( ^ω^)ブーン系小説・短レス祭典!のようです('A`)

800:( ^ω^)ブーンは風と共に戦い抜くようです :2008/02/03(日) 14:35:28.92 ID:JRshFJox0
コポコポと不気味な、水の沸く音がした。
部屋全体は薄暗いのだが、所々にまるでオブジェのように配置された縦長のカプセルが不気味な緑に輝き、その光が辺りを照らしているため、物を見るのに問題はない。
その部屋の中心、小さな椅子に腰掛け、不気味な光で薄緑に輝く白いテーブルに肘をかけ、コップに入ったコーヒーをすする女がいた。

唐突に、女が首を後ろに回し、部屋と外とをつなぐ扉を見る。
外からは、扉をノックする小さな音がしていた。

「入れ」

女の言葉の後、金属製の扉がノブをまわす音とともに開いた。
そこからでてきたのは、体躯の良い、白衣をまとった男であった。

そのとこが何か言葉を言おうと、口を開いたのだが、女は自分の口に人差し指を当てるジェスチャーをし、それを見ると男は喉まで出掛かったその言葉を呑み込んだ。

「余計なことは聞く気はしない。結果はどうなんだ」

「……成功と言って過言ではないでしょう」

男が、今度は低い声でしっかりと話す。

「過言ではない? なんだ、その言い方は」

女はコーヒーを静かに啜り、キッと男の顔をにらむ。

「披験体への付加は成功しました。
 しかし、その用途に至って……私はやはり納得がいきません」

「未だにそんなことを言うのか、お前は。
 いいか、私がしているのはリサイクルなんだよ?
 未来も何もないんだ。有効に使ってやるだけいいではないか」

801:( ^ω^)ブーンは風と共に戦い抜くようです :2008/02/03(日) 14:36:50.02 ID:JRshFJox0
男の言葉に対して、嘲笑しながら女はそう言った。
男はというと、短くため息をつき、顔を落とした。

「それにだな」

次いで口を開いたのは、女であった。
その言葉に、男は顔を上げ、女の目を見る。

「私はマキナの意志を次いでいるに過ぎない。
 お前だってマキナに仕えていたんだ。なのに何故、喜ばないんだ」

男がはっとした表情で、いつもは細めている目を少し開いた。

「……マキナは、もういません」

そして、短くはき捨てた。
その言葉の後、再び女の嘲笑が部屋に響いた。

「マキナがいないだと? 笑わせるなよ。
 マキナは未だ死んでいないし、私がこうやってその意志を継いでいるんだ。
 私が生きている限り、この実験が無駄になることも……失敗することもない」

「……馬鹿馬鹿しい」

「あ?」

男の言葉に、女が声を荒げる。
コーヒーを再度、今度は乱暴に音を立てながら啜り、カップは叩きつけるようにしてテーブルに置いた女は、椅子を蹴飛ばして立ち上がり、男の眼前まで迫った。
男より幾分身長が低いため、端から見れば滑稽ではあるが、女の気迫のある表情を前にし、男は一瞬竦んでしまったが、すぐに姿勢を直した。

802:( ^ω^)ブーンは風と共に戦い抜くようです :2008/02/03(日) 14:37:22.67 ID:JRshFJox0
「今、なんて言った」

乱暴な目線を男に送りながら、女が言う。
当の男はというと、ばつの悪そうな顔をし、しかし目線は女の目を離さずに口を開く。

「あなたがマキナに執着している限り、そんなのは無理なことであり、馬鹿馬鹿しいことです」

「マキナを侮辱するな!」

女の拳が、言葉と同時に素早く男のわき腹を捕らえた。
鈍い音がすると同時に、男が歯を食いしばる。女ながらに相当な力を持つようで、攻撃を直に受けた男は膝を地に折り、悶絶した。

それを見た女は、何も思ってはいないようであった。
先ほどまで男を見上げていた目線は、今度は見下げる目線になって。
その視線の冷たいことはこの上なく、男はそれをもう直視していることは出来なかった。

「いいか? お前がこうしてここで生きていられるのも、私とマキナがあってこそなんだぞ?
 それを侮辱するということは、どういうことなのか……すこし理解したほうが良い。
 お前なんぞはいつ消し去ってしまっても、私には問題ないということを忘れるなよ」

女はそれ以上何も言わずに、男がこの部屋に入るときに使った扉を開け、そこから外へ出て行った。
その背中を見つめる男の表情は、苦悶で満ち溢れていた。

そう。おそらく、体の痛みからではないであろう、苦悶が。



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