ζ(゚―゚*ζデレは死を見て、生を望んだようです

721: 以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします。 :2008/03/12(水) 01:33:39.45 ID:+gpvlzB7O
 時々思う。

『私の人生は神様が書いている小説の一つ』

 なんじゃないかって。
 なら、私がこんなにも不幸極まり無いのは全部――。

ζ(゚―゚*ζ(神様の仕業)

 学校では『ウザい』とクラスメイト虐められ、
 家では『もっと勉強しろ』と親に怒鳴られる。

 全くの不幸だ。
 こんなにも悪辣だ。
 神様は、どうやら私をバッドエンドに向かわせたいらしい。

 …まぁ実際、本当に最悪の終わりへと向かってるんだけどね。
 だって、ほら。



723: 以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします。 :2008/03/12(水) 01:39:18.07 ID:+gpvlzB7O
 今、私は屋上の縁に立っている。
 これが私の終着点であり、神様が求める結末の形状だ。

ζ(゚―゚*ζ(……)

 遥か地平線を眺めた。

 海。夕焼けに赤く染まった波が見える。
 空。太陽は海に溶け始め、橙色の雲はゆっくりと流れている。
 そして、風。春を告げる暖かさが心地良い。
 私は、ただ、ただ、純粋に綺麗だなと思った。

ζ(゚―゚*ζ「よし」

 神様は最後の最期に、最高の舞台を用意してくれた。
 行こう。死しても尚、繰り返される死へ。
 自殺した者の行き先は無間地獄と相場は決まっている。



725: 以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします。 :2008/03/12(水) 01:44:25.76 ID:+gpvlzB7O
 私は心を真っ白にして、ぼんやりと地面を見下ろした。

 …………………………………………………高い。
 たった三階なのに、こうも死までの距離は遠いのか。
 …でも、私はやる。この世にさようなら、って言うんだ。

ζ( ― ;ζ(大丈夫)

 すくみ震える片足に力を入れて、徐に一歩前に進む。
 勿論、地面は無い。…余り怖くはない。この感じだといけそうだ。

 飛ぼう。
 さようなら。



727: 以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします。 :2008/03/12(水) 01:52:25.71 ID:+gpvlzB7O
 ――ゴオォッ

ζ( ― ;ζ「!?」

 その時、一際強い風が吹きつけた。
 身体が激しく揺らされ、バランスが保てなくなる。

ζ(゚―゚;ζ「あ」

 目に映る景色が上へと流れて行く。
 離れて行く空、近付いて来る地面。

 ………………………………………死に向かって加速して行く。

 私は思い知った。
 生という物は、あんなにも大切だったなんて。
 死という物が、こんなにも寂しい事だったなんて。

 なんという耐え難い恐怖───!



730: 以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします。 :2008/03/12(水) 02:00:17.04 ID:+gpvlzB7O
ζ( ― ;ζ「ハァ……ハァ………」

 必死にフェンスへとしがみつく私は、本当の死を垣間見た。
 生き、積んで来た数値が、零になる瞬間を見てしまった。

ζ(;―;*ζ「こわか……った……」

 直ぐ側には私が先程まで行こうとしていた場所がある。
 でも、もう届かない。あんな勇気は二度と湧かない。

ζ(;―;*ζ(勇気……?)

 あれは真に勇気と呼べる物だったのだろうか?
 足を踏み出して、地面に落ちる行為が勇気か。
 それなら、勇気ってのは、とんでもなくネガティブな物なんだね…。



732: 以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします。 :2008/03/12(水) 02:10:10.77 ID:+gpvlzB7O
ζ(;ー;*ζ「……ははは」

 情けない笑い声が溢れた。
 『死ぬ気があれば何でも出来る』
 私が大嫌いだった根性論。
 忌み嫌っていた論を、自ら是としてしまった。

ζ(;ー;*ζ「あーあ…………」

 あれだけの『勇気』があれば何でも出来る気がする。

 ……………あはは。

 死を目の当たりにして私の枷が外れたようだ。
 これからは神様が書ききれない速度で動いてやろう。
 文章では表現出来ない様な生き方をしてやろう。

 さっきは、上から下へと飛んだ。
 では次は、下から上へと飛ぼう。

 神様でも捉えきれない速度まで、加速してあげる。



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