( ゚W゚)ブーンは悪魔憑きとなったようです

4: ◆DIF7VGYZpU :佐賀暦2006年,2006/11/01(佐賀県職員) 23:22:36.04 ID:SmlceptI0
  
その9「フェンリル」


あざ笑う殺人者、ジョルジュ。
『ニーズホッグ』を振い、世界に腐臭をまき散らす者。
ブーンが初めて接触した組織の人間にして、圧倒的な力を持つ『悪魔憑き』。
そして、ブーンに初めて敗北を教えた存在。
それが今、そこに居た。
少し前までミルナの姿に化けていたジョルジュは、今は暗い青のブルゾンを着た姿をとっている。
素材のはっきりしないブルゾンが、薄い明かりをぬらりと反射して光った。

( ゚∀゚)「しかしまぁ、ちょっと見ないうちにえれー立派なモン生やしてんじゃねーか」
( ゚W゚)「そういうお前は、相変わらず醜いモンをぶら下げているんだろう」

油断無く構えながら、ブーンはジョルジュの軽口に言い返した。
それを聞いてジョルジュは、やはり嬉しそうにニヤリと笑う。

( ゚∀゚)「まーな。もちろん『ニーズホッグ』は健在だぜ。でも、俺の力はそれだけじゃねぇ」

言って、ジョルジュは左手を持ち上げてみせる。
その行動に、眉をひそめるブーン。
ジョルジュの『ニーズホッグ』は、右手に憑く悪魔である。
故に左手には何の力もないはずだった。
だが――



6: ◆DIF7VGYZpU :佐賀暦2006年,2006/11/01(佐賀県職員) 23:23:48.11 ID:SmlceptI0
  
( ゚W゚)「っ!?」

ジョルジュの左腕がくにゃりと変化し、見覚えのあるシルエットを形作る。
それはは虫類の……おそらくは、鰐の尻尾と思しき物。
硬質の鱗に覆われたそれは、伸長した勢いのままブーンに向かって振われた。

(;゚W゚)「くぅっ!!」

ごう、と空を切り裂いて飛び来る尻尾を、ブーンは身を捻ってギリギリでかわす。
先端がブーンの胸を浅く切り裂き、鋭い痛みをもたらした。
ナイフなどとは違う粗く乱暴な力は、抉るような傷口を残す。
派手に皮膚を引き裂かれた皮膚から来る予想外の痛みに、ブーンは思わずよろめいて胸を抑えた。

(;゚W゚)「く……ぐ……」

ずきり、ずきりと、心臓が脈動する度に走る激痛。
しかしブーンは、それでも気丈にジョルジュを――正確には、その左腕を凝視した。



7: ◆DIF7VGYZpU :佐賀暦2006年,2006/11/01(佐賀県職員) 23:24:38.15 ID:SmlceptI0
  
ジョルジュの左腕が変化した、は虫類の尻尾。
確かに見覚えのあるその姿形。
それもそのはず、それはつい数分前に、別の人物によってブーンに振われた力。
痛みを抑えて、ブーンが確認するようにジョルジュに問いかける。

(;゚W゚)「お前……まさか、『悪魔』を『喰った』のか……」

ブーンは思い出す。
ジョルジュと初めて相対した時に、彼がブーンに言っていた言葉を。

――『お前の足のそれ、結構いいよな。カマイタチも起こせるみたいだしよ』
――『それで首をパツーンを飛ばせば、うまく血が飲めそうだぜ』
――『だから、それ、もらうな』

ブーンの持つ『ヴィゾフニル』を見て、ジョルジュが言った言葉である。
そう、ジョルジュは確かに『それをもらう』と言っていた。



8: ◆DIF7VGYZpU :佐賀暦2006年,2006/11/01(佐賀県職員) 23:25:57.36 ID:SmlceptI0
  
( ゚∀゚)「ッハ。ふにゃけたツラに似合わず、中々鋭いじゃねーか」

左腕をぶるりと震わせて、元の姿に戻しながら、ジョルジュがあざ笑うように言う。

( ゚∀゚)「そうさ。喰らったのよ。荒巻の血と肉ごと、あいつの持つ『アガレス』をな」

ニヤニヤと笑いながら言うジョルジュ。
その表情は、まるでオモチャを見せびらかす子供のようだった。

( ゚∀゚)「これを出来る奴は、そうはいねぇ。組織の中で出来るのも、『禄存』を張ってた渋澤と『文曲』の荒巻、
     それに、我らが主様、『貪狼』のミルナだけだ」

もっとも、もう全員死んじまったから、残るは俺一人だけだけどな。
そう言って、ひゃひゃ、と耳に障る笑い声を上げるジョルジュ。

( ゚∀゚)「ミルナの野郎。逃亡した罪だとか言って俺を儀式の生け贄にしようとすっからよ。むかついちまってさ。
     思わず『がぶり!!』とやっちまったぜ。飼い犬に噛まれてちゃ世話ねぇよな」
( ゚W゚)「ふん……外道が。お前は犬畜生以下の存在だ」
( ゚∀゚)「おいおい、そりゃあ俺にとっちゃ最高の褒め言葉だぜ? ワンワンッ!!」

ふざけて、おどけて、肩をすくめて見せるジョルジュ。
ブーンはその身から立ち上る、どす黒い腐臭に顔をしかめた。



9: ◆DIF7VGYZpU :佐賀暦2006年,2006/11/01(佐賀県職員) 23:27:29.83 ID:SmlceptI0
  
( ゚∀゚)「ミルナも、俺に喰われるのは予想外だったみてぇでよ。大した抵抗もなく喰われやがった。
     あいつの『フェンリル』なら俺を殺すことなんてカンタンに出来たはずなのにな」
( ゚W゚)「それだけお前の行動が狂ってるってことだろう。そんな恥ずかしいことを誇るな」
( ゚∀゚)「ばーか!! 俺には狂って狂って狂いまくるしか能がねーんだよ!! それが俺のほ・こ・り!!」

げはははははは!! と、おかしくてたまらないという風にあざけり笑う。
その行動の端々から垣間見えるジョルジュの思考は、確かに狂っていると言うほか無かった。

( ゚∀゚)「それとも、俺のやったことに、敵のお前は怒るのか?」
( ゚W゚)「……いや、怒らない」
( ゚∀゚)「だろうな!! だってお前からしてみれば、コーラの後のゲップみてぇにうざってぇ奴らが、
     まとめて死んでくれたんだもんなぁ!!」
( ゚W゚)「その代わりに現れたお前は、自慰の後のティッシュ屑よりもうざったいがな」
( ゚∀゚)「ッヒャヒャ!! うまいこと言うねぇ!! やっぱお前っておもしれぇわ!!」

喉をのけぞらして笑い狂う狂気の塊。
だが、ジョルジュは突如としてその笑いを止め、湧き上がる残忍さを隠そうともしない顔でブーンを睨み付けた。

( ゚∀゚)「後はお前一人だ。お前を喰えば、花嫁が喰える。そんで都市の人間を皆喰らって、喰らって、喰らい尽くして。
     儀式でこの地に残る魂の全てを地の底にたたき堕としてやる。
     男も、女も、大人も、子供も、赤子も、老人も、善人も、悪人も。みぃーんな全部を堕としてやらぁ」

黒い黒い思考を垂れ流して、ギラギラと光る双眸。
その目は、すでに人間の枠を越え、悪魔の瞳そのものとなっていた。
あまりにも狂いすぎた狂気。
ふいにブーンは、その狂気の発端が知りたくなった。



11: ◆DIF7VGYZpU :佐賀暦2006年,2006/11/01(佐賀県職員) 23:29:30.75 ID:SmlceptI0
  
( ゚W゚)「なぜそうまでして、全てを堕とそうとする」

ジョルジュとの間合いを計りながら、ブーンは相手の隙を探るように口を開いた。

( ゚W゚)「それが楽しいからか? 全ての人間を地の底に堕とすのが、そんなに楽しいのか」

ジョルジュの狂った思考から、一番あり得そうな選択を選んで問いかける。
だが、意外にもジョルジュは首を振った。

( ゚∀゚)「ちげぇよ。楽しい事は楽しいけど、疲れっからな。出来ればこんなこと、したくねぇさ」
( ゚W゚)「……なら、何故だ」

実際に疲れたような表情を浮かべ、ジョルジュは静かにため息をついた。
予想外の言葉に、思わず足を止めて聞き返すブーン。
ジョルジュはそんな相手に攻撃を仕掛けるでもなく、腕をだらりとさせたまま淡々と答えた。



13: ◆DIF7VGYZpU :佐賀暦2006年,2006/11/01(佐賀県職員) 23:32:40.86 ID:SmlceptI0
  
( ゚∀゚)「強いて言うなら、八つ当たりみたいなもんだ」
( ゚W゚)「敵味方関係なく虐殺するのが、単なる八つ当たり……だと?」
( ゚∀゚)「お前は知らないだろうけどな。俺達『悪魔憑き』が死んだら、どこに行くか知ってるか?」

とっておきの秘密を暴露するように、もったいをつける。
ククク、と笑って、ジョルジュはぐにゃりと顔を歪めた。

( ゚∀゚)「『地獄』だよ。悪魔をその身に憑かせた奴は、例外なく悪魔にとっつかまって地獄落ちだ」
( ゚W゚)「……だから、全てを巻き添えにしてやろうと。そういうことか」
( ゚∀゚)「『地獄堕ち、みんなで行けば、怖くない』ってか。一人で堕ちるのは寂しいからなぁ」

喉の奥で笑いながら、頬を上げて目を細めるジョルジュ。
その顔は、悲しみとも憎しみともつかないような、曖昧な表情。
それは、永遠に続く苦しみを約束された者の狂気。

( ゚∀゚)「どうよ。無理矢理『悪魔憑き』にされたお前なら、俺の気持ちはわかるだろ?」
( ゚W゚)「……ああ。わからないでもないな」
( ゚∀゚)「だろ? そうだろ? だったら憎いよな。怖いよな。自分は何をしても地獄に堕ちるのに、世界は何も変わらない。
     だから、な。全部堕としてしまおうぜ? お前と俺には、それをする権利がある」

ジョルジュが親しげな狂笑をその顔に浮かべる。
それは悪魔の囁き。悪魔の誘惑。
人間は、自分の不幸を理由にすれば、どんなに非道残虐極まることでも出来る種族だ。
今までもそうして繁栄してきたし、これからもそれは変わらない。そして、ブーンは人間として生きている。

一瞬。ほんの一瞬だけブーンはその提案を検討し、そして――



15: ◆DIF7VGYZpU :佐賀暦2006年,2006/11/01(佐賀県職員) 23:33:40.81 ID:SmlceptI0
  
( ゚W゚)「だが、断る」

ざっくりと斬り捨てた。

( ゚∀゚)「……へぇ。そんなに正義面してぇかよ。いっとくけど、悪魔に憑かれたら、もうお仕舞いだ。
     何をしようとも、地獄への片道切符は失効しねーんだぜ?」

ほんの少しだけ失意の表情を見せ、ジョルジュが食い下がる。
しかし、それでもブーンはきっぱりと首を振った。

( ゚W゚)「そんなんじゃない。ボクが気に入らないのは、そんなことじゃない」
( ゚∀゚)「だったらなんだ? 安っぽいヒューマニズムか? クソの役にも立たない道徳観念かよ?」
( ゚W゚)「違うな。ボクが許せないのは、たった一つ」

すう、と手を挙げて、『鏡』と共に床に横たわるツンを指さして。

( ゚W゚)「お前の計画が、ツンに危害を加える。ただそれだけが許せない」

宣言するように言い放った。
それは他の誰でもない、自分自身に対する行動宣言。
その言葉はブーンを縛る鎖、そしてブーンの力の源。
ただ一人の大切な人のために、ブーンは地獄に堕ちるまでの生を燃やす。



16: ◆DIF7VGYZpU :佐賀暦2006年,2006/11/01(佐賀県職員) 23:35:21.25 ID:SmlceptI0
  
( ゚∀゚)「……そうかよ」

ブーンの言葉をあざ笑うでもなく、ジョルジュは冷たく呟いた。

( -∀-)「いいよなぁ、お前は。馬鹿みてーに女のケツを追っかけ回して、地獄なんざ怖くねーってな顔して。
     あれかね。俺もそーゆー相手見つけてりゃ、少しはマシだったのかねぇ……」

そんなことはあり得ない、とでも言いたげに苦笑するジョルジュ。
目を閉じたその顔は、今までの狂気に彩られたものではなく、どこか弱々しささえ感じられた。
しかし、目を開いたジョルジュは、再び顔に狂気の色をのぼらせる。
あざ笑う殺人者、ジョルジュ長岡。
ブーンが最後までツンを守るのなら、ジョルジュは最後まで狂い続ける。

( ゚∀゚)「じゃあ、やっぱりお前は邪魔者なんだな」
( ゚W゚)「お互いにな」
( ゚∀゚)「ッハ。んじゃ、いっちょ殺り合うとすっか?」

全身から殺意を立ち上らせて、ジョルジュが問いかける。
ブーンはその問いかけに口を開くでもなく、両足の『ヴィゾフニル』に力を込めた。
周囲の大気がブーンに従属し、主を守るように渦巻き始める。
その風に顔をなぶられながら、ジョルジュがニヤリと笑みを浮かべた。



17: ◆DIF7VGYZpU :佐賀暦2006年,2006/11/01(佐賀県職員) 23:36:24.71 ID:SmlceptI0
  
中方都市 最上層遠景


中方都市は、直径10q、長さ10qの円柱を、半分まで地に埋めた形をしている。
それは、崩壊してしまった世界の過酷な環境に耐えるために作られた、か弱い人間達の最後の砦。
崩壊前の高い技術で作られた外壁はミサイルの直撃にすら耐え、作られてからいささかの損耗すら見られない。
その円柱の頂上には都市で最も位の高い人間が住み、下層では得ることの出来ない日光の恩恵を受けていた。

そして、その頂上部。
立ち並ぶ高層建築物群の、丁度中央に位置する、最も高いビルの最上部。
傾き始めた夕日を受けて輝いていたその頂上が、突如爆発したように吹っ飛んだ。



21: ◆DIF7VGYZpU :佐賀暦2006年,2006/11/01(佐賀県職員) 23:38:09.29 ID:SmlceptI0
  
( ゚∀゚)「来いよ!! 正々堂々、タイマンと洒落込もうぜ!!」

もうもうたる粉塵を突き破って、ジョルジュが笑いながら飛び出した。
空中でその身を捻り、一回転。
背中から黒い猛禽の翼を生やし、羽をまき散らして上昇する。

( ゚∀゚)「せまっ苦しい場所はラストバトルにゃ似合わねー!! やるならやっぱ広々とやんねーとな!!」

まるで空が自分の領域と言わんばかりに、我が物顔で飛び回る。
その動きは地に縛られた人間のものではなく、空を我が家とする存在のものだった。

( ゚W゚)「言われなくても行ってやる」

ジョルジュに続いて、天井が無くなった礼拝堂から飛び出すもう一つの人影。
足の翼をはためかせ、ブーンはジョルジュを追ってその身を舞い上がらせる。
夕日が横から照りつける大空の中、風を切って飛翔した。



22: ◆DIF7VGYZpU :佐賀暦2006年,2006/11/01(佐賀県職員) 23:39:34.68 ID:SmlceptI0
  
中方都市 上空


空を飛ぶモノの気持ちは、空を飛ぶ者にしか理解できない。
耳元でうなる風、体が切り裂く大気。
風に乗り、時には風すらも打ち破って自由に大空を飛ぶということ。
ブーンは自らの翼で大空を飛翔しながら、期せずして訪れた『自由』を五感で感じ取っていた。

( ゚∀゚)「ひゃーははは!! 空を飛ぶってのは、ホント気持ちのいいもんだよなぁ!!」

ブーンの上空を旋回するジョルジュが奇声をあげる。
その無粋な声に気分を害され、ブーンは殊更に強くジョルジュを睨みあげた。

( ゚W゚)「ふん。お前がいなければ、もっと気持ちのいいものになるんだがな」
( ゚∀゚)「ッハ!! そんなにつれなくすんなよォ。同じ地獄の釜で茹でられる仲じゃねーか!!」

ぎゃははと笑い声を降らせるジョルジュ。
その姿は夕焼け空を不吉な形に切り取って、凶兆の印のごとくブーンを見下ろす。

( ゚∀゚)「有象無象のゴミムシが這いずり回るクソッタレな全部を見下ろすとよー。
     体の中の何かが滾ってきて、ウラスジあたりがギンギンになってくんだよなぁ」
( ゚W゚)「心の底から……気持ちの悪い奴だ。その妙な性癖ごと、塵も残さず地獄に堕ちろ」

不快な表情を隠そうともせずに言い捨てるブーン。
そして、ブーンは最大速まで加速して、一気にジョルジュへと突っ込んだ。



25: ◆DIF7VGYZpU :佐賀暦2006年,2006/11/01(佐賀県職員) 23:41:06.50 ID:SmlceptI0
  
( ゚W゚)「はぁっ!!」
( ゚∀゚)「ほいさぁ!!」

かけ声と共にぶつかり合う互いの悪魔。
ブーンは蹴り放ち、ジョルジュは右腕の一振りでそれを止める。
がつん!! と激しく空気が振動し、二人を中心に空気が爆ぜた。

( ゚∀゚)「っはぁ!! どーしたどーした、そのご大層なモンは飾りかよ!!」
( ゚W゚)「飾りだとしても、お前を屠るぐらいは造作もないこと……だ!!」

防がれた右足をそのまま振り抜いて、転瞬。
渾身の力を込めて左足の踵をジョルジュの脇腹にたたき込む。
しかし、

( ゚∀゚)「あめぇ!!」

びぢっ、という異音がして、ブーンの左足が何かに埋まる。
驚いたブーンが自らの左足を見やると、そこには白い軟体の半ばまで埋まる足があった。

(;゚W゚)「くそ……『アガレス』の力か!!」
( ゚∀゚)「イカにも!! イカ臭くってごめんなぁ!!」

げらげらと笑うジョルジュが、一瞬にして鋸歯を生やした左腕を振う。
うなりを上げて迫る牙、ブーンは急いで軟体から左足を引き抜き、紙一重でジョルジュの攻撃をかわした。
目の前を通り過ぎるそれはブーンの前髪を数本ちぎり飛ばし、同時にきつい腐臭をまき散らす。



27: ◆DIF7VGYZpU :佐賀暦2006年,2006/11/01(佐賀県職員) 23:43:09.81 ID:SmlceptI0
  
(;゚W゚)「ち……厄介な……」

距離をとって歯がみするブーン。
ジョルジュはそんなブーンを見て、からかうように声をかけた。

( ゚∀゚)「おいおい。それで本気か、デキソコナイ? お前の足についてる『ヴィゾフニル』は、
     本来なら俺の『ニーズホッグ』とタメを張れる悪魔なんだぜぇ?」
(;゚W゚)「……うるさい、黙れ」

嘲笑を浮かべてブーンを見やるジョルジュに、ブーンは苦々しげに答える。
ブーンとて、自分の実力はわかっているつもりだ。
すでに腹のあたりまで進んだ悪魔の浸食に伴い、『ヴィゾフニル』の力は以前の数倍にまで増している。
だが、それでも。

(;゚W゚)(奴の力には及ばない、か)

悠然と翼をはためかせるジョルジュを見ながら、ブーンは強く奥歯を噛みしめた。
相手の力量、相手の実力。
それらは全て、ブーンを一回り以上も上回っていた。



29: ◆DIF7VGYZpU :佐賀暦2006年,2006/11/01(佐賀県職員) 23:44:26.00 ID:SmlceptI0
  
( ゚W゚)(どうする……隙を見つけて捨て身で攻撃するか?)

荒巻との戦闘を思い出し、ブーンの中に一つの案が生まれる。
だが、ブーンはそれを瞬時に却下した。

( ゚W゚)(いや、無理だ。奴の攻撃に身をさらせば即死。下手をすれば犬死になりかねない)

ジョルジュの右腕に憑く『ニーズホッグ』。
全てを腐らせるその力を思い、ブーンは特攻を思いとどまった。
高速で頭を回転させ、攻撃の手立てを模索するブーン。
その時、ふとジョルジュが思い出したように声をかけた。

( ゚∀゚)「あー、そうだ。一つ言い忘れてたけどよ」

言いながら、左手の人差し指を天空へと向けて、一言。

( ゚∀゚)「止まってっと、焼かれるぜ?」
( ゚W゚)「……何だと?」

どういうことだ、というブーンの声は、突如として生まれた強大なプレッシャーに掻き消された。
頭の上から、死を伴った何かが光の速さで迫ってくる。

(;゚W゚)「――っ!?」

半ば本能的にその感覚を感じ取り、弾かれたように飛び退こうとするブーン。
そして、ブーンの目の前が灼熱の色に染まった。



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