( ^ω^)季節を旅する文猫冒険記のようです

5: 以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします。 :2007/12/24(月) 17:17:27.93 ID:81lxEDVB0

 【プロローグ】


  明るい時間と暗い時間、そして過ぎていく季節。
  暗くなれば眠り、明るくなれば活動を始める。

  そうやって、ただ過ぎ去る夜と、変化を数える。
  空に浮かび上がる月は、季節の変化とともに自らの色を変える為、その目印になった。
  最も例外もあれば、他にも事細かな内事情があるが…ここでは語らないでおく。


  季節の一巡は、四季と365の夜から成り。
  四季はそれぞれ月の色を元にこう呼ばれる。

  
  暖かい陽気に、命が咲く 白季。

  とても暑い日と、大空の 蒼季。

  涼しくて、彩りが綺麗な 紅季。

  寒くて凍える、終わりの 透季。

  
  そして日が昇り、陽が落ち、月が昇り夜が訪れる回数を節と呼んだ。

  これが彼等の世界における 【 季 節 】



6: 以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします。 :2007/12/24(月) 17:18:24.28 ID:81lxEDVB0

  そして世界には、人と称される沢山のAA達が暮らしている。

  同時に、その人以上に多種多様な動物達が息づいていた。

  
  人と動物達は基本的には相容れず、距離を置いて生活している。  
  なぜなら生態の違いから、お互いにコミュニケーションが取れないからだ。

  そうして言葉を話せない動物は獣と呼ばれ。
  人をはるかに超えた身体能力を持つ獣は恐怖され。
  人に様々な面で劣る動物達はしいたげられた。


  だが、そんな中にも言葉を理解し、言葉を話す獣もごく僅かに存在する。


   虎の様な大きな体を持ち、けれど争いを好まない穏やかな性情の獣。

   本を好み、よく学び、人々と共に暮らす猫種の獣。



    彼等は言葉と、そして【 心 】を以って人と文化を解した。



    そんな彼等はかつて 【 文猫 】 と、呼ばれていた。



7: 以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします。 :2007/12/24(月) 17:18:50.24 ID:81lxEDVB0





                                   ∧,,∧  
   ∧ ∧  【 季節を旅する文猫冒険記のようです 】 ('ミ゚Д゚,,彡
  ( ^ω^)                           ゞ,,  つ
  と   つ                            ミ  ミ
 〜(__)                             し`J






9: 以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします。 :2007/12/24(月) 17:19:54.71 ID:81lxEDVB0

 《  白季 84節  》
  


( ^ω^)「…お?」


見上げた先の光景に、思わず声が漏れた。

そこには青をどこまでも深くした夜の空が広がり。
散りばめられた星々が輝く空と、山の頂上から大きなマルが顔を出す。

それはまるでフィルターを被せた様な、水色をした月だった。


( ^ω^)「…白季も、もう終わりかお」

(´・ω・`)「今季は84節か…ちょっと短かったね」


変色する周期はおよそ90夜に一度と言われている、そういえば前よりも少し早かったかもしれない。
僕の胴体に体を預けて寝息を立てる二人を起こさぬよう、極力静かに話をした。



10: 以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします。 :2007/12/24(月) 17:21:18.86 ID:81lxEDVB0

 村を出て、何度目かの夜。

長いこと歩き続けて、里を五つほど越えた山の中。
道行く先でたどりついたのは、幹と枝だけで構成された大樹。
その大樹を中心に張り巡らされた太い根っこは、絡み合い、地面に剥き出しになっている。


 夜の山中であるにも関わらず、周囲は薄い緑色の明かりに包まれていた、


ふいに、一匹の蝶がヒラヒラ羽ばたきながら前を通り過ぎていった。
あれも僕等と同じ様に、この光に誘われてきたのだろう。


 いくつもの淡い光は、僕等の頭上から降り注いでいた。


葉のない枝にぶらさがった沢山の丸い物体。
不定期に、けれど一年中、その枝に発光する実をみのらせる天然の灯り樹。
樹の名はホタル、自ら光を放つ事からそう名付けられた。

登ってみる、今宵は、この根の上を寝床とする事にした。



11: 以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします。 :2007/12/24(月) 17:23:04.49 ID:81lxEDVB0

( ^ω^)「きれーだお」

(;´・ω・`)「…でも、なんか…この辺のホタルは変な形してるね」

(;^ω^)「お? そうなのかお?」

(´・ω・`)「うん、僕のとこだとまんまるで…あんなひょうたんみたいじゃなかったよ」

(;^ω^)「むむ…やっぱり土が違うから違うのかお?」

(´・ω・`)「たぶん、そうじゃないかなぁ」

( ^ω^)「じゃあじゃあ、もっと別の場所に行けばもっと変な形のもあったりするのかお?」

(;´・ω・`)「え…どうだろ…」

( ^ω^)「ヒトデ型とか!」

(;´・ω・`)「いや…それはさすがに…」


「ぅうん………ん…?」


(;^ω^)「と…騒ぎすぎたかお」



13: 以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします。 :2007/12/24(月) 17:25:11.76 ID:81lxEDVB0

(´・ω・`)「…もう寝よっか?」

( ^ω^)「お…じゃあ、その前に……」


そうして、僕はノートを開いた。
まずは「 白季 84節 」と書かれたその下に「 蒼季 1節 」と新たに書き出し、
特にこれと言って何もなかった今日の出来事を綴っていく。

やがて数行で書き終えてしまった事が寂しく感じて。
ページをめくり、少しふりかえってみることにした。

めくれば、めくるほど、想いが溢れて。

書いていてよかったと心から思える瞬間だった。

やがて、最初の一ページ目に辿り着く。
これは平穏平和な村を出て、ここから始まった旅の記録。



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