/ ,' 3 羊と羊飼いと天使のようです
- 1: 以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします。 :2008/03/08(土) 22:05:50.59 ID:h59ItWB30
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僕は信じていた。
大空には、雲の上には羊たちのための国があるんだって…
そして、いつかそこへ行くんだって…
/ ,' 3 羊と羊飼いと天使のようです
- 3: 以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします。 :2008/03/08(土) 22:08:16.07 ID:h59ItWB30
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いつだったか、羊飼いのおじいさんが言っていた。
/ ,' 3「この大空の上にはな、わしたち羊飼いや、お前たち羊のための国があるんだそうだ。
ほうら、空に雲が浮かんでいるだろう。
あれは、お前たちの仲間がたくさん集まっているから、ああなるんだそうだ。
たまに灰色になるときがあるだろう?
あれは、空にいる羊たちが悲しくなって泣く時に灰色の毛になるからなんだ。」
僕はおじいさんの話を聞くのが好きだった。
そして、そのことを周りの仲間に話してあげたんだ。
でも、誰も信じなかった。
僕が皆から嫌われているのもあった。いつも、一人ぼっちだったから。
「そんな馬鹿な話あるもんか。馬鹿げてるよ」と皆は口々に言った。
でも、理由はそれだけじゃなかったんだ。
だって、僕以外に誰もおじいさんの言葉を、人間の言葉を理解できなかったのだから…
- 4: 以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします。 :2008/03/08(土) 22:10:19.65 ID:h59ItWB30
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確かに僕も、昔は普通の羊と何も変わらなかったよ。
そりゃ、おじいさんが何かを喋っているのは分かっていたんだ。
その表情や言い方でおじいさんの感情を察する事はできた。
でも、それは他の生き物たちが話す言葉よりも長く複雑で、何を言っているのか理解できなかった。
でも、ある日を境に分かるようになったんだ。
いつも、山の草原へ行く途中、おじいさんは羊飼いの歌を歌ってくれる。
リズムや音程はぐちゃぐちゃだったけど、なんとなく好きだった。
/ ,' 3「おれたちゃ羊飼い
毎日羊と暮らしてる
ひとりじゃつらい坂道も
おまえたちといっしょじゃつらくない」
こんな感じの歌だ。でも、前はまだこんな歌だなんて知らなかった。
- 7: 以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします。 :2008/03/08(土) 22:12:47.64 ID:h59ItWB30
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ある日、いつものように草原で草を食べていると僕の目に赤い実が映った。
そこまで大きくない。だいたいクルミくらいの大きさだ。
興味を持った僕は、何気なく鼻の先で触ってみた。
すると、どうだろうか。
おじいさんの歌が、何を言っているのか分かった。
頭の中にその意味がほんの少しだけ流れ込んできたんだ。
びっくりして、僕は思わず鼻を離した。
するとまた、おじいさんが何を言っているのかが分からなくなった。
いつものように。
- 10: 以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします。 :2008/03/08(土) 22:14:50.36 ID:h59ItWB30
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(-_-)(これの…せい…?)
僕はもう一度触ってみた。
また頭の中におじいさんの歌が流れ込んでくるのが分かった。
今度はもう少しだけ、ぼんやりとだけど理解できたんだ。
(-_-)(これを食べたら、もっとはっきり分かるのかな?)
大好きなおじいさんのことをもっと知りたい。
叶わないはずの願いがすぐ前足の届く場所にある。
沸き起こった願望。僕は素直に従い実を食べた。
そして、この瞬間から僕は人間の言葉が理解できる、特別な羊になったんだ。
- 12: 以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします。 :2008/03/08(土) 22:16:53.46 ID:h59ItWB30
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それから僕は、よくおじいさんのそばにいるようになった。
どうせ、僕は羊の仲間に入れてもらえない。
皆はいくつかのグループにまとまっていつものように世間話をしている。
そこに僕が入ったところで迷惑なだけだろう。
もともと僕ははぐれ羊だったんだ。
他の羊飼いと仲間に置いて行かれて、当ても無く彷徨っている内におじいさんの群れに出会った。
狼と出会わなかったのも含めて本当に運が良かったに違いない。
おじいさんは優しい顔をして僕に二言くらい何かを言うと、僕を群れの仲間に入れてくれたんだ。
仲間も最初は物珍しそうに話しかけて来てくれた。
でも、余り言葉を発しない僕に愛想を尽かし皆はだんだんと離れていった。
それ加えて、今回の人間の言葉騒動。
僕は変羊扱いされ、完全に孤立してしまった。
それでも、いい。
僕は、僕を助けてくれたおじいさんのそばにさえいられれば嬉しいんだ。
- 14: 以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします。 :2008/03/08(土) 22:19:03.23 ID:h59ItWB30
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おじいさんはよく話すほうだった。
何度も話を聴く内に、おじいさんが「ヒツジカイ」だということが理解できた。
『羊飼い』と言う意味は僕にはよく分からなかったけど、
羊と一緒にいる人なんだろうな。と僕は思うことにした。
僕たち羊は、おじいさんのことを人間だと思っていたけど、僕だけはこのときから人間の羊飼いと思うことにしたんだ。
そしてある日、あのことを聞いたんだ。空の上の、羊たちの国のことを…。
- 15: 以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします。 :2008/03/08(土) 22:21:01.38 ID:h59ItWB30
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僕は仲間たちにこのことを話した。だけど、仲間たちの反応は冷たい。
( ^ω^)「羊たちの国?そんなものあるわけないじゃないかお。あるとしたらここだお。
この草原。僕らの食べ物がいっぱいじゃないかお。
きっと、おじいさんの作り話だお」
別の羊はこう言った。
川 ゚ -゚)「第一、お前は人間の言葉がわかるのか?フン、さすがははぐれ羊だな。
私には雑音にしか聞こえないぞ?
よくもまぁ、あんなに長い雑音が出せるものだ。
そりゃ、毎日一度はあの歌みたいなのは聴いている。
だが、あれも何を言っているかわからないし…
そりゃあ確かに、好きなんだが…」
- 17: 以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします。 :2008/03/08(土) 22:23:09.12 ID:h59ItWB30
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僕は何も言えなかった。
仲間の言っていることも正しかった。
確かにおじいさんの話はデタラメかもしれない。
それに、仲間の中で人間の話を理解できるのは僕だけだ。
だから、皆が僕の言っていることが分からないのも無理はないかもしれない。
それに、考えたくはないけど僕の聞き違いってこともあるし…
風に乗って聞こえただけかもしれない。言葉が理解できると思い込んでいるだけかもしれない。
それでも、信じたかった。
だって、何よりも大好きなおじいさんの言葉だったから。
- 21: 以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします。 :2008/03/08(土) 22:25:12.61 ID:h59ItWB30
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ある日、まだ山を登って間もないというのにおじいさんは足を止めた。
どうしたのかと他の羊たちもおじいさんのほうを見る。
先へ先へとかなり登っていた羊たちも戻ってきた。
/;,' 3「今日はこの辺にしよう・・・。」
おじいさんは大粒の汗をかいている。どうやら疲れているようだった。
その辺の大きな石にどっかりと座ると胸を押さえて息を整えていた。
僕は話が始まるのを待つためにおじいさんの隣で草を食べる。
でも、おじいさんが俯いたままなので、催促のために膝を鼻の先でつついた。
/ ,' 3「どうしたんだ?仲間たちといっしょに草を食べないのかい?
それともわしの独り言を聞きに来てくれたのかい?」
僕はそうだと言う代わりにもう一度膝をつついた。
- 23: 以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします。 :2008/03/08(土) 22:27:15.35 ID:h59ItWB30
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/ ,' 3「そうか・・・。
だが、お前たちと山へ一緒に行けるのも、もしかしたらもう残り少ないかもしれん。
わしも年をとって山に登るのが辛くなってな。
このごろは、足腰だけでなく、ちょっと胸のほうも・・・。
だが、わしが死んだらお前たちの世話はどうすればいいのだろうか」
そのうちおじいさんはぶつぶつ言い始めて僕にもよく分からなくなった。
その帰り僕は考えた。
人間の言葉の全てを理解できないとはいえ、『死』と言う漠然としたイメージだけは僕ら羊にもある。
『死』とは狼に食べられたり、崖から誤って落ちたり。
動かなくなったり、いなくなったりする事だ。
- 25: 以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします。 :2008/03/08(土) 22:29:19.85 ID:h59ItWB30
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おじいさんが死んだら自分たちはどうなるのか。
山に捨てられるのだろうか?
そうなったら狼に食べられるに違いない。
例え誰かに拾われたとしても『ヒツジカイ』じゃない人間は自分たちを食べてしまうかもしれない。
だけど、そんなことは考えたくも無かった。
- 27: 以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします。 :2008/03/08(土) 22:31:18.87 ID:h59ItWB30
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ある日、おじいさんは山に登らなかった。
それからも時々にしか山に登らなくなった。
家の中にいて、窓の外から見えるおじいさんの顔はとても苦しそうだ。
それを見て僕は悲しくなった。
おじいさんの看病には『ムスコ』と『ムスメ』という人間がやってきた。
その人間はおじいさんに
( ・∀・)「山を降りよう」
(*゚ー゚)「おじいちゃん。
お医者さんもココに来るのは大変なんだよ。
街へ行って病気を治そうよ」
と諭すように言っていた。
でも、おじいさんは黙って首を振るばかりで。
その問答が繰り返されるうちに、『ムスコ』と『ムスメ』は来なくなった。
- 29: 以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします。 :2008/03/08(土) 22:33:21.85 ID:h59ItWB30
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少しだけ調子がよくなったときに、おじいさんは時々山から下りて『ヤマノシタノムラ』に行くようになった。
元気そうにしているおじいさんを見て僕は嬉しかった。
それを見て他の羊も喜んだ。
でも、帰ってくるおじいさんはいつも悲しそうだった。
どうも他の『羊飼い』が見つからないんだそうだ。
(-_-)(おじいさんがいるのに、どうして?)
馬鹿な僕は分からなかった。
- 32: 以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします。 :2008/03/08(土) 22:35:25.10 ID:h59ItWB30
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ある日、七度目にヤマノシタノムラへ行ったおじいさんが元気な顔で帰ってきた。
(*-_-)『おじいさん、おかえり!今日は元気そうだね!』
駆け寄ってきた僕を見つけるとおじいさんは顔をくしゃくしゃにして首に抱きつく。
/ ,' 3「やっと見つかったんだ。
わしがいなくなった時のために跡継ぎの羊飼いを探していたんだが、一人居たんだよ。
まだ子供だが、やさしい子だった。これでもう安心だよ・・・」
『ヤサシイコドモノ羊飼い』―――よく分からなかったけど、おじいさんが喜んだから僕も喜んだ。
- 36: 以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします。 :2008/03/08(土) 22:37:29.85 ID:h59ItWB30
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でも、それから二回太陽が沈んだ次の日、おじいさんは家から出てこなかった。
更に二回太陽が沈んだ次の日、『オイシャサン』がおじいさんの家を訪ねてきて、
幾重にも折られた紙を持ってあわてて出てきたんだ。
(´・_ゝ・`)「死んだのか・・・しかし、変わった爺さんだ。
葬式はこの丘で羊と一緒に行って欲しいなんて・・・。」
(-_-)『シンダ…?』
―――おじいさんが、死んだ?
その時は混乱して意味がよく分からなかった。
- 38: 以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします。 :2008/03/08(土) 22:39:32.66 ID:h59ItWB30
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次の日、『ムスコ』と『ムスメ』、『ボクシ』や他の人間が集まった。
(`・ω・´)「神よ・・・。この尊き羊飼い、荒巻スカルチノフをあなたの身元へお導き下さい・・・」
僕はその時になってようやく分かった。
おじいさんは棺の中で、安らかな顔をして眠っている。
そして、もう目が覚めることは無い。
おじいさんはこの大空にある羊と羊飼いのための国へ行ったのだ。
(;_;)『おじいさん・・・』
僕は泣いた。
それにつられて他の羊も泣いた。
泣いて、泣いて、それでも涙は止まらなくて。とにかく泣いた。
それなのに―――
おじいさん、毛の色は灰色になんかならなかったよ。
僕の体は白いままだ。
それでも、僕は泣き続けた。
- 40: 以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします。 :2008/03/08(土) 22:41:34.75 ID:h59ItWB30
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やがて、人間は皆帰っていった。
おじいさんは家の側にある木の下へ埋められた。
秋になると、よくおじいさんが林檎の実を採って食べていた木である。
僕らにもたまにおすそ分けがあったし、とても美味しかったのを覚えている。
(;_;)『おじいさん…目を覚ましてよ。山へ一緒に行こうよ。
あの歌を聞かせてよ。
もう催促したりしない。おじいさんを困らせたりしないから』
太陽が沈んでも、僕ら羊たちの鎮魂歌は夜になっても止む事はない。
もしかしたら大好きなおじいさんが帰ってくるかもしれない。
そんな馬鹿げた希望を持っていたからだ。
- 44: 以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします。 :2008/03/08(土) 22:43:37.88 ID:h59ItWB30
- Page.19
何日かは家を囲った柵の中で過ごした。
跡継ぎの羊飼いがまだ来なかったからだ。
おじいさんが死んで悲しかったけど、空腹には耐えられない。
柵の中の草はとうに食べ尽くしていた。
そして、ようやく羊飼いがやってきた。淡い緑色の服を着た小さな少年だった。
( ∴)「さぁ、お腹も空いているだろうし山に行こう。」
羊たちは歓声を上げ少年について山に登った。
- 46: 以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします。 :2008/03/08(土) 22:45:47.09 ID:h59ItWB30
- Page.20
少年はおじいさんみたいに歌わない。
そのかわり、少年はオカリナを吹いた。
風、優しい風。
オカリナを吹くとき、少年の周りにはいつも風が吹いていた。
山に登っても、少年はおじいさんみたいに話をしない。
いつも空ばかりを見ていた。
今日は何かを話してくれるんじゃないかな?
そう思った僕はいつも少年の近くにいた。
でも、その少年は何も言わずに空を見上げるばかりで。
仕方なく、僕も一緒に空を見上げていたんだ。
(-_-)『空の上にはおじいさんがいるんだ。
おじいさんに会いたい。雲の上にある羊と羊飼いの国へ行きたい』
僕がそんなことを言うときにはいつも少年がこっちを見ていた。
とても真っ直ぐで、おじいさんみたいに優しい目だった。
- 48: 以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします。 :2008/03/08(土) 22:47:54.93 ID:h59ItWB30
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(-_-)『空の国かぁ・・・』
僕はいつものようにそんなことを言っていた。
少年はいつもおじいさんが座っていた石の上に寝そべっていたが、いきなり起き上がると僕に話しかけてきた。
( ∴)『そんなに行きたいの?』
僕はびっくりした。
羊の言葉が分かるなんて。
(-_-)『行きたい。
だけど、どうして僕の言葉が分かるの?あの赤い実を食べたの?』
少年は優しい目のまま、僕の耳にこっそり囁いた。
( ∴)『やっぱり君は、あの実を食べたんだね。
あの実は空の上にしかならないものなんだ。
多分、何かの拍子に落ちたんだと思うけど・・・』
- 51: 以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします。 :2008/03/08(土) 22:49:57.76 ID:h59ItWB30
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(-_-)「あの実を食べると人間の言葉が分かるの?」
( ∴)「それは少し違うな。
あの実は自分が大切に思う人と心が通じ合うようにするための実なんだ。
本当は"二人で"食べないといけないんだけどね」
少年は立ち上がった。
そして、ゆっくりこっちを振り返る。
( ∴)「もう一度だけ聞くよ。本当におじいさんに会いたい?」
(-_-)「会いたい。」
確認されるまでもない。
僕はおじいさんが大好きなんだ。
僕がこう言うと、少年はにっこりと笑った。
- 54: 以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします。 :2008/03/08(土) 22:52:27.63 ID:h59ItWB30
- Page.22
( ∴)「それじゃあ、連れて行ってあげるよ。
ついでに、僕がどうして羊の言葉が分かるのかも教えてあげる」
少年の周りに風が集まり始めて、背中から淡い光が漏れ出す。
その風や光は、少年が僕を見るときのような優しい感じがした。
風が凪ぐと、少年の背中には白くて大きな翼が広がっていたんだ。
少年は僕の背中を優しく撫でる。
( ∴)「僕は・・・天使だ」
- 56: 以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします。 :2008/03/08(土) 22:54:31.37 ID:h59ItWB30
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(-_-)(テンシ・・・)
僕はその言葉になんとなく心が落ち着くのを感じた。
背中をフワリと撫でる少年の手が暖かったのもあるのだろう。
( ∴)「僕ら天使は、生きている全てのものの言葉を理解することができるんだ。
だから、君の言うことも分かる。
それに君達の言葉もしゃべることができるんだ」
少年は僕を撫でるのを止めた。
(-_-)(暖かい…)
僕の中に不思議と力がわいてくる。
静かに目を瞑ると僕の心の中にある言葉が浮かんだ。
―――ダイジョウブ、カゼガハコンデクレルヨ…
- 59: 以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします。 :2008/03/08(土) 22:56:42.77 ID:h59ItWB30
- Page.24
風が、優しい風が僕に向かって吹いてきた。
凄い。凄いよ!と喜ぶ僕に少年も楽しそうに喋る。
( ∴)「そう、それでいい。
目を開けてごらん。風が見えるかい?
それに乗ればおじいさんの所へ行けるよ。」
僕は目を開けた。
目の前の光景が信じられない。
―――金色の風が僕の前に道を作っていた。
少年を見ると、同じ金色の風が周りを取り巻いていた。
僕は恐る恐る一歩踏み出す。風の上に乗るなんて…
足を掛けた瞬間体が宙にふわっと浮いた。自身が体の中から溢れてくる。
僕は走り出した。大好きな、おじいさんの下へ。
推奨BGM:ttp://jp.youtube.com/watch?v=quDn2Prl09U
(-_-)『おじいさんに会えるんだ!』
僕はどんどん空へと駆け上がった。
- 61: 以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします。 :2008/03/08(土) 22:58:45.49 ID:h59ItWB30
- Page.25
それから数分後、先ほどの天使にそっくりな羊飼いの少年がやってきた。
( ∵)「引継ぎがやっと終わったと思ったら…おい!先に行っちゃダメだろう。
全く誰なんだ?勝手に柵を開けたのは」
それに羊たちは「めぇー」と気の無い返事をしただけだった。
そして、羊と天使がいたところには羊が一匹冷たくなって倒れていたが、
羊飼いの少年はそれに気が付く事はなかった。
- 64: 以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします。 :2008/03/08(土) 23:00:49.01 ID:h59ItWB30
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どれくらい登ったんだろうか。
既に地面は雲にほとんど遮られて見る事ができない。
僕は目の前を飛ぶ天使を追いかけて、まるでしっぽのように気ままに動く風を駆け上がって行くしかなかった。
しばらくすると突然目の前が明るくなって、驚いた僕は頭をぶるぶると振る。
目のチカチカが治まると僕の周りには草原が広がって、たくさんの羊と羊飼いがいたんだ。
少年は翼をたたむとこっちにやって来る。
( ∴)「荒巻さんを探そう。きっとどこかにいるはずだよ」
おじいさんはすぐに見つけることができたよ。
いつもと同じように大きな石にどっかりと座ったあの姿のままだったんだから。
とても元気そうで、僕はうれしくて飛び上がった。
残念ながらこれ以上空を飛ぶことはなかったけど。
- 67: 以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします。 :2008/03/08(土) 23:02:51.53 ID:h59ItWB30
- Page.27
僕がおじいさんを見つけたように、おじいさんも僕を見つけた。
/ ,' 3「おぉ、お前か・・・。わしが分かるか?」
僕は何度も頷いて言った。
(*-_-)「分かるよ、おじいさん。
やっぱり、羊と羊飼いの国はあったんだ!」
/ ,' 3「あぁ、ここは天国だよ・・・。
わしはお前に会えて幸せだ。他のやつらはどうしたんだ?」
天使の少年は一歩進み出ておじいさんと向かい合う。
( ∴)「おじいさんが選んだ羊飼いの少年がしっかりとやっていますよ。
この子を連れてきたのは、あなたにとっても特別な羊だから。」
僕はおじいさんの元へと走った。
そしておじいさんの足に鼻をこすりつける。
(*-_-)「おじいさんの匂いだ…」
/ ,' 3「よしよし。また一緒に山へ登ろうな」
おじいさんは笑った。
それにつられて僕も笑う。
- 71: 以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします。 :2008/03/08(土) 23:04:55.17 ID:h59ItWB30
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今、僕はとても幸せだ。
これからはずっとおじいさんと一緒にいることができる。
ここは他の羊飼いや羊と遊んだり、山へ登ったりする楽しい所。
そしてどこにも怖い狼はいない、とても平和な場所だ。
僕らの周りには優しい風がいつも吹いている。
今日は、何をしようか?
/ ,' 3 羊と羊飼いと天使のようです 完
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