( ^ω^)悪意のようです

47: ◆HGGslycgr6 :2008/01/19(土) 23:00:14.73 ID:ZgCYV95x0
2章



ξ゚听)ξ「ただいまぁ」

 住み慣れたアパートの鍵をいつものように開け、ツンは独り言のようにそう言った。

 アパートには父親と共に住んでいる。
母親は幼い頃、愛想を尽かして出て行ってしまったようだ。
ツン自身にその記憶はないのだが、
これまで父親から聞かされた話からするに、死別したと言うわけでは無さそうだった。

 (´<_` )「あぁ、ツンお帰り」
ξ゚听)ξ「あ、叔父さん来てたんだ」

 居間から現れた予期せぬ人物にツンは、にわかに目を見開いた。



53: ◆HGGslycgr6 :2008/01/19(土) 23:01:37.56 ID:ZgCYV95x0
(´<_` )「兄者が、仕事が遅くなりそうだから一緒に飯を食ってやってくれ、と」

 彼、弟者は彼女の呼んだとおり、ツンの父の弟、即ちツンの叔父である。
最近になって仕事場がツンの自宅近くになったらしく、よくこの家に来ていた。

ξ゚听)ξ「ん? じゃあ、なんで鍵掛けてたの? ……何かいやらしーことしてたんでしょ」
 (´<_` )「ん? 男が家に鍵を掛けるといやらしいことをするのか?
       叔父さんそれは知らなかったなあ。後学のためにも、ぜひ教えて欲しいなあ」
ξ゚听)ξ「叔父さん、それセクハラだし」
 (´<_` )「お前が言い出したんだろうがい」
ξ>∀<)ξ「イヤー!」

 両手でツンの頭を掴み、持ち上げるようにしてギュウギュウと締め付ける弟者。
それに対しツンは嫌な顔をすることは無く、むしろ甲高い声を上げて子供のようにはしゃいだ。

ξ゚听)ξ「はい、それじゃあお触り代二万六千円頂きまーす」
 (´<_` )「カード使えますか?」
ξ゚听)ξ「ウチの店で使えるカードはドナーカードのみになりますが、いかが致しましょう?」
 (´<_` )「……今日の夕飯当番を代わるので勘弁してください」
ξ゚听)ξ「よし。許してやろう」

 玄関で始まった寸劇も一応のオチが付き、二人は奥の部屋へと向かった。



59: ◆HGGslycgr6 :2008/01/19(土) 23:02:53.43 ID:ZgCYV95x0



                   *



 夕食もすっかり食べ終わり、テレビでも一日を振り返るニュース番組が始まろうかという頃、
ようやくツンの父親が仕事から帰ってきた。

( ´_ゝ`)「ただいま」
(´<_` )「おかえり、兄者。いつも遅くまで精が出るな」
( ´_ゝ`)「いや、弟者もいつもスマンな。ツンの相手ばかりさせて」

ξ゚听)ξ「おかえりー」
( ´_ゝ`)「おお、ツン。いつも遅くなってスマンな」
ξ゚听)ξ「お父さん謝ってばっかじゃん。いいから早く上がりなよ」
( ´_ゝ`)「うむ」

 くたびれたスーツの上着をツンに渡すと、同じくくたびれた革靴を脱ぎ、
兄者はネクタイを緩めながら携帯の画面を確認した。



63: ◆HGGslycgr6 :2008/01/19(土) 23:04:06.51 ID:ZgCYV95x0
( ´_ゝ`)「む……むむむ」

 携帯の画面を凝視して唸りながら器用にベルトを外し、ズボンを脱いだ。

( ´_ゝ`)「うむ……」

 そしてズボンをハンガーに掛けると、ワイシャツを脱いでツンに渡し、
画面を見たまま直立不動となった。

ξ゚听)ξ「……どうしたの?」
( ´_ゝ`)「いや、なんでもない」
(´<_` )「兄者、とりあえず服を着て来い。今にも甥が俺の前に姿を現しそうだ」
ξ゚听)ξ「これが……私の本当のパパ……」
( ´_ゝ`)「甥? まあ、分かった。着てこよう」

 携帯を閉じて自らの部屋へと向かう兄者。
その後姿を見ながら、弟者は誰にも聞こえないようにそっと呟いた。



64: ◆HGGslycgr6 :2008/01/19(土) 23:05:16.09 ID:ZgCYV95x0
(´<_` )「何故あの父親からこんなシモ大好きな脳内万年ピンク娘が……」
ξ゚听)ξ「間違いなく叔父さんのせいだし。て言うか人を勝手に淫乱売女みたいに言わないでよ」
(´<_` )「知識が有ったとしても、そういう言葉遣いはどうかと思うぞ、俺は」
ξ゚听)ξ「保護者面しないでよ」
(´<_` )「じゃあお前明日からバイトしろ。自活しろ自活」

 反撃を食らったのが癇に障ったのか、ツンがわざとらしく大きな声を張り上げた。

ξ><)ξ「ヒドイ! 叔父さんが、ご飯作る代わりに体触らせろって言ったんじゃない!」
 (´<_`;)「わ、お前、バカ!」
ξ><)ξ「わたし、イヤだって言ったのに! 痛かったのに!」
 (´<_`;)「止めろ! ストップ! ストップ!」

 弟者の静止の声の後、奇妙な静寂が辺りを包んだ。
そして、スッと襖の開く音がして、弟者は思わず眉を寄せ、苦々しい表情になった。
そんな弟者の後ろから甚平に着替えた兄者が、そっと弟者の肩に手を乗せ、
耳元でゆっくりと囁いた。



68: ◆HGGslycgr6 :2008/01/19(土) 23:06:26.10 ID:ZgCYV95x0
( ´_ゝ`)「……時に、弟者。今夜の晩酌、付き合ってもらおうか」
(´<_`;)「ま、待て兄者! いいか、なんとも陳腐な台詞ではあるが、話せば分かる。
      そう、話せばわかることが多いからこそ、この台詞自体が陳腐なものとなっているのだ。
      とにかく、俺が何もしていないと言うことは、すぐに誰もが承知できる事実なんだ」
( ´_ゝ`)「弟者、俺はいつもツンにこう教えているんだ」
(´<_`;)「……なんだ」
( ´_ゝ`)「言い訳の長い男は――」
ξ゚听)ξ「嘘吐きだ」

 舌をべーっと出したツンが楽しそうに笑っていた。

(´<_`;)「……把握……した」

 しおれる弟者を見て、ツンはふふんと笑い、
手に持っていたワイシャツを持って洗面所へと向かった。



72: ◆HGGslycgr6 :2008/01/19(土) 23:07:40.05 ID:ZgCYV95x0
 ツンは洗濯カゴの前で立ち止まり、手に持っていたワイシャツを両手で抱えると、
ゆっくりとその中に顔を埋めた。

ξ--)ξ「……」

 いつになっても変わらない父親の匂いを鼻腔に、温もりを頬にそれぞれ感じると、
ツンは顔を離してそれをカゴの中へ入れた。

ξ゚听)ξ「……ふん、女のにおいゼロね。あの人大丈夫なのかしら」

 独り言ちて、ツンは再び居間へと戻った。
しかし、そう言いながらもツンはどこか満ち足りた気分でもあった。



73: ◆HGGslycgr6 :2008/01/19(土) 23:08:42.21 ID:ZgCYV95x0
 居間では既に出来上がった兄者が、弟者にくだを巻いている最中だった。

( ´_ゝ`)「弟者。その昔、お百姓さんはだな……」
 (´<_`;)「兄者、気持ちよく酔ってるところ悪いが、
      お百姓さんは今そんなに関係があるとは……」
(#´_ゝ`)「いいから黙って聴け! いいか! その昔お百姓さんはだな……」
 (´<_`;)(は、話が進まない……)

 その様子を見てツンは再びクスリと笑うと、自分の部屋へと戻っていった。

( ;_ゝ;)「それでだ、そんな中お百姓さんは、
       雨の日も、風の日も、田んぼの様子を見てはだな……」
 (´<_`;)「あ、兄者。時に最近のツンは様子が変だと思わないか?」
(#´_ゝ`)「何を言うか! 人の娘に手を出しおってからに!」
 (´<_`;)「訛(なま)るな。俺の予想だと、ツンには彼氏が居るな」
( ´_ゝ`)「……何?」



75: ◆HGGslycgr6 :2008/01/19(土) 23:09:45.64 ID:ZgCYV95x0
 (´<_` )「ああ、間違いない。そして最近何かうまくいってないんだろう。
       俺はよくここに来るから分かるんだが、最近ツンは携帯を眺めたままボーっとしたり、
       あるいは溜息を吐くことが多くなった。本当だ」
( ´_ゝ`)「……また、そんな弟者、驚かせようとしたって……」
(´<_` )「ツンもそろそろ年頃だ。兄者もそれなりの覚悟をしておいた方がいいかも知れんぞ」
(;´_ゝ`)「か、覚悟とは……」
(´<_` )「最近の娘だ。ある日突然、『出来ちゃった』とか言われても不思議ではないぞ」
(;´_ゝ`)「出来ちゃったってなんだ! ホットケーキでも作ったのか! ふざけるな!」
(´<_` )「落ち着け兄者。それが最近では普通なんだ」
(;´_ゝ`)「……」
(´<_` )「……」



78: ◆HGGslycgr6 :2008/01/19(土) 23:10:52.27 ID:ZgCYV95x0
(;´_ゝ`)「……弟者」
(´<_` )「どうした?」
(;´_ゝ`)「今この瞬間、少しだけだが、携帯を覗き見る者の気持ちが分かった」
(´<_` )「そうか。なに、心配ならツンに直接訊けばいい」
(;´_ゝ`)「いや、しかし……」
(´<_` )「ほら、兄者こんな時間だ。今日はもうこれくらいにしないと、
      明日もし倒れたとして、心配を掛けるのはそのツンになんだぞ。
      一人娘なんだ。少しは気を遣わせないようにしようじゃないか」
(;´_ゝ`)「う……そ、そうだな」

 すっかり意気消沈した兄者は、ふらふらと立ち上がるとそのまま弟者に背を向け、
「おやすみ」とだらしなく言って、寝室へと入っていった。

 一人残された弟者は一通りの食器を片付けると、電気を消して呟いた。

(´<_` )「……次からはこの手で行くか」







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