( ^ω^)悪意のようです

122: ◆HGGslycgr6 :2008/01/19(土) 23:28:22.33 ID:ZgCYV95x0
5章



( ´_ゝ`)「ツンに彼氏か……」

 職場で一人溜息を吐く兄者。
仕事にも全く手を付けず、頬杖を突きどこか遠くの方を見つめていた。
その様子を見て、女性社員が声を掛けた。

川 ゚ -゚)「どうしたんですか? 兄者さん」
( ´_ゝ`)「あぁ、クー……。どうにも娘に男の影がちらついて、仕事に集中できなくて……」
川 ゚ -゚)「娘さん、おいくつでしたっけ?」
( ´_ゝ`)「今年で……二十歳、か」
川 ゚ -゚)「もう二十歳なのにそんなこと言うなんて、ウザイですね」

 兄者は先輩であるはずなのだが、クーはそれとはお構い無しに意見を言うタイプだった。
しかしながら兄者は既に慣れていたし、元々先輩後輩の垣根を気にしない人物だったので、
なんら咎めることはしなかった。



127: ◆HGGslycgr6 :2008/01/19(土) 23:30:19.78 ID:ZgCYV95x0
( ´_ゝ`)「分かっては、いるんだがなぁ……あぁ……うん……」
 川 ゚ -゚)「はい、資料出来上がりました。これ今日中ですよ」
( ´_ゝ`)「ん、ああ……」

 資料を受け取ったものの、それをぼうっと眺めるばかりで、
兄者はまるで仕事に身が入っていないようであった。

 川 ゚ -゚)「……そんなに心配なら本人に訊いてみればいいじゃないですか」
(;´_ゝ`)「うーむ……どんな風に訊いたら良いものか……。何か、アイディアはないか?」
 川 ゚ -゚)「じゃあ私が実践しますから、相手お願いします」
( ´_ゝ`)「うむ、わかった。俺が訊かれる側だな?」
 川 ゚ -゚)「そうです」

 兄者はクーの返事を聞くと、
座ったまま背筋を伸ばし、彼女と向かい合いあった。



132: ◆HGGslycgr6 :2008/01/19(土) 23:31:41.10 ID:ZgCYV95x0
 川 ゚ -゚)「兄者さん、今付き合ってる人居ますか?」
(;´_ゝ`)「や、やけに直球だな」
 川 ゚ -゚)「直球が良いんです」
( ´_ゝ`)「そ、そうなのか……。いや、居ないぞ。安心してくれ」
 川 ゚ -゚)「そうなんですか。よかった。好きです、私と付き合ってください」
( ´_ゝ`)「……ん? なんで俺がツンに告白するんだ?」
 川 ゚ -゚)「いいえ、これは私の告白です。兄者さん、ずっと好きでした」
(;´_ゝ`)「……ん? んんんん? ちょっと待て。
      これは、その、予行練習と言うか……あれ?」
 川 ゚ -゚)「もし良かったら今夜七時にあのレストランで待ってます。
      それじゃあ、仕事、早く片付けてくださいね」
(;´_ゝ`)「え、あ、おい! あ、あれ?」

 その後、背を向けて自分のデスクに戻るクーを眺めたまま、
兄者はしばらく、今起きた出来事の整理を頭の中でしていた。

(;´_ゝ`)「俺には妻が……いや、もう居ないけど……しかし……いや、そもそも……え?」

結局、その日はほとんど仕事が進むことは無かった。



136: ◆HGGslycgr6 :2008/01/19(土) 23:33:24.22 ID:ZgCYV95x0



                   *



( ´_ゝ`)「……ちょっと早かったかな」

 クーの言っていたレストランに一人、スーツ姿の兄者が居た。
一度帰る時間はあったのだが、来ていく服が思い浮かばなかったので、
スーツ姿のまま兄者はクーを待つことにした。

( ´_ゝ`)「……問題は、まだ返事を考えていないということだな」

 あまりに想定外の出来事であるのと同時に、
兄者は自分の複雑な立場から、どう返事をしたものかと迷っていた。



142: ◆HGGslycgr6 :2008/01/19(土) 23:34:47.11 ID:ZgCYV95x0
( ´_ゝ`)「……待ち合わせ、七時だったよな?」

 そう呟いて時計を確認すると、針は八時半を差していた。
さすがに遅すぎると思った兄者が、チラチラと入り口の方を見る。
それを見たウエイターが、再び水を注ぎに来た。

( ´_ゝ`)「あ、どうも」

ウエイターに軽く礼を言ったその時、不意に兄者の携帯電話が震え始めた。

( ´_ゝ`)「おお、クーか」

ディスプレイにクーの名前を確認した兄者は、そのまま電話に出た。



146: ◆HGGslycgr6 :2008/01/19(土) 23:36:25.01 ID:ZgCYV95x0
 川 ゚ -゚)『ごめんなさい、急に面倒なことに巻き込まれました。
      申し訳ないですけど、お食事は今度にしましょう』
( ´_ゝ`)「面倒なこと? それならもう今日は来られないのか?」
 川 ゚ -゚)『ごめんなさい』
( ´_ゝ`)「そうか。まあいい。それじゃあまた日を改めて」
 川 ゚ -゚)『はい』

( ´_ゝ`)「ふう……」

 溜息を吐いて携帯の画面をしばらく眺めると、兄者はツンに電話を掛けた。

( ´_ゝ`)「ツンか? ああ、ご飯はもう食べたか?
      そうか、それはちょうど良い。今から一緒にご飯を食べよう」

 そうして、兄者はツンと夕食を食べ、改めて決意を固めたのであった。



150: ◆HGGslycgr6 :2008/01/19(土) 23:37:43.64 ID:ZgCYV95x0



                   *



 しかしそれからというもの、クーが兄者の誘いを悉(ことごと)く断り続ける日々が続いた。

( ´_ゝ`)「なあ、クー。今晩……」
 川 ゚ -゚)「すみません。今日は別な人と約束があるので」
(;´_ゝ`)「いや、しかしだな。この間の……」
 川 ゚ -゚)「それでは」
(;´_ゝ`)「……はぁ」

 ほとんど毎日声を掛けているのに、毎回断られるのだ。
一体何があったといのうか。
女心と秋の空ということわざが、兄者の頭の中で笑っていた。



152: ◆HGGslycgr6 :2008/01/19(土) 23:38:47.72 ID:ZgCYV95x0
( ´_ゝ`)「まあ、断るつもりだからそこまで俺が必死になることも無いんだが……」

 どっち付かずの、なんとも気持ち悪い状態が嫌で兄者はしばらく声を掛け続けたが、
一度としてクーがそれに応えることは無く、兄者もいつの間にか自然と声を掛けなくなっていった。

 その理由を兄者が知る日は来なかったが、
レストランの一件以来、クーの顔つきが日を追うごとに険しくなっていっているのを、
兄者は確かに感じていた。







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