( ^ω^)が嫉妬するようです

113:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします。あと25,852秒 :2008/01/10(木) 22:54:39.88 ID:ZNuSlLAs0
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ようやく火曜日になった。
あれほど楽しみにし、心待ちにしていた二連休も、早く終わってくれと願っていた。
億劫な月曜日は無心で過ごした。


寄り道もせず帰宅し、しばらく休憩を挟んだ後、僕はリビングの片隅に置かれた電話機の前に立ち、
連絡網の表を握りしめ長岡の電話番号を探していた。

番号を発見し、受話器を左耳に当て、いざボタンを押そうとしたところで、ふと、躊躇してしまった。

彼は僕と唯一親しい人間だ。
本当に彼を殺しても構わないのか。
長岡だけは傷つけてはならないと誓ったんじゃなかったのか。

思わず、僕は戸惑ってしまう。

ただ、そんなためらいは即座に消え失せた。
ほんの少しだけ残っていた良心よりも、憎しみに満ちた漆黒の感情のほうがずっと強かった。



116:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします。あと25,421秒 :2008/01/10(木) 22:56:39.83 ID:ZNuSlLAs0
電話機のパネルにデジタル表示された時刻を見ると、たった今午後の七時半をまわったばかりだった。
自分でも驚くほど落ち着いて発信ボタンを押し、長岡宅に電話をかけた。
呼び出し音が四回鳴ったところで、長岡が出る。


( ゚∀゚)『もしもし? あ、内藤? 
     どうしたんだよ、こんな時間に。学校から伝言でも回ってきてるのか?』


長岡の出席番号は僕の次なので、どうやら彼は連絡網の通達だと勘違いしたようだ。


( ^ω^)「……違うお。ちょっと会って相談したいことがあるんだお」

( ゚∀゚)『電話で片付くような話じゃないのか?』

( ^ω^)「いや、直接話がしたいんだお」


長岡の声は受話器越しにも分かるぐらい明朗だった。自然と胸が痛む。
でも、僕の頭はまるで独裁者から彼を殺すことを強固に命ぜられたかのように、
逃れられない使命感でいっぱいだった。
それは所詮、自己の正当化にすぎないのだとも分かっていた。



118:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします。あと25,508秒 :2008/01/10(木) 22:58:13.90 ID:ZNuSlLAs0
( ゚∀゚)『うーん、でもなぁ、俺これから約束があるんだよ』


僕はその台詞にはっとした。
その約束とはおそらく、いや間違いなく、僕が好意を寄せているあの人と交わしたものだろう。


( ^ω^)「だけど、今日どうしても話さなきゃならないんだお! お願いだお」

( ゚∀゚)「ううん……仕方ねぇな、分かったよ」


返事はあまり乗り気でないように聞こえたが、最終的に長岡は了解してくれた。
口調に疑いの念はこれっぽっちもこもっていなかった。
彼は本当に人がいい。
これから僕が彼に犯そうとしている地獄に等しき凶行を考えると、罪悪感を抱かずにはいられなかった。


( ^ω^)「とにかく、午後九時に学校の裏門の前に来てほしいお。待ってるお!」


そこまで強引に告げたところで、僕はがちゃりと受話器を叩きつけるように置いた。
静けさだけが充満する部屋で、その音がやけに大きく響いた。



121:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします。あと25,508秒 :2008/01/10(木) 23:00:51.68 ID:ZNuSlLAs0
約束の時間が来るまで、僕は何もせず、食事さえとらずに、ただただ俯いてソファに座っていた。

そうしているうちに時計の針が九の数字をさしだしたので、僕はやおら立ち上がり、
ゆっくりと自分の部屋へと向かった。

自室にある机の引き出しには、僕が今までに使用した、あるいは今後使う予定の凶器を隠してある。
それは包丁だったり、鈍器だったり、紐だったりした。

僕はその中から買ったばかりの新しいフォールディングナイフを選んだ。
このナイフは携帯性に優れていて、持ち運びに便利だ。外で殺人をするのには非常に都合がいい。
ナイフを茶色い革製のケースから抜き出し蛍光灯にかざすと、
傷一つない新品の刃は曇りなく銀に輝いて、心身共に魅了されそうなほど美しい。

僕はナイフをケースに戻し、着ていた上着の内側のポケットに入れた。


準備は終わった。
決意も固まった僕は颯爽と玄関へと足を運び、扉を開けて鍵をかけ、夜の闇へと溶けこんでいった。

彼の待つ学校へと歩いていく。
心臓が跳ねて刻むリズムは、平時よりもずばぬけて速い。

町はすっかり暗くなっている。

約束した時間というのは、少々遅れて行ったぐらいが、自分にとってはちょうどよかった。



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