( ^ω^)ブーン系で読みとくおとぎ話のようです

53: 以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします。 :2008/02/03(日) 02:53:44.71 ID:OxQ1FTtzO
おとぎの国の町から少し外れた丘に、新婚の夫婦が暮らしていました。

(,,゚Д゚)「しぃ、お茶」

(*゚ー゚)「はい」

男性の名前はギコ。女性の名前はしぃといいます。
二人は新婚にも関わらず、枯れています。
良く言えば枯れています。悪く言っても枯れています。
日曜日の昼、どこにも行かずにこたつでゴロゴロとしていました。

(,,゚Д゚)っ旦「ズズズ……」

(*゚ー゚)「ねぇ、ギコ君」

(,,゚Д゚)「何だゴルア」

(*゚ー゚)「………何でもないよ」

しぃは台所へと戻って行きました。
疑問の表情でギコはそれを見送ります。



54: 以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします。 :2008/02/03(日) 02:55:09.90 ID:OxQ1FTtzO
(,,゚Д゚)「あー、明日仕事ヤダヤダア!」

ですが家族を養う為、働かねばなりません。
ギコはお茶をグイッと飲み干して、横になりました。
周りに散らかしている本を一冊手に取り、読み始めます。
今読んでいるのは、おとぎの国が発行している週刊誌のようです。

(,,゚Д゚)「『猛威をふるう赤頭禁、新メンバー彼愚矢』。……こえー」

(,,゚Д゚)「『ドクオ氏、再び泉にはまる。今度は銅』。どうでも良いわ。銅だけに」

((,,  ))「ぶふっ! 銅だけにて……ギコハハハハハ!!」

ツボにはまったのでしょう。お腹を抱えてギコは笑います。
数分後、落ち着きを取り戻して、ギコがページをめくって行きます。
するとある項目でギコの目が釘付けになりました。

(,,゚Д゚)「こいつは…………」



55: 以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします。 :2008/02/03(日) 02:56:23.44 ID:OxQ1FTtzO
(,,゚Д゚)「おーい! しぃ!!」

起き上がったギコは大声でしぃを呼びます。
しぃがお茶を持って台所から出て来ました。

(*゚ー゚)っ旦「またお茶? はい、どうぞ」

(,,゚Д゚)っ旦「サンキュー!」

(,,゚Д゚)「……じゃなくて!」

しぃのエプロンの裾を引っ張り、半ば強引に座らせます。
そしてギコが本へと指先を当てました。
そのページにはこう書かれています。

『幸せの青い鳥、脱獄』

(*゚ー゚)「これがどうしたの?」

その言葉を聞いたギコは、目をらんらんとさせて笑いました。
久しぶりに見たギコの元気な表情に、しぃは黙って聞く事にしました。



57: 以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします。 :2008/02/03(日) 02:57:37.61 ID:OxQ1FTtzO
(,,゚Д゚)「説明しよう!
     幸せの青い鳥を捕まえた奴は幸せになれる!
     金銀財宝ウッハウハ!
     つー訳で、今から行くぞ!!」

(*゚ー゚)「へぇ、そうなんだぁー」

しぃは頷きます。
青い鳥を捕まえたら幸せが手に入るのです。
全く、夢の様な話ですね。
しぃはコップをさげて、台所に去ろうとしました。

(;゚ー゚)(……今から行く!?)

ピタリとしぃの足が止まります。
振り向くとこたつから出て、準備運動を始めているギコの姿がありました。

(,,゚Д゚)「網要るかな? それとも鳥もち?」

しぃは少しだけ頭痛を覚えました。



58: 以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします。 :2008/02/03(日) 02:59:02.47 ID:OxQ1FTtzO
しぃが家の鍵をきちんと閉じました。
外はまっしろな雪景色。空気がとても澄んでいます。

(*゚ー゚)「で、その鳥はどこに居るの?」

(,,゚Д゚)「おとぎの国の町のどっかだってさ」

(;゚ー゚)「脱獄でしょ? 凶悪犯じゃあ……」

サクサクと雪を踏みしめながら道を歩きます。
動物達はみんな、冬眠中。ギコとしぃの声だけが丘に響きます。
小さな砂糖菓子のような雪が舞っていて、幻想の世界のようです。

(,,゚Д゚)「昔、実際に青い鳥を見た俺のじいさんが言うにゃ、手のひらサイズだそうだ」

(*゚ー゚)「そう。なら大丈夫ね」

二人は手を繋いで雪道を歩いて行きます。
目指すはおとぎの国の町です。



59: 以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします。 :2008/02/03(日) 03:00:13.80 ID:OxQ1FTtzO
从#゚ー゚从「よぉー! 兄さん、姉さん人参だしなよぉー!?」

ξ#゚听)ξ「さもなきゃ、この眉毛がどうにかなっちゃうわよ!」
  _
( ;∀;)「ヘルプミー」

(,;゚Д゚)(;゚ー゚)

おとぎの国の町に入った二人を待ち受けていたのは、カツアゲでした。
兔の少女が、木刀を突きつけて脅します。
巻き髪の少女は狼の青年の凛々しい眉毛に、カミソリを当てていました。
狼青年の命の危機です。眉毛を剃られた一発で涅槃行き。

(,;゚Д゚)「わ、分かった。人参代を渡そう!」

(;゚ー゚)「その子をはなしてあげて!」

ギコが財布から千円銀貨を取り出して、兔の少女に渡しました。

从#゚ー゚从「きたぁー! カロテンたっぷり千円銀貨だよぉー!!」

ξ゚听)ξ「当分の食料には困らないわね!」



60: 以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします。 :2008/02/03(日) 03:01:40.95 ID:OxQ1FTtzO
ξ゚听)ξ「じゃあねー、兄さん!」

从#-、-从「サンキュ、へくしゅ!」

从#゚ー゚从「あぁー! 冬は嫌いだよぉー!」

二人の少女は喜んで、どこかに駆けて行きました。
しぃは残された狼の青年を介抱してあげます。

(*゚ー゚)「君、大丈夫?」
  _
( ;∀;)「眉質をとるなんて反則だろうがよ!」

(,,゚Д゚)「……青年はこの町のもんか?」

ギコが狼へと問いかけます。
それに一つ頷いて、答えました。

(,,゚Д゚)「なら話は早えや。青い鳥知らねぇか?」

ギコの言葉を聞いた狼は眉を動かしながら大笑いします。
そして、『そんなおとぎ話みたいなの信じてるのかよ?』と言いました。



61: 以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします。 :2008/02/03(日) 03:03:35.98 ID:OxQ1FTtzO
(,#゚Д゚)「悪いかよ」

(*゚ー゚)「ダメよ。ギコ君」
  _
( ゚∀゚)「まぁ、いいや。助けて貰ったし。青い鳥ならハインの家に居るぜ」
  _
( ゚∀゚)σ「あの家だ」

狼は高台にある、一件の家を指差しました。
雪が積もっていてよく分かりませんが、木造の小さな家です。
二人が礼を言おうと狼の方に振り向くと、そこには誰も居ませんでした。

(,,゚Д゚)(*゚ー゚)「あれ?」

首を傾げつつも、留まっていては凍りつきそうでしたので、
二人は教えられた家へと向かう事にしました。
坂道を滑りそうになりつつも、懸命に二人は進みます。
たどり着いたその家の前は、凄いことになっていました。



63: 以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします。 :2008/02/03(日) 03:05:18.56 ID:OxQ1FTtzO
('A`) [恐怖を与えてやって下さい]

(,,゚Д゚)「こいつは……」

(*゚ー゚)「前衛的なアートね……」

一人の人間が氷漬けになっています。
すぐ側には『恐怖を与えてやって下さい』の看板。
二人は恐怖を覚えましたが、先に進まないと話にならないので、
勇気を振り絞って、木製のドアをノックしました。
ガチャリ。ドアがゆっくりと開きます。
中から現れたのは、エプロンを着た吸血鬼の女性でした。
二本の牙が口から覗かせています。

川 ゚ -゚)「やべえ、やべえって。食費まじやべえ」

(,,゚Д゚)「あの、青い鳥を……」

川 ゚ -゚)「外の奴を何とかしたら分かるかもわからんね」

バタン。ドアが閉じられてしまいました。
二人はドアの前で立ち尽くします。



65: 以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします。 :2008/02/03(日) 03:06:33.51 ID:OxQ1FTtzO
(,,゚Д゚)「一体何なんだよ」

(*゚ー゚)σ「ギコ君、外の奴ってあれの事かなぁ?」

('A`) [恐怖を与えてやって下さい]

しぃの指の先には氷漬けになった人間。
これをどうにかしたら、青い鳥がどこに居るか分かるのでしょうか。

(,,゚Д゚)「んなもん、火で炙ってやりゃあ」

(*゚ー゚)「ライターなんて持って来てないよ」

(,, Д )「………………削ろうか」

ギコが爪で引っ掻いてみました。
ですが、大変冷たくて、指が少しだけ赤く腫れました。

(,;゚Д゚)「冷た過ぎたろ……。氷的に考えて……」



67: 以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします。 :2008/02/03(日) 03:07:58.15 ID:OxQ1FTtzO
(*゚ー゚)「看板の通り、恐怖を与えてみる?」

(,,゚Д゚)「だがどうやって……っとあれは」

ギコは一本の斧が家の壁に立てかけられているのを発見しました。
それを手に持ち、大きく振りかぶります。

(,;-Д-)「どうか中まで届きませんように」

祈りを捧げて、振り下ろそうとしたその時です。
氷がピシピシと音を立てて割れました。
中から出てきた人間が寒さか恐怖か、それとも両方か。
声と身体を震わせて怒鳴ります。

(#'A`)「あほんだらー! 殺す気か!? これだから人間は……」

(,;゚Д゚)(;゚ー゚)「――!」

('A`)「人間? このにおいは……」

人間がギコに近寄ってくんくんとにおいを嗅ぎます。
そして、何やら分かったのか、ギコから離れ、したり顔で話かけました。



68: 以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします。 :2008/02/03(日) 03:09:24.24 ID:OxQ1FTtzO
('A`)「お前、こっちの人間じゃないな」

(,,゚Д゚)「こっち?」

('A`)「そう、こっち。お前はあっち」

人間の言っている事は、ギコには全く理解出来ませんでした。
二人は顔を見合わせて、目をぱちくりさせます。

('A`)「早く帰れ。でないと喰われるぞ」

喰われる、という言葉にギコはなぜだかゾクリとしました。
ギコが唾を飲んで、人間へと口を開きます。

(,;゚Д゚)「喰われる……って何にだよ?」

('A`)「『夢』に、だ」

人間はそう言うとドアの中に入ろうと歩きだします。

(,;゚Д゚)「待て! 青い鳥は――」

(  )「おとぎ話だな。そいつはお前の家に居るよ」

――バタン。
人間が家に入ったと同時に、世界は音も無くひび割れて行きました。



70: 以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします。 :2008/02/03(日) 03:10:40.75 ID:OxQ1FTtzO
――――

「ギコ君。ギコ君!」

(,;゚Д゚)「!?」

(*゚ー゚)「やっと起きたぁ……。眠りすぎだよ」

ギコが目を覚ますと、しぃの顔が映りました。
こたつの中でずっと眠っていたのでしょう。
身体中から滝のような汗を流しています。

(,;゚Д゚)「……ここは?」

(*゚ー゚)「ここ? 私達の家だけど……」

(,;゚Д゚)「…………夢か」

(*゚ー゚)「大丈夫? もうすぐ晩御飯だからね」



71: 以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします。 :2008/02/03(日) 03:12:06.40 ID:OxQ1FTtzO
しぃが台所へと行きました。カレーの良いかおりが漂って来ます。
ギコは息をゆっくり整え、こたつから出ました。
立ち上がろうと床に手をついた時、ちくりと痛みが走りました。

(,;-Д゚)「ッ!?」

よく見ると指先がちょっぴり赤くなっています。

(,,゚Д゚)「『夢に喰われる』……。まさか、な」

(*゚ー゚)「ギコくーん! 食器運んでよー!」

(,,゚Д゚)「はいよー」

返事してギコは台所へと消えて行きます。
こたつの上には子供用の絵本が置いてありました。
本の間には栞代わりの青い羽が挟まれています。

もう少しすれば、ギコとしぃの間に赤ちゃんが生まれるようですよ。

――――



72: 以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします。 :2008/02/03(日) 03:12:45.62 ID:OxQ1FTtzO


第四話「おとぎの国のナイトメア」



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