( ^ω^)ブーンたちの世界が、終息するようです

219: 1 ◆ZvFvVWv36Y :2008/01/02(水) 19:44:47.09 ID:6Uxt5Hfc0



僕は汚い。

でもだからこそ、そんな汚い自分自身に胸を張れる様、今は笑おう。



第八話 『 幸多からんことを、とお前は願った 』


空気が凍った。
扉を開ける為に伸ばした手が固まってしまった。
ツンがショボンに駆け寄るのを見、僕もそれに付いて行く。
ドクオは振り返ったままの姿勢で固まっていた。


( ^ω^)「ショボン、一体、」

ξ;゚听)ξ「どう言う事よ、一緒に行けないって……!」


ブーンの台詞の後半を掻っ攫い、ツンが立ったままだったショボンの襟首を掴んだ。
ショボンに抵抗の色はない。



222: 1 ◆ZvFvVWv36Y :2008/01/02(水) 19:48:58.57 ID:6Uxt5Hfc0


(´・ω・`)「…………ごめん。君たちに『やるべき事』があるように、僕にもあるんだ」



頭を垂れたまま、ショボンは言った。
何秒かの沈黙の後、ツンがショボンの首元から手を離した。
慣性の法則でショボンが尻餅を付く。


( ^ω^)「ドクオは……ドクオは何も言わないのかお?」

あくまで静観を突き落としていたドクオにブーンは話を振る。
今だ振り返ったままの姿勢で立っていたドクオが、僅かに首を振る。



('A`)「……ああ、ショボンの言うこと、解かるからな」

( ^ω^)「そうだおね……」



もともと、学校に来た理由も僕らはバラバラだったんだ。
ならこれから先の方向性だって当然違う。ショボンの言葉を借りれば、
『どういう生き方をするかは、別』なのだ。



224: 1 ◆ZvFvVWv36Y :2008/01/02(水) 19:51:29.63 ID:6Uxt5Hfc0
じゃあ、と踵を返し歩を進めた三人に再度ショボンが声を掛けた。
今度は少しだけ、笑いが含まれていた。

(´・ω・`)「ちょいまち。なんでここでバイバイな流れになってんの?」


( ^ω^)・('A`)・ξ゚听)ξ「「「はい?」」」






(´・ω・`)「途中までは一緒に行くよ。旅は道連れ世は情け、だろ?」






カラカラと座り込んだまま笑うショボン。
こんの天邪鬼、とツンが毒づく。……まったく持って同意です。と二人は頷いた。



225: 1 ◆ZvFvVWv36Y :2008/01/02(水) 19:58:46.11 ID:6Uxt5Hfc0
1/14 12:00 車内



(´・ω・`)「事故ったらぶち殺すぞ」



後部座席に座るショボンが低い声で言う。これ不謹慎な、と嗜める人間はいない。
ショボンの横に座っているドクオは、我関せずとばかりに本を読んでいる。



('A`)「それにしてもすごい運転だな……」

(; ^ω^)「おっ…おっおっ…」



暴れ馬ハンドルを必死に調教するが、どうも上手くいかない。
流石にPSコントローラーとは要領が違うらしい。これがグランツーリスモなら今頃僕は鈴鹿の王だ。



ブーン達の車は荒れ果てた道路を走っていた。目的地は鎌倉である。



226: 1 ◆ZvFvVWv36Y :2008/01/02(水) 19:59:32.30 ID:6Uxt5Hfc0
ξ;゚听)ξ「ちょ、ちょっと、こっちで方向あってるの!?」


(´・ω・`)「そんな事言っても衛星もないし、ナビは使えないよ?」





('A`)「――ん、あ。そうそう。車の中に地図があったぞ」




(#^ω^)ξ#゚听)ξ(´・ω・`)「「「そういう事は先に言えッ!!!!」」」


ξ゚听)ξ「って……ブーン、ちょっとまって! 次右折だわ!」


(; ^ω^)「ちょwwwwまっておwwww」


荒れた町に荒れた運転、生きて鎌倉にたどり着けるだろうか……?



231: 1 ◆ZvFvVWv36Y :2008/01/02(水) 20:10:32.65 ID:6Uxt5Hfc0
1/14 15:00  高速路 パーキングエリア

(; ^ω^)「き、奇跡だお……」

バン、と運転席のドアを閉めたブーンが呟いた。
空を仰ぎ、空気を吸い、生き心地をやっとの事で味わうのだった。

ξ;゚听)ξ「……本当、奇跡だわ」

遅れて助手席からツンが出てきた。
手に持ったままの地図本に刻み込まれた真新しいいくつものシワは、
思い通りにならない運転手への怒りを一身に受けた跡だった。
ナビゲーター役は身体よりもむしろ精神に来るらしい。心なしかブーンよりも疲れた表情だった。



(´・ω・`)「いやあ、ETC付いてないのに料金所突破しちゃったね」

('A`)「それよか俺はここに来るまで一台もすれ違わなかった事が不思議だよ……」



続いて後ろのドアが開き、二人が出てきた。
3時間のぶっつづけ運転でやっと道のりは三分の二に来ていた。
不慣れながらもブーンが頑張った証拠である。



232: 1 ◆ZvFvVWv36Y :2008/01/02(水) 20:21:03.90 ID:6Uxt5Hfc0
(; ^ω^)「鎌倉まで……あと1時間くらいかお」
('A`)「ああ。何回死ぬかと思ったかね」
(; ^ω^)「大きなお世話だお!」

東京の方面からずっと海岸線を沿っての運転だったが、そのゴールも見えてきた。
治安が悪いと評判が高かった神奈川県であるが、乱れたような感覚は受けなかった。
多分ここにいた『悪い奴ら』は、遊びなれたここでは飽き足らず、県外に散らばっていったのだろう。


(´・ω・`)「ははは。ああ、まったく君たちのトリオ漫才は面白いね。――さて、と」


しなやかな猫のように、ショボンは背伸びをした。
青空を見上げ、微かに笑う。この際の展開の予想はおおよそ付いている。
元々ショボンは鎌倉市に程近い金沢区、この場所の生まれた。
ショボンの父のお店――バーボンハウスと言ったか――それがあるのもここだといつか聞いた事がある。
きっと、だけどショボンは親父さんに会いに行くのだろう。それを問えば、彼は何、言う程の事じゃないさと笑うのだろう。

ツンが頷いた。ドクオが気恥ずかしげに頬を掻き、僕はショボンを見つめていた。
扉を閉めてから、ショボンはこの時初めて屈託のない笑みを浮かべて、浮かべながら



(´・ω・`)「そろそろ、お別れだ」


と言った。



234: 1 ◆ZvFvVWv36Y :2008/01/02(水) 20:25:36.20 ID:6Uxt5Hfc0
ドクオとブーンは知っていた。いつかこの時がくるのを。
ツンは解かっていた。ショボンの決意の重さを。


だからこそ三人は尊敬した。


せめて誇れるように、と最後まで気高くあろうとする友人を。


('A`)「――ああ。元気、でな」

(´・ω・`)「ドクオ、それすっごい皮肉」

ξ゚听)ξ「皮肉家なのはアンタの方でしょ」

(´・ω・`)「君を弄るのは楽しかったよ」

ξ#゚听)ξ「なぁ!?」

(; ^ω^)「ちょ、ツン落ち着いて! ショボンも何故にそこまでツンを煽る!?」


(´・ω・`)「ブーン」


( ^ω^)「…………お」



235: 1 ◆ZvFvVWv36Y :2008/01/02(水) 20:28:14.11 ID:6Uxt5Hfc0
ツンを押さえつけていたブーンが、ショボンを見た。
車のボンネットに顎を預けながら、彼は少年のように笑っている。
皮肉家で悲壮家で、いつだって彼らしくあったショボンが花のような笑みで言うのだ。







(´・ω・`)「元気でね」








その言葉をただの皮肉だ、と一蹴する訳にはいかなかった。
だからこそブーンは笑い、力強く相槌を打つ。ショボンも元気で、と意味を込めて。



237: 1 ◆ZvFvVWv36Y :2008/01/02(水) 20:35:23.83 ID:6Uxt5Hfc0
エンジンがスタートし、ガスの排出が始まる。
三人はショボンを残し、車へと乗り込んだ。


(´・ω・`)ノシ「…………」


ブーンはフロントガラスに映る、いつまでもこちらに手を振る友人を前方と交互に見ていた。


( ^ω^)「…………」


涙腺は緩みっぱなしだ。
向こう三年の涙は出し尽くたっぽいのに、まだ出るか。


ξ゚听)ξ「私は、泣かないからね」

('A`)「俺もだ」

( ^ω^)「うん……」


もしかしたら皆泣くのかな、と言う予想を察されたのか、ツンは強がってみせた。
空は、いつもと変わらず宇宙まで突き抜ける青色だった。


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