少しだけ昔、あるところに、小さなパン屋がありました。 (´・ω・`) 「ふー、疲れた。……今日もお客さん、来なかったな」 狭くて、暗い、路地裏。 一見、パン屋とはわからない寂れた外観。この店に寄ってくるのは、ショボンから、余ったパンを与えられる、数匹の野良猫だけです。 (´・ω・`) 「きっと、僕の腕がまだまだ未熟なんだ」 まだまだ、歳の若い店主、ショボン。 彼は、パンを作ることは、得意でしたが、お店を繁盛させることは苦手でした。 なので、この店に閑古鳥が鳴く原因は、自分の実力のせいだと、ショボンはいつも思っていました。 |
ある日、ショボンは、あることを思いつきました。 (´・ω・`) 「今までにないような、新しいパンを焼こう。そうすれば、お客さんが来てくれるかもしれないぞ!」 ショボンは、真っ白な調理服に着替え、ちょっと頭の高いコック帽をかぶります。 そして、ショボンは、せっせとパンを焼く作業を始めるのでした。 |
(´・ω・`)ショボンが不思議なパンを焼くようです |
二時間後、とうとうパンが焼きあがりました。 チーン、という心地よい音とともに、大きな竈の扉が開かれます。 (´・ω・`) 「どれどれ……」 ( ^ω^) ホカホカ (´・ω・`) 「やった! うまくいったぞ!!」 ( ^ω^) 「それは良かったお!」 (´・ω・`) 「ああ! やった! やった!」 ( ^ω^) 「やったお! やったお!」 (´・ω・`) 「……」 ( ^ω^) 「……」 (´・ω・`) 「さて、試食してみるか」 ( ^ω^) 「うわ、待てなにをs」 なんとも奇妙なことです。 なんと、ショボンが焼き上げたパンは、自由に喋ることができたのです。 (´・ω・`) 「よし、ひとまず食べるのはやめよう」 ( ^ω^) 「ご理解感謝するお」 (´・ω・`) 「質問しようか。君は、なんで喋れるんだい?」 ( ^ω^) 「VIPクオリティ、って言葉知ってるかお?」 (´・ω・`) 「ウ゛ィップ? なんだい、それ?」 ( ^ω^) 「新参乙wwww 半年ROMれ」 (´・ω・`) 「えーと、ジャムとナイフはどこにあったかな……」 ( ^ω^) 「正直スマンカッタ」 ちょっと生意気な、このパン。 ショボンは、名前をつけることにしました。 |
(´・ω・`) 「しかし、名前をつけるには特徴がほしいね……。ソーセージをぶっさしてみるか」 (;^ω^) 「ちょwww おまwww 無理はやめ、やめる……アーッ!」 (´・ω・`) 「よし、完成」 ⊂( ^ω^)⊃ 「……。両側から突き出たソーセージが、ちょっと格好いいお」 (´・ω・`) 「まるで、両手を広げてるみたいだね。今にも、大空を飛びそうだ」 ⊂( ^ω^)⊃ 「!! まじかお! 空も飛べるのかお!? じゃあ、いっちょ飛んでみるお!」 (´・ω・`) 「よし、いくんだ!」 ⊂(*^ω^)⊃ ブーン!! 威勢の良い掛け声とともに、パンは大空へ飛び立ちました。 ……そんなわけがなく、パンは微動だにしません。 ⊂(;^ω^)⊃ 「あれ、どうしてだお?」 (´・ω・`) 「まあ、しょうがないよ。人間やパンは、自力では飛べないもの」 ⊂(;^ω^)⊃ 「そうなのかお……?」 (´・ω・`) 「でも、大丈夫さ。君は飛べるよ。なんたって、僕が腕によりをかけた、最高のパンだからね」 ⊂(*^ω^)⊃ 「ほ、本当かお!? じゃあ、もっと頑張ってみるお!! 僕は大空を飛ぶんだお!!」 ⊂(*^ω^)⊃ ブーン! ブーン! ブーン! (´・ω・`) 「ふふっ、おかしなパンだ」 何度も、何度も、「ブーン」と叫び続ける姿。 それを見て、不思議なことにショボンは、いつかブーンは空を飛べるんだろうな、と思いました。 そして、ショボンはこのパンを「ブーン」と名づけることにしました。 それからというもの、この店は徐々に活気付き始めました。 それは、ある一枚のチラシがきっかけでした。 |
『やあ (´・ω・`) ようこそ、バーボンハウスへ。 このクロワッサンはサービスだから、よく噛んで食べて、落ち着いて欲しい。 うん、「パン屋」なんだ。済まない。 ア○パ○マンの顔も、リサイクルって言うしね、謝って許してもらおうとも思っていない。 でも、この店を訪れたとき、君は、きっと今まで見たことのない 「喋るパン」みたいなものを見られると思う。 殺伐とした世の中で、そういうドキドキを忘れないで欲しい、 そして、「この店がもっと繁盛してほしい」そう思って このチラシを配ってるんだ。 じゃあ、注文を聞こうか。 ショボン 』 この一風変わった内容と、「喋るパン」という物珍しさから、お客さんが増えるようになったのです。 一旦広がった噂は、更に人から人へと伝わり、また更に……。以前は山のように余ったパンも、今では不足するほどです。 気がつけば、ショボンの店はこの町で一番のパン屋となっていました。 しかし、人気とは常に移り変わるものです。 数ヶ月たったころには、新たにこの町にやってきた「ひろゆき・ベーカリー」に客を奪われてしまったのです。 (´・ω・`) 「……」 ⊂( ^ω^)⊃ 「……お客さん、来ないおね」 (´・ω・`) 「……しょぼーん」 ⊂(;^ω^)⊃ 「き、気にすることないお! きっと今に、お客さんは集まるお!」 そんなブーンの励ましもあってか、ショボンのお店は以前ほどではないものの、ある程度の活気は感じられるようになりました。 しかし、大量に刷ったチラシは高い高いお山となっていました。 そんなある日、ショボンはあることに気がつきました。 (;´・ω・`) 「……なんてことだ」 ⊂( ^ω^)二 「どうしたんだお?」 (;´・ω・`) 「ブーン、ソーセージの片方の先っぽ、どうしたんだい?」 ⊂( ^ω^)二 「お?」 ⊂( ^ω^)二 ジー ⊂(^ω^)二 (´・ω・`) 「これは困ったな。お客に、イタズラでもされたのか?」 ⊂( ^ω^)二 「それは無いと思うお。ここのお客さんは、みんな優しいお」 (´・ω・`) 「ふむ……」 結局、原因はわかりませんでした。 しょうがないので、ショボンは以前のソーセージを抜き、新しくチョリソーをブーンに突っ込んでやりました。 ⊂二( ^ω^)二⊃ 「おー、前よりも強そうだお!」 (´・ω・`) 「ああ、この腕なら、より高く空を飛べそうな気がしないかい?」 ⊂二(*^ω^)二⊃ 「夢が広がりんぐ!!」 ブーンの両腕は、以前よりも逞しく、また一歩空に近づいたような気がしました。 心なしか、大量にあったチラシも少しだけ減ったような気がしました。 それからのショボンのお店は、大変な日々を送っていました。 あるときは、全くお客さんはきません。またあるときは、それが嘘のようにお客さんがたくさんやってきます。 その状態が、ここ数ヶ月続いているのです。 ショボンは、材料がもったいないので、お客が来てからパンを焼くようになりました。 (´・ω・`) (不思議だな……) ショボンは、このことを不思議に思っていました。 しかし、いつもギリギリの生活を送っていたので、いつしかそのことは気にしないようになりました。 もう一つ、不思議なことがありました。 それは、ブーンのことです。 (´・ω・`) 「またか……」 二( ^ω^)二 「寝てる間に、減ってたみたいだお」 (´・ω・`) 「君も寝るんだね」 二( ^ω^)二 「自慢のチョリソーも、これでは役立たずだお。取り替えてくれお」 (´・ω・`) 「了解」 ブーンの体は周期的に、一部分が欠けるようになっていました。 その度に、ショボンは綺麗にしてあげます。しかし、日がたつと必ずどこか欠けているのでした。 (´・ω・`) (どこの悪がきのイタズラかね……) 奇妙なことにショボンは、ブーンの体が欠けるときの現場を見たことがありませんでした。 なので、いつしか犯人を、その場でとっ捕まえようと考えていました。 そして、そのときはやってきました。 それはショボンが、ブーンをさっそく綺麗にした、その日の晩でした。 (´・ω-`) 「おや……?」 最近、お客さんも入っておらず、ついつい空腹から、ショボンは目を覚ましてしまいました。 すると、夜中だというのに、誰もいないはずの厨房から物音がするのです。 唯一いるとしたら、それはパンのブーンだけです。しかし、彼はパンです。動けるはずがありません。 (´・ω・`) 「こいつだな、犯人は」 ショボンは、ピン、ときました。 そして、フライパンを両手で抱きかかえると、足音を立てずに厨房へと向かいました。 薄暗い厨房に、人影はありませんでした。 そのかわり、それがいました。一匹の野良猫が。 ( ФωФ) 「……」 その猫は、ただ静かにブーンを見つめていました。 その眼は、暗闇の中、煌々と光を放っています。 (´・ω・`) (猫か。ちょっと厄介だな) 野良猫は危機的状況に敏感で、非常にすばしっこいものです。 ショボンは、しばらく様子を見ることにしました。 |
( ФωФ) 「……ニャオ」 その猫はブーンに噛み付くわけでもなく、襲い掛かるわけでもなく。ただ、ブーンに向かって鳴いているだけでした。 すると、どうでしょう。 突然その猫は、ブーンの横に置かれたチラシを、十数枚口に咥えました。 そして、そっとブーンのいる台へ飛び乗ると、尻尾を使いブーンを背中へと乗せたのです。 ( ФωФ) 「ニャー」 ⊂二( ^ω^)二⊃ 「ありがとうだお。さあ、今日も行くかお」 (´・ω・`) (今日も……?) そして、ブーンと野良猫は、そっと窓から出て行きました。 ブーンの言葉に引っ掛かりを感じたショボンは、ばれないように後を追うことにしました。 一匹の猫と一つのパンは、真夜中の街を馴れた足取りで、スイスイと進んでいきます。 (´・ω・`) (一体、なにをしているんだろう?) ショボンはあれこれと思索しながら、彼らの背中を追っていきます。 でもそれは、ショボンに隠しつつやっているのだから、きっと良くないことなのだろう、とショボンは考えていました。 辿り着いた先は、ちょっと裕福な人たちが住む住宅街でした。 もちろん、真夜中ですので明かりを灯している家は、ほとんどありません。 (´・ω・`) (……) ( ФωФ) 「……」 ( ^ω^) 「……」 しばらく、沈黙が続きました。 その沈黙は、どれくらいの長さだったのでしょうか。 きっと短かったはずですが、ショボンにとっては、とても長く感じられました。 それは、突然の出来事でした。 少し待たされて、ぼーっとしていたショボンでしたが、いきなりの甲高い音に意識をはっきりさせられました。 ( ФωФ) 「アオーーーーーーン!!」 長い、長い。 高い、高い。 そして、どこまででも届いてしまいそうな、響きのある鳴き声。 そして、それが合図になったかのように、あちこちの家から光が漏れ始めました。 次々に開かれる、玄関。そこから出てくる人々はみんな、ブーンと猫のもとへと寄ってくるのです。 「あら、ひさしぶりね」 「もうこんな時期かしら」 「相変わらず、可愛い猫ちゃんと、素敵なパンね」 ( ФωФ) 「ニャオ」 (*^ω^) 「おっおっお!」 不思議な光景でした。 一匹の猫がビラを咥えながら、人々の間を行き来します。 人々はそのビラを手に取り、「明日行くわね」と、猫に向かってウインクするのです。 |
(;^ω^) 「みなさん、明日はサービスデイですおー!! 是非、是非バーボン・ハウスにいらしてくださいおー!」 ブーンも、負けじと声を張り上げます。 猫の背中に乗りながら、人々に向かって、一生懸命に……ショボンのお店を、アピールするのです。 (´・ω・`) 「……」 (´・ω・`) 「……!」 ショボンは、気づきました。 お客さんが全くこない時期、急にお店が繁盛する時期。それが何故、交互にやってくるのかを。 最近は、全く客はやってきていませんでした。 (´・ω・`) (明日は……きっと、たくさんのお客さんが来るのだろう) ショボンは、発見を、確信へと変えました。 そして……。 (´;ω;`) 「ブーン、ありがとう……」 静かに、涙を流しました。 一粒、口の中に流れ込んだ涙は、不思議と温かいものでした。 そして急いで店にもどり、翌日の準備を始めることにしました。 (;´・ω・`) 「……」 ショボンは、額に汗を浮かべながら、一生懸命に作業をこなしました。 そして日が昇る頃には、今までにないくらい良い仕上がりのパン達が並べられました。 (´・ω・`) 「これで、よし。……ん?」 店の外から、物音が聞こえます。 恐らく、ブーンと猫が戻ってきたのでしょう。 ショボンは、ブーンの心遣いを無下にしてはいけないと思い、そっと身を隠しました。 それから、十分が経ちました。 しかし、ブーンの姿は未だ厨房に現れません。 疑問に思ったショボンは、外へ様子を見に行くことにしました。 ( ФωФ) 「……」 ⊂二( ^ω^)二⊃ 「……」 そこにいたのは、やはりブーンと野良猫でした。どうやら、三匹の子猫もいるようです。 猫とブーンは、お互いを見つめています。 そして、猫がゆっくりとブーンに近づき――ブーンの片腕を、その牙で、食いちぎりました。 (;´・ω・`) 「なにをするんだ!!」 ( ФωФ) 「!!」 ⊂二(;^ω^)二 「……!!」 ショボンは、思わず叫んでしまいました。 そして、すばやくブーンに近づき、そっと抱きかかえます。 (#´・ω・`) 「 いつも、ブーンを傷つけていたのは、お前だったのか!!」 (#ФωФ) 「フーッ!」 ショボンが、思わず片手をふりあげた、そのとき―― ブーンが、大声で、叫びました。 ⊂二(#^ω^)二 「やめるお!!」 |
(;´・ω・`) 「!?」 ⊂二(#^ω^)二 「腕を、下げるお!!」 (;´・ω・`) 「……けど、現にその猫は、ブーンの腕を」 ⊂二(;^ω^)二 「……」 (;´・ω・`) 「……」 ⊂二( ´ω`)二 「これには、わけがあるんだお……」 ブーンは、ゆっくりと、ことの顛末を話し始めました。 言葉がおかしかったり、ろれつが回らなかったりしながらも、ブーンは一生懸命喋りました。 ⊂二( ^ω^)二 「僕は、パンだお。ただの、パンだお」 (´・ω・`) 「いや、君は特別だ」 ⊂二( ^ω^)二 「ちょっと喋れるだけだお。本当なら他のパンと同じ、食べられる運命だったんだお」 (´・ω・`) 「……」 ⊂二( ^ω^)二 「でも、そんな僕に、情けをかけてくれた人がいたお」 ⊂二( ;ω^)二 「生意気な僕に、名前をつけてくれた人がいたお」 ⊂二( ;ω;)二 「ただのパンである僕に、大空を飛べると言ってくれた人がいたお」 (´・ω・`) 「……」 ⊂二( ;ω;)二 「そんな人に、僕の親に、恩返しをしたいと思ったお。だから、ブーン目当てに、客が集まったときは、すごい嬉しかったお。 でも、すぐにブーンは飽きられたお。すごく悔しかったお。なにか、できることはないかと考えたお。 だけど、僕はただのパン。一人じゃ、歩くことさえできない。……そんなときに、助けてくれたのが、この猫だったお」 ブーンは野良猫に顔を向け、顔をふきふき、ニコリと笑います。 野良猫はそれに答えるように、一声「ニャー」と鳴きました。 ⊂二( ^ω^)二 「僕を背中に乗せ、チラシを口に咥え、住宅街に向かったお。ちょっとばかりお金を持ってそうな、住宅街に。 みんな、優しかったお。そしていつしか、僕たちが来るのがお決まりにのようになっていたお。 みんな、ちゃんと店に来てくれたお。そんなとき僕の中が、すごくホカホカになっていったお!!」 (´・ω・`) 「……ああ。でも、どうして? 何故、ブーンの体を、その猫に与えたんだ?」 ショボンが質問すると、どうでしょう。 それまで、順調に話していたブーンの口調に、少し陰りが生じました。 ⊂二( ´ω`)二 「その猫は、三匹の子猫を育てているんだお。でも可哀想なことに、野良猫だから全員を満足に育てるのは難しいんだお。 僕は子猫たちが栄養をとれるように、体を与えたお。 その交換条件として、いつも住宅街に行くのを手伝ってくれたんだお」 (´・ω・`) 「そうだったのか……」 ショボンは、その猫の頭をそっと撫でました。 そして一言、「ありがとう」と言いました。 (´・ω・`) 「でも、ブーン。その猫たちだってやろうと思えば、いくらでもゴミやら残飯やらを漁れたんじゃないかい? 」 ⊂二( ´ω`)二 「……」 (´・ω・`) 「わざわざ、君の体を傷つける必要は、無かったんじゃないのかい?」 ⊂二( ´ω`)二 「その子猫たちは、ここで生まれ、ここで育ったらしいお。 子猫たちが生まれたときは、たくさんの食べ物があったらしいお。それは、とてもおいしくて……、 いつしか、子猫たちはその味しか食べれなくなったらしいお」 (´・ω・`) 「……人間のエゴってやつだね。勝手に人間の食べ物を与え、動物の生態系を狂わす」 そして子猫たちは、ブーンの一部を、ブーンの体を求め始めた。 ブーンを。パンである、ブーンを。ショボンが作った、ブーンを。 (´・ω・`) 「ブーンを……?」 ショボンはそこで、はっ、と息を呑みこみました。 あるものしか食べない、子猫たち。そして、「パン」であるブーンを食べる子猫たち。 (;´・ω・`) 「もしかして、その食べ物っていうのは――」 ⊂二( ´ω`)二 「……ショボンが作った、パンだお」 (;´・ω・`) 「……!!」 ショボンの、子供の頃からの夢。 それはパン屋を開き、毎日パンを焼き、いつしか有名になり、世界中を巡るパン屋さんになること。 その夢を小さな紙に書き、つい最近までいつも肌身離さず持ってました。いつしか、無くなっていましたが。 そしてショボンは、一生懸命努力してパン屋を開きました。……しかし、有名になるどころか、客は来ませんでした。 焼いても、焼いても、減らないパン。焼くほど、焼くほど、募る不安感。 いつしかショボンは、パンを焼くことを恐れ始めていました。店をたたもうとさえ考えていました。 そんなとき、初めての常連ができたのです。 初めは、同情からでした。飢えに耐え切れず、か細く鳴き続ける、その声に対しての。 そして、その常連は、初めてショボンのパンを、おかわりまでしてくれました。 それが、すごい嬉しくて、嬉しくて……いつしか、店が流行るまで、ショボンは、彼らにパンを与え続けたのです。 ショボンのパンを催促する、その鳴き声が愛おしくて。 (´・ω・`) 「僕が、僕が彼らをおかしくさせた?」 (´;ω・`) 「本来なら、この場を離れても生き抜けるのに。僕が、彼らを縛った?」 (´;ω;`) 「良かれと思って。僕は、良かれと思って!」 結果、どうなったのでしょう。 猫たちは、パンだけを求めました。ショボンは、パンがあまらないように焼き続けました。 猫たちは、飢えに飢えを重ねました。もしかしたら、飢餓に耐えられず、死んでしまった子猫もいるかもしれません。 そして……ブーンが、自分の体を、彼らに与えるようになりました。 (´;ω;`) (……) ショボンは、地面に膝をつき、腕をつき、頭をつけます。 そして、猫とブーンに向かって叫びました。 (´;ω;`) 「本当に、ごめんなさい!!」 ( ФωФ) 「……」 ⊂二( ^ω^)二 「……」 沈黙。長い、長い、沈黙。 そして、猫が一声鳴きました。 ( ФωФ) 「ニャー」 ⊂二( ^ω^)二 「お?」 ( ФωФ) 「ニャーゴ」 ⊂二( ^ω^)二 「おお!」 猫とブーンは、会話をします。 ショボンには、理解できないながらも、一生懸命耳を傾けました。 ⊂二( ^ω^)二 「猫さん、ありがとうだお!」 ( ФωФ) 「ニャー」 そして、猫は子猫を連れ、路地裏へと消えていきました。 (´・ω・`) 「……ブーン、彼はなんて?」 ⊂二( ^ω^)二 「自分たちは、あなたに感謝はすれど、謝られる覚えはない、と言っていたお」 (´・ω・`) 「でも……」 ⊂二( ^ω^)二 「確かに、猫たちは生きるのが大変になったお。でも……、あのときパンを与えられなければ、死んでいたかもしれないお」 (´・ω・`) 「……」 ⊂二( ´ω`)二 「自然は日々、変化するお。それは、残念なことに、人間のせいかもしれないお……」 ⊂二( ^ω^)二 「でも! その自然に対応して、改善することができるのも、人間に違いないお!」 (´・ω・`) 「……!」 ⊂二( ^ω^)二 「だから、未来を考えるお! もっともっとパンを焼くお! そして、世界中を旅するほどの有名人になって、それから……」 (´・ω・`) 「ああ、約束するよ」 ⊂二( ^ω^)二 「ktkr!! ショボンならきっとできるお!」 (´・ω・`) 「ブーン。初めて、僕の名前を呼んでくれたね」 ⊂二(*^ω^)二 「ちょwwww テラハズカシスwwwww」 (´・ω・`) 「僕が夢を叶えたら、きっとそのときには、ブーンも大空を飛んでいるよ」 ⊂二( ^ω^)二 「当たり前だお!だって、僕はブーンだお! ブーン!!」 そのとき、ブーンが空を飛びました。 物凄い速さで、どんどん昇っていきます。 (;´・ω・`) 「ブーン!!」 ⊂二(*^ω^)二 「ぼ、僕、空を飛んでるお!! 空を――」 (;´・ω・`) 「違う! ブーン! カラスだ! カラスに咥えられてるんだ!!」 ⊂二( ^ω^)二 「え――?」 そうです。ブーンはカラスに咥えられ、空を飛んでいたのです。 そして、ちょっとした拍子で、カラスはブーンを離してしまいました。 落ちる。 落ちる。 落ちる。 ブーンは上昇したのより、速いスピードで落下します。 そして、地面に不時着しました。さすがパンです。なんとか形を保ちました。 |
しかし――着地した場所が最悪でした。 (;´・ω・`) 「――ン! ―る―だ、ブーン! く―まが、きてる!!」 ショボンの瞳に映る光景は、とてもゆっくりと動いていました。 そして―― ⊂二( ^ω^)二 「びっくりしたお。あれ? ショb――」 ――――――――。 ショボンの、瞳の内の世界は、動きを止めました。 その道路は、車どおりの多い場所でした。 その中をショボンは、クラクションを鳴らされながら、かきわけ進んでいきます。 涙を流しながら、ぼやけた視界で、地面を見回しながら、地べたを這い蹲りながら。 跡を。ひたすら、跡を探します。 たくさんの人に、怒鳴られなても、ある人に胸倉を掴まれても、決して探すのをやめません。 そして、やっと見つけたそれは…… もはや、原形を保ってはいませんでした。 ショボンは、それを両手にすくい、大事そうに包み、ゆっくり、ゆっくり、歩きます。 顔中を濡らし、震える唇を噛み締め、両手の中に粒を垂らしながら、 ゆっくり、ゆっくり、歩きます。 ゆっくり、ゆっくり……。 ……。 |
店に戻ったショボンは、しくしくと、一人で泣いていました。 店の前で並んでいる人たちも放っておいて、ショボンは泣き続けます。 昨日までこの台の上で、笑い、喋り、喜んでいた、ブーン。 なのに今はなぜか、潰れ、崩れ、喋らない、…… ブーン。 そのとき、一匹の猫が厨房に入ってきました。 ( ФωФ) 「……ニャー」 (´;ω;`) 「……」 そして、そろそろと、ショボンに近づきます。 そっと、頬をショボンの腕に寄せながら、「ゴロゴロ」と鳴きました。 きっと慰めてくれているのだ、ショボンはそう思いました。 (´;ω;`) 「……でも、ブーンは帰ってこないんだ」 今まで、一部だけなら、ショボンも直せました。 しかし、原形をとどめず、ぐちゃぐちゃになった状態からは、どうすることもできません。 ( ФωФ) 「ニャーオ」 すると野良猫は、ゆっくりとブーンに近づきます。 くんくん、と鼻をきかせ、その中に口先を突っ込みました。 (´;ω;`) 「やっぱり、この状況でも、生きることを考えるよな……」 しかし、猫は、ブーンを食べたわけではありませんでした。 その中から、なにかを取り出したのです。それは、小さな古ぼけた、一枚の紙切れでした。 ( ФωФ) 「ニャーオ」 (´;ω・`) 「……」 猫は、それをショボンの前に、そっと落とします。 ショボンは、それを広げて読んでみました。 |
『大好きなパンを焼いて、それで有名になる! そして、僕のパンを片手に、世界中を飛び回ってやる! 僕はパンと共に、大空を飛ぶんだ! ショボン 』 それは、小さい頃から、持ち続けてきた夢でした。 それは、ある日を境に、諦めるようになった夢でした。 それは、ついさっき、ブーンと約束した……大きな夢でした。 (´;ω;`) 「この紙、無くしたと思ったら……。ブーンの中で、生き続けていたんだね」 きっと、ブーンを焼くときに、生地に混ざってしまったのでしょう。 ショボンの長年の思いがこもった、この夢を乗せた紙。 もしかすると、ブーンが喋ったのも、ブーンが空を飛ぼうと願ったのも、 このショボンの思いが……ブーンの中に閉じ込められていたからなのかもしれません。 いや、絶対にそうに違いありません。 (´・ω・`) 「……ブーン」 ショボンは、再び前を見つめます。 この紙とともに、自分の夢を、再び追いかける決心を固めました。 ショボンは、小さな紙を取り出します。 そこに、ゆっくりと、大きな字で、言葉を書きました。 『 きっと、空も飛べるはず!! いや、絶対空も飛べるんだ!!』 そして、それを小さく折りたたみ、残ったブーンの体で小さく包みました。 そして、それを真っ赤な風船に入れて、膨らまし……そっと、手から放しました。 風船は、ゆっくりと上昇していきます。 ゆっくりと、ゆっくりと、雲に向かって昇っていきます。 段々と見えなっていきますが、真っ赤な風船なので、青空の中でも見つけられるでしょう。 そして、とうとう……風船は見えなくなりました。 |
ショボンは風船を見送ると、ごしごしと目の周りをこすりました。 そして、空に向かって、微笑ました。 (´・ω・`) 「ブーン、やっぱ君は、大空も自由に飛べたんだ」 そう、ブーンはとうとう、この空を飛んだのです。 この遥かなる、大空を。 時は過ぎて、今の話に移ります。 あるところに、ちょっと大きなパン屋があります。 広くて、賑やかな、大通り。 子供も、大人も、その店から漂う良い匂いに、ついつい誘われてしまいます。 店先には、この店の看板娘でもある、三匹の猫。 三匹は、ベンチで日向ぼっこをしながら、時々、皿の上のお魚を食べます。 その姿が愛くるしくて、子供たちの人気の的となっています。 店内に入ると、ぶすっとした、ふてぶてしそうな猫が迎えてくれます。 しゃがれた声で、「ニャー」と鳴く。その姿が、お爺ちゃんお婆ちゃんに人気だったりします。 店内では、可愛らしい少女が、色んなパンを薦めてくれます。 ちょっと強引ですが、その愛くるしさに、若い男の人たちはついついパンを買ってしまうそうです。 レジにいくと、美人な女性が、温かいパンを丁寧に包んでくれます。 その温かい雰囲気に、みんな癒されて、素敵な気持ちで店をあとにします。 この店のパンは、どれもすごくおいしいと言われています。 それらのパンは魂をこめて作っているのだから、おいしいのは当たり前だ……と、店主は言っているそうです。 川 ゚ -゚) 「まあ、そんな強気なことを、良く言えたもんだな」 (´・ω・`) 「……言った覚えは、無いんだけどねぇ」 ノパ听) 「まあ、トーチャンのそのしょぼくれた顔じゃ、言うことすら想像できないけどなあああ! な、クロワッサン?」 ( ФωФ) 「ニャー!」 店には、温かい笑い声が溢れました。 ショボンは、一歩一歩、夢に近づいているようです。 いつ夢が叶うのか、いや、もしかしたら、叶うことすら無いのかもしれません。 でも、もし夢を叶え、世界中を、世界中の大空を、飛び回ることができたなら……。 いつか、巡り合えるかもしれません。 大空を自由に飛びまわる、真っ赤な風船に。 いつか、聴こえてくるかもしれません。 大空を飛びながら、はしゃぎまわる、「ブーン! ブーン!」というあの声が。 川 ゚ -゚) 「さあ、そろそろ開店の準備をしないと」 ノハ*゚听) 「カーチャン、今日も手伝うよおおおおお! な、クロワッサン!」 ( ФωФ) 「ニャー!!」 (´・ω・`) 「……よし、頑張るか!!」 さあ、今日もショボンは、せっせとパンを焼きはじめるようです。 (´・ω・`)ショボンが不思議なパンを焼くようです END |