( ^ω^)ブーンが心を開くようです
- 6: ◆ILuHYVG0rg :2007/02/03(土) 21:31:28 ID:
- 第28話
見慣れない場所で目が覚める、なんてことはもう何度も経験したことだ。
けど、ベッドではなく地面の上で目覚めるなんてことは、初めての経験だった。
硬い地面と土の匂いと共に、ブーンは自分がうつぶせに倒れていることに気がついた。
そして、身体がまったく動かせないこと、言葉も発せられないこと、目だけは動くこと、
それだけを確認し、ああこれはあれだな、と思った。
「さて、お前はあいつを殺すのか?」
唐突に横から聞こえてきた声に、ブーンは目だけを動かしてその声の主の姿を求めた。
長い髪と、強い意志を秘めた瞳。
クーの顔がそこにはあった。
- 7: ◆ILuHYVG0rg :2007/02/03(土) 21:32:44 ID:
( ^ω^)「クーさん……」
川 ゚ -゚) 「何度も言っているが、これはお前の心の中にいる人間の姿に過ぎない。もう分かっているはずだろう?」
( ´ω`)「『従者』さんかお……」
夢か現実かわからないこの世界に現れては、意味不明な問答を繰り返す『従者』。
まさか今現れるとは思わず、しかもクーの姿をとるなんてことも予想がつかず、
ブーンは一瞬でも彼女が生き返ったのかと勘違いした自分を恥じた。
彼女は死んだ。
もう生き返ることなんてありえない。1度失った命は、永遠に戻ることはないのだから。
わかってはいても、希望を抱いてしまう自分が悲しい。
川 ゚ -゚) 「で、だ。もう一度聞く。お前はあいつを殺すのか?」
『従者』は、まさしくクーの顔と言葉で質問してくる。
本当に彼女がそこにいるかのように錯覚してしまったブーンは、悲しくなる胸のうちを抑え、「当たり前だお」と答えた。
- 7: ◆ILuHYVG0rg :2007/02/03(土) 21:32:44 ID:
( ^ω^)「クーさん……」
川 ゚ -゚) 「何度も言っているが、これはお前の心の中にいる人間の姿に過ぎない。もう分かっているはずだろう?」
( ´ω`)「『従者』さんかお……」
夢か現実かわからないこの世界に現れては、意味不明な問答を繰り返す『従者』。
まさか今現れるとは思わず、しかもクーの姿をとるなんてことも予想がつかず、
ブーンは一瞬でも彼女が生き返ったのかと勘違いした自分を恥じた。
彼女は死んだ。
もう生き返ることなんてありえない。1度失った命は、永遠に戻ることはないのだから。
わかってはいても、希望を抱いてしまう自分が悲しい。
川 ゚ -゚) 「で、だ。もう一度聞く。お前はあいつを殺すのか?」
『従者』は、まさしくクーの顔と言葉で質問してくる。
本当に彼女がそこにいるかのように錯覚してしまったブーンは、悲しくなる胸のうちを抑え、「当たり前だお」と答えた。
- 8: ◆ILuHYVG0rg :2007/02/03(土) 21:34:46 ID:
( `ω´)「あいつを倒さないと、世界はもっと混乱するお。人もいっぱい死ぬお」
川 ゚ -゚) 「そうか? だから戦う、と?」
( `ω´)「クーさんを殺したあいつらを許せない……僕はあいつを止めるお! たとえ殺してでも!」
川 ゚ -゚) 「守りたいものを守るために?」
( `ω´)「そうだお!」
川 ゚ -゚) 「それがお前の心なら、私は何も言わない」
横で背筋をぴんと伸ばして立っている『従者』。
なんだろう。『従者』がいつになく緊張感に溢れている。
クーの姿だからなのだろうか? 周りに神経を張り詰めているその姿は、ショボンやドクオの姿の時とは大違いだ。
川 ゚ -゚) 「行かなくてはならないな。戦うために」
( ^ω^)「……そうだお」
『従者』は一方向を見つめながら、呟く。
- 9: ◆ILuHYVG0rg :2007/02/03(土) 21:36:32 ID:
川 ゚ -゚) 「ならば気をつけろ。外の光が来るぞ」
( ^ω^)「外の……光?」
どこかで聞いたことのある言葉だった。けど、思い出せない。
記憶の底をほじくり返していると、『従者』がおもむろにこちらの身体に手を置き、
うつぶせから仰向けへとひっくり返してくる。
( ^ω^)「な、なにを」
『従者』は何も言わず、掌をこちらの額に乗せてくる。
いつものあれだ。額に掌を乗せてきて、こちらの意識を失わせる、あれ。
『従者』は顔をじっと見つめてくる。
そして、静かに言った。
川 ゚ -゚) 「お前が……扉を開くことを願う」
え?
そう思った瞬間、ブーンの意識は飛んだ。
※
- 10: ◆ILuHYVG0rg :2007/02/03(土) 21:37:48 ID:
※
通信兵「周辺の『影』は全て消滅。小競り合いが続いていますが、ほとんどの地区での戦闘は終了しています」
狐「わかった。引き続き警戒を怠ることのないように伝えてくれ」
兵士「所長、連合軍の指揮官から通信が来ています。敵の情報がほしいとのことです」
狐「少し待たせてくれ。ちょっとやることがあるんだ」
兵士「了解です。その怪我……衛生兵を呼びましょうか?」
狐「いや、かまわない。任務に戻れ」
兵士「はっ!」
『VIP』の指令部を司るテントに戻ってくるやいなや、
狐は色々な人から報告を受け、指示を飛ばし、軍全体の指揮官としての職務を全うしていた。
すでに各地での戦闘は終わり、『VIP』の中でもようやく息のつける時間が戻ってきていた。
- 11: ◆ILuHYVG0rg :2007/02/03(土) 21:38:59 ID:
『影』は作戦により殲滅完了。
敵兵士も『VIP』と外国の連合軍に追い詰められ、壊滅状態なのだという。
狐に連れられて指揮官用テントに戻ってきたドクオは、中にツンがいることを確認して、ほっと息をついた。
ようやく帰ってこれた。あの地獄のような戦場から、この場所に。
あそこは普通の人間がいる場所じゃない。
戦っている時は無我夢中で気がつかなかったが、帰ってくるまでの間に見た戦場跡は悲惨そのものだった。
肉のこげた、目の奥を焼くような異臭。
血と土の匂いが混じりあい、見渡せばそこかしこに死体が転がっている。
手を伸ばせば触れる距離にある、かつて人間であった「モノ」は、
変な方向に足が曲がっていたり、身体のどこかの部分がなくなっていたりしていた。
敵味方は関係ない。平等に「死」を受け入れた物体、それが死体だ。
あそこに30分もいれば、きっと自分は気が狂っていた
- 12: ◆ILuHYVG0rg :2007/02/03(土) 21:40:02 ID:
ドクオはぐらぐらと揺れる頭を抱えながら、ツンの傍に立ち、彼女の様子を見てみた。
ツンは相変わらずの無表情でみじろぎもしない。車椅子は出て行った時と同じ場所にあったままだ。
やっぱり彼女はもう……
(*゚ー゚)「所長! その傷は……!」
狐「やあ、ちょっとドジってね。時間もないから止血しかしてないんだけど……」
(*゚ー゚)「じっとしていてください。今から治しますから」
通信機で様々な部署と連絡を取り合っていたしぃが、狐の腕の怪我に気付いてその手を取った。
1発の銃弾によるその怪我は、止血こそしたもののちゃんとした治療は受けていない。
さっきは衛生兵を呼ぶのも断っていた狐だったが、今度は素直にしぃの言うことを聞いていた。
おそらく最初から彼女の治療を受けるつもりだったのだろう。
しぃが怪我の部分に手を当てると、みるみるうちにその傷が塞がっていく。
『気』を扱えない自分にはわからないけど、おそらくそこに『気』が照射されているのだろう。
しぃの治療を初めて見たドクオは、その効果の大きさに驚いていた。
本当に、自分とは全然違う。こういう力を自分も持てたらいいのに。
- 13: ◆ILuHYVG0rg :2007/02/03(土) 21:41:23 ID:
(*゚ー゚)「……終わりました。けど、後で病院にも行ってくださいね。これでも完全に治すのは不可能なんですから」
心配そうに言うしぃに、狐は少し笑みを浮かべながら「わかってる」と答えた。
狐「よし……今の状況は?」
(*゚ー゚)「ほとんどのエリアで戦闘は終わっています。
後は残存兵との小競り合いが少し残っていますが、こちらの勝利と確定してもいいと思います」
すぐに仕事の顔に戻ったしぃから、現在の状況が話された。
この場所の戦闘は『VIP』の勝利で決せられたが、ブーン達の方はまだ不明。
連合軍の指揮官が、ジョルジュ達がいる場所に向かおうとするのを、なんとか止めている状況なのだという。
狐「通常の武器しか持たない連合軍じゃあ、行っても無駄だね。連合軍の総指揮を取っているのは誰だい?」
(*゚ー゚)「アメリカ陸軍のプギャー大佐です」
狐「彼か……血気盛んな彼のことだ。止めても聞く耳を持たないだろうなあ」
(*゚ー゚)「とりあえず『影』についての情報と、現在『VIP』の隊員がそこで戦っていることは伝えておきました」
- 14: ◆ILuHYVG0rg :2007/02/03(土) 21:42:19 ID:
狐「まあ、それぐらいでいいだろうね。で……衛星画像はまた止まってしまったのかい?」
(*゚ー゚)「エラーが発生してしまいまして……現在復旧中です」
ドクオは傍にあったモニターに目を移した。
ブーン達の状況を映し出すその画面は、今はブラックアウトしてしまっている。
彼が無事なのかどうかを確かめたかったのに……歯がゆいこと、この上ない。
(*゚ー゚)「連合軍は原子力潜水艦や戦闘機まで持ち込んできたようで、市民が混乱しています」
狐「困るな……けど、非常事態だから仕方ない、か」
しぃと狐がまだ何かを話しているのをぼーっと聞きながら、ドクオは横に立つショボンの様子をうかがってみた。
(´・ω・`)「……」
彼はこのテントに入ってから一度も言葉を発してない。
機関銃を抱えながら、ずっと顔を俯けている。
何かを考えているのか、それとも何も考えてないのか。よくわからない。
- 15: ◆ILuHYVG0rg :2007/02/03(土) 21:43:32 ID:
悩みを抱えていても口には出さない彼のことだから、尋ねても無駄だろうけど、ドクオはあえて「どうした?」と声をかけてみた。
('A`)「さっきから黙りこくって……腹でも痛いのか?」
(´・ω・`)「それならすぐにトイレに行ってるよ。まあ……ちょっと考え事をね」
('A`)「ふーん」
興味なさそうに振舞うものの、ドクオは彼の意外な表情に少し驚いていた。
ショボンの無理をした笑顔なんて、初めて見た。
いったい何を考えているのだろうか……?
『あー、あー、こちらぃょぅだょぅ。応答願うょぅ』
いきなり無線機からそんな声が聞こえて、ドクオ達は一斉に顔を上げた。
マイクを急いで装着したしぃが、「こちら本部、どうぞ」と答える。
- 16: ◆ILuHYVG0rg :2007/02/03(土) 21:44:46 ID:
(=゚ω゚)ノ『現在、ジョルジュ達の5人を確認。4人は排除完了したょぅ』
(*゚ー゚)「4人? こちらでも彼の仲間1人を確認しました。じゃあ残りは……」
(=゚ω゚)ノ『ジョルジュただ1人、だょぅ。けど、僕は肩を負傷して戦闘不能。クーさんは……その……』
狐「……まさか」
(=゚ω゚)ノ『……』
ぃょぅが黙ってしまい、テントの中は静寂に包まれた。
まさか、という狐の言葉はドクオの頭の中にも浮かび、最悪の事態を想像してしまいそうになるのを、頭を振って否定する。
(*゚ー゚)「ぃょぅさん、まさか……!」
(=゚ω゚)ノ『……クーさんの遺体を発見したょぅ。全身を矢で貫かれてて……蘇生は不可能。死亡を確認しましたょぅ』
一瞬にしてその場の空気が凍りついた。
クーが……あのクーが死んだ?
最初に自分たちを助けれてくれて、いつでも自分たちに優しくしてくれた、あの人が死んだ?
信じられない、と思ったドクオだったが、狐としぃの絶望的な表情を見てそれが真実であると確信した。
これも戦争だというのか? 大事な人が次々と死んでいくこの状況が、戦争?
なら、戦争なんて……
- 17: ◆ILuHYVG0rg :2007/02/03(土) 21:45:53 ID:
(=゚ω゚)ノ『現在はブーン君1人がジョルジュに立ち向かってる状況だょぅ。
今からそちらに戻るつもりなので、救援を頼むょぅ』
狐「了解した。ヘリをそちらに向かわせるから、その場で待機してくれ」
ドクオは再び頭をトンカチで殴られたかのような衝撃を受け、愕然とした。
ブーンがジョルジュと戦っている? 1人で?
そんな……そんなことがあっていいのか?
ブーンはただの学生でしかない。なのにこんな悲しい戦いに巻き込まれて……それでいいのか?
彼は、大丈夫なのだろうか?
そう思っていると、ドクオはひとつの異変に気がついた。
ショボンと自分が持っている機関銃――AKが、何やら光を帯び始めたのだ。
ブーンの力によって『影』を倒す能力を得たこの銃だが、
今はその光が内側から出たがっているかのように、次々に光度を増してくる。
- 18: ◆ILuHYVG0rg :2007/02/03(土) 21:47:09 ID:
('A`)「な、なんだあ?」
(´・ω・`)「いったい何が……」
狐「どうしたんだい?」
異変に気付いた狐が、怪訝な顔で尋ねてくる。
('A`)「いや、いきなり銃が光り出して……」
狐「それはブーン君に光を注いでもらったらしいけど……心当たりは?」
('A`)「いや、全然……」
そう答え、狐の後ろにいたしぃの様子もおかしいことに気付いた。
('A`)「しぃさん?」
だが、彼女は目を見開き、口を半開きにしているだけで、何も答えてはくれなかった。
(*゚o゚)「あ……あぁ……」
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