('A`)の悲惨な一日のようです

52: 以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします。 :2008/02/14(木) 22:33:34.04 ID:uvvnwD7f0
川 ゚ -゚)「さぁ、お前らの想いを叫ぶが良い!!」


「チョコ・・・・・・チョコ・・・・・」

「チョコ!・・・チョコ!・・・・・・」


『『チョーコ!!チョーコ!!チョーコ!!』』


『明治!!森永!!ガーナ!!』


一切乱れの無い、完璧に重なった言葉。
男達の本能が、それを成しているのだろう。

女性はそれを見て満足気に微笑んだ。

ようやく訪れたその笑顔は、太陽よりも眩しかった。



54: 以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします。 :2008/02/14(木) 22:36:27.93 ID:uvvnwD7f0
川 ゚ -゚)「私のチョコかぁ・・・・・・?」

川 ゚ -゚)「欲しけりゃくれてやる・・・・・・」



川 ゚ -゚)「探せ!!この世の全てをそこに置いてきた!!」


『『ウオオオオオオオオオオオ!!!』』


男達の雄叫びは、剥きだしにされた本能の塊。
そう、運命とは自らの手で切り開いていくものなのだ!

世は大チョコ時代を迎える!!



56: 以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします。 :2008/02/14(木) 22:38:19.60 ID:uvvnwD7f0
走り出した男達。
我先にと、獲物を求めその足を動かす。


('A`)「なるほど・・・・・つまり、あの女が隠したチョコを手に入れればいいんだな?」

しかし、ドクオは一人、冷静に状況を把握していた。
その表情に浮かぶ余裕からすると、自信があるという事なのだろうか。


('A`)(くくく・・・・・・俺の執念が負けるはずが無いだろ・・・・・・)

不気味な笑顔。
他の者達を見下ろすような、王者の笑み。


('∀`)「母さんすら、俺にチョコをくれなかった!!
    そんな俺の悲しみに塗れた心が負けるはずなどない!!」

高らかに叫んだ言葉に、多くの男達が振り返った。



57: 以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします。 :2008/02/14(木) 22:40:04.21 ID:uvvnwD7f0
しかし、そんなドクオに近づく影。


/ ,' 3「あまいのぅ・・・・・小童・・・・・」

不気味に杖を鳴らす男。
いや、老人と形容するのが正しいか。

髪は真っ白に染まり、顔中にしわが出来ている。
既に、70近い年齢なのではないだろうか。


('A`)「何が可笑しい・・・・・!!」

/ ,' 3「ワシはチョコを生まれてから一度も貰った事が無い・・・・・・。
    ありふれた台詞だが、この言葉の意味が貴様には分かるか?」

(;'A`)「な、なんだと!?」

ドクオは驚愕の表情を見せた。



59: 以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします。 :2008/02/14(木) 22:42:32.58 ID:uvvnwD7f0
そう。一般の人間が今の言葉を言ったとしても、そうですかで済む。
しかし、老人が言ったとなると、話は別だ。

意味するところは年季の違いというものである。


/ ,' 3「この年まで孤独でいる辛さ・・・・・小僧達に理解出来るか!?」

(;'A`)「ぐっ・・・・・・!!」

ドクオは言葉を返せなかった。
老人を無言で睨むことしか出来ないが、それすら圧倒されていた。


(;'A`)(俺はいまだに自分の将来を楽観視している・・・・・・!
    こんなに寂しい未来が訪れる事は無いと信じている・・・・・!!
    30にもなれば、大人の魅力でモテモテだと信じている・・・・・!!)

苦虫を噛み潰したような、そんな表情である。



61: 以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします。 :2008/02/14(木) 22:44:29.78 ID:uvvnwD7f0
/ ,' 3「そして、知っているか小童?」

(;'A`)「な、何をだ!!」

/ ,' 3「30を超えて童貞でいると、魔法使いになれるんじゃよ・・・・・・」


ざわ・・・・・ざわ・・・・・

周囲に起きるざわめき。
まさか、いやでもそんな馬鹿な、という葛藤であろうか。


(;'A`)「つ、使えるというのか!魔法を!!」

/ ,' 3「見せてやろう・・・・・自動チョコ探索魔法じゃ・・・」


(;'A`)「なんだと・・・そんなの無敵じゃねぇか!!」

/ ,' 3「年寄りをいたわらんガキの言う事など知るか!うひょひょ!!」



62: 以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします。 :2008/02/14(木) 22:47:14.45 ID:uvvnwD7f0
          オート・イレバー
/ ,' 3「くらえ!!『入歯探索!!』


ブッ!!


空に向かって入れ歯を放出する荒巻。

飛び散る涎に太陽が乱反射して虹を描く。


その中央にある入れ歯は神々しかった。



64: 以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします。 :2008/02/14(木) 22:49:32.02 ID:uvvnwD7f0
(;'A`)「き、狂気の極み・・・・・・!!」

焦りや怒りがドクオの心に渦巻く。
涎がかかったので、それも当たり前のことか。


/ ,' 3「はひっぇひょんひゃもん!!」

老人は入れ歯が無くなってので話せなかった。
もごもごと動く口がなんとも滑稽なものだ。


(;'A`)「く、魔法なんてものに勝てるはずがない・・・・・・!?」

そこでドクオは気付いたようだ。

老人が先ほどから、地面に落ちた入れ歯に話しかけていることに。

ひょっとして、これはまさか!?



66: 以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします。 :2008/02/14(木) 22:51:16.18 ID:uvvnwD7f0
/ ,' 3「ひひぇーほくのはふなふ!!」(行けー僕のマグナム!!)

いや、この時点で誰もが気付いていた。
老人の本当の姿というものに。

そう、老人は


('A`)「ボケている・・・・・・!!」


悲しきかな、老いの恐怖。

老人はすでに自慢のミニ四駆(入れ歯)に夢中のようである。
あれではもうチョコを食うことなど出来はしない。

ポリデントが必要だろう。



67: 以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします。 :2008/02/14(木) 22:53:39.20 ID:uvvnwD7f0
('A`)「・・・誰か、助けてあげてください!!」

('A`)「警察を呼んでください!!」


(;A;)「(俺を)助けてください!!」


老人をその胸に抱えて、叫ぶドクオ。
そのセカチューじみた行為に誰もが涙を流した。


そして、荒巻は安らかな眠りに就いた。



69: 以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします。 :2008/02/14(木) 22:56:24.92 ID:uvvnwD7f0
・・・・・・・・・・・・・・・
・・・・・・・・・・・
・・・・・

(;'A`)「くそっ、余計な時間を使ってしまったぜ!!」

既に日は落ちている。
あの後、救急車を呼んだりと色々大変だったのだ。


('A`)「まぁ、俺には主人公補正があるから平気さ・・・・・・」

ムフフと邪な考えをしているのが目に分かる表情である。
そもそも、こういう話で主人公というのはろくな目にあわな・・・

おっと、無駄話であった。


('A`)「さーて、クー様のチョコを探しますかね・・・・・・」

ようやく、本番に入れるようである。
ここからが、本当の感動物語の始まり・・・・・!!」



71: 以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします。 :2008/02/14(木) 22:58:31.58 ID:uvvnwD7f0
( ∵)ノ○

('A`)「あれ・・・・・?」


( ∵)ノ○

('A`)「あの、もしかしてそれって・・・・・」


( ∵)ノ○

('A`)「チョコ・・・・・?」


( ∵)ノ○


(;'A`)「・・・・・!!」



73: 以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします。 :2008/02/14(木) 23:00:53.32 ID:uvvnwD7f0
何ということでしょう。
無口な青年が既にチョコを発見していました。

というか、本当に何の反応も示さない人だった。


(;'A`)「いや、あれが本物だという可能性はどこにも・・・・・!!」

川 ゚ -゚)「あれは本物だぞ」

あっさりと希望も打ち砕かれた。


('A`)(俺の人生オワタ)

川 ゚ -゚)「残念だったな、それでは私は優勝者にインタビューを・・・・・」

クーがその男に近づく最中。
会場からは、落胆の声が溢れていた

練炭という単語は恐らく聞き間違い。
うん、そうそう。



74: 以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします。 :2008/02/14(木) 23:02:54.19 ID:uvvnwD7f0
川 ゚ -゚)「おめでとう」

( ∵)ノ○


川 ゚ -゚)「良かったな」

( ∵)ノ○


川 ゚ -゚)「嬉しくないのか?」

( ∵)ノ○


川 ゚ -゚)「私の手作りだぞ?」

( ∵)ノ○


川 ゚ -゚)「・・・・・・」



75: 以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします。 :2008/02/14(木) 23:04:50.62 ID:uvvnwD7f0
川 ゚ -゚)「照れてるのか」

( ∵)ノ○


川 ゚ -゚)「これに参加したくらいだもんな」

( ∵)ノ○


川 ゚ -゚)「チョコ好きなんだろ?

( ∵)ノ○


川 ゚ -゚)「食べて良いぞ、童貞(笑)」

( ∵)ノ  ===○  ベシャ



川#゚ -゚)



76: 以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします。 :2008/02/14(木) 23:07:29.28 ID:uvvnwD7f0
川#゚ -゚)「てめぇ、私が作ったチョコを投げるとは良い度胸だな!!」

もはや、女性に無表情の面影など微塵もなかった。

そこにいたのは鬼神。
怒りに身を任せ、暴力を強行する化け物。

殴る、蹴る、踏みつける。
『女』というものを既に捨てているとしか思えない。

そして、それを受けている青年は


(*∵)


喜んでいた。

この町には変態しかいない。



77: 以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします。 :2008/02/14(木) 23:09:28.48 ID:uvvnwD7f0
ドクオが空を見上げると雪が降っていた。
日が落ちて暗くなった空に、黒と白のグラデーションが出来る。

彼の肌に溶け込むように、消えて、また落ちてきて。

喪男達の集まりには似つかわしくない、ロマンチックなムード。
きっと、少し離れた場所では恋人達が喜んでいることだろう。


('A`)「帰ろう・・・・・・」



クーが青年を殴る音をBGMに

ドクオは、その場を後にした。



79: 以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします。 :2008/02/14(木) 23:11:36.93 ID:uvvnwD7f0
・・・・・・・・・・・・・・・
・・・・・・・・
・・・・

('A`)「バレンタインデー・・・・・か」

哀愁漂う背中。
寂しい男の末路。


('A`)「何で俺はもてないんだろうか・・・・・・」

顔だよ、顔。
気付いていないのが、もっといけない。


('A`)「でもさ、きっとどこかに俺を好きでいてくれる人が・・・・・」

僅かな希望に全てを賭けるか。
今日一日、あんな有様だったのに。



80: 以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします。 :2008/02/14(木) 23:12:49.49 ID:uvvnwD7f0
('A`)「雪、冷たいなぁ」

そりゃ、冷たいさ。
今更、何を言っているんだ。


('A`)「甘くて美味しかったらいいのにな」

どんだけ妄想してるんだ。
水道から、ジュース出ろと言ってたタイプだな?


('A`)「はは、それにしても寒い」

冬だもの。
雪ふってるじゃないか。


('A`)「チョコ・・・・・・欲しかったな」

・・・・・・・・・。

あーあ。



81: 以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします。 :2008/02/14(木) 23:14:02.27 ID:uvvnwD7f0





何で、『私』は



こんなやつに惚れたんだろう。





82: 以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします。 :2008/02/14(木) 23:16:39.11 ID:uvvnwD7f0
('、`*川「ちわっーす」

('A`)「・・・・・・えっ、誰?」

知らないってさ。
まぁ、話した事ないしね。


('、`*川「ここしばらくアンタをストーカー・・・・・・
     じゃなくて、今日のアンタが面白くて、少し後をつけてたものです」

('A`)「へ?へ?」

('、`*川「これ見てみれば、大体分かるよ」


(;'A`)「えええええええええええええ!!!」


私が見せたのはビデオの映像。
今日一日、彼の姿を映していたカメラ。



83: 以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします。 :2008/02/14(木) 23:18:35.64 ID:uvvnwD7f0
(;'A`)「何でこんなことを・・・・・!?」

('、`*川「他人の不幸って面白くない?」

('A`)「・・・・・は?」

('、`*川「あんたの悲惨な一日が愉快だったから、撮ってました」

今日ほど笑ったのは久しぶりだ。
本当に愉快な一日だった。


(;'A`)「酷い・・・悪魔・・・・・」

('、`*川「ははは、反省はしていない」

('A`)「そんな気がした」

初対面なのに、スラスラ言葉が出てくる。
ぶっちゃけ、何度も練習したしね。



85: 以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします。 :2008/02/14(木) 23:20:13.18 ID:uvvnwD7f0
('A`)「見返りに・・・」

('、`*川「何?」


('A`)「俺の不幸を生贄に・・・・・貴方のチョコ召還・・・っていうのは・・・」

('、`*川「それじゃ、悲惨な一日じゃなくなっちゃうじゃない」


('A`)「ですよねー。ははは・・・・・・」


カチッ


時計の針が、午前零時を指した。
バレンテインデーお終いってね。

・・・・・おめでとう、ドクオ。



86: 以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします。 :2008/02/14(木) 23:22:41.58 ID:uvvnwD7f0
('、`*川「はい、あげるよ」

('A`)「何これ?」

('、`*川「今さ、2月15日になったんだ」

('A`)「・・・どういう事?」


('、`*川「これで、悲惨な一日はお終いって訳」

('A`)「ああー、なるほど」

('、`*川「だから、お祝いにね」

('A`)「・・・・・・?」


(*'A`)「あ!」

気付いたか、鈍感ブ男が。



87: 以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします。 :2008/02/14(木) 23:23:56.29 ID:uvvnwD7f0
(*'A`)「こここ、これはまさかぁああ!!」

たかがチョコ如きでここまで喜ぶかね、普通。

でもまぁ、悪い気はしないか。
・・・・・・惚れてる男だしね。


(*'A`)「チョコ、チョコ、チョコだあああああああああ!!」

本当に良い笑顔するよなぁ。
格好悪いけど、なんか和んじゃうんだよなぁ。

今日一日、頑張ったもんね。
やっちゃいけないような事もしてたけどさ。

ま、お疲れ様。



89: 以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします。 :2008/02/14(木) 23:25:45.27 ID:uvvnwD7f0
(*'A`)「ありがと、ありがとね!!」


この満面の笑みを写真に収めておこう。

悲惨な一日とは同じフォルダに保存しよう。

たまには、こういうのも良いかもしれないしね。


どんなに嫌な一日があってもさ。

必ず良い日は訪れるって、覚えとけよ?

じゃないと、嫌な日が嫌な日のまま終わっちゃうじゃん。

良い日が来るための踏み台だと思うんだよ。



90: 以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします。 :2008/02/14(木) 23:27:41.44 ID:uvvnwD7f0
('、`*川「チョコ、大事に食べろよ?」


(*'A`)「うん!!」





もしかしたら


悲惨な一日の次の日が


そうなのかもね




―――('A`)の悲惨な一日のようです――



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