( ^ω^)ブーン系小説・短レス祭典!のようです('A`)

832:雪・ささやかな幸せ 1/3 ◆tOPTGOuTpU :2008/02/03(日) 15:41:27.07 ID:hcscLDQS0
幼い頃から南国で過ごしてきたためか、雪に遭遇したことはなかった。
白い、冷たい粉のようなものが天からヒラヒラ舞って来る。
ありえないと鼻で笑ったこともあるし、漫画やドラマの誇張表現だと思っていた。

大学進学のため僕は一人で上京した。
そのまま東京の企業に就職した。
東京は故郷より遥かに寒いけれど、それでも雪は滅多に降らなかった。
でも、煩務に追われているうちに、そんなことはどうでもよくなっていった。
もしかしたら、僕は雪を間近で見たことがあるかもしれない。
けれど、もう興味の範疇に入っていなかったのだ。

二年目の冬、故郷のことすら忘れそうになっていた頃、故郷の恋人からいつものように手紙が届いた。
いつも、他愛のない言葉のやり取りなのだけれど、今回は違っていた。
自分も上京したい、新年辺りに少し泊まらせて。そんな内容だった。
師走の忙しさに辟易していた僕は、大した考えも抱かずにOKの返事を出した。
ようやく仕事が一段落し、そのまま新年に雪崩れ込もうとしていた。

丁度その、大晦日に故郷の恋人ツンが僕のアパートにやって来た。
やけにでかい旅行鞄と共に、やけに口を尖らせながら。

( ^ω^)「久しぶりだお」
ξ゚听)ξ「そうね」

いつにも増してつっけんどんだった。

833:雪・ささやかな幸せ 1/3 ◆tOPTGOuTpU :2008/02/03(日) 15:42:32.76 ID:hcscLDQS0
雪のように真っ白な、やけに物々しいトレンチコートを着込んでいた。
お世辞にも似合っているとは思わない。大方、故郷はコートの品揃えが良くないのだろう。
ツンはコートを脱ぐと、僕の差し出したホットの缶コーヒーをしばらく見つめていた。
やがて、溜息をつきながら、

ξ゚听)ξ「なんか……やっぱ寒いね」
( ^ω^)「お?」

暖房はちゃんと効いているはずだけど……とエアコンのリモコンを確認した。
やはり、異常は無かった。
そういえば、ツンは全くコーヒーに興味が無いようだった。
無糖ブラックが好きなはずなのに……。
勧めると、「いい」と突っぱねた答えが返ってきた。

どうすればよいのか分からず、僕はコタツの中で悶々としていた。
時々足がツンのと当たり、その度に二人でモジモジした。
何故だろう……もう僕達は二十歳を越えているし、知り合ってから十年も経つのに。……

ひどく森閑した年末だった。
テレビをつけると、テレビの中の馬鹿騒ぎと今の状況のあまりのギャップに笑いそうになる。
僅かであるが、心が弾んだような気がした。見ると、ツンの顔も若干綻んでいる。

( ^ω^)「じゃ……そろそろ夕飯作るかお」

立ち上がって、冷蔵庫を確認した。なぜか豆腐くらいしかまともな食材がなかった。
冷凍室にはコンビニで買った冷凍用の鍋焼きうどんが丁度二つ入っていた。
だが、一瞬躊躇ってから僕は止すことにした。
ツンに言う。

(;^ω^)「なんも無いお!」

834:雪・ささやかな幸せ 1/3 ◆tOPTGOuTpU :2008/02/03(日) 15:43:31.51 ID:hcscLDQS0
ξ゚听)ξ「そこにあるじゃない」

ツンの指差した先には、仕送りの野菜が入ったダンボールが据え置かれていた。

ξ゚ー゚)ξ「鍋にしましょ」

野菜のほかには、冷蔵庫の中の豆腐……それとせいぜいマロニーしかない。
やたら質素な鍋だと思ったが、僕も頷いた。

クツクツ具材を煮込んでいる鍋に箸をつけながら、二人で大晦日特集を観た。
テレビのテンションの高さに驚かされ、また、励まされたような気分になる。
そのうち、二人で顔を見合わせた。そうして笑った。酒が入っていないのに、幸せな気分に満たされた。

ξ゚ー゚)ξ「「あけましておめでとうございます」」(^ω^ )

鍋の後片付けをし終えた頃で、新年になった。
二人でコタツに入り、ヌクヌクと身体を暖める。
ツンが窓の方をしきりに見るので、僕もつられて覗くと、窓の向こう側で雪が舞っていた。

ああ……これが雪か……雪だったのか……。
生まれて初めて雪と出会ったような気になった。

ξ゚ー゚)ξ「ねぇ、コーヒーメーカーってある?」
( ^ω^)「お? 多分、埃が積もってると思うけど、食器棚にあるお」
ξ゚ー゚)ξ「よかった、お土産に有名なのを持ってきたの」

僕の現状や、友達の近況、ツンのことなどを一通り話合う。
それすら終わった辺りで、二人でコタツのまま眠りこくった。
朝が来て起き上がると、ツンがコーヒーを入れたマグカップを差し出してくれた。(終)



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