( ・∀・)モララーと老人のようです

1: 以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします。 :2008/02/25(月) 18:50:47.67 ID:szkxK11I0
ある町のある小学校のグラウンド。
運動会を間近に控え、元気いっぱいの小学生が徒競走の練習をしていた。
その中に、明らかに周りの子達とは様子の違う少年がいた。

彼は運動音痴だった。

( ・∀・)「あぁ、僕も足が速くなりたい」

小学校では運動のできる子がスターになれた。
彼はそんなスターに憧れていた。



3: 以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします。 :2008/02/25(月) 18:55:33.66 ID:szkxK11I0
その日の帰り、彼は友達と別れ、一人家路についていた。

( ・∀・)「なんで僕は運動音痴なんだろう」

( ∵)「それは、君についてる幽霊のせいだよ」

彼の横にいつのまにか男が立っていた。
全身真っ黒の服装をした怪しい老人だった。

( ・∀・)「幽霊って、なんだよ。怖いことを言うな」

( ∵)「幽霊は誰にでもついているんだ」

( ・∀・)「ほんと?僕にはどんな幽霊がついてるの?」

( ∵)「運動音痴の幽霊さ」

( ・∀・)「そんなぁ」



4: 以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします。 :2008/02/25(月) 18:58:03.59 ID:szkxK11I0
( ∵)「君が望むなら、私は君の幽霊を変えてあげられる」

( ・∀・)「ほんと!?僕運動が得意な幽霊がいい!」

( ∵)「わかった」

老人は手に持っていた鞄から分厚い紙を取り出した。
そして、消しゴムと鉛筆で何かを書き換えた。

( ∵)「これで君は運動が得意になった」

( ・∀・)「本当!?ありがとう!」



7: 以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします。 :2008/02/25(月) 19:01:45.89 ID:szkxK11I0
彼は駆け足で家に帰った。
足は確かに速くなっていた。

後日、運動会の徒競走で彼は一等賞となった。
それから彼は体育で活躍し、学校で人気を得た。
中学校ではサッカー部に入部し、それなりに活躍した。

しかしその反面、勉強はからっきしだった。
小学校のころはよくできたほうだった。
高校受験を控え、彼は焦っていた。

レベルの低い高校に入ることもできた。
だが彼はその選択に納得できなかった。

( ・∀・)「くそっ、頭が良くなりたい」

努力していないわけではなかった。
だがいくら勉強しても身につかなかった。



8: 以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします。 :2008/02/25(月) 19:04:42.20 ID:szkxK11I0
( ・∀・)「なんで俺はこんなに馬鹿なんだろう」

( ∵)「それは、君についてる幽霊のせいだよ」

彼の後ろにいつかの老人が立っていた。

( ・∀・)「ん、昔に会ったことなかったか」

( ∵)「あぁ、君と私は昔に会ったことがある」

( ・∀・)「思い出した。幽霊を取り替えるとか言ってたじいさんか」

( ∵)「そのじいさんだろうな」

( ・∀・)「あの時はサンキューな。おかげで人気者になれた」

( ∵)「そうか」



10: 以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします。 :2008/02/25(月) 19:08:47.00 ID:szkxK11I0
( ・∀・)「で、なに。俺が馬鹿なのは幽霊のせいだって?」

( ∵)「あぁ、君の幽霊は運動は得意だがどうしようもなく馬鹿なんだ」

( ・∀・)「運動が得意といっても、たかが知れていたけどな」

( ∵)「そうか」

( ・∀・)「なぁじいさん、もう一回俺の幽霊を変えてくれよ」

( ∵)「どんな幽霊を望むんだい」

( ・∀・)「勉強のできるやつだ」

( ∵)「わかった」

老人は手に持っていた鞄から分厚い紙を取り出した。
そして、消しゴムと鉛筆で何かを書き換えた。

( ∵)「これで君は勉強ができるようになった」

( ・∀・)「サンキューじいさん!」



11: 以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします。 :2008/02/25(月) 19:12:15.67 ID:szkxK11I0
その後彼は第一志望の高校に合格した。
定期テストでは上位をキープし続けた。
学校側からはそれなりの大学に行くのではと期待されていた。
そして事実、彼はそれなりの大学に合格した。

しかし、彼の高校生活は寂しいものだった。
三年間、友達がまったくできなかった。
小,中と、彼は人気者だった。
友達ができないのは大学に行っても変わらなかった。

( ・∀・)「寂しい毎日だな」

大学に通い。バイトに行って、家に帰る。
そこでの人との会話は、事務的なものだけだった。



12: 以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします。 :2008/02/25(月) 19:16:04.33 ID:szkxK11I0
( ・∀・)「なんで僕には友達ができないんだろう」

( ∵)「それは、君についてる幽霊のせいだよ」

老人がまたもや彼の前に現れた。

( ・∀・)「あ、あなたは」

( ∵)「覚えているのか」

( ・∀・)「忘れるわけがありません。何度あなたに会いたいと思ったことか」

( ∵)「なぜだい」

( ・∀・)「私はあれから、確かに頭が良くなりました。まぁそれなりではありますが」

( ∵)「それが君の望みではなかったのか」

( ・∀・)「えぇ、それには感謝しています。しかしその代わり、まったく友人ができなくなりました」

( ∵)「あぁ、それは君の幽霊が勉強はできるが友達のつくれないやつだからだ」



13: 以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします。 :2008/02/25(月) 19:19:46.98 ID:szkxK11I0
( ・∀・)「そんなところだろうと思いましたよ」

( ∵)「それで、また幽霊を変えたいのかい」

( ・∀・)「えぇ」

( ∵)「どんなのが望みだい」

( ・∀・)「友達付き合いのうまいやつを。しかし、とんでもない馬鹿にはなりたくない」

( ∵)「ちょっと待ってくれ」

老人は手に持っていた鞄から分厚い紙を取り出した。
それから、パラパラと紙をめくり、何かを調べた。

( ∵)「ふむ、大丈夫だ」

そして、消しゴムと鉛筆で何かを書き換えた。

( ∵)「これで君は友達付き合いがうまくなった」

( ・∀・)「ありがとうございます」



14: 以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします。 :2008/02/25(月) 19:23:00.65 ID:szkxK11I0
その後彼は大学で友人をつくることができた。
バイトの同僚に仲良くなった人もいた。
休日には一緒に遊んだり、馬鹿なこともしたりした。
しかし彼は心からその友人を信用できなかった。

やがて、就職活動の時期になった。
彼はいくつもの会社と面接したが、どこも彼を採用しなかった。

( ・∀・)「なんでどこも採用してくれないんだ」

彼はフリーターとなった。
毎月ギリギリの生活を強いられた。



16: 以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします。 :2008/02/25(月) 19:26:13.20 ID:szkxK11I0
( ・∀・)「金が欲しいなぁ、なんでこんなことに」

( ∵)「それは君についてる幽霊のせいだよ」

彼の前に老人が現れた。

( ・∀・)「待ってましたよ」

( ∵)「待っていたとは?」

( ・∀・)「僕が就職できないのは僕の幽霊が友達付き合いはうまいが就職できないやつだからでしょう」

( ∵)「あぁ、そのとおりだ」

( ・∀・)「友達付き合いはうまくなったが、その友達がどうも信用ならないやつらだった」

( ∵)「そうか」



19: 以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします。 :2008/02/25(月) 19:29:36.46 ID:szkxK11I0
( ・∀・)「ぜひ、また、変えてもらいたい」

( ∵)「どんなのが望みだい」

( ・∀・)「金持ちになれるやつ。それも中途半端じゃない、世界的な大富豪に」

( ∵)「待ってくれ」

老人は手に持っていた鞄から分厚い紙を取り出した。
それから、パラパラと紙を、めくり、何かを調べた。

( ∵)「ふむ、大丈夫だ」

そして、消しゴムと鉛筆で何かを書き換えた。

( ∵)「これで君は大富豪になれる」

( ・∀・)「ありがとうございます」



23: 以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします。 :2008/02/25(月) 19:34:06.03 ID:szkxK11I0
その後彼は宝くじの一等を当てた。
その金をもとに起業し、大きな会社をつくりあげた。
彼のビジネスは世界規模で展開され、会社は世界的な大企業になった。
やがて彼は長者番付の上位に名を連ねるほどになった。

しかし、彼には金しかなかった。
起業したころに、両親を亡くした。
結婚することもなく、友人もいない、天涯孤独の身であった。

金で買える、ありとあらゆる物を手に入れた。
買うものがなくなって、孤児院をつくったり寄付をしたりした。
それでも彼の心は満たされなかった。

(  ∀ )「やっぱり……孤独は辛いな」

彼も歳をとった。
そんな彼に、欲望といえばひとつしかなかった。



26: 以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします。 :2008/02/25(月) 19:37:25.33 ID:szkxK11I0
( ・∀・)「普通の……普通の生活がしたい」

( ∵)「そうか」

( ・∀・)「やぁ、随分と久しぶりですな」

老人が彼のもとに現れた。

( ・∀・)「そういえばあなた、私が子供の時から変わっていませんね」

( ∵)「あぁ」

( ・∀・)「私にはわかっていますよ」

( ∵)「なんだい」

( ・∀・)「あなたは、人の幽霊を変えることができる幽霊なんだ」

( ∵)「そのとおり」

( ・∀・)「その代わり、成仏できない」

( ∵)「そのとおりだ」



30: 以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします。 :2008/02/25(月) 19:40:25.84 ID:szkxK11I0
( ・∀・)「また、私の幽霊を変えてくれるのですか」

( ∵)「君が望むのならな」

( ・∀・)「僕は、普通の生活が送りたい」

( ∵)「えらく抽象的だな」

( ・∀・)「できますか」

( ∵)「できるとも」

老人は手に持っていた鞄から分厚い紙を取り出した。
そして、消しゴムと鉛筆で何かを書き換えた。

( ∵)「これで君は普通の生活を送れる」

( ・∀・)「ありがとう……ございます」



33: 以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします。 :2008/02/25(月) 19:43:07.41 ID:szkxK11I0
その後、彼は会社の経営から手を引いた。
都会の大きなマンションから、田舎の小さな家に引っ越した。
彼の望む普通の生活を手に入れることができた。

暮らしは決して裕福ではなかった。
しかし、彼は金よりも大切な物を手に入れた。
あたたかい近所付き合い、そして彼の作った孤児院の子供たちとのつながり。

それから、彼の前に老人が現れることはなかった。



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