( ^ω^)ブーン系小説・短レス祭典!のようです('A`)
- 325: 以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします。あと803,195秒 :2008/02/01(金) 23:02:21.41 ID:vU6bihGF0
- それは一本の電話から始まった。
「みかんは好きですか?」
好きですと答えたら、続けて楽しそうに弾む声がまくし立てる。
「みかんといえばこたつ、こたつといえばみかんという無限ループって素敵ですよね?
私たちは今日本人が忘れているその温もりを思い出してもらうべく電話しているのです。
ほかほかこたつで温まりながらひんやりつめたいみかんを頬張る。
甘さにとろけるもよし、すっぱさに顔をすぼめるもよし、テレビを眺めるのもオツですね。
あなたもやってみてはいかがですか?」
それだけ言うと、静かに電話は沈黙した。
('A`)「懐かしいねぇ、こたつにみかん。じいちゃん死んでからやってねぇや」
俺はばあちゃんを呼びつけると、こたつをどこに仕舞い込んだのか確かめる。
確認するや否や、俺は押入れを開け放ってこたつを引きずり出した。
手早くセッティングする。もちろん24インチのアナログなテレビを正面に持ってくる。
これで窓の外に雪でも降っていれば最高だった。
「ああ、懐かしい光景だね? ドクオ、ばあちゃんも入っていいかね」
('A`)「勿論。俺は平成の、ばあちゃんは昭和の思い出に浸ればいい。これは今からタイムマシンさ」
「あらあら、面白そうね。それじゃ、タイムトラベルと行きましょう」
- 326: 以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします。 :2008/02/01(金) 23:02:57.27 ID:vU6bihGF0
- 思い出話に花を咲かせる俺たち。
こたつの暑さに少しゆだってきたらみかんを頬張り、その甘さと冷たさに腑抜ける。
腑抜けながら、話のネタは尽きることがない。
じいちゃんのこととか、父さんの事とか、母さんを連れてきたときとか、俺が生まれたときとか。
ばあちゃんは穏やかに話し続ける。俺も記憶を辿って、いなくなったみんなを思い出していく。
('A`)「なあばあちゃん」
「なんだい?」
('A`)「寂しく、ないか?」
少しきょとんとした後、ばあちゃんは、やっぱり穏やかに笑いながら言った。
「私はね、皆のことを覚えているよ。おじいさんも、ドクオのお父さんも、お母さんも。
今こたつに入ってみかん食べてるとね、ゆっくりゆっくり、思い出すんだよ。
だからね、少し悲しいけれど、さびしくはないよ」
ドクオがいるからねと付け加えて、テレビの天気予報に視線を向けた。
自分たちが住んでいる地域の天気を見て、俺はベランダに走る。
('A`)「俺さ、」
「なんだい、ドクオ?」
- 328: 以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします。 :2008/02/01(金) 23:03:50.44 ID:vU6bihGF0
- ('A`)「皆が死んだとき、泣けなかった。泣かないよう頑張ったんじゃなくて、泣けなかったんだ。皆唐突だったからな」
「知ってるよ」
('A`)「それでいいと思ってた。泣かないほうがいいって思ってた」
窓の外を少し眺めて、振り返った。
('A`)「でもさ、皆優しいよな」
優しい雪が降る窓を背に、ドクオはこたつを見た。
ばあちゃんと向かい合うように、じいちゃんが。
二人の間に、両親が、座っている。
('A`)「まったく、あの電話に感謝しなきゃな。言い忘れた事を言えることに」
俺も、笑い返す。
皆の顔を忘れないように。けれど、ちゃんと言える様に。
「ありがとう。さよなら」
やっと泣けるなと、俺は小さくつぶやいていた。
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