( ^ω^)ブーンたちの世界が、終息するようです

265: 1 ◆ZvFvVWv36Y :2008/01/02(水) 22:06:28.72 ID:c6gNuXUr0


喜んだ。怒った。哀しんだ。楽しんだ。
笑った。泣いた。怒った。嘆いた。



けれども、誇れた。



最終話 『 「希望しろ」と、神様は囁いた 』



1/14 17:30 鎌倉


ブーンたちを乗せた車は鎌倉の中心街を走っていた。のろのろとした低空走行。
それでも最初にしてみれば慣れたものな運転をしつつ、三年前に見た、古い城下町である鎌倉の風景を彼らは眺めていた。


( ^ω^)「あ、そういえば、ここでツンが――」

ξ゜凵K)ξ「あーっ!! 何? 何か言った!?」


( ^ω^)「……なんでもないです」



266: 1 ◆ZvFvVWv36Y :2008/01/02(水) 22:13:11.75 ID:c6gNuXUr0


ξ゚听)ξ「あ、ブーン! ここで止めて!」


ブーンの肩を叩き、ツンがブレーキを踏ませる。
緩やかな速度で走っていた車は、やはり緩やかな減速を重ね、やがて止まった。

扉を開け、弾き出るように公園の中へと走って行くツンをブーンも慌てて追った。
ツンは中央で立ち止まると、端整な顔をくしゃくしゃにして、公園を見渡した。



ξ゚听)ξ「……覚えてる? ここで記念写真とった事」


( ^ω^)「ここで……?」


何せ三年前のことだ。思い出すまでに、何秒か要した。
あ、と気がついたブーンが頷き、ツンに笑いかけた。
樹木や花壇に記憶の齟齬はあるものの、公園の片隅に設置されたベンチに、見覚えがあ。


ξ;;)ξ「ええ、ここで……」

( ^ω^)「ちょっと休むかお……」


ツンも頷き、2人は公園のベンチに腰掛けた。



267: 1 ◆ZvFvVWv36Y :2008/01/02(水) 22:16:53.19 ID:c6gNuXUr0
暫く無言が続き、ふいにツンが堰を切ったかのように喋りだした。

ξ;;)ξ「なんで、なんで私達が死なないといけないの?」

( ^ω^)「…………」

ξ;;)ξ「もう、みんな居ないじゃない、ショボンも、ドクオも……」

( ^ω^)「――もういいお、ツン。怖いなら、考えるのはやめよう」


膝の間に頭を埋め、うめくように言うツンにブーンが掛けれたのは、そんな言葉だけだった。
非量産的だ、とショボンは笑うかもしれない。
理解出来るがな、とドクオは渋い顔つきで言うかも知れない。
それでもやはり僕らは子供で、僕らに突きつけられた非日常そのものが突然すぎたのだ。


もしも神様がいるのだとしたら、とブーンは思う。


そいつは今、どう言う気持ちなのだろう?



270: 1 ◆ZvFvVWv36Y :2008/01/02(水) 22:19:44.16 ID:c6gNuXUr0
ξ;;)ξ「ブーン、どこか行きましょう? ここに居てもしょうがない、から」

( ^ω^)「あ、うん……けど、お店もどこもやってないお」


立ち上がったツンを見上げる形のまま、ブーンが言った。
辺境とも言えるブーンたちのVIP市の商店街でさえあの有様だったのだ。
その観光地で満足な供給は受けられないお、とブーンの言葉に、ツンは緩やかな動作で首を振った。







ξ゚听)ξ「私にはアンタが居ればそれでいいのよ」








――ああ、その響きは、今この時に聞くには、どうしようもなく残酷な音をしている。



272: 1 ◆ZvFvVWv36Y :2008/01/02(水) 22:28:02.20 ID:c6gNuXUr0
1/14 17:50 鎌倉:八幡宮

観光地でもあり、『神様』が住む場所でもある神社の荒廃様は、
町のそれに比べれば幾分も落ち着いていた。
とは言っても、破壊がない訳ではない。芥川龍之介が描いた羅生門が、ちょうどイメージと合致した。



『神様』へ責任転嫁する人間だって、少なからずいると言う事だ。



( ^ω^)「こうやって人が作り上げてきたものも一瞬で消え去るのかお――」

ξ゚听)ξ「……そうね」


( ^ω^)「人は死んだら天国にいけるのかおね」

ξ゚听)ξ「さあ…」


当然の疑問に、ツンが優しく答える。見たことのないものはわからない、と彼女は目で語っていた。
そりゃあそうだ、とブーンが納得しかけた所へ、2人の様子を見ていたのか、
どこからともなく現れた老人が話し掛けてきた。


/ ,' 3「若い衆でまだ生きているなんて珍しいな。ワシの知ってる奴らはみな自殺してちまったわい」



273: 1 ◆ZvFvVWv36Y :2008/01/02(水) 22:32:42.03 ID:c6gNuXUr0
『生きている』事を感心するかのように、老人は何度もそうか、そうか、と繰り返していた。
老人は優しげな瞳をしていた。その老人は、荒巻と名乗った。

( ^ω^)「どうもだお」

/ ,' 3「わしは年老いてから毎日毎日此処に来ていたんじゃがな」


( ^ω^)「……」

/ ,' 3「それも今日で最後だ」


荒巻は笑い、それから空を仰いだ。日没が近い。
そして日没が近い、と言う事は

( ^ω^)「おじいさんは死んだら天国にいけると思いますか?」

/ ,' 3「さあなぁ。死んでもない人間がわかるはずも無いよ」

( ^ω^)「そうだですおね……なら、ブーン達はまだしぶとくいきつづけるお!」


元気に宣言したブーンをそりゃあいいなぁ、と荒巻はつぶらな眼で見た。
まるで全部を見透かされている気分になるお、とドギマギするブーンであるが、
その不安でさえも沈静化する力を荒巻は持っていた。知らずの内に心拍数は落ちて行く。


荒巻は尚も朗々と笑っていた。



276: 1 ◆ZvFvVWv36Y :2008/01/02(水) 22:39:22.98 ID:c6gNuXUr0

/ ,' 3「たしか21時だったっけな、この世界の終わりは」

荒巻はブーンとツンを交互にみた。
そしてあの眼のまま、問うた。

/ ,' 3「神様がいるとして、殺してやりたいと思うかい?」


ξ゚听)ξ「……」

( ^ω^)「…………」


荒巻が訊いたのは、突拍子もない、けれど考えなかった訳ではない思考だった。
ブーンとツンは見つめあい、笑いあった。2人の答えは決まっていた。


( ^ω^)ξ゚听)ξ「「そんな訳、ないじゃないですか」」


/ ,' 3「…………ほお?」


荒巻の顔に、何かしらの感情が宿ったのをツンは見た。人生経験が浅い自分には、その色の正体を探る事が出来ない。
けれどたしかに、荒巻は慶んでいた。心の底から湧きあがってくる感情は、
誰であろうが完全に隠す事は出来ない。かすかに漂ってくる荒巻の明るい感情。ブーンは言葉を紡いだ。



277: 1 ◆ZvFvVWv36Y :2008/01/02(水) 22:42:14.61 ID:c6gNuXUr0
( ^ω^)「そりゃ、憎いっちゃ憎いですお」
ξ゚听)ξ「出来る事ならまた皆で無邪気に遊んで、笑って、叫んでたりしたいです……」

( ^ω^)「けどコレがなければ、僕らは絶対に気付かなかった」
ξ゚听)ξ「日常とは日がな一日刻々と変化していっていること」
( ^ω^)「平穏とは脆く絶えがたいものだと言うこと」



( ^ω^)ξ゚听)ξ「「何気ない日常の真価に」」



重なった声に、荒巻が笑う。
やはりそうか、そうか、と何度も繰り返した。それから何秒か笑い続け、

/ ,' 3「わしはそろそろ家に戻るとするよ。最愛の人も待ってることだしな。
ほっほっほっ……最後に良い若者をみたような気がするよ。はっはっは」

荒巻は豪快に笑った。

( ^ω^)「さよならだお!」

ξ゚听)ξ「ありがとうございます……!」


そう言い、二人は荒巻と分かれた。



278: 1 ◆ZvFvVWv36Y :2008/01/02(水) 22:45:13.75 ID:c6gNuXUr0
1/14 20:00 鎌倉:某所

海岸線を歩きながら、2人は空を見上げていた。
西の空を彩る奇妙な七色の光の緒は、この世界の終わりにしてはとても綺麗なものだった。


( ^ω^)「さて……空に白い物体、あれかお?」

ξ゚听)ξ「もう涙もでないわよ。最後くらいはブーンと一緒にいたいんだけど、いい?」

今更なにを、とブーンは笑う。
砂浜の砂を足で蹴りながら、ツンはそうね、と笑った。

ξ゚听)ξ「最後にちょっと話そう?」

( ^ω^)「お……」


残された最後の時間、2人はいろいろ話した。

小学校時代に喧嘩したこと

中学時代ツンが鎌倉でブーンとキスしたこと

ブーンがツンと同じ学校に行くため必死で勉強したこと。

ショボンのこと。

ドクオのこと。



279: 1 ◆ZvFvVWv36Y :2008/01/02(水) 22:45:31.30 ID:c6gNuXUr0








全部話した













280: 1 ◆ZvFvVWv36Y :2008/01/02(水) 22:46:40.13 ID:c6gNuXUr0




ξ゚听)ξ「この思い出が消えてなくなるなんて、ちょっと信じられない話ね」






( ^ω^)「そうだお。一生の思い出、いや。これは永遠の思い出だお?」





ξ゚听)ξ「ねえブーン、わた、」







世界は予定より5分早く終わるお話はここで終わり。



281: 1 ◆ZvFvVWv36Y :2008/01/02(水) 22:47:08.53 ID:c6gNuXUr0










/ ,' 3「じゃと、思うだろう?」
















283: 1 ◆ZvFvVWv36Y :2008/01/02(水) 22:48:11.76 ID:c6gNuXUr0
1/14 7:30 ブーン宅


もぞもぞ。もぞ。もぞもぞ。
でかいミノムシ、もとい布団が動いた。

目覚める瞬間とは、なんとも微妙な間であるなとブーンは思う。
無意識と意識の間。半覚醒の淵に身を投げる気分にはいつになっても慣れない。

布団の中で丸まり、ブーンは重い瞼を擦った。
睫毛についた目やにを採取しながら、何時であるかを確認。


7時30分。ああ、イイ目覚めだ。


( ^ω^)「――ふぇ……お、ぉお……良く寝たお。……何か変な夢見たお」


うわ言のように呟きながら、噛み殺す事無く大きな欠伸を欠いた。
っせーの……
脚を頭の方へ上げ、腰を浮かせて、掛け声一発。


( ^ω^)「とぉぉぉぉおおう! ブォォォォオオン!」


そのまま一気に起き上がる。



284: 1 ◆ZvFvVWv36Y :2008/01/02(水) 22:48:51.90 ID:c6gNuXUr0


( ^ω^)「……ふっ。今日もいい調子だおwwwww満点だおwwww」


着地の際にちょっとよろける。



( ´ω`)「……勃ち上がり世界選手権の道は遠いお」



春先のひんやりとした気温が、露の湿気のように徘徊する廊下に出、下に降りた。


自分の存在を誇示するようにわざと大きい音で駆け下りる。


意味は無い。他意も無い。

けれど一刻も早く、どうしたの慌てて、と笑ってくれる母の姿を、
眉根をしかませながら新聞紙を捲る父の姿を確認したかった。



286: 1 ◆ZvFvVWv36Y :2008/01/02(水) 22:49:04.19 ID:c6gNuXUr0


( ^ω^)「……母ちゃん! 起きたお!! 朝飯くれおー!」



腹から声を出す。
いいから返事してくれお……!

日常に縋る。そして願う。理由は解からないが、縋り、願い、手を伸ばす。
心ばかりが焦っていた。どうしようもなく、狂おしいほどに。



( ^ω^)「かあちゃ…………お……?」



リビングや台所に眼を配らせるが、誰もいない。
どうしたの慌てて、と笑ってくれる母も眉根をしかませながら新聞紙を捲る父の姿もいない。


何なんだお。何なんだお、何なんだお何なんだお……!?



288: 1 ◆ZvFvVWv36Y :2008/01/02(水) 22:51:28.03 ID:c6gNuXUr0
「あらブーン、どうしたの慌てて」

ジャー、とトイレの流れる音。
そして母ちゃんの間の抜けた声が響いた。

( ^ω^)「へ……?」

「どうしたんだい、まったくこの子は」


( ^ω^)「な、なんで生きてるんだお?」

「私しんだのかい?」

(; ^ω^)「……や、べつに」


訳がわからなくなってブーンはあたりを満たした。
テーブルにあった昨日の新聞紙を手にとり、テレビ欄の確認をした。
『〜世にも珍妙な物語り〜』



…………あれれ?



289: 1 ◆ZvFvVWv36Y :2008/01/02(水) 22:52:55.30 ID:c6gNuXUr0
「……まったく、早く支度しなさい! ツンちゃんがくるわよ!」

母ちゃんの怒声がリビングに飛んだ。
はいはい、とブーンは洗面所へと足を運んだ。髭剃りの終わり、リビングへと帰還する途中だった父と眼が合う。


「おはヨーグルト」



くだらねぇ。



300: 以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします。 :2008/01/02(水) 23:24:55.81 ID:kpElr/h7O


人生は遊びかも知れない
だけど人生はゲームじゃない


「長いか短いか60年。さてはて、君はどう生きる!」


荒巻は笑う。神様は笑う。


終わり



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