( ^ω^)ブーンたちの世界が、終息するようです
- 128: 1 ◆ZvFvVWv36Y :2008/01/02(水) 13:28:26.89 ID:6Uxt5Hfc0
- 私の家は、この界隈じゃあ、知らない人間はいない程の名家だ。
それに加えて、両親も結構名を馳せた名士であるらしく、自慢ではないけれど私は上流階級の子だと思う。
だからこそ、なのかも知れないけれど
私の基準はいつだって『あの家の子』と言うサークルの中にあった。
私が何か功績を挙げれば『流石あの家の子』
私が何かしくじれば『あの家の子なのに』
父も母も、事あるごとに『私の娘』『お父さんの子』
私は親の体面のために生まれてきたのだろうか?
誰も。大きなサークルの中にある小さな『ツン』と言う私を見てくれない
私の意識を、私の存在を、見てくれない。
- 129: 1 ◆ZvFvVWv36Y :2008/01/02(水) 13:29:56.64 ID:6Uxt5Hfc0
- いや――見てくれないだけではなかったのかもしれない
私が見せなかったのもあるのかも知れないのか
私が見せなくなかったのもあるのかも知れないのか
きっと 失望されるから 私を――『ツン』を知ったら
きっと 目の色を変えるだろうから
多分、私でさえもあの家と言う殻に閉じこもって安心しきっていたのだろう。
ブーンと出会う
あの日までは
第六話 『 アナザーマインドさ、と君の言葉が 』
人を疎遠している、と言うよりは徹底的に拒んでいたのだろうと思う。
そうする事で、少しでもボロを出さないようにして、私は高貴な生まれの女の子を演じていた。
- 130: 1 ◆ZvFvVWv36Y :2008/01/02(水) 13:30:29.56 ID:6Uxt5Hfc0
- 結局はその仮面も
( ^ω^)「……? ツンは、笑えないんじゃなくて笑わないだけじゃ、ないのかお?」
中学1年。始業式の日。
偶然同じ幼稚園出身で
偶然席が隣になったブーンに
いとも簡単に引っぺがされてしまったのだけれど。
ブーンと一緒のクラスになって、そして席が隣になったのが運のつきだった
アイツはいつだってそう。今だってそう。
笑いながら、私に触れてくる。
サークル領域に足を踏み入れて、不可侵だったツンと言う存在を見てくれる。
- 131: 1 ◆ZvFvVWv36Y :2008/01/02(水) 13:32:19.61 ID:6Uxt5Hfc0
- ブーンの性格は、あの通りだ。
黙っていても天性の気質からか、あのほにゃほにゃした雰囲気からか、おのずと人が寄ってくる。
その能力は授業中だろうが休憩時間だろうが昼休みだろうが発揮されていて、
その為に私は、アイツと隣の席だったが故に私は
疎遠すべきだった人との交流を嫌が応にもすることになった。
でもそれに、心地良さを感じる私も居て
『ツン』を見てくれている人が居る事に安心している私も居て
だけど、もう戻れはしない。
どんな形であれ、私はブーンを裏切った。
私の目の前で、困惑している彼が。
数日前のブーンが日常の中で笑っている所を私は2.3歩引いた所から、冷めた目で見つめてしまった。
だから私に、もうその資格はないのに、
何故こうも未練がましく、アイツの姿を見て安心してしまっているんだろう?
私が行ったのは、原罪に等しい裏切り行為なのにも関わらず。
- 132: 1 ◆ZvFvVWv36Y :2008/01/02(水) 13:33:54.85 ID:6Uxt5Hfc0
- ( ^ω^)「……ツン? それ、どう言うことだお? 知ってた……って」
ξ゚听)ξ「…………………」
( ^ω^)「ツン。黙ってないで、何とか言ってくれお…!」
ブーンから出されたコーヒーに、私の顔が映っていた。
醜い。
何て醜い顔をしているんだろう。目もとが腫れて顔は涙でぐしゃぐしゃだ。
これが報いなのだろうか?
そう思うと、また涙が浮かんで来た。必死で押える。
ξ゚听)ξ「…………ブーン」
声に出すけれど、それは震えていて。
コーヒーの水面が揺れた。世界が歪む。
- 133: 1 ◆ZvFvVWv36Y :2008/01/02(水) 13:34:42.51 ID:6Uxt5Hfc0
- (; ^ω^)「な、何だお」
返事を出すブーンの声も、また震えている。
この真相を伝えたら、ブーンは何と言うだろう。
私を殴るのだろうか。椅子を蹴り倒して怒鳴り散らすのだろうか。
伝えたくない
伝えなくちゃ
ξ゚听)ξ「――抽選、って知ってる?」
( ^ω^)「……あの、無差別に選ばれた人たちが火星移住する、って言う奴かお?」
ξ゚听)ξ「そうよ。それで――私の両親はそれに選ばれたの…… ううん」
一旦区切って、コーヒーカップを手に取った。
じんわりと伝わってくる、暖かな液体の温度。
言わなくちゃ
- 134: 1 ◆ZvFvVWv36Y :2008/01/02(水) 13:35:56.08 ID:6Uxt5Hfc0
- ξ゚听)ξ「正確には、私の両親はその推薦枠で通ったの」
優秀な人材として選ばれた。言わば現代版、ノアの箱舟に。
( ^ω^)「……ツンは? 通った、って言うんなら、ツンはどうしてここにいるんだお?」
ブーンが訝しげに聞いてきた。声のトーンが、若干落ちてきている。
その質問で、私の中でせき止められていたものが取っ払われたらしい。
俯いたまま自嘲気味に笑い、言う。
ξ゚听)ξ「私はね、捨てられたの。両親に」
(; ^ω^)「………なっ!!!?」
私の言葉にブーンが息を呑んだ。
喉が嘶くようにキュルキュルと音を立てる。
ξ゚听)ξ「聞いちゃったのよ、全部。5日前の夜にね。
彗星衝突の話、推薦枠で通った、って話。私が見捨てられる話」
( ^ω^)「ツン!?」
ツラツラと淀みなく真実を話す私に、ブーンが戸惑ったように私の名前を呼んだ
それでも、私は言葉を続ける。伝えなくちゃいけない。これは私の責務。
- 135: 1 ◆ZvFvVWv36Y :2008/01/02(水) 13:37:08.90 ID:6Uxt5Hfc0
ξ゚听)ξ「それなのに、私は。私はずっとブーンたちを裏切ってた
全部知ってて、全部知らないフリして――
何事も無かったみたい皆と一緒にただ笑ってた! 私は全部知ってたのに!!」
顔を上げて、ブーンを見た。
この時初めてブーンを真正面から見た形になる。
ブーンの顔は歪んでいた。
私の目に溜まった涙のせいだった。
( ^ω^)「ッ……もういい!」
その言葉と共に、ブーンがテーブルに拳を叩きつけた。
肉がぶつかる音がして、その拍子に肩を揺さぶる
ξ*;凵G)ξ「ブーン…!? でも私ッ!」
( ^ω^)「もう、いいんだお……」
ブーンが顔を逸らした。ゆらゆら揺れる真っ黒なコーヒー。
顔を逸らしたまま、ブーンが言葉を紡ぐ。
- 137: 1 ◆ZvFvVWv36Y :2008/01/02(水) 13:44:53.06 ID:6Uxt5Hfc0
どうしようもない私に、救いの言葉が掛けられる。
( ^ω^)「ツン、ワシントンと桜の話、知ってるかお?」
あ、それなら知ってるわよ。と、私は言葉を漏らし、
うる覚えの話の内容を記憶の端を辿りながら言う。
ξ*;凵G)ξ「ワシントンが父親の桜の木の枝切っちゃったやつでしょ?」
うん。と、ブーンから肯定の相槌が打たれた。
私はブーンの言葉を待つ。
- 138: 1 ◆ZvFvVWv36Y :2008/01/02(水) 13:45:21.39 ID:6Uxt5Hfc0
( ^ω^)「でもそれを自分がやったんだと正直に告白して謝ったら、
父親は怒るどころか、その行為を誉めてくれた。ってやつだお」
ブーンの顔がこちらを向いて、目があった。
真直ぐな視線こう言う時のコイツの視線に、私は弱い。
ツン何でか、解る?
瞳の奥にそんな言葉があった。
- 139: 1 ◆ZvFvVWv36Y :2008/01/02(水) 13:46:04.95 ID:6Uxt5Hfc0
- ξ*゚听)ξ「ワシントンがまだ手に斧持ってたからじゃない?」
( ^ω^)「…………」
沈黙。
ち、違うお。
弱弱しくブーンが否定した。グゥ。
( ^ω^)「父親は、ワシントンの正直な心を誉めたんだお」
ξ゚听)ξ「……正直な、心」
私が反芻する。
ブーンがそうだお。と、また優しい声で肯定した。
( ^ω^)「やってしまった事は、もう戻れないけど。
どうあれ、ツンは僕に打ち明けてくれたお。本当のことを、話してくれたお」
ξ゚听)ξ「……ブーン……」
( ^ω^)「それに、この部屋…実は僕がやってしまったんだけど……」
ブーンが私から視線を外して、部屋を見渡した。
最初に見た時も驚いたけど、部屋の中はぐちぐちゃで、誰かに襲われたのかとも思ったけど――
- 140: 1 ◆ZvFvVWv36Y :2008/01/02(水) 13:47:09.26 ID:6Uxt5Hfc0
( ^ω^)「壊しても。何も残らなかったんだお。
ただ、――ただ虚しいだけだったんだお」
それと同じだお。
目を細めさせて、ブーンが言った。
そしてまた私と目を合わせて、こう言うんだ
( ^ω^)「僕は。ツンがそうやって僕に言ってくれたことが、嬉しいお」
ありがとう。ツン。
ξ*゚听)ξ「ッ……!」
( ^ω^)「さ。落ち着いたら、どこか遊びにいくお! 後悔ないように、パーッとやるお!」
ブーンが勢いよく立ち上がって、私の方へ手を差し伸べた。
- 141: 1 ◆ZvFvVWv36Y :2008/01/02(水) 13:49:09.28 ID:6Uxt5Hfc0
- カラカラと笑う。幸せそうにブーンが笑う。
だからつられて私も笑った。そう言う気分だったんだ。
殴られると思った。怒鳴られると思った。
例え殺されても、文句を言う筋合いはないと覚悟していた。
でもブーンは、笑って私を許して、
それどころか、お礼まで言って来た。
だから、私も笑えた。
ξ゚听)ξ「うん……ありがとう。 そうだ、ブーン」
涙をふき取って、提案する。行きたい場所を言ってみる。
世界の最期を彼と過ごす。――素晴らしいじゃないの。
ξ゚听)ξ「学校、行ってみない?」
第6話【 アナザーマインドさ、と君の言葉が 】終 →第7話へ
- 142: 1 ◆ZvFvVWv36Y :2008/01/02(水) 13:49:54.80 ID:6Uxt5Hfc0
- 蛇足の話。
( ^ω^)「外は危ないお ニュースでもそう言ってたし……何か武器をとは思うんだけれど」
ξ゚听)ξ「どうするの?」
( ^ω^)「僕はバットかトンファーでいいお。そう言えば、ツンの武器、何だったんだお?」
まさか素手で来たわけでもあるまい。
ξ゚听)ξ「ええこのメリケンを」
(; ^ω^)「それは凄い武器を…」
……って、それで僕殴られたのかお!?(第4話参照)
(; ^ω^)「あのちょっとコツ掴んだわよって感じにヒットしたことから察するにまさか……此処に来る前何人か!?」
ξ゚听)ξ「ふ〜ん♪ ふふ〜〜〜ん♪」
( ^ω^)「ツン…恐ろしい子……!!」
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