( ^ω^)ブーンが心を開くようです
- 184 : ◆ILuHYVG0rg :2007/02/06(火) 23:59:39.82 ID:Pq8gNNQw0
エピローグ
「「「「せーの!!」」」」
掛け声と共に、一斉に校門と道路との境目を飛び越える。
手に持っていた黒い筒が落ちそうになるのを止めながら、ブーンはみんなに向かって「やったお!」と喜びの声をあげた。
( ^ω^)「これで卒業だお!」
('A`)「なーんか、実感が湧かねえよなあ」
(´・ω・`)「式は終わったけれど、高校はすぐ目の前にあるもんね」
3月1日。
ニュー速高校では卒業式が終わり、校門前は人でごった返していた。
同級生が、親だとか先生だとか友達と喋っている光景は、なかなかに爽快だ。
学校にとっては1年に1度の、そして学生にとっては人生に1度しかない行事なのだから、当たり前なのだろうけど。
何かのクラブなのだろう、先輩と後輩のお別れ会みたいなことをやっている集団を横目に見つつ、
ブーンは学生服の1番上のボタンを外した。
式の間はずっとつけていたから、息苦しかったのだ。
ようやく楽になったものの、「もっと喜ぶんだお!」とあまり感動的ではないドクオとショボンに不満顔になるブーン。
- 187 : ◆ILuHYVG0rg :2007/02/07(水) 00:01:27.84 ID:WXXnRmP10
( ^ω^)「みんなが無事に卒業できたんだお! めでたいことだお!」
ξ゚听)ξ「そりゃあ、あんたは単位ギリギリだったもんねえ」
(;^ω^)「うっ、それは秘密だお、ツン……」
横から突っ込みを入れてくるツンに、ブーンはたじたじになる。
確かに、3年間成績が悪く、先生に頼んで補習や追試を受け続け、なんとか卒業させてもらったのだ。
お情けの卒業、と言ってもいいかもしれない。
だが、卒業は卒業に変わりなく、ブーンは自分でそれを誇らしげに思っていた。
ξ゚听)ξ「ま、いいけどね。あんたが卒業できたのは奇跡だし、いいものを見せてもらったわ」
('A`)「そうだな」
(´・ω・`)「奇跡体験アンビリーバボー」
( ^ω^)「うはwwwヒドスwwww」
先生や他の同級生との挨拶もそこそこに、ブーン達は親や荒巻院長と離れ、学校から外に出てその辺をぶらぶらと歩き始めた。
卒業式が終わった後、自分達が通っていた高校の周りを歩こうと、約束していたのだ。
卒業証書の入った円筒を片手に、学生服姿で歩くのはなかなか注目度抜群だが、まあそれはこの際気にしない。
- 190 : ◆ILuHYVG0rg :2007/02/07(水) 00:04:26.32 ID:WXXnRmP10
('A`)「どこに行くんだ?」
(´・ω・`)「さあ、発案者はブーンだし」
( ^ω^)「とりあえず歩くお。最後の思い出だお」
ξ゚听)ξ「家から近いんだから、いつでも見れるんだけどね」
高校の周りはなかなか都会然としている。
少し駅前まで歩けば、電気屋だとか商店街だとかが広がっており、人ごみにもまれることもある。
平日の昼間なので少しはマシだけど。
('A`)「お、山木モナアナだ」
(´・ω・`)「ああ、前にスキャンダルがあった……」
ドクオが見ているのは、巨大な電気屋の壁に貼り付けられているオーロラビジョンだ。
今はニュース番組でもやっているのか、固い表情の女性アナウンサーが、原稿を読んでいる映像が流されていた。
山木モナ『今回、新たに省に昇格した防衛省ですが、長官には総理推薦の−−氏が任命されるようで――』
(´・ω・`)「あ、あの人知ってる」
( ^ω^)「あの人?」
- 192 : ◆ILuHYVG0rg :2007/02/07(水) 00:05:59.76 ID:WXXnRmP10
(´・ω・`)「今回新たに長官になるとかいう人だよ。
確か『狐』ってニックネームでテレビとか雑誌にも出てて、有名だよ」
山木モナ『新長官は、外務省との共存を目指しているようで、【自衛隊は守るための力に過ぎない。それは人間として当然のこと】
という発言が以前から波紋を呼んでいます』
オーロラビジョンでは、年配風の男が映し出されていた。
年相応の皴を顔に刻んでいるその男が、どうやら長官になるらしい。
彼の両側を、2人の男がガードするように囲っていた。
その2人の男が、1人は筋肉隆々、1人はオタク系のひょろっとした人で、なんだかアンバランスで笑ってしまいそうになる。
('A`)「狐ねえ……サイボーグにされないように気をつけないとなwww」
ξ゚听)ξ「サイボーグ?」
ドクオの微妙に分かりづらいジョークを聞きつつ、さらに歩いていく。
電気街を抜け、住宅が密集する地域に入ったようだ。
なかなか治安はいいようで、道路も綺麗だ。
車がどんどんと通っていく大通りから、裏道に入っていく。
特に目立つものはなく、一戸建て住宅が延々と続いているだけだった。
- 193 : ◆ILuHYVG0rg :2007/02/07(水) 00:07:44.61 ID:WXXnRmP10
「ちょっと通るぜ!」
( ^ω^)「おっ!?」
ξ゚听)ξ「きゃっ!」
いきなり、自分達の間を1人の男が猛スピードで通り抜けていった。
ツンはしたたかに壁に腕を打ちつけ、「いったーい」と非難の声をあげる。
( ,,゚Д゚) 「おっと、すまんねえな、ゴラァ」
男はそのまま走り去っていく。
スーツ姿でカバンを持っている所から見て、会社員だろうか。
彼は、数十メートル先の曲がり角で知り合いと会ったのか、よく似た双子のような男達と何か話している。
そして、笑いあいながら、ゴルフのフォームをとりつつ車に乗っていった。
その車には、ある株式会社の名前が書いており、やっぱりサラリーマンだったか、とブーンは思った。
('A`)「ったく、もう少し丁寧に歩けよな」
(´・ω・`)「丁寧に歩くってどんな感じだい? それを言うなら、落ち着いて、とかだと思うけど」
('A`)「人の揚げ足を取るなっての」
更に住宅地を歩いていく。
と言っても、人の家の前を歩いて何かがあるわけででもない。
- 195 : ◆ILuHYVG0rg :2007/02/07(水) 00:09:36.00 ID:WXXnRmP10
そろそろ飽きを覚えてきた頃、ブーンは「ピンポンダッシュでもするかお」と冗談交じりに思いついた遊びを提案してみた。
('A`)「はあ? お前、小学生か?」
(´・ω・`)「あれって、1度やられたことあるんだけど、本当にむかつくんだよね。
(´・ω・`)から(`・ω・´)になりそうな感じ」
ξ゚听)ξ「あんた馬鹿?」
( ^ω^)「けど、こういうのは学生じゃないとできないおwww やってみるおwww」
ブーンは嬉々として近くの家のインターホンまで走っていく。
だが、次の瞬間曲がり角から何かが飛び出してきて、思いっきりそれにぶつかってしまった。
「うわっ!」
( ^ω^)「ぶはっ!」
鉄のようなものに当たったと思ったら、それは車椅子だった。
- 197 : ◆ILuHYVG0rg :2007/02/07(水) 00:12:00.62 ID:WXXnRmP10
- _
( ゚∀゚)「やべっ。つー、大丈夫か?」
(*゚―゚)「……」
つー、と呼ばれた女性が車椅子に乗っていたのだろう。
盛大にこけてしまった椅子から投げ飛ばされた女性は、地面にうつぶせになったまま動かない。
どうやら話すこともできないのか、車椅子の補助をしていた男性の問いには何も答えず、男性のされるがままになっていた。
女性に怪我はなく、男性がゆっくりと車椅子に乗せる。
_
( ゚∀゚)「ふぅ……大丈夫みたいだな」
( ^ω^)「あの、すみませんだお」
_
( ゚∀゚)「いや、前を見てなかった俺も悪いしな。これからは互いに気をつける、ってことでww」
( ^ω^)「わかりましたお。本当にすみませんでしたお」
「ジョルジュさん!」
いきなり後ろから声がして、振り返ると、今度もまた女性が立っていた。
女性は、車椅子の人とよく似ている顔立ちをしていた。少し幼い感じもしたが。
(*゚ー゚)「近くまで来たなら電話をくださいって言ったじゃないですか。あれ? 何かありました?」
_
( ゚∀゚)「いや、何もねえよ、しぃ」
しぃ、と呼ばれた女性は不安げに車椅子に近付いていく。
- 199 : ◆ILuHYVG0rg :2007/02/07(水) 00:14:36.27 ID:WXXnRmP10
- _
( ゚∀゚)「じゃ、家にお邪魔するかな。高岡は後で来るってよ」
(*゚ー゚)「そうですか。お茶菓子はたくさん必要ですね。ね、お姉ちゃん」
( ゚∀゚)「じゃ、すまなかったな」
( ^ω^)「あ、はい」
(*゚―゚)「……」
(*゚∀゚)
一瞬、車椅子の女性が笑ったような気がして、ブーンはドキリと胸を震わせた。
なんだか、とても純粋で、綺麗な笑みだった。
彼らはほほえましげに、住宅街へと消えていった。
それを見送りつつ、ブーンは呆け顔で、ツン達の所へと戻る。
ξ゚听)ξ「何かあったの?」
( ^ω^)「いや、ちょっとぶつかっちゃったんだお」
('A`)「もう少し前を見ろ、前を」
(´・ω・`)「僕は後ろが好きだけどね」
住宅街から抜け、今度は大通りに出た。
- 203 : ◆ILuHYVG0rg :2007/02/07(水) 00:17:08.52 ID:WXXnRmP10
あまり車の量は多くないものの、信号が変わるのが早いことで有名で、事故多発地域だと聞いている。
ブーン達は、信号が青になるのを待ちながら世間話をしていた。
( ^ω^)「だから、ブルーアイズは最強なんだお」
(‘A`)「ねーよwww」
(´・ω・`)「うははは、これが俺のオベリスクだ〜、なんていう社長が使ってるんじゃ、たかが知れてるね」
ξ゚听)ξ「あ、青になったわよ」
( ^ω^)「渡るおwww」
ブーンは一番乗りとばかりに横断歩道を勢いよく渡っていく。
だが、その瞬間大きなクラクションが鳴り響いた。
( ^ω^)「お?」
ξ゚听)ξ「ブーン!」
横から大型トラックが突っ込んでくる。
どうやら赤信号でもギリギリ渡れると思ったようだ。
とてつもない質量を持った物体が、猛スピードでこちらに突っ込んでくる。
ブーンはトラックから目を離せない。足も動かない。
死ぬ……!
- 205 : ◆ILuHYVG0rg :2007/02/07(水) 00:19:55.51 ID:WXXnRmP10
「危ない!」
いきなり自分の身体が宙に浮き、歩道へと突き飛ばされた。
いや、抱きかかえられたと言う方が正しいだろうか。
ξ゚听)ξ「ブーン!」
('A`)「大丈夫か!」
トラックが猛スピードで横切っていくのを見ながら、自分を助けてくれたのが女性だと気付いた。
ブーンは立ち上がり、「あ、ありがとうございますだお」とお礼を言う。
川 ゚ -゚) 「いや、気にしなくていい。これも仕事だ」
真面目な顔でそう答えた女性は、男物のスーツを着ていて、けっこうな美人だった。
地面に落ちていた手帳を拾い上げて、それを胸ポケットに直す。
一瞬見えた金色のマークみたいなものは、もしかして警察のものだろうか?
川 ゚ -゚) 「まったく……ナンバーは覚えたからな、必ず捕まえてやる。安心しろ」
( ^ω^)「は、はあ」
- 207 : ◆ILuHYVG0rg :2007/02/07(水) 00:22:13.21 ID:WXXnRmP10
川 ゚ -゚) 「ではな。気をつけて帰れよ、少年」
パタン、と肩を叩かれた所で、ブーンは奇妙な感じを覚えた。
なんだか、前にもこんな風に肩を叩かれて励まされた経験があるような感じがする。
うわさのデジャブ、と言う奴か?
それはあちらも感じているのか、スーツ姿の女性も、肩に手を置いたまま動きを止めていた。
( ^ω^)「……?」
川 ゚ -゚) 「……」
ブーンは目を見開き、彼女の顔を見つめる。
女性もまた、呆然と自分の顔を見つめてくる。
ξ゚听)ξ「あの……どうしました?」
川 ゚ -゚) 「あ、ああ。いや、なんでもない。すまない。それでは私はこれで失礼する」
( ^ω^)「ありがとうございましただお。あ、あの名前は……」
川 ゚ -゚) 「VIP警察のクーというものだ。それではな」
女性は颯爽と去っていった。
- 209 : ◆ILuHYVG0rg :2007/02/07(水) 00:24:17.19 ID:WXXnRmP10
ブーンは呆然とその後姿を見つめる。
その後ろ姿もどこかで見たことのあるような……?
すごく、懐かしくて、それでいて……暖かくて……
ξ♯゚听)ξ「なーに、じっと見つめてんのよ!」
( ^ω^)「つ、ツン、痛いお! 耳を引っ張らないでほしいお!」
耳の痛みで既視感は瞬く間に消える。
気になるけれども、深く考える必要も無いだろう。
妙に機嫌の悪くなったツンを先頭に、ブーン達はさらに歩き続けた。
たどりついた先は、広い公園。
昔から遊んでいる馴染みの公園だった。
- 213 : ◆ILuHYVG0rg :2007/02/07(水) 00:35:37.21 ID:WXXnRmP10
( ^ω^)「ふう、一休みだお」
(´・ω・`)「じゃあ、僕はジュースでも買ってくるよ」
('A`)「お、気が利くねえ。じゃあ、俺はペプシコーラで、ダイエットな!」
(´・ω・`)「君も来るんだよ」
('A`)「なんで!?」
(´・ω・`)「なんでも! さあ、来い! 地獄の快楽を見せてやるよ!」
('A`)「助けて〜」
ああ言ってはいるものの、和気あいあいと自動販売機に向かっていく2人が、時々分からなくなる。
ブーンは砂場に立ち、ツンはベンチに座り、ちょっとした静寂の時が流れた。
ξ゚听)ξ「……ねえ、あんたは高校出たらどうするの?」
( ^ω^)「僕かお? とりあえず前期の大学が受かったらそこに行くお」
ξ゚听)ξ「その後は?」
( ^ω^)「じぇんじぇん考えてない」
- 214 : ◆ILuHYVG0rg :2007/02/07(水) 00:37:41.31 ID:WXXnRmP10
ξ゚听)ξ「そっか……そうよね。私も同じ。大学行った後は何するか、全然決まってない」
( ^ω^)「ドクオはエロゲーの会社に入る。ショボンは医者……僕達2人だけ置いてけぼりかお」
ξ゚听)ξ「ま、なんとかなるわよ。道なんていくらでもあるんだし」
( ^ω^)「……そうだお」
そうだ。可能性なんて無限大にある。
一歩一歩、地道に進んでいけばいいんだ。
そうすれば、世界を変えることだってできるはずだから。
( ^ω^)「あ……ツン、その指輪……」
ξ゚听)ξ「ようやく気付いたのね、まったく鈍いんだから」
ツンの右手の薬指にはめられている指輪は、クリスマスプレゼントにあげたものだ。
彼女は顔を赤くして、『仕方ないからもらってやるわよ!』と言って奪い取ったが、どうやらちゃんと着けてくれているようで安心した。
捨てられているかも、なんて思ったりもしたんだから。
( ^ω^)「……ありがとうだお」
ξ゚听)ξ「ん、何が?」
( ^ω^)「一緒にいてくれて、だお」
ξ゚听)ξ「ばっ……」
- 215 : ◆ILuHYVG0rg :2007/02/07(水) 00:39:46.12 ID:WXXnRmP10
ξ////)ξ「ば、ばかっ! べ、別にあんたと一緒にいたいわけじゃないんだからね!!」
ふふ、とブーンは笑った。
砂場には木の棒があったが、それを無視して空を見上げた。
空は綺麗だ。こうしていれば、どこまでだって飛んでいけるような気分になる。
けど、その分空は怖い。もし飛ぶことができたとしても、それだけ怖いことが増えるだろう。
けど、そんなものは乗り越えていけばいい。
いつだって恐怖は自分の心を惑わすけれど、しっかりと自分を持っていれば打ち勝てる。
そうだろう?
それが、いじめを受けていた時に、友達3人からもらった言葉や、
自分の胸の中にある、不可思議な様々な言葉から教えてもらったこと。
ブーンはしっかりと空を見つめた。
もう空は怖くない。
翼はみんなの心の中にあるんだ。
( ^ω^)ブーンが心を開くようです 完
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