( ^ω^)ブーンがあの世で死んだようです

882: ◆xh7i0CWaMo :2006/10/16(月) 18:51:35.10 ID:IUUzAZMB0
  
ーーー路上ーーー

先ほどからポケットが震えている。
携帯のバイブだろう。だが、取る気になれない。

( ,,゚Д゚)「……」

ギコは一人、炎天下を歩いていた。
目的地など無い。帰宅予定もない。

彼は最も、自分自身を責めていた。



891: ◆xh7i0CWaMo :2006/10/16(月) 18:59:09.10 ID:IUUzAZMB0
  
あの時、警察の言葉を拒んででもしぃをつれて帰ればよかったのだろうか。
しかしそうしたところで、自分に何かが出来たのか。
答えは明確だ。何も出来ない。

それでも、責めずにはいられない。

( ,,゚Д゚)「……」

止め処なく溢れる喪失感、虚脱感。
自分を護る壁が崩れてしまったような感覚。

( ,,゚Д゚)「しぃは……あの世に行ったのか……? それとも、天国に行ったのか……?」

それは、ギコにはわかるわけのない疑問である。

と、歩いていたギコの前に、喧騒が現れた。

( ,,゚Д゚)「なんだ……?」

人だかりが出来ている。
赤く明滅する灯りも見える。

( ,,゚Д゚)「事件、か?」

何の気もなしに、そんなことを呟いた。



895: ◆xh7i0CWaMo :2006/10/16(月) 19:08:05.75 ID:IUUzAZMB0
  
そこは街の南にある工業地帯。
住宅地と隣り合わせになっていたために、昔は随分トラブルの原因となったらしい。

現在は、不景気の煽りか廃業する工場が増え、廃れたまま放置されている倉庫や工場も少なくなかった。

いつの間にかこんなところにまできていたようだ。

わずかに残っている好奇心がギコを人だかりの方へと連れて行く。

そんな時。
救急車が、けたたましいサイレン音を響かせながら、走り去っていくのが見えた。

( ,,゚Д゚)「何が起きたんだか」

ため息のように吐き出して、それでもギコは前進する。
そこで。
ギコは見慣れていた姿を目撃した。

( ,,゚Д゚)「お前……」

( ^ω^)「……」

そこには確かにブーンがいた。見知らぬ男と一緒に。

( ・∀・)「どうやら、生き延びたみたいですよ、彼女」
( ^ω^)「残念だお」
( ・∀・)「本当ですか? 彼女が死ねばあなたは消える」

( ,,゚Д゚)「ブーン!」
( ^ω^)「!」



899: ◆xh7i0CWaMo :2006/10/16(月) 19:20:15.83 ID:IUUzAZMB0
  
( ・∀・)「知り合いですか?」
( ^ω^)「お……」
( ・∀・)「ふむ……ほう」

男がギコを見つめる。
わずかにギコはたじろぐが、反射的に男を睨みつけた。

( ・∀・)「なるほどね……驚きが少ないということは、色々知っているということですか」
( ,,゚Д゚)「……」
( ・∀・)「厄介ですねえ。私の知らない間に情報が拡散してしまっているようで」

( ,,゚Д゚)「ブーン、お前はどうしてここにいる?」
( ^ω^)「ツンが死ぬところを見届けたかったお」
( ・∀・)「そうすれば恨みも晴らされ、少年も消えてくれるのでいいと思ったのですが、どうやら生き延びたようで」
( ^ω^)「この手で殺してやってもよかったお……」
( ,,゚Д゚)「……」

無表情でそんなことを口走るブーンが信じられなかった。

( ,,゚Д゚)「……ツンがどうかしたのか」
( ^ω^)「もう一人の僕が殺そうとしていたお」
( ,,゚Д゚)「もう一人……?」
( ・∀・)「さあさあ、話は終わりですよ」

ギコが更に疑問をふっかけようとするが、男がそれを制した。



904: ◆xh7i0CWaMo :2006/10/16(月) 19:32:07.08 ID:IUUzAZMB0
  
( ・∀・)「貴方にも、他の知っている人にも言いたいんですけどね」
( ,,゚Д゚)「?」
( ・∀・)「全て、忘れてもらえませんか? 何もかも全て、この少年のことも」
( ,,゚Д゚)「……」
( ・∀・)「貴方にとっても心苦しいでしょうし、私としても面倒なことになりかねない」
( ,,゚Д゚)「今更、無茶言ってんじゃねえよ」
( ・∀・)「ほう。と、いいますと?」
( ,,゚Д゚)「しぃが死んだ」
( ^ω^)「しぃが……」
( ・∀・)「……あぁ。あの女性の娘さんですね」

ギコの言葉に対する二人の反応はまちまちだった。
ブーンは、やや悲しむような声。
男は、どうでもいい、というような声。

( ,,゚Д゚)「俺がブーンのことを知ったのもしぃが原因だ。あいつが死んで、忘れられるわけねーだろ」
( ・∀・)「……理由は、それだけではないようですね」
( ,,゚Д゚)「……」
( ・∀・)「ま、いいでしょう。あんしんしなさい」

( ・∀・)「しぃは天国に行きました。私が知らないのですから、確かです」
( ,,゚Д゚)「天国……」
( ・∀・)「今頃のびのびと遊んでいると思われますよ」
( ,,゚Д゚)「……」

わからない
喜ぶべきか悲しむべきかわからない。
天国、そこは極楽のはずだ。
だがそれはつまり、ブーンのようにこの世で会うことはできないということである。
悲しまざるを得なかった。



909: ◆xh7i0CWaMo :2006/10/16(月) 19:41:41.46 ID:IUUzAZMB0
  
悲しんでいる自分を殴り殺したい。
そんな衝動を、ギコはなんとかして押しとどめた。

( ・∀・)「もう、いいですかね?」
( ,,゚Д゚)「……」
( ・∀・)「行きましょうか、少年」
( ^ω^)「……お」

男に連れられ、ブーンは殺されるために去っていく。

( ,,゚Д゚)「……」

いつのまにか、野次馬も散らばってしまっていた。

ぽつん、とギコだけがその場に残る。

( ,,゚Д゚)「……よかった。しぃは天国にいったんだな」

( ,,゚Д゚)「よかった、よかったんだ……」

何度も何度も、ギコは自分に言い聞かせた。

・・・

・・





915: ◆xh7i0CWaMo :2006/10/16(月) 19:47:01.73 ID:IUUzAZMB0
  
ーーーあの世ーーー

( ^ω^)「お前は、天国を知ってるのかお?」
( ・∀・)「いいえ」
( ^ω^)「お?」
( ・∀・)「だってあの場合、ああでも言わないとあの少年は納得しなかったでしょう。ここに来ていないのは事実ですし」
( ^ω^)「……」
( ・∀・)「理想郷かもしれませんし、人がたくさんいる分、もしかしたら……地獄かもしれません」

J( 'ー`)し「なんの話ですか?」
( ・∀・)「貴方の娘さんの話ですよ」
J( 'ー`)し「しぃの……」
( ・∀・)「死んだそうです。天国に行ったようですよ」
J( 'ー`)し「天国に……そうですか」

しぃの母親はわずかに笑った。
しかしその笑顔は、望みが断ち切れたかのような、複雑なものだった。

( ・∀・)「嫌そうですね」
J( 'ー`)し「もう一度、会いたかったんですよ」
( ・∀・)「ほう……でも、貴方」

( ・∀・)「もうすぐ、消えますよ」



925: ◆xh7i0CWaMo :2006/10/16(月) 19:59:22.05 ID:IUUzAZMB0
  
J( 'ー`)し「まさか」
( ・∀・)「ま、ありがちなお話ですが、母親というものは子を第一に想うものです」
J( 'ー`)し「……私は、私を孕ませた男を恨んでいます」
( ・∀・)「それは、根本的な要因ではないようです」
J( 'ー`)し「……」
( ・∀・)「その結果として誕生したしぃを、貴方は捨てることもなく懸命に育てた。勿論、娘が可愛かったから」
J( 'ー`)し「ですが、私はここにいます。ここにいる理由は、何かを恨んでいるから、でしょう?」
( ・∀・)「貴方をレイプした男たちへの恨みが、貴方をここにつれてきたわけではないようです」

( ・∀・)「貴方が恨んでいるのはあなた自身。娘を育てきることなく、一時の突発的な感情で自殺してしまった自分自身を恨んでいたのですよ」
J( 'ー`)し「……」
( ・∀・)「勿論、推測でしかありません。しかしあなたの存在がここから消えかかっているのは事実です」
J( 'ー`)し「そんなことは……」
( ・∀・)「証拠もありますよ。あなたは遺書にこう書き残した。娘に対し、『貴方も早く来てね』と」
J( 'ー`)し「……」
( ・∀・)「あなた、自殺してもなお、娘が成長する姿を見たかったんでしょう?」
J( 'ー`)し「たとえ、そうだとしても」

J( 'ー`)し「娘が死ぬことで恨みが晴れる私は……歪みきっていますね」
( ・∀・)「むしろ壊れていますよ。それは否定しません」



932: ◆xh7i0CWaMo :2006/10/16(月) 20:10:26.31 ID:IUUzAZMB0
  
J( 'ー`)し「もう一つ質問を」
( ・∀・)「はい、なんでしょう? もうあまり時間もなさそうですが」
J( 'ー`)し「私は消えるとどうなるんですか?」
( ・∀・)「……どうにもなりませんよ。眠り続ける感じですね、たぶん」
J( 'ー`)し「そう、ですか」
( ・∀・)「天国にいけることを期待しましたか?」
J( 'ー`)し「少しは」
( ・∀・)「それは残念です。あなたの魂はすり潰される。それで終わりです」
J( 'ー`)し「……」

J( 'ー`)し「それにしても、私程度の恨みを持つ人物など数多と存在しそうなものです」
( ・∀・)「……」
J( 'ー`)し「私と、あの少年だけというのは、いささか納得できません」
( ・∀・)「そう、ですね」
J( 'ー`)し「もしかして、何か」


途切れた。
テレビの電源を切ったときのように、突然。
男の前に今の今まで存在していたしぃの母親は、一瞬のうちに消失した。

( ・∀・)「……」

( ・∀・)「殺す手間も省けるんですねえ」



947: ◆xh7i0CWaMo :2006/10/16(月) 20:19:10.51 ID:IUUzAZMB0
  
( ・∀・)「さて、あとは貴方たちが消えてくれれば私の仕事は、とりあえず終了するのですが」
( ^ω^)「……」
( ゜ω゜)「ツンを殺せばいいお」
( ・∀・)「さて、そうなのですがね」

一つの問題が頭に残っている。
しぃの母親の最期の言葉。
なぜブーンと、しぃの母親だけがここにきたのか。
恨みといっても、世間的に考えればそれほど強いものではないはずだ。

( ・∀・)(そろそろ終盤と言いたいところなんですがねえ……)

・・・

・・





957: ◆xh7i0CWaMo :2006/10/16(月) 20:28:49.87 ID:IUUzAZMB0
  
御手洗川上流にて靴と、それに挟まれた紙切れが見つかったのは
数時間も経たない頃だった。

その紙切れには一言「ありがとう」と書かれていたらしい。

もっとも、その事実を知っているのは発見者と、警察のみ。
ニュースでも流れなかった些細な出来事を、ギコたちが知れるはずもなかった。

・・・

・・





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