( ゚W゚)ブーンは悪魔憑きとなったようです

34: ◆DIF7VGYZpU :2006/11/12(日) 22:37:25.43 ID:iklecO660
  
    「何を、泣いているんだお」

突如として背後からかけられた声に、ジョルジュは我に返って、後ろを振り返った。
そして目に入る、漆黒の翼。
六対十二枚の猛禽の翼は紫色に染まりつつあった空を黒く切り取り、禍々しいまでに力強いシルエットを作り出している。

( ゚ω゚)「……ふん。『あざ笑う殺人者』ともあろう奴が、えらく情けない姿を晒しているもんだお」
( ゚A゚)「お、お前……」

ゆっくりと翼をはためかせながら、ジョルジュの前に浮かぶブーン。
その姿を見た瞬間、ジョルジュの中にあった恐怖は、ゆっくりと姿を消していった。

( ゚∀゚)「……ハ。言うじゃねぇか、デキソコナイ……。いや、今はもう、シニゾコナイか?」
( ゚ω゚)「どっちでも構わないお。お前の臭い口がそれ以上喋らないようになるのなら、どちらでも」
( ゚∀゚)「ヒャヒャヒャ!! そいつぁ無理ってもんだ!! 俺の口は死んでも動き続けてやるぜ?」

高らかに哄笑するジョルジュ。
笑いながらも、ジョルジュの内には、奇妙な安堵感があった。

その感覚は、おそらく狂った精神が無理矢理に生み出した代物。
本来ならば安堵を感じるべき状況でないことがその証拠。
しかし、ジョルジュはそれでも構わなかった。
狂うと決めた時から、そんなことはとうに覚悟の内でもあったし、今更その是非を問うても詮無いことだ。

ジョルジュの笑いに顔をしかめるブーン、その顔をニマニマと笑いながら見やるジョルジュ。
もう、寂しくはなかった。



35: ◆DIF7VGYZpU :2006/11/12(日) 22:39:47.96 ID:iklecO660
  
( ゚∀゚)「っかし、てめーもしつこい奴だな。退場してろっつっただろうがよ」
( ゚ω゚)「そうしたいのはやまやまなんだお。でも……お前が居る限り、ボクはおちおち地獄にも行ってられないんだお」

ジョルジュの軽口に答えながら、ブーンは自らの体に力を込めた。
背中の翼から流れ込む凶悪な力が、ごく自然にブーンの内を満たしていく。
その力は、かつて『ヴィゾフニル』から得ていた物よりも遙かに強く、純粋な暴力の塊。

( ゚ω゚)「なにより、こちらにはツンがいる。ツンを置いて一人で堕ちるなんてこと、ボクにはまっぴらゴメンだお」
( ゚∀゚)「だから、ゴキブリみたいに復活ってか? しかもその翼、その力。明らかに人間のもんじゃねーだろ」

両目を細めて見やるジョルジュ。

( ゚∀゚)「言ってみろよ。お前は何モンなんだ。天使か? 悪魔か?」
( ゚ω゚)「……ボクは、どっちでもないお。いや、むしろどちらでもあるお」

拳を握りしめ、ジョルジュの眼光を受け止めながら。
ブーンは、強く言いはなった。

( ゚ω゚)「ボクはブーン。神話の時代、堕天使となったアザゼルの生まれ変わり。そして、お前を滅ぼす者だお!!」

そう言って、堕天使は六対の翼を一斉に打ち振った。
風がごうとうなりをあげ、周囲に嵐のごとき烈風を巻き起こす。
今や完全に自分の従属と成り果てた大気をその身に纏い、ブーンは凄まじい勢いでジョルジュに向かって飛びかかった。



36: ◆DIF7VGYZpU :2006/11/12(日) 22:40:47.19 ID:iklecO660
  
( ゚∀゚)「ひゃあ――ははははは!!」

醜い嗤い声を上げながら、ブーンの突進を交わすジョルジュ。
ボロ布となっていたブルゾンを引きちぎりながら、ジョルジュはたまらないという風に叫んだ。

( ゚∀゚)「アザゼル!! アザゼルかよ!! 『荒野の悪魔』!! 『神のごとき強き者』!! 『地獄の山羊使い』!!
     そうか、お前がアザゼルか!!」

嬉しくて仕方がないといった表情で耳障りな哄笑をまき散らすジョルジュ。
ブーンは突進の勢いもそのままに、大きく旋回して、そのままジョルジュに再度肉薄した。

( ゚∀゚)「なるほどなぁ!! 『鏡』の中から一匹、一番の大物が抜け出したとは聞いてたけどよ、
     まさか人間に転生してるたぁ、あのクソ荒巻もクソ主様も思わなかっただろうぜ!!」

会えて嬉しいぜぇアザゼル!!
そう言いながら、ジョルジュは右腕に鰐の大顎を作り出すと、ブーンに向かって打ち振った。

( ゚ω゚)「ふっ!!」

頭部を狙って伸びてきた攻撃を、しかしブーンはかわそうともせずに、無造作に手を振って撃退。
濃密な密度の風に阻まれた鰐の首は、カマイタチによる無数の傷跡を負ってはじき飛ばされた。

( ゚∀゚)「おぉっと……あっぶねぇ!! ッハハハァ!!」

速度を緩めることなく突っ込んできたブーンを、大きく上昇して回避するジョルジュ。
ブーンの纏った風がジョルジュの肌を細かく傷つけるが、ジョルジュは全く気にせずに言葉を続けた。



39: ◆DIF7VGYZpU :2006/11/12(日) 22:41:47.99 ID:iklecO660
  
( ゚∀゚)「んだよ、じゃあお前と俺は同類どころじゃなく、完全に似たもの同士なんじゃねーか!!
     他人に運命弄ばれて、救われない。憎悪と復讐に狂った者同士だろぉ!!」
( ゚ω゚)「……お前と一緒にされるのはゴメンだお」

ばさり、と翼を打ち振って制止するブーン。
その顔に苦々しげな表情が浮かぶのを見て、ジョルジュは更に笑みを深める。

( ゚∀゚)「まあそう言うなって。アザゼルのおとぎ話なら、俺もちっちゃい頃から聞いてるぜ。
     神の命を無視して人間の女にホネヌキにされて、そのせいで地獄に堕とされたってなぁ」

ニヤニヤと笑いながら、ジョルジュはその目を細めてブーンに問いかけた。

( ゚∀゚)「千年以上も地獄に繋がれて、どうだったよテンシサマ? 俺達組織に召喚されるまで、
     地獄にいてお前は何してたんだ? 暗く冷たい地の底で、愛しい人のオッパイでも妄想してたかよ?」

ヒヒヒ、と下卑た笑い声をあげるジョルジュ。
そんなジョルジュを見ながら、しかしブーンは静かに首を振った。

( ゚ω゚)「いいや。ボクは、ずっと後悔していたお」
( ゚∀゚)「……へぇ。そりゃ殊勝なこった。それで、お前は救われたってのか?」

あくまで茶化そうとするジョルジュの言葉に、それでもブーンはゆっくりと、はっきりと口を開く。

( ゚ω゚)「救われるわけがないお。ボクの罪は、主が許さない限り消えることはない。後悔してもどうにもならないお。
     そして、ボクが許されることはない。永遠の闇に囚われて、その事は嫌になるほど身に染みたお」



40: ◆DIF7VGYZpU :2006/11/12(日) 22:43:21.99 ID:iklecO660
  
太陽光に照らされ、暖められた風が、ゆっくりと宙に浮かぶ二人の間を吹き抜けていく。
その風に前髪を揺らされながら、ジョルジュは少しだけ笑いを納めて口を開いた。

( ゚∀゚)「……じゃあ、お前は何で戦ってんだよ。許されない罪を背負いながら。地獄行きを決められながら。
     ずっとひとりぼっちでいることが決まっていながら。それなのに、何で戦ってんだ」

探るような声色で、下からねめつけるように問いかけるジョルジュ。

( ゚ω゚)「ツンを、守るためだお」

はっきりとした口調で返すブーン。
一瞬、ブーンの脳裏に、遙か過去の記憶が蘇る。
白く泡立つ水の奔流。押し流される家屋。そして、失われる大切な人の命。

( ゚ω゚)「ボクのしたことは、もう許されることはないお。でも、ボクができることは、まだあるんだお。
     たとえ自己満足だとしても、何の意味がないとしても。ボクは――」

ブーンとして生きた日々。アザゼルとして生きた記憶。
その全てに共通する気持ちは、ただ一つ。

( ゚ω゚)「――ボクはツンを守る。それだけが、ボクの願い。そして、ボクのすべき事だお」

ブーンはそれだけの事を言い終えると、再びその身に風を纏い、ジョルジュを鋭く睨み据えた。



41: ◆DIF7VGYZpU :2006/11/12(日) 22:43:58.11 ID:iklecO660
  
( ゚∀゚)「……ッハ。どこまでもオメデタイ奴だな、てめーはよ……」

ブーンの堂々とした宣言を聞いて、ジョルジュはひび割れた笑みを浮かべた。

( ゚∀゚)「自分は地獄に堕ちる運命だっつーのに。カミサマに惚れた女をぶち殺されたってーのに。
     しかも、自分も死んで堕天使に転生までしたってのに、お前は結局それしかねーんだな」

そう言って嘲笑を浮かべようとしたジョルジュは、しかしその行為に失敗した。
どうしても、馬鹿にするような笑みを浮かべられない。
代わりに浮かぶのは、羨む気持ちと嫉妬の心。

( ゚∀゚)「クソ……せっかく、憎しみに狂った仲間だと思ったのに。せっかく、俺はボッチじゃねーと思えたのによ。
     ぶち殺されて地獄から舞い戻って来たっつーのに、俺も神も憎まず、狂うこともせず。惚れた女を守るってか」

そしてジョルジュはため息を一つ。
喉をのけぞらせて見上げた空は、すでにその大半が夜に支配され、星々が瞬き始めていた。
その中に、一際明るく輝く宵の明星を見つけて、ジョルジュはその光を瞼の裏に焼き付けた。

( ゚∀゚)「んじゃ……無理矢理にでも、お前を連れて行くぜ。やっぱり俺は、ボッチがこえぇからよ」

すう、と目を閉じるジョルジュ。
丁度その時、沈みゆく太陽はその身を完全に稜線へと落としきり、地上から完全に光が消えた。
光の時間は終わり、周囲に闇が去来する。

ごきり、とジョルジュの体が歪に歪み始めた。



44: ◆DIF7VGYZpU :2006/11/12(日) 22:45:42.67 ID:iklecO660
  
ごきごきと異音を響かせながら、ジョルジュの体が歪んでいく。
肩が爆ぜ、腕が膨らみ、腰はねじ曲がって、肋骨が飛び出す。
同時に、その身からぞわぞわと生まれ出る真っ黒い獣毛。
一本一本が縫い針のように鋭く光るそれは、瞬く間にジョルジュの体全体を覆い尽くした。
人間の形を捨てながら。時に人間の形を取りながら。
ジョルジュの体は変化し続け、体積を従来の何倍にも膨れあがらせていく。

( ゚∀゚)「あ゛ー……いてぇ。いてぇな、クソ。何で俺こんなことしてんだ? 何でこんな痛い目にあってんだ?
     俺は痛いのもめんどくさいのも疲れるのも嫌だし、健康に気を遣って長生きしてりゃ満足なのによ」

ごりごりと顎を鳴らしながら、ジョルジュが誰にともなく問いかける。

( ゚∀゚)「でも、お前が強くなっちまったら、俺が殺されちまう。殺されないためにゃ、俺も強くならねーとな?」

獣毛に覆われた体から、より大きな猛禽の翼を生やし、大きく空を叩いて羽ばたくジョルジュ。
足の間からぞろりと鱗に覆われた何かが垂れ下がり、それは先端を大きく割って大蛇の形を取った。

( ゚∀゚)「いてぇ。ホントいてぇな、悪魔に喰われるってのはよ……。でも、その分強くなって狂えるんだよな。
     このままいけば、俺の意識も喰われて消えて、一緒に恐怖も消えるかもなぁ。どう思うよ、ブーン?」

もはや首から上しか人間の部分が残っていないジョルジュは、それでもニヤリと笑みを浮かべた。

( ゚∀゚)「でも、俺は死ぬのも消えるのもゴメンだからな。さっさとお前をぶっ殺して、地獄に堕としてやらぁ」

全長数十メートル。尻尾も入れればその倍にはなるだろうか。全身を黒い獣毛に覆われた狼の体に、純白の翼と大蛇の尻尾。
自分の喰らった悪魔達に全身を捧げたジョルジュは、唯一人間の形を残す頭を狼の額に貼り付けて、ニヤリと笑った。



45: ◆DIF7VGYZpU :2006/11/12(日) 22:47:30.21 ID:iklecO660
  
ばさり、ばさりと、巨大な翼を打ち振って、ジョルジュが大質量の獣体を浮遊させる。
あたりにはそれだけで猛烈な風が巻き起こり、ブーンの体を激しく打ち付ける。

その形相は怒り。
『フェンリル』の目は爛々と赤く輝き、視界に入る全ての存在に憤怒する。

その叫びは憎しみ。
『ニーズホッグ』の口からは腐臭と共に激しい呪詛と威嚇音が漏れ、這いずる運命を呪い続ける。

その唸りは苦しみ。
『ヴィゾフニル』の翼は烈風を巻き起こし、ただそこであるだけで鋭い悲鳴をあげる。

そしてその哄笑は狂気。
ジョルジュの顔にはもはや欠片ほども人間らしい表情は残っておらず、ひたすらに狂笑をまき散らす。
ぐるり、と白目をむいておどけて見せて、キメラとなったジョルジュは不自由そうに首を巡らせてブーンを見据えた。

( ゚∀゚)「サヨナラだ、ブーン。一足先に地獄に堕ちてな」

獣頭蛇尾、猛禽の翼を持つ巨大な悪魔は、絶対の自信と絶対の力で命令する。
その言葉には、一言一句にいたるまで、滴るような腐臭と呪いが込められていた。
顔をしかめ、目を細めるブーン。

( ゚ω゚)「お断り、だお」

短く言い放って、再びその身に暴風を纏う。
そして、ブーンは一度大きく翼をはためかせると、爆発的な加速をもってジョルジュに突進した。



47: ◆DIF7VGYZpU :2006/11/12(日) 22:49:05.59 ID:iklecO660
  
一瞬で十数メートルの距離を詰めるブーン。
風を巧みに操ってジョルジュの無防備な腹部に潜り込むと、ブーンは鋭く右腕を振り抜いた。

( ゚ω゚)「はぁっ!!」

ぼ、と空気が爆裂し、衝撃波が発生する。
音速を超えたブーンの拳は、すさまじい勢いでジョルジュの脇腹にめりこんだ。
しかし、

( ゚∀゚)「ぎゃはははは!! 痒いぜぇ、ブーン!!」

ブーンの攻撃は分厚い獣皮に阻まれ、ジョルジュにダメージを負わせることは出来なかった。
舌打ちをして腕を引き抜くブーン。
動きの止まった堕天使めがけて、ジョルジュの股ぐらから黒い影が走った。

(;゚ω゚)「くぉっ!?」

じゃうっ、と空気を裂いて伸びてきたそれを、紙一重でかわす。
そのままの勢いで後退したブーンは、自分に向かって鎌首をもたげる大蛇の姿を確認する。

( ゚ω゚)「くそ……うっとおしい尻尾だお」

吐き捨てるように言って、『ニーズホッグ』に向かって腕を振る。
ブーンの腕から生み出される、巨大な鎌のごときカマイタチ。
だが、不可視の刃は大蛇の首を落とす前に、より強い大気の渦に巻き込まれてその力を失った。



49: ◆DIF7VGYZpU :2006/11/12(日) 22:50:32.16 ID:iklecO660
  
( ゚∀゚)「無駄無駄ァ!! そんななまっちょろい風じゃあ、俺のイチモツにゃ届きもしねーよ!!」

キヒヒヒヒ、と甲高い嗤い声を上げるジョルジュ。
ブーンから喰らった『ヴィゾフニル』を見せつけるように打ち振ると、ジョルジュはその巨体をブーンへと向けた。

( ゚∀゚)「欲しかったんだぜぇ、コレ。やっぱいいよなぁ。俺の『ニーズホッグ』じゃ、腐らせるしか能がねーからよぉ」

うっとりとした表情で、囁くように話しかけるジョルジュ。

( ゚∀゚)「ま、こんな体になった今じゃあ、お前の風を消すぐらいしか使い道ねーんだけどよ。
     どうよ? 自分に憑いてた悪魔で攻撃される気分は」

ジョルジュは、わざわざ『憑いてた』にアクセントをつけて、嫌らしい笑みを浮かべた。
その顔を見ても、ブーンは無言。
口を開く代わりに、十二枚の翼を、ばっ、と大きく広げ――残像が見えるほどの速度で打ち振った。

( ゚∀゚)「うぉっ!?」

ばごん、と音を立てて叩き付けられる風に、思わずよろめくジョルジュ。
あまりの密度に質量さえ感じさせる風は、『ヴィゾフニル』の風をものともせずに突き抜けて、狼の鼻っ柱を強打した。
驚いた表情のジョルジュに向かって、挑戦的に口を開くブーン。

( ゚ω゚)「ナイフで切れない壁があるなら、ハンマーを使ってぶち壊せばいいんだお」
( ゚∀゚)「……やっぱり、堕天使サマともなると一筋縄ではいかねえってか。んじゃ……」



50: ◆DIF7VGYZpU :2006/11/12(日) 22:51:38.83 ID:iklecO660
  
これはどうよ?
そう言って、ジョルジュは嗤いながら『フェンリル』の大顎をがぱりと開いた。

(;゚ω゚)「っ!!」

『フェンリル』の口内に、全てを飲み込む混沌が生まれたのを確認するまでもなく、
ブーンは持てる力を総動員して横っ飛びに飛んだ。

( ゚∀゚)「ガガウッ!!」

それと同時に、『フェンリル』の口が一気にばくりと閉じられる。
『フェンリル』の力、空間を喰らう能力。
その力は対象であるブーンを捉え損なって、その背後、直線上にあった空気全てと浮かぶ雲、
そしてオゾン層の一部までもを、半径10mの円柱状に喰らい尽くした。

( ゚∀゚)「ちぃ、惜しい!! 逃げ足だけはゴキブリ並。数倍上になってやがんなぁ」
(;゚ω゚)「く……」

さして残念そうな様子も見せずに笑うジョルジュ。
ブーンは背中に冷たい汗を流しながら、歯がみしてジョルジュの楽しそうな笑い声を聞いた。

(;゚ω゚)(やはり、『アレ』だけは止めようがないかお……)

『フェンリル』の空間喰らい。
下手な小細工などの付け入る隙もない程に、絶対的で純粋な破壊の力。
いかなる防御策をもってしても、根こそぎ噛み砕いてしまうその力を止めることは叶わない。



52: ◆DIF7VGYZpU :2006/11/12(日) 22:52:47.55 ID:iklecO660
  
( ゚ω゚)(ならば……ボクの力で、直接ジョルジュを叩くしかないお)

へらへらと笑うジョルジュの首。
『悪魔』を制御するために唯一残された、ジョルジュ本来の人間部分。
すべての核となるそこを、叩く。

( ゚ω゚)(チャンスは一度きり……。絶対に、外すわけにはいかない)

そう決めたブーンは、大きく上昇。
ジョルジュのいる水平面上よりも上に陣取って、鋭い目つきで醜いキメラを睨み付けた。

( ゚∀゚)「……はっはーん? なんか楽しいことを思いついた目だな」

不自由そうにブーンを見上げながら、ジョルジュが目ざとくブーンの変化を掴み取る。

( ゚∀゚)「いいぜぇ、ブーン……。来いよ。お前の全身全霊をもって、俺を止めてみせやがれ」

言って、挑み掛かるような獰猛な笑みを口の端に上らせるジョルジュ。
見下ろす堕天使と、見上げるキメラ。
人の形をした人でない者と、人の姿を捨てた人であった者。
二人の間に、一瞬の静寂が舞い降りて。

そして、動いた。



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