( ^ω^)ブーンたちの世界が、終息するようです
- 95: 1 ◆ZvFvVWv36Y :2008/01/02(水) 12:31:51.24 ID:6Uxt5Hfc0
だから僕は、明日の為の種を撒く。
第四話 『 仮令そうだろうが歩こう、と彼は広言した 』
1/14 8:30 ショボン宅
(´・ω・`)「彗星は地球と僕たちにひどいことしたよね」
砂嵐ばかりのテレビを見つけながら、虚勢を重ねショボンが呟いた。
誰からの反応もないのは、重々解っている。
この家にはもう、誰もいない。
- 97: 1 ◆ZvFvVWv36Y :2008/01/02(水) 12:33:52.79 ID:6Uxt5Hfc0
- ショボンは三人家族だった。父と、母と、自分。
多分、何処にでもある平凡な家庭だっただろう。
典型的で平均点な、そんな家族だっただろう。
世界の終わりよりも前に、ショボンの家は終っていたのかも知れない。
それももうどうでもいい事だ。と擦り寄ってきた思考をショボンは切り捨てる。
自分が発した言葉が空中に消えていくのを確かに感じ、どうしようもない寂莫に襲われた。
無言のまま、ショボンは手にもったリモコンでテレビチャンネルを順繰りに回した。
やはりどれも砂嵐だ。
国民テレビとして名高いNHKさえ、その有様だった。
- 98: 1 ◆ZvFvVWv36Y :2008/01/02(水) 12:35:13.97 ID:6Uxt5Hfc0
(´・ω・`)「受信料払ってなかったのが仇だったかな――はははは……はぁ」
そう自嘲気味に笑うと、途端に怒りのような悲哀のような様々な感情が、
胸の中から噴出してくるような感覚を覚えた。
蓋をしていた汚いものたちが、一気に溢れ出してくる。
――これは何だろう。なんの感情なのだろう。
怒り? 悲しみ? 喜び? いや――――多分、これは
(´・ω・`)「憤り、か………」
ただただ純度の高い感情。
支配されることに対する不満。自分のタイムリミットを制限される鬱憤。
- 99: 1 ◆ZvFvVWv36Y :2008/01/02(水) 12:38:40.57 ID:6Uxt5Hfc0
ふざけるな。
(´・ω・`)「諦めないのは、確かに格好悪い。でもね――」
独言、と言うよりもむしろ宣言するようにショボンがまた虚無に呟いた。
チチチ。鳥の鳴き声がする。
これから変わるのかも知れないが、何も変っちゃいないんだ。
(´・ω・`)「それが生きる事へのものだったら、僕は諦める事を放棄してやる」
そう言い切った途端、ふつふつと沸騰するようにショボンの腹の底から、
何か湯のような物が胸にせりあがって来た。
例えるならそれは静かな激流だ。
それが少しの間胸に点在し、その残りが喉仏まで来た。吐き出そうかどうかをショボンは一瞬迷った。
- 100: 1 ◆ZvFvVWv36Y :2008/01/02(水) 12:39:33.71 ID:6Uxt5Hfc0
どうする。
そうして肝心な時に過ぎりやがる、両親の顔。
(´・ω・`)「…………」
ショボンは少しわざとらしく、逆に言えば彼らしく口の端を吊り上げると、
(`・ω・´)「うぉぉぉぉぉぉぉぉおおぉぉぉぉぉぉぉぉおおおおおおぉぉぉおお!!!!」
咆哮。
負け犬の遠吠えと誰かが言うなら、それでいいと思う。
犬だろうが何だろうが、まだ生きている。負けていても、生きているんだ。
聞こえてるか、皆。僕はまだ生きている。アンタだって、生きてるんだ。
生きろ、生きろ、生きろ、生きろ、生きろ
生きろよ。
- 101: 1 ◆ZvFvVWv36Y :2008/01/02(水) 12:40:26.40 ID:6Uxt5Hfc0
- そう思いながら、自身の息が切れるまでショボンは叫び続けた。
急な運動で肺は軋んで鈍痛を生むが、言うなればそれさえもショボンがまだ生きている証だ。
ああ、ほら、解かるか。遊びはまだ終っちゃいない。
- 102: 1 ◆ZvFvVWv36Y :2008/01/02(水) 12:41:58.88 ID:6Uxt5Hfc0
- 同時刻、ブーン宅
( ´ω`)「…………」
チャイムの無機質な機械音で、ブーンの意識は完全に引き戻された。
( ^ω^)「……だれだお?」
大仰にブーンは立ち上がると、玄関の方へ歩いていく。
インターホンで出ないあたり、ブーンらしいと言うか。
けれども一応、金属バット片手なのだが、とにかく。
( ^ω^)「……お?」
ξ゚听)ξ「…………」
ドアを開けるとそこには俯いたツンの姿があった。
ブーンの思考回路は一瞬止まった。ちぐはぐだと、思ったのだ。
ツンが私服ではなく制服だったからだ。
紺の学生標準服。自分が着るブレザーと同じ色合いの、それ。
- 103: 1 ◆ZvFvVWv36Y :2008/01/02(水) 12:43:31.88 ID:6Uxt5Hfc0
- その所為だろうか、ブーンにはツンがどこかブレて見えたのだ。
自分が切望していた、『日常』がそこにあったからだろうか。
ξ゚听)ξ「……遅いわよ。バーカ」
第一声、ツンはそう言った。
あ、あぁぁぁ……ブーンの心が、芯から奮える。
多分、『これ』はツンなりの、不器用な、心配りなのだろう。
彼女は必死で『いつものブーン』に呼びかけてくれているのだ「早く用意しなさいよ。学校遅れるでしょ?」 と。
( ^ω^)「……ごめん……」
ブーンが弱弱しく呟いた。拳を握り締める。指先が白くうっ血し始めていた。
この謝罪は、勿論「遅くなってごめん」と言う意図の謝罪ではない。
「もう戻れない」と言う意味の、ごめん。なのだ。
ツンも、そのトーンで理解したのだろう。フン、と鼻をならして、腕を組み、
ξ゚听)ξ「バーカ」
そうやって、笑ったのだった。
- 104: 1 ◆ZvFvVWv36Y :2008/01/02(水) 12:46:20.49 ID:6Uxt5Hfc0
- え……と、ブーンが弾かれたように顔を上げた。
鳩が豆鉄砲食らったような顔でツンを見つめた。
ツンは笑っている。
ブーンの目の前で笑っている。
『非日常』の中で『日常』的に、気丈に、優雅に、それでいて彼女らしく勝気な笑みで。
( ^ω^)「え……」
ξ゚听)ξ「解ってるわよ。もう戻れない事ぐらい。
推して察しなさいよ、馬鹿ブーン。これは冗談。社交辞令のただの挨拶」
ツンがため息をついて、まだ情けない顔のブーンを思い切りドついた。ジャンケン、グー。ドーン。
ガスンとかドコォとか、そう言う在り来たりな擬態音ではなく、
メシッ、と、人として大事な骨が軋む音が耳の奥で響いた。
(;; ^ω^)「っ…………ってぇぇぇぇぇぇえぇぇぇぇぇぇぇえ!! 何すんだお! 酷いお!!
人が激しく落ち込んでる時にそんなことやるのかお!? ツンの血は何色だおォォおッッ!?」
頭抱えてもんどりかえる。
痛みはリアルだ。実直だ。素直だ。目の前のコイツと全然違う。
- 105: 1 ◆ZvFvVWv36Y :2008/01/02(水) 12:47:46.01 ID:6Uxt5Hfc0
大体、メリケンで人を殴るなんて正気の沙汰とは思えまセン。
ξ゚听)ξ「っ……あははは! あははは!! その調子その調子!」
お猿の籠屋状態である。
(* ^ω^)「な に が だ お !!」
立ち上がり、両手で頭蓋骨抱えながらツンに講義し様として、止まった。
( ^ω^)「……ツン?」
ξ゚听)ξ「……何やってんのよ。早く、私に突っかかってきなさいよっ!」
彼女の目から、何滴か、涙が流れていた。
( ^ω^)「…………」
そこで初めて、ブーンはツンがくれた真の心配りと鈍感な自分を感じて、
悲劇のヒーローぶっていた自分自身を激しく恥じた。そうだ。辛いのは、自分だけじゃない。
悲劇のヒーローやヒロインは、自分だけじゃないんだ。
- 106: 1 ◆ZvFvVWv36Y :2008/01/02(水) 12:49:53.65 ID:6Uxt5Hfc0
( ^ω^)「……ごめん」
ブーンが謝罪する。
どんな意図で、なのかはきっと理解してくれたのだろう。
ツンが鼻を啜る音がしてから、フン、と、彼女のリアクション芸当である鼻ならしが聞こえてきた。
沈黙が蚊帳のようにおりてから、何秒かして、ツンが切り出した。
ξ゚听)ξ「ちょっと一緒にきてもらえない? 当然学校は休みでしょ、どうせ誰も来てないし」
見れば、ツンは恥かしげにそっぱを向いている。
こう言うところはかわいい奴だとブーンは思う。彼女のそんな一面を、もっと見たかったとも、思う。
( ^ω^)「デートかお?」
首をかしげながら、ブーンが言う。
…………往復合戦。先刻の復讐である。
- 107: 1 ◆ZvFvVWv36Y :2008/01/02(水) 12:54:42.59 ID:6Uxt5Hfc0
ξ*゚听)ξ「ち、ちち、ちがうわよっ!! 私はアンタは一人さびしいだろうと思っ……」
( ^ω^)「ツン、ちょっと待っててくれお」
はいはい、となだめてからブーンはツンの抗議を止めた。
何よ! と振りかぶった彼女の右手を見て冷や汗をかきつつ、ブーンはリビングへと戻っていく。
リビングの有様は、先刻言ったようなものだ。
ぐちゃぐちゃで、乱雑でただ純粋な破壊で埋め尽くされていた。
( ^ω^)「…………」
それを背徳の念を込めて見つめ、ブーンは中央のテーブルへと足を進めた。
封筒を手にもち、手紙を制服のズボンに捻じ込んで、
早くとか鈍間亀とか悪態をつくツンの元へと駆け足で戻った。
- 108: 1 ◆ZvFvVWv36Y :2008/01/02(水) 12:56:04.22 ID:6Uxt5Hfc0
- ( ^ω^)「ツン。これで遊びにいくお」
そういうと、ブーンは200万ペソの入った封筒を差し出した。
ツンが両手でそれをとって、中身を見てから、目を見開いた。
ξ;゚听)ξ「ちょ、何よこのお金……」
ツンが明らかに戸惑っている。当たり前だろう。
学生自分の身には200万ペソなんて大金過ぎる。
はわわ……と、ツンがうわ言のように何語ともつかない言葉を漏らしていた。
( ^ω^)「ブーンの全財産だお…これで一緒に遊びにいくお」
ξ*゚听)ξ「ふ、ふん、どうせお金で遊べるものも無いのに馬鹿じゃないの? でも……」
ツンが言いよどんだ。
じわりじわり。彼女の目に涙が浮かぶ。
- 109: 1 ◆ZvFvVWv36Y :2008/01/02(水) 12:57:04.26 ID:6Uxt5Hfc0
( ^ω^)「……お?」
どうしたのかお? ブーンが覗き込もうとして、
ξ*;凵G)ξ「そ…その…私のためなんかに…ウ…ウワァアアアン」
ツンに抱きつかれた。
しっかりと抱きとめながら、大丈夫だお。と何回も何回も繰り返し言葉をかけた。
ブーンが思ってたよりずっと、彼女の背中は小さかった。
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