、付近の川だった。
『発見されたのは、持ち物などから市内に住むしぃさん(17)である可能性が高く……』
('A`)「なんだって……」
絶句するほか無い。
『警察では、事故と事件、二つの可能性を視野に入れて……』
しぃが死んだ。
昨日彼女を踏みとどまらせることには成功したのに。
結局、死なせた。
事件や事故、そんなものではない。
ただの自殺だ。
それがわかっている自分が、妙に腹立たしい。
すぐさま、ドクオはしょぼんに電話をかけた。
- 747: ◆xh7i0CWaMo :2006/10/16(月) 00:54:55.53 ID:IUUzAZMB0
- (´・ω・`)「……起きたのか」
電話の向こうのしょぼんは、明らかに沈んでいる。
('A`)「どういうことだよ、これ」
(´・ω・`)「……」
('A`)「警察が、俺たちに任せろって言ったんじゃねえか! 何が事件とか事故だよ、ふざけんな!」
(´・ω・`)「八つ当たりしても、事実は変わらないよ」
('A`)「でもよ」
(´・ω・`)「僕らが力不足だった。そういうことだね」
('A`)「……」
('A`)「ギコ、大丈夫かな」
(´・ω・`)「芯が強いから大丈夫だと思うけど……」
('A`)「俺、電話してみる」
(´・ω・`)「うん……よろしく」
一度電話を切り、再びせわしなく番号をプッシュする。
- 749: ◆xh7i0CWaMo :2006/10/16(月) 00:59:18.71 ID:IUUzAZMB0
- ('A`)「……でないな」
呼び出し音が何度も流れる。
だが、一向に出る気配は無い。
まぁ、当然といえば当然かもしれないが。
('A`)「……あーあ。台無しかよ」
ドクオは電話を切る。
('A`)「どうにもならなかったのかねえ……」
・・・
・・
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