( ゚W゚)ブーンは悪魔憑きとなったようです

29: ◆DIF7VGYZpU :2006/10/21(土) 00:14:56.12 ID:bvR9X2DP0
  
無数の炎に囲まれるドクオを見ても、クックルは助けようとはしなかった。
それどころか、何かを考えているようにすら見えない。
ただ黙って、弟者の攻撃を捌き続けるのみだ。

(´<_` )「……」
( ゚∋゚)「……」

無口な二人は、無言のままに鋭い攻撃を繰り出し続ける。
弟者は左手の白刃をひらめかし、クックルは鉛色をした両腕を振り回す。

(´<_` )(こいつ……)

幾度となく繰り出した攻撃を全て弾かれて、弟者が少し戸惑いの表情を見せた。
弟者の左腕に憑いている『クルースニク』の刃は、生身で防げるものではない。
にもかかわらず、クックルは素手でその攻撃を弾いているのだ。

(´<_` )(両腕がこいつの『持ち駒』か。ならば……)



30: ◆DIF7VGYZpU :2006/10/21(土) 00:15:29.84 ID:bvR9X2DP0
  
大きく腕を振って牽制し、間合いをあける弟者。

(´<_` )(これならどうだ!!)

弟者は悠然と構えるクックルに、左腕のクルースニクを間合いの外から鋭く突き出した。
狙うは生身に見える腹の部分。
それは到底届きはしない間合いから放たれた攻撃である。
しかしその瞬間、弟者のクルースニクがいきなり伸長。
その形を槍に変えて、鋭い先端でクックルの腹を確実に捉えた。

( ゚∋゚)「!!」

無表情の中に若干の驚きを見せてそれを防ごうとするクックル。
しかし、交差させた両腕をしなるように避け、槍はクックルの腹を貫いた。
ジャンッ! と焼けた鉄に水をかけたような音があたりに響く。
がぐり、とクックルがその巨体をよろめかせた。



32: ◆DIF7VGYZpU :2006/10/21(土) 00:16:43.27 ID:bvR9X2DP0
  
('A`)「ッチ、クックル!!」

攻撃を受けたクックルが倒れ込む姿を見て声を上げるドクオ。
その時、一瞬動きを止めたドクオにむかって、無数の炎が殺到する。

('A`)「ッくそっ!!」

再び腕を振り上げるドクオ。
だが、その腕が振り抜かれるよりも早く、炎は我先にとドクオに食らいつく。

('A`)「があっ!!」

肉の焦げる音を立てて、ドクオの体が大きな火柱となった。
腕を目茶苦茶に振り回して炎を払おうとするが、悪魔の炎は消えるどころか、より一層ドクオに激しくまとわりつく。
がくりと膝をつくドクオ。
その体が地面に倒れ伏せるのを、やっと到着したブーンとギコは見ることになった。



33: ◆DIF7VGYZpU :2006/10/21(土) 00:19:04.28 ID:bvR9X2DP0
  
(,,゚Д゚)「兄者!!」
( ^ω^)「やったかお!!」

大量のリビングデッドを屠って到着した二人が見たものは、燃え続けるドクオとうつぶせに倒れ込むクックルだった。
ドクオは微かに痙攣しながら燃え続け、クックルはぴくりとも動かずに倒れ込んでいる。

( ´_ゝ`)「隊長、ご無事でしたか」
(,,゚Д゚)「ああ、お前達もな。それより、そいつは?」
( ´_ゝ`)「この襲撃の主犯であるようです」
(,,゚Д゚)「『武曲』、それに『巨門』か。成程、こいつららしい襲撃だ」

ドクオとクックルを確認して、ギコが苦々しげに顔をしかめる。

(,,゚Д゚)「あっけない最後だったが、まあいい。ご苦労だったな、二人とも」
( ´_ゝ`)「そうですね。もっと手こずるかと思いましたが、そうでもありませんでした」

息をつく兄者。
続けて弟者にも労いの言葉をかけようとしたギコは、大きく目を見開いて叫んだ。

(;,゚Д゚)「逃げろ弟者!!」



35: ◆DIF7VGYZpU :2006/10/21(土) 00:20:32.74 ID:bvR9X2DP0
  
ギコの声に、反射的にその場を飛び退く弟者。
しかし、確認しようとして後ろを振り返ろうとしたその数瞬の間が、弟者の運命を決定づけた。

(´<_`;)「がはっ!?」

どん、と爆発するような音を立てて、弟者の胸が爆発するかのように内側から開いた。
赤黒い肉をさらけ出した胸から生える、赤く塗れた一本の腕。
鉛色の肌をしたその腕は、倒れていたクックルのものだった。

(´<_`;)「く、ぐっ……馬鹿な……」

仕留めたはず。
そう思い、首を捻って背後のクックルを見やる弟者。
相変わらず無表情な顔をした大男の腹は、着ていたタンクトップが破けて地肌があらわになっている。
だがその肌は腕と同じ鉛色に染まっており、傷一つついた様子はない。
それを見て、弟者は悔しそうに顔をゆがめた。



37: ◆DIF7VGYZpU :2006/10/21(土) 00:25:03.64 ID:bvR9X2DP0
  
(;´_ゝ`)「弟者!!」

ボロ切れのように振り捨てられる弟者を見て、兄者がクックルに向けて炎弾を放つ。
だが、クックルはそれを無造作に手で払いのけた。
ドクオにはあれほど激しく食らいついた炎は、しかしクックルの鉛色の肌を滑り落ちるのみ。
ミキミキと音を立ててクックルの肌が全て鉛色に変質し、硬質化していく。

(;´_ゝ`)「くっ、化け物が……っ!?」

歯がみする兄者。
その時、兄者の頭上から何者かが接近する気配が感じられた。
思わず上方を見上げる兄者。
迫る人影を確認して、驚愕のあまりその場に立ちつくす。

(;´_ゝ`)「な、にっ!?」

迫り来る人影は、先ほど確かに燃やし尽くした筈のドクオだった。
満面に狂った笑みを浮かべて、ドクオが風を切り飛来する。



41: ◆DIF7VGYZpU :2006/10/21(土) 00:31:53.76 ID:bvR9X2DP0
  
('A`)「ッハァ!! 死ねよクソカス!!」

全く減速せずに落下してきたドクオは、動きを止めた兄者に向かって左腕を振り下ろす。
さして鋭くもない一撃は、しかし兄者を思い切り吹き飛ばした。

(;´_ゝ`)「っが!!」

肺の中の空気を全て絞り出し、地面に叩き付けられる兄者。
肋骨と背骨が立てる嫌な音を、ギコとブーンは確かに聞いた。

(;´_ゝ`)「……ぐ……」
('A`)「ありゃ? なんか、上手く殺せねぇな」

小さく呻く兄者を見下ろして、ドクオが不思議そうに左手を見つめる。

('A`)「まあいいか。どうせ殺すならどう殺しても一緒だしな」

何らかの疑問は残ったようだが、ドクオは気にしないことにしたらしい。
左手から顔をあげて、ギコとブーンにその暗い視線を向けた。



44: ◆DIF7VGYZpU :佐賀暦2006年,2006/10/21(土) 00:40:50.71 ID:bvR9X2DP0
  
('A`)「よう、ギコ。久しぶりじゃねえか」
(,,゚Д゚)「ああ……。最も、俺は貴様になぞ会いたくはなかったがな」
('A`)「言うねぇ。俺だって、出来ればてめぇなんぞの顔は見たくもなかったぜ」

親しげにドクオがギコに話しかける。
しかし、その口調とは裏腹に、言葉の中には憎々しげな感情が見え隠れしていた。

('A`)「つーかさぁ。お前、抜けるならしぃの馬鹿も一緒に連れてけよなぁ」
(,,゚Д゚)「ほう……余程上手くいっていないらしいな」
('A`)「俺ぁ、ああいう脳味噌のつまってない尻軽が一番キライなんだよ」

ぺっ、と唾と一緒に吐き捨てるドクオ。
その姿を見て、ギコが余裕の笑みをうかべる。
だが、その笑みはドクオの言葉であっさりと消え去った。

(,,゚Д゚)「ふん、お前が嫌な思いをするのなら、残してきて正解だったな」
('A`)「クソが。言ってろよ、未だにあのメスに未練たらたらのクセしやがって」
(,,゚Д゚)「……なんだと?」
('A`)「あぁ? 聞こえなかったか? 未だにお前は、あのメス豚に未練があんだろって言ったんだよ。
   大方、毎日毎晩あのクサレマンコに突っ込むこと考えて、寂しくマスでもかいてんだろ?」

ぎゃははと下品に嘲笑するドクオ。



48: ◆DIF7VGYZpU :佐賀暦2006年,2006/10/21(佐賀) 00:52:02.84 ID:bvR9X2DP0
  
(,,゚Д゚)「ふ……口だけは相変わらず達者だな」
('A`)「おいおい、無理してクールにならなくていいんだぜ?」

冷静に口を開くギコに、ドクオが暗い笑いを投げかける。
だが、ギコはそんなドクオの挑発に欠片ほども頓着する様子を見せず――唐突に左腕を振るった。

('A`)「くぉっ!!」

残像が見えるほどの速度で振るわれた腕。
その腕から弾丸のように射出された黒い物体を、ギコは状態を反らしてかわした。
その場に取り残された前髪が数本、唸りを上げて通過する物体に持って行かれる。

('A`)「くそ……不意打ちとは卑怯じゃねぇか」

避けた勢いで尻餅をつく形になったドクオが、先ほど兄者にした所行も忘れてギコを鋭く睨み付ける。
対するギコは、黙って振り抜いた左手を構え、ドクオを見下ろした。
その腕には一面に光沢のある鱗に覆われている。
鱗は一枚一枚が烏の濡れ羽色に光り、抜き身のナイフの様な剣呑な光を宿していた。

(,,゚Д゚)「貴様の言葉は聞き飽きた。さっさとかかってくるがいい」

まるで道ばたの汚物を見るような目つきでドクオを見下ろすギコ。
ドクオはにやりとわらって、尻をはたきながらゆらりと身を起こした。



52: ◆DIF7VGYZpU :佐賀暦2006年,2006/10/21(佐賀) 00:58:19.17 ID:bvR9X2DP0
  
('A`)「女と喧嘩して組織抜けて、女を馬鹿にされて不意打ちか。お前らしいよ」
(,,゚Д゚)「……」

ドクオの軽口に取り合わず、ギコはドクオとの距離を一定に保ち続ける。
ドクオもまた、その口調とは裏腹に、一部の隙も見せずにギコへ殺意を向け続けた。

('A`)「じゃあ、行くぜ。お前は簡単に死んでくれるなよっ!!」

ふらり、と傾くような仕草をしたのち、そのまま地面すれすれを疾走するドクオ。
常人を遙かに上回るスピードでギコに接近すると、そのまま左手をふりあげ、力任せに叩き付けた。

(,,゚Д゚)「ふっ!!」

自らの左手をすくい上げる様に振り抜き、ドクオの左手を弾くギコ。
その動きは、ドクオの左手を必要以上に警戒しているようにも見える。



54: ◆DIF7VGYZpU :佐賀暦2006年,2006/10/21(佐賀) 01:05:09.43 ID:bvR9X2DP0
  
('A`)「やっぱり、手の内がわかってるとやりにくいもんだな……っと!!」

言いながら、連続して左腕を振り回すドクオ。
その腕は多少力強いものの、見た目にはただ腕を振り回しているようにしか見えない。
だが、ギコはその全てを左腕のみで捌き、決して近寄らせはしなかった。

(,,゚Д゚)「いい加減に……しろっ!!」

攻撃の間隙をつき、ギコが鋭く左腕をなぎ払う。
表面に生えた鱗が逆立ち、触れるそばから空気を細切れにしていく。

('A`)「おおっと、あぶねぇ」

ひょい、と軽いステップで一撃を避けるドクオ。
その一瞬を見計らって、ギコはバックステップ。
左腕をドクオに向け――

(,,゚Д゚)「喰らえっ!!」

ギコが叫んだ瞬間、その手のひらに開いた穴から、物凄い勢いで火線が飛び出した。



57: ◆DIF7VGYZpU :佐賀暦2006年,2006/10/21(佐賀) 01:14:37.18 ID:bvR9X2DP0
  
――きゅ、ボッ

空気を焼きながら空中を走る火線は、その延長線上にあったドクオの腹を貫いた。
何の障害もないかのように貫通する赤いレーザー。
千度を超える熱量を凝縮させた炎は、一瞬でドクオの腹を炭化させ、背後の壁を溶解させた。

('A`)「ぎゃふっ!!」

血反吐を吐き散らして転がるドクオ。
その体が一瞬にして炎に包まれる。
大きな炎の塊になって炭化していくドクオを見て、しかしギコは警戒を緩めなかった。

(,,゚Д゚)「……下手な芝居は辞めろ。見ていて吐き気がする」

周囲を鋭く見回して、左手を構える。

('A`)「おいおい、こっちゃ死ぬ気でやってんだぜ。つれないこと言うなよ」

その言葉を聞いた訳でもないだろうが、ギコの背後の暗闇から、焼け死んだ筈のドクオが再度姿を現した。



59: ◆DIF7VGYZpU :佐賀暦2006年,2006/10/21(佐賀) 01:24:08.69 ID:bvR9X2DP0
  
('A`)「お前の『ファフニール』は相変わらずだよなぁ。気を抜いたら、一瞬で炭になっちまう」
(,,゚Д゚)「そう思うならば、つまらん身代わりなぞ用意せずにかかってこい」
('A`)「へっ、そんなわけにはいくかよ」

ニマニマと笑いながらドクオが言い放つ。
見れば、ドクオの背後にはもう一人のドクオが立っており、その背後には更に数人のドクオの姿が見える。
寸分違わず同じ姿を模したドクオ達は、皆一様に嘲るような笑みを浮かべてギコを取り囲んだ。

('A`)「こいつは、お前がいた頃にはできなかった芸当だからな」
('A`)「お前にコレをなんとかするのは無理だろ」
('A`)「単純にリビングデッドを似た形にしたわけじゃねぇぞ?」
('A`)「俺たち全員がドクオで、持ってる能力も全く同じだ」

数人のドクオが次々と口を開く。
悪夢のような光景に、しかしギコは口を軽くゆがめて笑った。

(,,゚Д゚)「ふん。何かと思えば、臆病者らしい戦い方だな。
     遠慮は無用だ。かかってこい、腰抜け共」
('A`)「……ぶち殺す」

視線に殺意を混じらせて、ドクオがギコに向かって一斉に飛びかかった。



2: ◆DIF7VGYZpU :佐賀暦2006年,2006/10/22(佐賀県庁) 23:01:50.54 ID:ic7+S1XB0
  
都市政府集権装置 主要電算装置室

常時真空状態に保たれたクリーンルーム。
欠片ほども汚れの存在しないその場所は、都市政府の全ての要。
バスケットの試合が3つ同時にできる広さの空間には、大きめの一軒家ほどもあるコンピュータが鎮座している。

毎秒二千もの議題を並列処理することができるこの『学習型人工無脳』は、世界崩壊前から稼働中。
3つのチャンネルに分けられた異なる思考形態は、休み無く問題を提起しつづけ、棄却、裁決し続ける。
それは例えば、明日の集光装置の角度調整に関する議題であったり、トイレの修理依頼であったりした。
そして今、『トリニティ』と名付けられたスーパーコンピュータ内では、3時間前から同じ問題が提起され続けている。

『最下層浄化措置検討案』:提起<チャンネル2

最下層に発生した『感染型大規模災害』が上層に伝わる前に、最下層を速やかに浄化すべしとの問題提起。
最下層の浄化手段には、最下層全域への強制放水による洗浄が提案されている。
実行時間は可決後速やかに。

この案件に対して、他の2つのチャンネルはいずれも否定的立場を取っている。
2:1のパワーバランスにより、案件は否決。
だが、『チャンネル1』は、時間内の解決が望めない場合は浄化もやむなしと、条件付の否定である。

チャンネル1が案件を肯定すれば、最下層の浄化措置は直ちに実行に移される。
チャンネル1が決定したタイムリミットは、三十分。
タイムリミット以内に脅威を取り除かない限り、最下層の全ては強制放水により水の底に沈むこととなる。

カウントダウンが始まった。



3: ◆DIF7VGYZpU :佐賀暦2006年,2006/10/22(佐賀県庁) 23:04:04.19 ID:ic7+S1XB0
  
( ^ω^)「お前は……助けにいかないのかお」

無表情に立ちつくすクックルを見て、ブーンが問いかける。
クックルはギコとドクオの戦いを見ても、一歩も動かない。
申し訳程度にブーンが助勢することを遮るように間に立っているが、それも意図してかどうかは判らなかった。

( ゚∋゚)「……千切るの、好き。だから」
( ^ω^)「……は?」

何の脈絡もなく発せられたクックルの言葉に、ブーンは思わず聞き返す。

( ゚∋゚)「オレ、人を千切るのが、好き。オレ、強いことがわかる。
    人は、よわい。もろい。女は、とくに千切りやすくて、好き」

そう言ったクックルの顔に、初めて明確な感情らしきものが浮かぶ。
恍惚としたその表情は、性的興奮の現われ。
視線は落ち着き無く左右に振られ、股間のシンボルは厚手のジーンズを盛り上がらせていた。
それを見たブーンは、汚らわしいものを見たかのように唾を吐き捨てる。

( ゚ω゚)「お前のような奴は、見ているだけで吐き気がするお」
( ゚∋゚)「……」
( ゚ω゚)「ふん、だんまりかお。じゃあ……」
( ゚W゚)「それ以上喋ることなく、速やかに死ね」

ずっと痛みを抑えていた両足の力を解放し、ブーンはクックルに迫った。



4: ◆DIF7VGYZpU :佐賀暦2006年,2006/10/22(佐賀県庁) 23:05:25.94 ID:ic7+S1XB0
  
('A`)「へぇ……あいつ、なかなかすげぇじゃねぇか」

後から後から現われるドクオの複製。
その中の一人が、力を解放したブーンを眺めて小さく感嘆の声をあげる。

('A`)「あいつの悪魔適正はたいしたことがないはずだがな」
(,,゚Д゚)「そんなことはあるまい。奴は見事に使いこなしていたからな」
('A`)「ありえねぇよ。もともと癒合すらうまくいかないくらい適正がなかったんだぞ?」

即刻地獄落ちしても不思議じゃねぇよ。
そう言ったドクオの頭を火線で吹っ飛ばしながら、ギコが別のドクオに問いかける。

(,,゚Д゚)「ならば、奴の適正は身体的側面で計れるものではないのだろう」
('A`)「なんだぁ? じゃあ精神的側面で適正があるって言いたいのか?」
(,,゚Д゚)「いや、精神論などではない。そうだな、奴の場合は……」

クックルに向かって烈風のごとく攻撃をしかけるブーンを見て、ギコは小さく笑みを浮かべながら

(,,゚Д゚)「魂の適正がある、といったところか」
('A`)「……なんだそりゃ。わっけワカンネ」
(,,゚Д゚)「貴様が理解すべきことではない。安心して死ね」

言い終わるなり転瞬。左腕でバックブローをたたき込み、背後から近づいていたドクオを左腕で細切れにする。
逆立った黒い鱗が、肉片をまとわりつかせながらじゃらりと音を立てた。



5: ◆DIF7VGYZpU :佐賀暦2006年,2006/10/22(佐賀県庁) 23:06:30.34 ID:ic7+S1XB0
  
( ゚W゚)「おおおぉぉぉッ!!」

ブーンの下半身が柔軟なバネにより引き絞られ、鋭い回し蹴りが放たれる。
空を裂くようにして放たれたその一撃は、猛烈なカマイタチを生み出した。
不可視の刃がクックルに向かって飛ぶ。
しかし、クックルは微動だにせず、その攻撃を受け止めた。
鉛色に硬質化した肌が風を弾く。着ていたタンクトップが細切れになって吹き飛んだ。

( ゚W゚)「……なかなかイイ体してるな」

カマイタチが通り過ぎた後も、小揺るぎもせずに立つクックル。
その体表には一筋の傷すらも見いだせず、ブーンは内心舌打ちしながら軽口を叩いた。
『破軍』の座を占めるジョルジュと同格で、『メリルヴィルの晩餐』七柱の一人である『巨門』の座につくクックル。
ジョルジュとの戦闘を鑑みてその力量差は覚悟していたが、ここまで歯が立たないとなると、いっそ清々しい。

( ゚W゚)(間接攻撃は効かない、か……。なら、直接攻撃をするまでだ)

相変わらず悠然と構えるクックルに、目隠し程度のカマイタチを放ってブーンが飛んだ。
一応攻撃を受け止める際には目を閉じたので、フェイントの効果はあったのだろう。
それでも全く動かないクックルの首を刈るようにして、ブーンの足がしなった。
だが、



6: ◆DIF7VGYZpU :佐賀暦2006年,2006/10/22(佐賀県庁) 23:07:47.93 ID:ic7+S1XB0
  
(;゚W゚)「がっ!?」

クックルの首に足が当たった。
そう思った瞬間、ブーンは大きく弾かれて地面に転がっていた。
体が無意識に痙攣し、心臓が嫌な動きをして飛び跳ねる。
馬鹿な。なんだ。一体何が。
自分の身に起った事が把握できず、ブーンはクックルに視線をやる。

( ゚∋゚)「……」

クックルは先ほどと変わらずそこに立っている。
しかし、その体表にわずかな光が走るのを見て、ブーンは理解した。

(;゚W゚)「そうか……電気か」

しかも、触れたブーンを吹っ飛ばすほどに強烈な。
クックルの体表を細かく走る光は、おそらく空気中の塵埃に反応した雷光だろう。
ブーンが自らの悪魔である『ストーンカ』の特性を見抜いたことに、しかしクックルはいささかの動揺も見せなかった。
あくまでも無表情に、ブーンにむけて両腕を無造作に突き出す。

――パリっ

まるで牛の角のように突き出された腕の間に、明確な紫電が走るのを見てブーンが血相を変えた。
未だに痺れの残る体を無理矢理動かして、ブーンはその場から飛び退く。
その瞬間、空気が破裂する音と共に、辺り一面が白色に染まった。



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