( ^ω^)が嫉妬するようです
- 81:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします。あと27,522秒 :2008/01/10(木) 22:24:08.06 ID:ZNuSlLAs0
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次の日の放課後、長岡に一緒に本屋に行こうと誘われたので、僕はそれに付き合うことになった。
どうも数学の参考書を買いたいらしい。
彼行きつけの書店に足を踏み入れると、インクの匂いがぶわっと鼻腔に染みついてきた。
長岡はこの匂いが好きだと言った。
なんとなく分かる気がする。精神安定効果が含まれていそうだ。
お目当ての参考書を見つけ出したら、長岡が今度は立ち読みがしたいと言いだした。
( ゚∀゚)「ちょっと読みたい本があるんだよ」
僕は先を進む長岡の背中を追いながら、人ごみをかきわけていく。
途中、長岡の影が見えなくなってしまい、へたすると迷いそうになったが、
なんとか彼の後ろ姿を発見し、ようやく彼が読みたいという書籍があるコーナーに立ち寄れた。
長岡は早々と目的の本を手に取っている。
何を読んでいるのか気になって覗いてみると、
ハードカバーの表紙には『ジャック・ザ・リッパー』と刻印されていた。
- 86:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします。あと27,490秒 :2008/01/10(木) 22:25:48.79 ID:ZNuSlLAs0
- ( ゚∀゚)「切り裂きジャックは、テッド・バンディと同じくらい有名なシリアルキラーだ」
長岡が厳かなトーンで囁いた。
殺人鬼について語る時の彼の瞳の奥には、爛々とした、純粋すぎる光が宿っている。
( ゚∀゚)「でも俺はあんまり好きじゃない。なんか頭弱そうだからな。
同じイギリスの連続殺人犯だったら、
毒の扱いに長けていたヤングのほうが学ぶところは多そうだよなぁ」
……果たして、殺人鬼から何を学ぶと言うのだろう。
そんな疑問が浮かんだが、口には出さなかった。面倒なのでとりあえず首を縦に振っておく。
( ゚∀゚)「そういえばさぁ、知ってるか?」
返事をする前に彼は続けた。
( ゚∀゚)「昨日、あの殺人鬼が七人目を殺したらしいぜ」
- 89:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします。あと27,417秒 :2008/01/10(木) 22:28:05.94 ID:ZNuSlLAs0
- はて、どういうことなのだろう。
今朝のニュース番組ではそんな報道はしていなかったはずなのに、
何で長岡が殺人事件があったことを知っているのか。
( ゚∀゚)「実はな、今日隣のクラスにいる奴から聞いたんだ。
そいつ、昨日の深夜に怪しい人物を見かけたんだって」
話を聞いてみると、いろいろとその生徒から入手した情報を教えてくれた。
犯人は男、それもかなり若い男性であり、二十歳前後ではないか。
体格は中肉中背。身体的特徴はいたって普通。
服装は暗かったのではっきりとはわからなかったが、厚手のジャンパーを着ていたのは間違いない。
眼鏡はかけていなかった、などなど。
それらの条件はすべて、完璧に合致していた。
彼の性格からして、この情報を僕以外の人間にも伝達するのは間違いない。
- 92:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします。あと27,204秒 :2008/01/10(木) 22:30:57.17 ID:ZNuSlLAs0
- ( ゚∀゚)「……でも該当者は多いよな、これって」
ううん、と長岡が唸るような声を漏らす。
( ゚∀゚)「ああ、そうだ。身長はおよそ百七十センチぐらいだって」
そう言って、長岡は僕の頭に手を置いた。
( ゚∀゚)「大体お前と同じくらいだな」
長岡にそうされた瞬間、僕はどきりとした。
唐突の行動だったのもあるが、心臓が大きく脈動して飛び出そうになってしまった。
体が奥底から熱くなって、手の平からは汗が噴き始めている。
無意識にさっと身をひいてしまったので、ひょっとすると、彼は訝しんだかもしれない。
( ゚∀゚)「警察に知れたらお前も疑われるぜ……? いや、冗談だけどな」
長岡は無邪気に笑った。僕も笑おうとしたが、焦りと緊張でうまく表情を作れなかった。
- 93:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします。あと26,849秒 :2008/01/10(木) 22:33:23.12 ID:ZNuSlLAs0
- 長岡は僕との一方的な会話を終えると、また読書に復帰した。
( ゚∀゚)「なあ、お前も読んでみるか? 何か感銘を受けるようなことがあるかもしれないぞ」
彼はすっと自分の読んでいた本を僕に差し出し、読むように勧めた。
あまり乗り気ではなかったが、長岡の頼みを断るわけにもいかないので、
とりあえず眼を走らせてみる。
( ゚∀゚)「思うんだけどよ、例の殺人鬼ってテッド・バンディっていうよりチカチーロっぽいよな。
被害者は多種多様に富んでいるからさ」
まったく聞き慣れない人名を並べられても、返答のしようがないのだけど。
( ゚∀゚)「まあ誰でも標的にされるってことだ。お前も気を付けろよ。奴は無差別だ」
長岡の警告に、僕はその心配はないと答えておいた。
犯人は、意外と身近なところにいるんだよ、と言ってやりたかった。
- 95:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします。あと26,675秒 :2008/01/10(木) 22:36:03.21 ID:ZNuSlLAs0
- 立ち読みを頃合のいいところで切り上げて、僕ら二人は再び帰路に立ち戻った。
彼はこの事件にどこまで本気なのだろう。
できることなら、彼には深く関わってほしくない。
その無限がごとく溢れ出る活力を、
何か他のことにぶつけてくれれば幸いなのだが、僕は自分からは言わなかった。
( ゚∀゚)「じゃあなー」
手を振る長岡と別れた後で、僕はつい先程読んだ本の内容を思い出した。
ジャック・ザ・リッパー。
彼は女性ばかりを狙い、殺した相手の身体を切り刻む、悪名高い連続猟奇殺人犯である。
殺害はほとんどが夜の出来事であり、人目のつかない隔絶された場所でそれは実行されていた。
犯行が行われた日にはいくつかの規則性があったと言われている。
犯人の正体は謎のベールに包まれていて、未だ明らかになっていない。
そこまでしか覚えていなかった。
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