( ^ω^)ブーン系小説・短レス祭典!のようです('A`)

>553C空


611: お題>>553C 1/3 :2008/02/02(土) 18:19:18.89 ID:b1YtSCDn0
('A`)「ねえ、それ何やってんの?」

勇気を出して聞いてみた。言っておくけどすごい勇気だ。
並みのそれじゃない。だって二倍だぜ二倍。そう、二つの勇気が必要だったんだ。
一つ目は、単に幼稚園児の頃から変わらない、極度の人見知りを振り切る事。
二つ目は、「おじさん、こんな昼間から何やってんの? 仕事は?」というカウンターパンチを受ける覚悟。

それらの勇気を振り絞ってまで知りたいんだ。
答えを聞く事に価値があると思ったんだ。
今をときめくニートでも、平日の昼をぶらぶらしてる暇人でも、ものを知る権利はある筈なんだ。多分。

だから、それは何なのかだけ教えてくれ少年。

(´・ω・`)「空の色を作っているんだ」

('A`)「……空の色? そこにあるじゃん。ほら、そこの絵の具」

(´・ω・`)「それは空色だよ。僕が作りたいのは、空の色」

絵筆をキャンバスに押し付けて、絵の具を混ぜていく。といった動作を何度も何度も繰り返している。
背丈や顔から見て小学生高学年といった所だろうか。その少年が言うには『空の色』を作っているらしい。
奇妙なのは少年の座っているベンチには様々な画材道具が置いてあるが、重要な物が欠けている気がする。
その色を持って表現する舞台。それが、無い。

('A`)「紙……は? 何にも無いじゃないか」

(´・ω・`)「いらない。絵が描きたいんじゃない。空の色を作りたいんだ」

キャンバスに新たな色が追加された。青緑色。それを混ぜていく筆。
俺は空を見上げた。吸い込まれそうな程の青。しかしただの青ではない。少年曰く、空の色。

612: お題>>553C 2/3 :2008/02/02(土) 18:19:57.36 ID:b1YtSCDn0
('A`)「そうは言ってもさ。空って奴は気紛れでね。自由気ままに自分の色を変えるんだよ。
    それら全てを含めて『空の色』って言っているなら、一色で表現するのは無理だよ」

(´・ω・`)「いや、空の色は一つだよ。今も鮮明に覚えてる。あの日、僕が見た空は――――」

次に彼が手にした絵の具は、赤色だった。
同じ動作で混色を作り上げていく。

('A`)「空……なの? 宇宙(そら)とかの間違いじゃない?」

(´・ω・`)「空は空だ。あの空しか僕は記憶に無い」

黒ずんでいる。ここまで来ると、あと一歩で黒だ。
仮に彼のいう空が夜空を指していても、流石にこれは、無い。漆黒だ。
俺はどこか狂気染みたものを感じていた。恐怖か。憎悪か。何にせよ頭が痛くなりそうだ。

('A`)「な、何か邪魔しちゃったかな。俺もう、そろそろ……」

(´・ω・`)「そろそろ帰らなきゃ」

結局、最後まで少年は俺の目を見る事は無かった。
画材を手早く片付け始めると、ベンチに立て掛けてある白い杖を手に、その場を後にした。

('A`)「……ふぅ。久々に喋った人間は大分おかしな奴だったな」

風が吹いた。木の葉がざわめき、空の中では雲が揺れた。

('A`)「ぶっ!」

どこからか飛んで来た紙切れが、俺の視界を奪った。

613: お題>>553C 3/3 :2008/02/02(土) 18:20:43.73 ID:b1YtSCDn0
('A`)「なんだよコレ…………あっ」

それは数年前、この近辺で起きた轢き逃げ犯の目撃情報を呼びかけるチラシだった。

('A`)「確か母親が死んで、その餓鬼が障害残ったんだっけ」

しかし人通りの無い夜道の事で、その場に居合わせた人間がゼロだったとかいう話だ。

('A`)「ハッ、そろそろ時効か」

チラシを眺めつつ、俺は鼻で笑い、呟いた。
『犯人はきっとこんな人』
黒いジャンパーでマスクをしている、身長は……

('A`)「どこ情報だよw勝手に作るなよwww」

出鱈目な犯人の特徴に突っ込みを入れるのに夢中になりすぎていた。



瞬間――――真横から、衝撃。



その日、

俺の目に映った空は、確かに

           ('A`)空の色のようです(´・ω・`)



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