( ^ω^)が嫉妬するようです
- 131:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします。あと24,884秒 :2008/01/10(木) 23:07:05.28 ID:ZNuSlLAs0
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おそらく午後十時に少し届かないぐらいだろうか、
僕が学校に到着した時、計算どおりに長岡は苛立つ様子もなく裏門前に立ちつくしていた。
( ^ω^)「ごめんだお、呼び出しておきながら遅れてしまって……」
僕は待ち合わせ時間に大幅に遅刻したことを詫びながら、懐中電灯片手に長岡へと近づき、
校庭に忍びこんで、ちょっと先まで行ったところで話をしようと提案する。
長岡はそれに賛成した。
僕たちは閉じられた裏門をよじ登り内部に侵入して、誰もいない夜のグラウンドを会話もなく歩いた。
静かな夜だった。
旧校舎付近に来た辺りで、長岡に「靴紐がほどけたからちょっと先に行っておいてくれ」と頼む。
これも作戦である。
その場にしゃがんで靴紐を結び直しているふりをした後、
前を進む長岡を追尾、その背中に密着し、ナイフのグリップ部分で彼の後頭部を全力をこめて殴りつけた。
- 134:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします。あと24,884秒 :2008/01/10(木) 23:09:12.20 ID:ZNuSlLAs0
- (;゚∀゚)「ぐっ……!」
油断しきっていた長岡は土の地面に力なく倒れた。
まだ意識はある。
混乱がとけないうちに、僕は彼の身体を無理やりに旧校舎内へと引きずり、舞台を整えた。
旧校舎はもう大分昔から使用されておらず、ほとんど廃墟同然と化していた。
現代ではめったに見られない完全なる木造建築で、
板張りの廊下の床は、ところどころ積年の劣化からか腐食している。
薄汚れた壁からは、古臭いカビた匂いがする。
僕は長岡を適当な教室に連れこみ、ほこりをかぶった崩れる寸前の床に放り出して、睨むように俯瞰した。
教室には机も椅子もなく、がらんどうだった。
この場所が人の訪問を享受するのは、果たして何年、何十年ぶりなのだろうか。
(;゚∀゚)「おいっ、お前……何してんだよ!?」
僕の右手に握られた一振りのナイフを見つめながら長岡が言う。
眼は暗順応しきっていて、彼の表情がよく読み取れる。
彼は動揺を隠せないでいた。同時に、得体の知れない恐怖に怯えているように見える。
- 141:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします。あと24,884秒 :2008/01/10(木) 23:13:10.36 ID:ZNuSlLAs0
- ( ^ω^)「――――すまないお」
僕の中で何かが弾けた。
心の奥底をうつろっていた影が実体化していく。
こうなってしまったら、僕がどんなに彼に対して後ろめたい感情を抱き、また哀切の意を示そうとしても、
完膚なきまでに殺害しなくては気が治まらない。
ナイフを揺らしながら、長岡へと一歩一歩、着実に歩み寄っていく。
(;゚∀゚)「おっ、おい……なぁ、冗談だろ……? 内藤……?」
長岡は事情をようやく呑みこんだようだ。
怖気の正体と、僕の正体が、戦慄が走ったようにいっぺんに理解できたに違いない。
( ^ω^)「そうだお。僕が世間で評判の『二十一世紀のテッド・バンディ』なんだお」
長岡の顔は恐々としていてひきつっていた。冷や汗が額から首筋にかけて流れ落ちている。
ああ、僕はこれから、彼を殺してしまうんだ。
何度も何度も、何度でも尽きることなく、胸の内で彼にあてる魂の謝罪の弁を反芻した。
- 144:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします。あと24,435秒 :2008/01/10(木) 23:15:58.85 ID:ZNuSlLAs0
- (;゚∀゚)「ひっ……」
僕の告白を受けて、長岡は絶句していた。
普段の彼の活発な姿は見る影もなく、今はただ恐れおののき、がたがたと震えているのみである。
僕の手の中で鈍色に輝くナイフは、その鋭い切っ先をまっすぐに長岡の心臓部へと向けている。
(;゚∀゚)「まっ、待て!」
長岡が精一杯の声を発した。
彼は床に尻をつけたまま後ずさりし、手で僕を制しながら懇願の眼差しで見据えてくる。
僕は押し寄せてくる良心の呵責に苦しんだ。
( ^ω^)「きっと僕は気づかなかったんだお……九月までは委員会の仕事があったから……」
(;゚∀゚)「何言ってるんだよ、お前……やめろ、やめるんだ!」
だけど、身体は言うことを聞かない。
哀惜の念は絶えない。
僕の瞳には闇が落ちていた。
脳は麻痺してしまったみたいに、激しく正常さを欠いている。
- 150:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします。あと24,543秒 :2008/01/10(木) 23:18:40.12 ID:ZNuSlLAs0
- 最初に人を殺した時、あれは五月の終わりで、相手は若い男性だった。
夜、なんとなく出歩いていたら、突発的に誰かを殺さなくてはならないという強迫観念に襲われて、
細い路地で遭遇した男性の首を無我夢中で締めつけ、殺してしまった。
それ以来、僕は殺人衝動という、恐ろしき怪物を自分の中に飼うことになった。
次に殺した相手は年老いた女性だった。
六月末、僕は散歩中の女性を狙い、人の気配がすっかりなくなったところで、
彼女を後ろから用意していたアクリル製の紐で絞首した。
七月。三人目は若い女性だった。
廃墟じみたビルの内部に連れ込み、小型ハンマーを勢いよく頭に振り下ろした。
そうすると、割れた頭蓋から出来そこないのチリソースビーンズみたいな血混じりの脳漿がこぼれだした。
四人目、五人目は、どちらも小学生とおぼしき女の子で、八月の、夏休み真っ最中の頃だった。
塾帰りと推定される女の子を、二週続けてナイフで胸を刺して殺害した。
初めての刃物を用いた殺人だった。
六人目は九月の半ば頃。殺したのは中年男性。
通り魔のようにふらふらと近寄り、懐に隠していた出刃包丁で切りつけ、遺体は近くの林に捨てた。
七人目はつい最近のことで、殺したのは若い女性だった。人を切り刻むという、猟奇的な殺し方であった。
そして今、僕は生涯初めて、殺したくて人を、長岡を殺すのだ。
長岡の左胸に照準を合わせ、ナイフを突き刺そうとする。
- 153:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします。あと23,977秒 :2008/01/10(木) 23:20:41.86 ID:ZNuSlLAs0
- その時だった。
誰もいないはずのこの場所に、僕と長岡以外の声が唐突に聴こえてきた。
「待って!!」
僕はその叫び声に全身に電流が疾走したがごとく反応し、脊髄反射的に振りかえった。
まず真っ先に思ったのは、眩しい、ということ。
そこには、僕のよく知る一人のクラスメイトが、大量のライトから放たれる光をバックにして立っていた。
(;^ω^)「どういうこと……だお。どうして……」
不測の事態に、僕はしばしの間軽い錯乱状態に陥ってしまった。
冷静さを取り戻して、突然の、まったくの想定外である訪問者たちに一瞥を投げかける。
ライトを構えているのは、警察服に身を包んだ十数人の男性たちだった。
その集団の前で僕に毅然とした眼差しを向けているのは、
あの例の、此度の殺害計画の引き金となった女子生徒であった。
つまり、僕が恋い焦がれている相手である。
- 156:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします。あと24,354秒 :2008/01/10(木) 23:23:33.15 ID:ZNuSlLAs0
- そう、僕は確かに彼女に惹かれていた。
惹かれて当然だった。
だって彼女は――――僕とあまりにも近かったから。
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