( ^ω^)季節を旅する文猫冒険記のようです
- 3: 以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします :2009/01/12(月) 22:13:47.19 ID:NuWxg/eZ0
∧,,∧
∧ ∧ 【 季節を旅する文猫冒険記のようです 】 ミ゚Д゚,,彡
( ^ω^) ,,ミ つ
と つ ミ ミ〜
〜(__) し`J
11: 以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします :2009/01/12(月) 22:27:52.13 ID:NuWxg/eZ0
(だいじな用語説明)
文猫:虎みたいな大きさの猫、人の言葉を喋る。
人:この世界では、AA体を人と呼ぶため、人間は指さない。
季節:この世界では一日を一節と呼び、それを更に4つの季に分けた物が季節である。
つまりは一年間をへんな呼び方にしてるだけ。
4つの季とは下記のこと。
白季=春
蒼季=夏
紅季=秋
透季=冬
何年というのが存在しないため、年数と言う概念も無し。
(産業あらすじ)
・最初の目的地である文猫協会に到着。
・アイドルの(*゚ー゚)に出会う
・(*゚∀゚)が探している凄い包丁の話を聞かされる
13: 以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします :2009/01/12(月) 22:28:51.68 ID:NuWxg/eZ0
<紅季 27節>
遠い空に、ほそ長い雲がやんわりと流れていく。
ふわふわしていた風も、今ではひゅーっと寒々しく感じてきた。
もうじき寒い時季がやってくる、それを教える風だろうか。
けど、まだ空気はそう冷えきってもいない。
ちょっと歩けば、すぐに足からぽかぽか温まってくる。
ついでに言ってしまえば、僕は寒いのは得意だ。
けどショボはそうでもないらしく、訪れる透季の気配にため息をついていた。
ミ,,゚Д゚彡「俺も寒いのは平気」
(;´・ω・`) 「……うらやましいなぁ」
( ^ω^)「つーちゃんに言えば、きっと毛のコートを作ってくれるお」アッタカ
ミ;゚Д゚彡ノシ「ごめんやっぱ嘘、無理、寒いの無理!」
僕らはアルファの街を離れ、山を貫くような道の途中。
色をもち始めた草葉は、そんな僕らを歓迎するようにひらりら揺れていた。
15: 以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします :2009/01/12(月) 22:30:26.71 ID:NuWxg/eZ0
やがて、現れるのは緩やかな、しかしどこまでも続く坂道。
しばらく街にいたせいか、何だか懐かしいような、圧巻されるような、
そんな感慨ぶかい思いに、僕らはその場で立ち止まり、遠い道に目をこらした。
すると、しぃちゃんが前に躍り出て、先を示すように前へと指差した。
(*゚ワ゚)「それじゃ、まずは山越えですね! さあさ、一気に参りましょ!」
(*゚∀゚)「はいはい、んで参るのはいいけどよ、当てはあんのか?」
(*^ー^)「無いです、けど行けば何とかなりますよ!」
(;*゚∀゚)「何とかってお前……ほんとに大丈夫かぁ?」
(*゚ー゚)b「大丈夫ですっ! へっちゃらです! さあー行きましょう!!」
そう言って、彼女はしっぽをはためかせ、ひとり坂道をもうぜんと駆け上っていく。
僕らは黙って見送った、しばらく見ていると、やや先のほうで立ち止まった、というかこけた。
遠目にだけど、そのまま四つんばいになって、息を切らしているのがよくわかる。
しかし、むちゃくちゃ体力ないな、どうでもいいけど。
16: 以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします :2009/01/12(月) 22:32:01.83 ID:NuWxg/eZ0
(;*゚д゚)「ぜーっ、ぜーっ」
(;*-∀゚)「…なんだかなぁ」
(*´・ω・`) (かわいい……)
ミ,,゚Д゚彡「しょうがない…ブーンさんや、乗せておやんなさい」
( ^ω^)「わかりやしたおご隠居」
(*;ー;)「ああ、人情お心いります……」
するとしぃちゃんは、なんかナメクジみたいな動作で僕の背をめざし始めた。
地べたからはいまわるように、正直すごくきもちわるい、あと毛をひっぱりすぎ、いてーな畜生。
何かもう、いっそふりほどきたい衝動に駆られたけど、どうにか堪えた。
あと、何故かショボが羨むように見ていたけど、そっちは無視した。
(*゚ー゚)「ごめんね、重くない?」
( ^ω^)「重くないお」
17: 以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします :2009/01/12(月) 22:33:31.97 ID:NuWxg/eZ0
(*'ー`)「ごめんね、かーちゃん猫に乗るのはじめてだからごめんね」
(*゚ー゚)「あれ? ……なんだろこれ…背骨かな?」ヘンナ デッパリガ
(;^ω^)「あう…ちょ、それなんか気持ち悪いからやめて…」
(*゚ー゚)б「うん、わかったよ!」ゴリゴリ
(;゚ω゚)「あだだだっ! えっ、なんで!?」
(;*゚ワ゚)「え? だって、今のあれでしょ? やれっていう前ふり……」チガウノ?
(;^ω^)(まずい、これ素で言ってるぞ……)
この、どっかズレた変な子はしぃ。
まだ知り合ったばかりだけど、聞くところによれば、
かくちで歌を伝えながら、世界中をホーローしている、とても有名な人らしい。
ついでに、目を見はるその容姿から、熱狂的なファンもたくさんいるそうだ……しかし。
18: 以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします :2009/01/12(月) 22:34:58.84 ID:NuWxg/eZ0
ミ,,゚Д゚彡「歌って、どんなのなんだ?」
(*゚ー゚)「うーんとね…ちょっと待ってね声作るから」
(*゚д゚)「えーごほん、ごえっ、おほん、うえっ、うあ゛ーおほんおほん!!」
(;^ω^)(うるさいなぁ…)
なんかこう、今にも死にそうな勢いで、むせかえっているこの様を見て、
それを信じろと言うのは、少しばかり無茶ってもんだと思う。
……思う。
思っていたのだが。
(*。。)スゥー
(*-ワ-)「…あなたも〜おーおかみにぃ〜かわりーまぁすーか〜♪」
<〜♪
(*゚∀゚)「へぇ…」
(;^ω^)「おお…」
23: 以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします :2009/01/12(月) 22:39:42.56 ID:NuWxg/eZ0
真上から聞こえてくる声に、僕はおもわず感嘆の声をもらした。
これはおどろきだ、すごく透きとおってて、すごくきれい歌声をしている。
なるほど……これなら確かに分かる気がする。
(*^ー^)「おそまつさまでした!」
ミ*゚Д゚彡「すげーすげー」パチパチ ダカラ
(*´・ω・`) (ハァハァ……)
(*゚∀゚)「しかしうまいもんだなー」マジデ
(*゚ー゚)b「これで食ってますから!」
(;*゚∀゚)「生々しいからやめろよ、そう言うの……」
(*´・ω・`) 「しぃちゃんは最高です!」
なんかショボがきもいけど、まあ、確かにあれは文句なしにいいものだ。
耳の奥がくすぐられるような心地よさ、自然にはありえないその旋律、
なかなかどうして、心を揺さぶられる思いだった。
てか、どうでもいいけど、やっぱりショボが必死すぎてきもいんだけど……どうしたものか。
25: 以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします :2009/01/12(月) 22:40:42.88 ID:NuWxg/eZ0
。。
゜●゜
。。
゜●゜
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第4章 凪がれる時に、忘れ者をサガシテ
其の三 「 降り立つ大地に、視えたもの 」
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゜●゜
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゜●゜
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゜●゜
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゜●゜
26: 以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします :2009/01/12(月) 22:42:01.27 ID:NuWxg/eZ0
ミ,,゚Д゚彡「でも、やっぱ聴いたことない歌だったから」
(*´・ω・`) 「えーー! 信じられないよ! ありえない!」
ミ,,゚Д゚彡「そんなこと言われても……」
(#´゚ω゚`) 「ていうか知らないなんて失礼でしょう!?」オラッシャア
ミ;゚Д゚彡「え、いや、えーと…ごめんなさい?」
(*゚∀゚)(性格まで変わってやがる……)
(*;ー;)「でもほんとにねー……誰?近所の子? なんて聞かれたのは初めてだよ……」
(;´゚ω゚`) 「ああっ!?」
よよよ…と、ショックを受けた素振りで、僕の背にうなだれるしぃちゃん。
それを見たショボが「僕と変わって!」とか言ってくる、うざい事この上ない。
(*;ー;)「ひどいよねー、うふ、うふふ、ふふふふふふふふふふふ」
(;^ω^)「背中に文字かくのやめてくれお……」
30: 以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします :2009/01/12(月) 22:44:58.79 ID:NuWxg/eZ0
ていうか、その質問に対して、いちばん目を輝かせて反応してたくせに。
「そうです! ほらここ、私の家なんです!」ってさ、無駄にノリノリで。
そしたら、ちょうど家主が出てきて、しかもその人、困った顔してたし、もうね、コントかと。
(*゚ワ゚)「あ、ここの毛だけ色が変」ブチブチッ
(;゚ω゚)「ふぎゃあ!?」
(*゚ー゚)「あ、ごめん」
もうやだこの人。
(*゚∀゚)「んで、何をそんなに焦ってたんだ?」
(;*゚ー゚)「へ?」
(*゚∀゚)「さっき……つーか街を出るときからか」
そう、そうなのだ、何でかは知らないけど、しぃちゃんはずーっと、
コソコソしてるというか、慌てていると言うか、そんな感じだったのだ。
おかげで、出会ってそうそうにまくし立てられ、
あれよこれよとしてる間に、気付けばここまで来てしまった。
まあ、そろそろ次の目的地を求めていたから、悪いわけではないけど。
34: 以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします :2009/01/12(月) 22:48:58.44 ID:NuWxg/eZ0
(* - )「……だって、早くしないと、追ってが」
(* ∀゚)「……追って?」
Σ(;*゚ー゚) ハッ
(;*゚ワ゚)ノシ「ぁ……いやいやいや」
(;´・ω・`) 「いやいやいや?」
(*゚∀゚)「やいやいや」
ミ;゚Д゚彡「……なんなの?」
(*゚ー゚)「つまりなんでもないんですよっ」
よくわからない。
けどまあ、なりゆき任せの旅もわるくはないかと、
風のふくまま気のむくまま、僕らはふたたび山道を行く。
35: 以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします :2009/01/12(月) 22:51:55.13 ID:NuWxg/eZ0
振りむけば、あまりに広大な街なみが広がっている、人なんか一つの砂粒のようだ。
あそこに僕も居たのかなぁ、と、ちょっと信じられない思いだったりするけれど、
心のどこかにそれを名残惜しむぼくが居て、ちょっぴり不思議な感覚がこみあげてくる。
……また、いつか来れるといいな。
そう願いながら、僕はさよならの挨拶代わりにしっぽをふった。
あばよ、なんて口にしたら格好いい気がする、ニヒルに笑ってみたりしてね。
それはさておき、僕らはあらたな大地に思いはせ、目指すは大陸のはしっこ。
つまり海だ、再び船にゆられて大海原をわたり、別大陸への道をすすむ予定である、が。
しかし、こんかい僕らが目指そうとしているのは、ちょっとばかり特別な場所だ。
と言うのも、そこは魔法という存在を世にひろめた魔法使いたちが住むという、オム大陸。
ちなみに何がどう特別かというと、まずは色々な"いわく付き"の話がたくさんある事だ。
38: 以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします :2009/01/12(月) 22:54:19.46 ID:NuWxg/eZ0
ドラゴンと魔女の森があるだの、最強の武器トンファーを手にした者は英雄になるだの、
怪しいMADな研究所があるだの、おぬの仔がいるだのと、もはや訳のわからない物まで。
そしてその中に、つーちゃんが探していると言うすごい包丁もある。
……かもしれないそうだ。
はっきり言えば、机上のクーロンってやつで、ソースも何もない情報なんだけど。
その場所に"いわく話"が多いのは事実だ、というわけで、行ってみる事になった。
しかし、この大陸から向かうには、7X海域という気性の荒いうみを越えねばならぬ為、
おそらく出せる船も限られ、それなりに大きな港へ行く必要があるだろう、というわけで。
最初に訪れたヘイシ港から南西にある、もう一つの港町、エスパークを目指すことになった。
そっちならば、決められた航路をゆく定期船ではなく、依頼で運航するのもあるとかなんとか。
ミ,,゚Д゚彡「…そういえばショボさ、街でるとき、シャキンと何話してたんだ?」
(;´・ω・`) 「え? な、なんで…?」
40: 以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします :2009/01/12(月) 22:58:07.68 ID:NuWxg/eZ0
ミ,,゚Д゚彡「いや、なんか様子が変だったから」
(*゚∀゚)「確かに、ずいぶんとシリアスっぽかったな」
そういえば去り際、いろいろお世話になったし、文猫協会へと挨拶にむかったんだけど、
その時、ショボだけ会長さんに呼び出され、なにやら怪しい密談があったのだ。
(;´・ω・`) 「あ、あれは……その」チラ
( ^ω^)「いや、僕は知らないお?」コッチ ミンナ
(;´・ω・`) 「えと……そ、そう、路銀をもらったんだよ」
ミ,,゚Д゚彡「なんじゃそら」
(*゚ー゚)「通貨のことですぜ旦那」
協会は、季節の記録を保管するところである。
そして猫たちはそこに、書いたものを提供する立場なわけで……。
つまり、お礼にこれあげるよーみたいな感じで、いろいろくれるみたいだ。
42: 以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします :2009/01/12(月) 23:00:46.15 ID:NuWxg/eZ0
(´・ω・`) 「それに、僕らみたいな旅猫たちは、旅にかかる費用もあるから」
なかなか、結構な量をもらっているらしい。
なるほどねぇ、なんて聞いていたけど、そこでふと疑問。
( ^ω^)「ち、ちなみに……」
(´・ω・`)「うん?」
(;^ω^)「……僕にはないのかお?」
(;´・ω・`) 「え……だ、だってほら、ブーンは協会に所属してない
……その、野生の文猫だから……」
(;^ω^)「ないですよ…と?」
(;´・ω・`) 「う、うん……ごめん…」
まあ、そりゃそうだと納得はしつつも、ちょっぴり残念だった。
と言うのも、僕とて今までに書いてきた日記を、あそこに置いてきたんだ。
なのに、しかも同胞なのに、ハブかちくしょう、しょせん野良猫あつかいですか。
43: 以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします :2009/01/12(月) 23:03:05.45 ID:NuWxg/eZ0
( ;ω;)「ちくしょう……貧乏め…」
(*゚ー゚)「じゃあ私があげますよ! お背中をお借りしているお礼にば」
( ^ω^)「え、まじかお!?」
(*゚ー゚)「ええ、少ないですが、お小遣いにでも…!」
(;´・ω・`)「少ないって…え、それ金k……!?」
そう言って、しぃちゃんは僕の首から提げたポシェットに、チャリンと何かを入れた。
まいどありー、内心でつぶやく。
まあ、実のところ貰ったところで、いまいち使い道というのが浮かばないんだけど、
何にせよ、始めてもらった自分のおこづかい、それ自体がとてもうれしかった。
思わず足が軽くなってしまって、無意識に僕はからだを左右に揺らしてしまう、
そんな背中の上で、一緒にあたまを揺らしながら、しぃちゃんがくすくす笑っていた。
47: 以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします :2009/01/12(月) 23:04:46.24 ID:NuWxg/eZ0
∧∧
ミ*゚∀゚彡 ソレカラ ソレカラ
ミ,,,,,,,,,,ミ
紅季 29節
49: 以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします :2009/01/12(月) 23:09:08.47 ID:NuWxg/eZ0
ミ;゚Д゚彡「むう、余ってる船は一つだけか……」
(-@∀@)「でもこのボートはなぁ……異世界号はさ、たまにしか動かさないから不安なんだよね」
(;^ω^)「なんと不吉な」
(-@∀@)「整備もさぼってるしNE!」
(;*゚∀゚)「大丈夫かよそれ……駄目だろ異世界号……」
何だかいろんな意味で危なそうな話をしてる僕らは今、とある川辺の村に居た。
そして、目の前にあるでかい川が、芸大陸でいちばん大きな川ことゲイナー山河、
目指す町への最短ルートが、この急流を下っていくことだと聞き、やってきたのだ。
ミ,,゚Д゚彡「……でもそれしか無いんだろ?」
(-@∀@)「今だせる船はこれだけだね」
(*゚ー゚)「なら行くっきゃないですね!」
51: 以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします :2009/01/12(月) 23:11:28.58 ID:NuWxg/eZ0
(-@∀@)「危険を承知で、いくってのかい?」
(*゚ー゚)b「当然です!! ねえみなさん!?」イカザルヲ エナイ
(*゚∀゚)「そこまでプッシュされると弱いぜ」ショウガネエナ
ミ,,゚Д゚彡「よし、決まりだから!」
(-@∀@)「あいよ! みんな乗り込みな!!」
(;´・ω・`)「え、ええ…そんな…」
(;´・ω・`)「それでもし転覆なんてしたら……風邪ひいちゃうよ…」
(;*゚∀゚)「いや、まあ…風邪で済めばいいがな」アヒャー
( ^ω^)「もし溺れても、きっと網に引っかかって上げられるから大丈夫だお」
ミ;゚Д゚彡「……あみ?」ナンノコッチャ
54: 以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします :2009/01/12(月) 23:18:01.63 ID:NuWxg/eZ0
という訳で、僕らは小船にて身を寄せ合い、川くだりを始めた。
おおきく開けた川原から、影におおわれた山中のゆるやかな小川まですすむと、
やがて空を覆い隠すほどの木々に囲まれた水面は、葉の色につつまれ紅葉色。
反射した光がゆらゆらと僕らを照らす様は、心やすらぐ、そう、いわゆるマイナスイオン。
とまあ、最初のうちは流れも穏やかで、景色をながめて「わーい」してる余裕もあったけど、
しばらくすると、しずかな水面に白波があらわれて、船の揺れが強くなってきた。
そのただらぬ雰囲気に、自然と僕らの口数も減り、いような緊張感がただよう。
だんだん水音も激しさを増して、叩きつけるような低音が聞こえてくる、
(´;ω;`)「ひ、ひいいいいいい!!」
(*゚ー゚)「やだなにこれ、ちょー楽しくないですか?」wktk wktk
ふと隣を見れば、まさに正反対な反応をしめす一人と一匹。
もう反対を見ると、水しぶきが陽光をはねかえしてきらめいた。
55: 以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします :2009/01/12(月) 23:19:46.67 ID:NuWxg/eZ0
僕ははじっこ、水がはねて冷たい、この時季に濡れるのは辛いものがある。
けどしょうがないので我慢する、ちなみにフサとつーちゃんはまだ余裕の表情だった。
それもその筈、山育ちの僕らとしては、こういった川遊びには慣れているのだ。
ミ,,-Д-彡「よく浮かべた丸太に乗って遊んだっけ…」
(*゚∀゚)「んで、お前はよく落ちてたっけなぁ」
とはいえ、それにも限度という物があって、急流が激流にかわれば話は別だ。
いきなり視界がひらけたと思えば、小さな滝みたいな坂を下って肝がひえたり、
石の隙間をあわや衝突すれすれで抜けたり、足元からガリガリ音がすれば泣きたくもなる。
(#-@∀@)「こっちにだって、オーバースキルがあぁーーーーーる!!!」
(´;ω;`)「いやあああああああああああ!!」
(;゚ω゚)「だからしっぽを噛むnんぎゃああああああああああああ!!」イタイタイタイ!!
59: 以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします :2009/01/12(月) 23:24:13.07 ID:NuWxg/eZ0
ミ;゚Д゚彡「ちょ、前が危ない! 危ないから!!」ブツカルッテ!
(#-@∀@)「激流には激流では対抗できない、そう、オーバーヒート!
オーバーヒートだぁああああああああああああああああああああああ!!」
(;*゚∀゚)「……おい、なんか足下に水が溜まってきてるんだが」
(*゚ー゚)つ♭「こんな事もあろうかと、ひしゃくを用意してありますぜ!!」
(*゚∀゚)「よし、じゃあ掻きだせ」
(*゚ー゚)「イエス、ユアマジェスティ!」
やがて夕暮れになって、ようやく流れも穏やかになってきたころ。
夜闇のなかでの川くだりは流石に危険なので、野宿するべく、僕らは付近で船をおりた。
なんというか、息もたえだえ。
地面に足をつけると、その安定感と安心感になみだがちょちょぎれる、
ああ、生きてるってすばらしい、そう思わずには居られない船旅だった。
60: 以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします :2009/01/12(月) 23:28:01.18 ID:NuWxg/eZ0
それから薪をくべて火をおこして、船に積まれた食べものでお腹を満たし。
パチパチと爆ぜる焚き火の音と、遠くから響くせせらぎに耳をかたむけながら、
辺りをぼんやりと照らす灯りの中で、僕は布団にくるまり空をあおぎ見ていた。
空に浮かぶは森のかげ、その隙間にのぞくは雲にかくれた紅い月。
その輝きはどこかやさしく、幻想のほてりを冷ましていく。
(*゚∀゚)「…あと、どれくらいなんだ?」
(-@∀@)「半分くらいかな」
ミ;-Д-彡「またあんな目にあうのか……」ウンザリ
(-@∀@)「いや、そろそろ本流と合流するから、そこからは安全だよ」
(*゚ー゚)「うーん、物足りなそうですねぇ」
(;*゚∀゚)「いんだよ、それで」
64: 以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします :2009/01/12(月) 23:33:22.21 ID:NuWxg/eZ0
いろいろあったせいか、寝そべった体が重くて、今はもう動きたくない。
なんだか久しぶりに疲れを感じて、目をつぶればすぐに眠れそうだ。
ミ,,゚Д゚彡「そういえば、しぃはオムに行ったことあるの?」
(*゚ー゚)「ありますよー! これでも彼の秘境の地、ナギ渓谷以外は制覇してますゆえ!」
ミ,,゚Д゚彡「どんなとこなんだ?」
(*゚ー゚)「変なとこですねー」
ミ;゚Д゚彡「これまた随分と抽象的な」
なんだか興味深いはなしをしている、のは分かるんだけど。
既に僕はまどろみの中、目にうつる物すべてがぼんやりとしていく。
67: 以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします :2009/01/12(月) 23:35:19.97 ID:NuWxg/eZ0
(;*゚ -゚)「むぅ、表現が難しいんですけど……まず人種がちがいますし」
(*゚∀゚)「なんだそりゃ?」
(*゚ー゚)「そのまんまの意味ですよ、私たちとは見た目も全然ちがいますし」
(-@∀@)y-~~「ああ、自分も話には聞いてるよ、なんでも毛が頭にしか生えてないとか」
ミ;゚Д゚彡「毛が頭に………どんなだ…」
(-@∀@)y-「聞くだけでも何か怪しそうだから、魔法と科学の対立だけじゃなく、
そういう異端な部分でも、他大陸とはいろいろ確執があるみたいでね、
7X海域を理由にしてるけど、オム行きの定期船がないのも、そのせいらしいよ」
(*゚∀゚)「好きだねぇ、そういう差別化っていうのか?」
(-@∀@)y-「しょうがないさぁ、目に見えない部分だからこそ、人は不安になるんだから」
ミ,,゚Д゚彡「…世知辛いなぁ」
68: 以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします :2009/01/12(月) 23:40:45.53 ID:NuWxg/eZ0
(*゚∀゚)「その割りに、あんたは理解あるみたいだが?」
(-@∀@)y-「仕事柄ね、いろんな人とこうして危険な橋を渡っていると
いかに人同士の違いが些細なものか、嫌でも思い知らされるんでね」
(-@∀@)y-「…結局は、何だろうが、手を取り合った時にする事は一つだけなんだ、とさ」
ミ*゚Д゚彡(かっこいいから…)
(*゚ー゚)「そいえば、私の付き人が居るんですけど、ちょうどオム出身なんですよね……」
「へえ?」
「うーん、やっぱり、撒いてくるんじゃなかったわー」
「まい……」
「……」
……あ、やばい。
もうだめ、寝ます、おやすみなさい。
……ぐぅ。
70: 以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします :2009/01/12(月) 23:42:18.83 ID:NuWxg/eZ0
∧∧
ミ*゚∀゚彡 チョット ジカンハ ナガレテ
ミ,,,,,,,,,,ミ
紅季 31節
74: 以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします :2009/01/12(月) 23:47:45.87 ID:NuWxg/eZ0
あれからもう一つ夜をこえて、ようやくエスカップの町に着いた。
話に聞いたとおり、なかなか大きな町だけど、それに反して道行く人は少ない。
と言うのも、ここは町をあげての学問の町で、学者や研究者たちの憧れの地にして、
何ちゃらプロジェクトと呼ばれるけんきゅう所があることで、世界的にも有名なのだそうだ。
そしてこの町は魔法…つまり、精霊についてを調べている人がおおく集う場所でもあり、
魔法についてを調べているとなると、自然と発祥の地であるオムとつながりができる、
だからここに来れば、船を出してくれる人が必ず見つかるだろう、という話だ。
ミ,,゚Д゚彡「はー……そりゃすごいなエスターク」
(;´・ω・`)「エスパークだよ、それで、あのね」
(*゚∀゚)「んで、これからどうすっか?」
77: 以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします :2009/01/12(月) 23:51:31.87 ID:NuWxg/eZ0
着いたのはいいけど、行くあては無い僕らは、レンガ敷きの道で立ち止まる。
まずは町の中央にそびえる、一際大きな建物をめざしたが、特に何も見当たらない。
何が見当たらないって、人があまり居ないのだ。
石を綺麗につみあげた家が立ち並ぶ大通りにも、その先にあった広場にも、
たまに本を小脇にかかえて、忙しそうに過ぎ去る人が居るだけで、
この空気の中では、暇そうな僕らがとても空気よめてない存在らしい。
(;*゚ー゚)「困りましたねぇ、こう人が居ないんじゃ話をするにも」
(*゚∀゚)「だなぁ、どうしたもんかね」
ミ,,゚Д゚彡「やっぱり海に出るんだから、港に行けばいいんじゃないかな」
(;´・ω・`)「あ、それなんだけ」
( ^ω^)「おっお、じゃあ早速いってみるお!」
79: 以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします :2009/01/12(月) 23:55:19.13 ID:NuWxg/eZ0
風のってやってくる、潮の空気が久かたぶりの海を感じさせる。
しかし、あの時と違って今は紅季、そろそろ肌寒くなっていくころあいだ。
歩いて海をめざすにつれて、僕らはそれをひしひしと感じさせられる、
というか、さっきから海のほうからびゅうびゅう吹き抜ける、この風のせいだ。
まるで体温を奪われていくように、気付けば体をぶるるっと震わせていた。
::(* ∀ )::「……く」
ミ,,゚Д゚彡「どったのつーちゃん?」
(;*゚∀゚)「さみぃ……おいフサ」
ミ; Д 彡(はっ…!? まさか、刈られる!?)
ミ;゚Д゚彡「いやいや! ちょっと待ってそれ……」
「…は?」 Σミ;゚Д(*-∀-))ピト 「ふう」
81: 以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします :2009/01/12(月) 23:57:40.27 ID:NuWxg/eZ0
(*-∀-)「あー、あったけえ……」ヌクヌク
ミ; Д 彡(え、ちちち近っ!? あわ! あわわ!! あわわわわわ!)
(*゚∀゚)「やっぱこういう時は便利だな、お前は」アヒャヒャ
ミ*゚Д゚彡「そ、ソウカナー……」ハァハァ
(*-∀-)「……おい、言っておくが、変な勘違いすんなよ?
本当はいますぐ刈り取ってやりたい所だが、それも哀れだからな、
だから仕方なくこうしてるだけ、だかんな?」
ミ*゚Д゚彡「う、うん……」
ミ* Д 彡(……ど、どうしよう……幸せかも……)
83: 以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします :2009/01/13(火) 00:01:35.57 ID:Vr3Jtlc20
そんな二人の後を、ちょっと距離をおいて僕らは行く、そう、空気を読んだのだ。
しかしそこへ近寄ろうとするショボ、僕はとっさに蹴り飛ばしてやろうと思ったけど、
意外にも、しぃちゃんがそれを止めて、僕のほうへ引き寄せた。
( ^ω^)「お…」
(*゚ー゚)「私たちもひっついてよっか!」
(*´・ω・`)「よよ、喜んで!!」
あっけにとられてしぃちゃんの顔を見れば、僕に向けてウインクした。
変な子だけど、空気は読めるいい子なんだなぁと思った。
そういえば、歌で人を喜ばせるのが好きなんだ、とか言ってた気がする。
こうして奇妙な間をおいて、更に歩きつづける事しばらくして、
ようやく、たくさんの船が停泊している、港らしき場所へたどり着いた。
85: 以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします :2009/01/13(火) 00:08:36.20 ID:Vr3Jtlc20
海から吹いてくる風は、よりいっそう強くて寒い、僕らはさらに身を寄せる。
これも、例の海流と関係があるのかもしれない、まあそれはいいとして、
辺りをうかがって見るけれど、どうにも人の姿は見当たらない。
こんだけ寒けりゃ、それも当然か。
あるのは波打つ堤防と、ぐらぐら揺れては軋み声をあげる大きな船たち。
風向きをしらせる凧がはためき、遠くには旅人がたどりゆく道しるべこと灯台くらい。
しかし、その中に一つ、違和感を覚えた。
(*゚∀゚)「ん…? なあ、あれ、なんか見覚えがないか?」
ミ,,゚Д゚彡「どれ?」
(*゚∀゚)「あれ」
そう言って、つーちゃんが指すのは船の群れ、その中に異質なかたちの船がある。
船のそとがわにある水車、そしてマストの間にある変な黒いのと、明らかに他と違う船だ。
97: 以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします :2009/01/13(火) 00:58:48.15 ID:Vr3Jtlc20
どうしてこんな所に、と誰にともなく口にすると、ショボが待ちわびたように言う。
(;´・ω・`)「だ、だからね! さっきから言おうとしてたんだけど…!
確かヘイシ港でみんなと別れたとき、たしかあの人が行くって言ってたのは」
(*゚∀゚)「ここ、だったな、そういえば…」アヒャー
ミ*゚Д゚彡「って事は……あれは間違いなく、ズメイ号だろ? じゃあ……」
(*^ω^)「山さんが居るって事かお!!」
(*゚ー゚)「誰っすか?」ソレ
とか騒いでいると、その船の上でうごめく人影がみえた。
僕らはその姿に確信をおぼえて、おーいと声をはりあげ駆けていく。
すると、誰よりも早くしぃちゃんが前に飛びだし、手をふった。
(#*゚ワ゚)「そこのあなた!! そこで何してるんですか!! 泥棒はいけませんよーー!!」
98: 以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします :2009/01/13(火) 00:59:38.18 ID:Vr3Jtlc20
(;^ω^)「ちょ、何言ってんだお!」
(;*゚∀゚)「ええい、事情も知らずにとびだすな!」
(;*゚ー゚)「あ、ごめんなさい……ついノリで…」
( ;^^)「泥棒!? え、私ですか!?」
ミ,,゚Д゚彡「あ」
( ^^)「…おや?」
というわけで、僕らは山さんと再会を果たしたのであった。
そして、吹きさらしで立ち話もなんだ、と懐かしい船室へと案内された。
内装こそ、あの頃のおもかげがあるけど、冊子やら妙な機械やらに埋め尽くされて、
変な言い方をすれば、すっかり散らかりきっていた。
けど、やはり懐かしいものは懐かしい、すぐに僕らは打ち解けて、
あれからどうだの、今はどうだのと、会話に花をさかせた。
99: 以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします :2009/01/13(火) 01:00:35.01 ID:Vr3Jtlc20
| ^o^ |「おお うしなわれたモップが もどってきました」
ミ#゚Д゚彡「うがーーー!! まだモップ言うかこのクソ柱め!!」
| ^o^ |「さあ ゆかをふけ モップよ」
ミ#゚Д゚彡「うるせえ! ひっかいたろか!!」
(;^ω^)「そこは相変わらずかお……」
(*゚ー゚)「あれれ、幻聴かしら、あの柱が喋ってるように見える」
\(^o^)/「再会はじまた!」
(*゚∀゚)「この声も、なんか久しぶりだなぁ」
(´;ω;`)「でもまさか本当に会えるなんて……」グス
( ;^^)「ええ、私もうれしく思いますよ」
100: 以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします :2009/01/13(火) 01:02:53.99 ID:Vr3Jtlc20
ミ;゚Д゚彡「なあ、ところで山さん聞きたいんだけど、何でこの町はこんな人気がないんだ…?」
( ;^^)「ああ、それはみなさん自分のことで部屋に籠もりっきりだから…と言いますか、
ここは正確には人が住む町では無いんですよ、勤務先、に近いかもしれません」
(*゚∀゚)「ていうと、近くの村から通ってるってことか?」
( ^^)「ええ、その通りです」
ミ;゚Д゚彡「なんか面倒だね、何でそんなことに…」
( ^^)「えと、ここは以前は町ではなく、観測所のような集落だったと聞いてます」
( ^^)「それが時季が流れるにつれて、似たもの同士がじょじょに集まっていき、
いつしか"Paradise of Science and Study" 科学と学問の楽園…
なんて呼ばれるようになり、その二つのSの園、が町名の由来となったそうです」
ミ,,゚Д゚彡「なる、それがエスタークか」
(*゚ー゚)「いえ、エスカップですよ」
(;*゚∀゚)「エスパークだろ……ってあれ? ちがったか?」コンラン シテキタ
102: 以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします :2009/01/13(火) 01:05:57.50 ID:Vr3Jtlc20
( ^^)「ああ、それと、さっきの話ですが」
と、そこで山さんは、ちょっと真面目なかんじで話をきりだした。
さっきの話とは、ここに来た目的を話したことだろう。
勿論、ずうずうしくも期待をこめたので、これはその返事とも言える。
そして。
その日のうちに、エスパークの町から、一隻の船が、黒煙をあげて出航したのであった。
103: 以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします :2009/01/13(火) 01:07:27.11 ID:Vr3Jtlc20
∧∧
ミ*゚∀゚彡 ソレカラ ドッタノ
ミ,,,,,,,,,,ミ
紅季 41節
104: 以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします :2009/01/13(火) 01:09:10.93 ID:Vr3Jtlc20
<紅季 41節>
あれから幾たびの夜を見あげて、いくつもの陽の下を船にゆられて過ごした。
月は更にあかみを増して、その光に照らされた孤島もまた、夜の紅葉をつよめた。
夜の帳がくだった、夜の海のはるか先に、めざす大陸がある。
僕は甲板にて、風に吹かれながら彼方を見つめていた。
( ^ω^)「……オワタ君、居るかお?」
\(^o^)/「…オワタ」
( ^ω^)「あと、どれくらいで着くのかわかるかお?」
\(^o^)/「ケイソクチュウ…ケイソクチュウ……明日には、島が見えるよ」
( ^ω^)「そうかお……明日……」
106: 以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします :2009/01/13(火) 01:10:42.70 ID:Vr3Jtlc20
話に聞いていた通り、海はなかなかの荒れ模様で、船はたまにぐらぐら揺れる。
だけど、いい加減それにも慣れて、みんなはすやすやお休み中。
僕はなんとなく眠れなくて、ここのところ、こうして海を眺めるのが増えてきた。
気のせいか、身体が重い、そして背中がうずく。
ひげがピリピリして、たまに目がかすんでしまう。
どんよりと曇った空。
僕は、これをどこかで見たような気がする。
そう思うと、それだけで頭がずきずきと痛む。
胸が詰まるような息苦しさがあって、空気を吸うのも一苦労だ。
これは果たして、単に体調がわるいのだろうか、それとも―――――。
107: 以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします :2009/01/13(火) 01:12:48.28 ID:Vr3Jtlc20
その時、遠い空にある雲のおくが怪しく光った。
何だかとても不安にさせる、怪しい輝きだ。
僕はなんだか怖くなって、逃げるように甲板をあとにして、
何かに怯えるように丸まって、眠りについた。
そして、朝が来て、太陽が水平線の先からのぼって、更にのぼって真上にあがる頃。
( ^^)「みなさん、見えましたよ」
\(^o^)/「航海オワタ!」
ミ*゚Д゚彡「おお! あれがオムか!!」
(*゚∀゚)「やーれやれ、やっと着いたな」
108: 以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします :2009/01/13(火) 01:13:40.84 ID:Vr3Jtlc20
みんなが楽しそうに甲板から身をのりだす傍らで、ぼくは座り込んだ。
頭がぼうっとして、からだが熱くて、やけに息があがる。
何か、なにも視たくない、気がする。
(;´・ω・`)「あれ、ブーン……? なんか、大丈夫?」
(;*゚ー゚)「なんか、すごい顔してるよ?」
まずい、喉がからからで、返事もでき
109: 以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします :2009/01/13(火) 01:14:39.48 ID:Vr3Jtlc20
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112: 以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします :2009/01/13(火) 01:19:04.11 ID:Vr3Jtlc20
こうして僕は、たどり着いた大地をこの眼でみることなく。
高熱をだして倒れ、気を失ったまま、無くしたままで、上陸をしてしまった。
その三 → その四 につづく。
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